社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します

湯崎noa

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第3章・残念なドラゴンニュートの女の子

092:今度こそ

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 俺とオリヴァーの戦闘が始まった。
 俺の炎魔法と闇魔法の合わせ技と、オリヴァーの鉄拳が衝突すると周りにビリビリッと衝撃波の様なモノが出ている。
 嘘だろと言いたい。
 俺の拳とオーラを纏っただけの拳が、互角を張られてしまったら商売あがったりである。


「吹き飛びな!!」

「もう飛ばされてたまるかよ!!」


 拳と拳で競り合っている中で、グググッと押し込まれている感じがして飛ばされると思った。
 2回も吹き飛ばされたら恥になってしまうと思い、俺は拳を受け流してオリヴァーの真横に入る。
 完全に姿勢が前のめりになっていて、直ぐにカウンターを合わせるのは不可能な状態を作った。


「今度は貰った!!」

「そんな浅はかな考えが通用するわけねぇだろ!!」

「嘘だろっ!?」


 オリヴァーのガラ空きの脇腹にパンチを入れた。
 そのはずだった……。
 しかし俺の拳はオリヴァーの体を捉えられず、オリヴァーの体に穴が空いていた。
 どうなっているのかと理解できず、困惑しているうちに俺はオリヴァーから拳をもらって吹き飛ぶのである。


「ミナトっ!! どうして攻撃が当たらなかった………」

「種明かしってわけじゃねぇが、簡単に言えば………まぁオリジナルスキルってところだな」

「そうだろうな………体に穴が空く魔法なんて、聞いた事が無いからな!!」


 やっぱりというか、予想通りというか。
 オリヴァーはオリジナルスキルを使って体に穴を空けて、俺の攻撃を避けたみたい。
 そんなオリジナルスキルがあるっていうなら、戦う前に事前に伝えておいて欲しいもんだ。


「まぁ俺のオリジナルスキルは、体に穴を空ける程度じゃないけどな。これからが本領発揮だ………覚悟しろよ」

・オリジナルスキル『桜の花びらチェリーブロッサム・ペタル

「花びらだと!? それが、お前のオリジナルスキルか………」


 どうやらオリヴァーのオリジナルスキルは、花びらを操るだけではなく自分の体を花びらに変えれるらしい。
 俺の目の前でオリヴァーの体が、パラパラッと花びらに変わって姿が消えた。


「消えたっ!? どこに行きやがった………」

「さぁ地獄の嵐を見せてやるよ!!」

――散る夜桜フォーリング・トゥ・ナイト――

「拳の雨だと!?」


 どこからか、オリヴァーの声がしたかと思ったら、俺の頭上から桜の花びらが降ってきた。
 この花びらもオリヴァーのオリジナルスキルかと思った瞬間、花びらの1つ1つが拳になった。
 ドドドドドッと大きな音を立てながら、俺は地面に叩きつけられながら殴られている。
 どうなっているのかと困惑している俺とは裏腹に、全く攻撃が止む事なく、遂には俺は気を失ってしまった。


「う 嘘……ミナトが、こんな簡単にやられるなんて」

「ど どうしたんですか!? 何かあったんですか!!」


 ぐっすりと眠っていたエッタさんが起きるレベルの音が、この宿屋の中に広がっていた。
 俺が気を失っているのと、イローナちゃんが怯えているのをみてエッタさんは困惑の色が隠せなくなる。


「おっとギャラリーが増えるのは面倒だな………ここで幕引きとしようか」

――桜王の剣キング・オブ・ソード――

「ミナト様っ!?」


 エッタさんがきた事で、面倒な戦いが増えそうだと判断したオリヴァーは直ぐに手を打った。
 桜で剣を作ると俺の腹に目掛けて、グサッと地面に貫通するくらい強く突き刺したのである。
 目の前で起きた光景にエッタさんとイローナちゃんは、動揺を隠せずに急いで俺に駆け寄る。


