上 下
43 / 201
第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

042:手繰り寄せた糸

しおりを挟む
 ジャックは殴り飛ばされると、俺に優位を取られた事で少し焦ってオリジナルスキルを使い殴りかかってくる。


「舐めるなよ!! このガキがぁ!!」

「何回でも吹き飛ばしてやるよっ!!」


 ジャックのパンチを俺は避けると、腹にパンチを連発して痛みに強いはずのジャックを後退りさせる。
 グッと痛みに耐える顔を見る事なく、さらに距離を詰めて俺は炎魔法と闇魔法の合体魔法を使う。


「痛みを楽しめ!!」

・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム

――――炎龍の吐息ドラゴニック・ブレス――――

「舐めるな!!」


 俺の拳をジャックはプライドからか、避ける事なく顔面に受けると俺の拳は止まった。


「ふっ。この程度のこうげ……なに!? パワーが上がってるだと!?」

「舐めんじゃねぇよ!!」


 俺は拳を振り抜いた。
 俺のパワーが上がった事で、ジャックの顔は右側にブンッと振られて体勢が崩れる。


「こんなもんで終わらねぇぞ!!」

・筋力増強魔法Level2
・炎魔法Level1《ファイヤーエンチャント》

――――爆烈連打ボム・ラッシュ――――

「こんなところでぇえええええ!!!!!」


 俺はジャックに目掛けて渾身のラッシュをかけた。
 それを空中で避けられずに、ジャックは全身で俺の攻撃を受けて耐えられるダメージの量が遥かに超えた。
 そのまま空中で気を失い俺によって殴り飛ばされると同時に、ジャックとのリベンジ戦を勝利した。


「見たか、この野郎ぉおおおおお!!!!!」


 俺はジャックが気を失ったのを確認すると、地面に仰向けで倒れ込んでガッツポーズと共に大声で勝利を喜ぶ。
 終わってみたら全身が痛くて、起き上がるのが精一杯でありエッタさんのところまでは頑張ろうと歩き始める。


「おぉ。まさか若い子に、この怪物が負けるとはねぇ………」

「だ 誰だ!?」


 俺の後ろから声が聞こえたので、警戒しながら振り向くとマントを付けた男が気を失っているジャックを突いていた。
 その男から殺気は感じられなかったが、気配に気が付かなかったので距離を取って警戒する。


「そんなに警戒しなくても良いぞ。この怪物を拿捕するのに、手伝っていただき感謝する………もしかして君が、エルバーグ王国で魔人化したアランを倒したルーキーか?」

「そ そうだが………アンタは誰だ!! ジャックの味方か!!」

「だから拿捕しに来たと言ったろ………しかし流石は、アランに勝っただけはあるな」

「さっさと名乗れよ!!」

「おっと、これは失礼した………俺はクロスロード連盟軍で中佐をさせてもらっている《ジョズエ=マレ》だ」


 この男はジャックを拿捕しにやって来たらしく、クロスロード連盟軍の《ジョズエ=マレ》中佐らしいのである。
 俺はクロスロード連盟軍の人間を生で見るのは初めてなので、こういう人間たちの集合なのかと怪訝の目で見る。


「とにかく君に、ジャックの懸賞金《大金貨20枚》だ」

「そんなに高いのか。さすがは大海賊だ………」

「こいつが大海賊か……いや、君を馬鹿にしたわけじゃ無い。確かに強いが、ここまで大きくなったのは、ある人間の下に着いたからだって事だな」


 ジャックの懸賞金は日本円にして2000万円と高額だった。
 流石は大海賊だとボソッと呟くと、ジョズエは少し笑ってジャックが大きくなれたのは、ある人間の存在があったからと話す。


「ジャックは誰の下で働いていただと? あの性格の人間が、人の下に着くとは思えないな………」

「単純な事さ。こいつは野心の為なら、プライドを捨てられる人間だって事だ………そして、こいつの上司は戦争仕掛け人と呼ばれている犯罪者《エルマー=フィーリッツ》だ」

「エルマー? 全くもって聞き覚えが無いな………」

「駆け出しなら仕方ない。エルマーは、種族や国に関係なく依頼を受けたら戦争の火種を作る………それ故に戦争仕掛け人と呼ばれている」


 ジャックの上には戦争仕掛け人と呼ばれる男がいるらしい。
 そして戦争仕掛け人は、種族や国に関係なく金さえ貰えれば仕事をする事で裏稼業の人間からしたら有名らしい。


「ジョズエ中佐っ!! 聖剣は保護いたしました!!」

「そうか。キチンと聖地まで護衛しろ………」

「あ あと1つ聞きたい事がある」

「なんだ?」


 喋っているところにクロスロード連盟軍の兵士がやってきて、ジャックが盗み出していた聖剣を保護したという。
 俺は聖剣という言葉を聞いて、聞いておきたい事があるのだと思い出してジョズエに質問する。


「聖剣も そうだが、この島に眠る兵器って何なんだ?」

「ふっ。やっぱり気になるか………だが、残念ながら聖人様以外は知る必要は無い………お前も俺もな」

「しかし!!」

「そこまでだ!! これ以上の詮索は、世界連盟に消される可能性があるぞ………それじゃあ、さっさと手当しろ」


 俺が聖剣やアカシア島に眠る兵器について聞くと、ジョズエの表情がスッと変わって何も話してくれなかった。
 そのまま俺は兵士に救護班のところまで案内してもらうと、エッタさんたちも救護してもらっていた。


「ミナト様っ!! ミナト様も無事でしたか………良かった」

「あぁ何とか疲れはしたけど、命には別状ないよ………エッタさんも、シュナちゃん・カエデちゃんも大丈夫かい?」

「私は大丈夫だわん!!」

「私もにゃ……」

「私も大丈夫です!!」


 俺はミア&クロエとの戦闘で大怪我をしていない3人を見て、自分の事よりも遥かに安堵した。
 そして3人も俺の事を心配してくれていたのかと実感すると、前世では感じられなかった温かい気持ちで満たされる。


「とにかくはアカシア島に戻ろう………少し休んでから、中陸のシュナちゃんとカエデちゃんの故郷を目指そうか」

「そうですねわん」

「分かったにゃ」


 これからはアカシア島に戻って休んでから中陸に向かう事にしたのである。
 アカシア島ではセイラちゃんたちが迎えてくれて、俺たちの手当てと休む場所を準備してくれていた。


「ミナトさん。ご無事で戻って来てくれて良かったです!!」

「心配してくれてありがとうね。なんとか4人とも無事で帰って来られた………」

「ご飯とかも用意してあるので、ゆっくりと休んで下さい」


 セイラちゃんの目には少しの涙を浮かべており、本当に心配してくれていた事が伝わる。
 そのまま俺たちは自室に戻って休息を取る事になるが、俺が部屋に戻って少しすると部屋をノックされる。
 前日の様にエッタさんが来たのかと思って扉を開くと、海賊たちの根城から助けた人間の女の子だった。


「君は……神殿で助けた子だね? 良かった、目を覚ましたみたいだね」

「助けていただきありがとうございます。お礼が言いたくて、休んでいるところすみません………私は《イローナ=コバル》って言います」

「いや、全然気にしていないから良いよ。イローナちゃんね? それでイローナちゃんら、どこから連れて来られたんだい?」

「それは、ちょっと言いたくはありません………助けていただいなのに申し訳ありません」

「言いたく無いなら良いさ。人には人の事情ってのがあるんだからね」


 この女の子はイローナちゃんというらしく、それなりの事情で連れて来られた場所は秘密にしたいと暗い顔を話す。
 そこまで追求するつもりはないので、深くまでは入り込まない様に気をつける。


「それで、これからミナトさんたちの冒険について行っても良いでしょうか? 家族も帰る場所も無いので………」

「ついて来たいの? 俺は別に構わないよ。これから獣人の村に行くから着いてくるかい?」

「はいっ!!」


 俺たちの冒険にイローナちゃんが加わった。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~

暇人太一
ファンタジー
 大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。  白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。  勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。  転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。  それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。  魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。  小説家になろう様でも投稿始めました。

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく

霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。 だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。 どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。 でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

器用貧乏の意味を異世界人は知らないようで、家を追い出されちゃいました。

武雅
ファンタジー
この世界では8歳になると教会で女神からギフトを授かる。 人口約1000人程の田舎の村、そこでそこそこ裕福な家の3男として生まれたファインは8歳の誕生に教会でギフトを授かるも、授かったギフトは【器用貧乏】 前例の無いギフトに困惑する司祭や両親は貧乏と言う言葉が入っていることから、将来貧乏になったり、周りも貧乏にすると思い込み成人とみなされる15歳になったら家を、村を出て行くようファインに伝える。 そんな時、前世では本間勝彦と名乗り、上司と飲み入った帰り、駅の階段で足を滑らし転げ落ちて死亡した記憶がよみがえる。 そして15歳まであと7年、異世界で生きていくために冒険者となると決め、修行を続けやがて冒険者になる為村を出る。 様々な人と出会い、冒険し、転生した世界を器用貧乏なのに器用貧乏にならない様生きていく。 村を出て冒険者となったその先は…。 ※しばらくの間(2021年6月末頃まで)毎日投稿いたします。 よろしくお願いいたします。

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

プラス的 異世界の過ごし方

seo
ファンタジー
 日本で普通に働いていたわたしは、気がつくと異世界のもうすぐ5歳の幼女だった。田舎の山小屋みたいなところに引っ越してきた。そこがおさめる領地らしい。伯爵令嬢らしいのだが、わたしの多少の知識で知る貴族とはかなり違う。あれ、ひょっとして、うちって貧乏なの? まあ、家族が仲良しみたいだし、楽しければいっか。  呑気で細かいことは気にしない、めんどくさがりズボラ女子が、神様から授けられるギフト「+」に助けられながら、楽しんで生活していきます。  乙女ゲーの脇役家族ということには気づかずに……。 #不定期更新 #物語の進み具合のんびり #カクヨムさんでも掲載しています

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...