「ミナト様っ!! 目を覚まして下さいっ!!」

「こんなので死なないよね………早く目を開けなさい」

「それじゃあ地獄で、また会おう………」

「待ちなさいよ!!」


 2人が俺に駆け寄っている隙に、オリヴァーは目の前から消えた時の様に花びらになって消え去った。
 それに向かってエッタさんは叫ぶが、去っていったオリヴァーには声が届く事は無かった。
 エッタさんの涙や鼻水で顔がグチャグチャになっているのを見れば、どれだけ思ってくれているのか分かる。
 そんな事を思っているのは死ぬかもしれないからだ。
 今にも死んでしまいそうな俺には、この涙を流してくれている美女を見るだけで成仏できるかもしれない。


「ど どうしよう!! お医者さん……この村にいるのかな!!」

「おかしいと思わない? どうしてオリヴァーは、私たちの場所を突き止められたんだろ………」

「そんな事を言ってる場合じゃ………ってまさか」

「そのまさかだと思う。この村の人がオリヴァーに告げ口をした可能性がある………そしてしたのは」


 エッタさんが俺の傷口を手で押さえて、血を止めようとするが血が止まる気配が無い。
 あたふたしている時に、イローナちゃんは目の前で起きた事態に違和感を感じている。
 そんな事を言ってる場合じゃないと、エッタさんは俺を助ける案を考える様に言ったが、その後にイローナちゃんが感じている違和感に気がついたのである。
 それは村自体が俺の事をオリヴァーに密告して、この事態が起きたのではないかという事だ。


「ほっほっほっ。その通りじゃよ。お主らの主人を、オリヴァー様に報告したのは、ワシじゃよ」

「やっぱりアンタだったんだ………」

「よくもミナト様を………絶対に許さない!!」


 まさしく悪魔の笑みの様な笑顔で宿屋の老婆が現れた。
 イローナちゃんは老婆を見て、やっぱり告げ口をした犯人は老婆だったかと見抜けなかった自分を恨む。
 エッタさんはスッと立ち上がると、見た事もない怒りに満ちた表情で老婆を睨みつけていた。
 あまりにも怖い顔で、俺も生で見ていたら失禁していたかもしれないレベルの顔だ。


「この国の村には何個か、共和傭兵団の根城がある。それを知らずに入ってきた冒険者たちを狩っているのさ」

「という事は、この村の村民は皆んな………」

「その通り。共和傭兵団の人間じゃよ」


 どうやら俺たちはトラップに引っかかったみたいだ。
 それが分かった瞬間に、入り口からドタドタッと村民たち改めて共和傭兵団の兵士たちが入ってきた。


「イローナちゃん。ちょっとミナト様を見てて………」

「うん。どうするの?」

「私が仇を取る………」


 スッと無言で立ち上がったエッタさん。
 何やら殺気の様なものを感じて、イローナちゃんは どうしたのかと思っていると、俺の仇を取ってくれるという。


「なんだい? お嬢ちゃんが、ワシらと相手してくれるのか?」

「えぇ今から、あなた方をボコボコにします………覚悟は良いですよね?」

「ほっほっほっ。やれるもんならやっ………」


 エッタさんを舐め切っている為に、老婆たちはゲラゲラッと笑っているが次の瞬間に鮮血が飛び散った。
 それはエッタさんが風の刃を老婆に向けて打って、老婆の首がスパンッと飛んだからである。
 あまりにも衝撃的な光景だった為に、周りの共和傭兵団の兵士たちは唖然としてから、魚群が動くように一斉に身構えた。


「な 何をしたっ!!」

「死にたい人から前に出て下さい………こんなものでは、ミナト様にした償いは足りない!!」


 エッタさんは周りにいた共和傭兵団の人間たちを、1人残らず切り刻んだのである。
 綺麗な髪の毛に兵士たちの血が飛び散って、綺麗なキャンパスにトマトを足で踏んだ様に赤色が彩られている。
 鮮やかな色合いと相反して、エッタさんの目には涙が浮かんでおり俺のところに駆け寄る。
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