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第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

040:立ち上がる理由

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 オレとクロエが生きる希望を失ってから4年が経ち、12歳になった年に世界的な事件が起きた。
 それは現在〈解放王〉と呼ばれている五賢王の1人《ルーティン=アーサー=キング》によって奴隷解放が行われた。


「クロエっ!! 早く逃げるんだ!!」

「う うん!!」


 解放された中にミア&クロエたちも含まれており、解放されたら急いで逃げ、その先で出会ったジャックに拾われる。
 そのままミア&クロエは命の恩人であるジャックの船に乗り、海賊になる事を決めたのである。



* * *



 ミアはクロエがやられた事で、エッタさんたちへのフラストレーションが最大限になるのである。


「人生が何かもしらねぇ様なガキがっ!! オレたちの邪魔をするんじゃねぇよ!!」

「この世界で辛いのは、アンタらだけじゃない………でも、アンタらの境遇は可哀想だとも思う」

「そんなのはいらねぇ!! 憐れみなんてのは、オレたちには不要だ………オレたちは命を助けてくれた、ジャック船長の偉大なる計画を遂行するだけだ!!」


 ミアは完全に怒りでハイになっており、エッタさんが同情しても突き放して怒りを露わにしている。
 エッタさんはミアにとってクロエという存在は、生きて来た中で親友以上の存在なんだと分かる。
 しかしミアたちを野放しにすれば、ここにいる人間たち以上の世界の人たちが苦しむ事になってしまう。


「アンタが自分の人生に絶望し、世界に対しても怒っているのも大いに分かった………だけど、その感情のまま関係の無い人たちも巻き込もうとしているのなら、私は全力で止める!!」

「私は全力で止める? 正義のヒーローを気取ってるの? そんなの気持ち悪い………この世界は弱肉強食だっ!! そんな生ぬるい考えをしているから不幸になるんだぞ!!」

「綺麗事なのかもしれない。多くの人を助けられなくて、少しの人しか救えないかもしれない………綺麗事でも、なんでも動かないよりかはマシよ!!」


 エッタさんはミアの心に寄り添いながらも、関係の無い人たちも巻き込むのだけは違うと否定した。
 既に聞く耳を持っていないミアは、エッタさんの言っている事が怒りの燃料への変わる。
 そんなミアに正義を語るのは綺麗事だと言われるが、自分の様に不幸な人間をできる限り減らしたいと覚悟を現した。


「そう……お前たちとは話にならないみたいだ。それなら死んで間違ってた事を覚えろ!!」

・炎魔法Level1《ファイヤーボール》
・斬撃魔法Level3《スラッシャー》

――――飛ぶ炎の剣ファイヤースラッシャー――――


 ミアは怒りに任せて3人を葬る事にした。
 剣に炎をエンチャントさせて、そのまま飛ぶ炎の斬撃として3人に向かって飛ばしたのである。


「シュナちゃん、カエデちゃん。ちょっと力を貸して………」

「了解わん!!」

「分かったにゃ」


 エッタさんはシュナちゃんとカエデちゃんに、力を貸して欲しいと頼むと2人は即答でイエスと答えた。


「私が、あの斬撃を止めるにゃ」

・オリジナルスキル『氷の女王クイーン・オブ・アイス

「何っ!? オレの斬撃を凍らせただと!?」


 シュナちゃんが2人の前に出ると、オリジナルスキルを使って飛んできた斬撃を凍らせた。
 それにミアが驚いている隙に、カエデちゃんが飛び出して筋力増強魔法を使用して殴りかかる。


「殴り飛ばすわん!!」

「そうはいかねぇよ!!」

「なんちゃってわん………体勢だけでも崩れれば良いわん」

「ま まさか!? その策を、まだ実行するの!?」


 カエデちゃんのパンチに着地したてのミアは、防ぎきれずにパンチされた方向に体が流れてしまう。
 ミアは体が流れながらカエデちゃんの後ろで、自分を狙い撃ちしようとしているエッタさんが見える。


「アンタは、人の痛みを知っているのに人を苦しめようとした。とても同じ苦しみを持つ人間として残念………貴方を、ここで止めさせてもらいます!!」

・風魔法Level6《ハリケーン・スピアー》
・木魔法Level3《ウッド・スピアー》

――――精霊の槍フェアリー・スピアー――――

「クソがぁああああああ!!!!!!」


 エッタさんの渾身の攻撃は、ミアにクリーンヒットし3人は女海賊にリベンジ成功した。
 前回からの流れがありエッタさんは疲れたと、地面にペタンッとへたり込み、シュナちゃんとカエデちゃんが駆け寄る。


「怪我したのかわん?」

「大丈夫にゃ?」

「大丈夫だよ。少し疲れただけで………それよりもミナト様の方は大丈夫かしら?」

「あの人なら問題ないわん」


 エッタさんは自分たちの方は、何とか勝利する事ができたが俺の方を心配してくれているのである。



* * *



 前世の事を思い返せば、子供の頃から酷いものだった。
 始まりは俺が6歳の時だった。
 昔から父親は無職でギャンブルやら酒やらに溺れる様な人間であり、生活費を稼いでいたのは母さんの方だった。


「ごめんね……お腹いっぱい、ご飯を食べさせてあげたいんだけど………」

「全然気にしてないよ? お母ちゃんの方こそ、仕事大変そうだけど大丈夫?」


 母さんは毎日の様に俺に謝っていた。
 そんな母さんを見て、俺は1度も怒ったり不幸だなんて思った事は無かった。
 いつからか、俺の夢は母さんに腹一杯のご飯を食べさせてあげるという事になっていた。
 しかし……。
 そんなある日に、父親は酒に酔った勢いで母さんと喧嘩して母さんの事を殴り殺した。


「今日から、私たちが家族よ。わがまま言って良いんだからね」

「う うん……」


 父親は捕まり俺は祖母たちの家で暮らす事になった。
 あの日に俺は実感したのである。
 人というのは殴り続ければ死ぬし、死んでしまったら何1つ残ってはいないのだと。
 この事を俺は齢6歳にして知ってしまった、世界の理の現実である。


「ゆうちゃん? そんなに無理して働かなくても良いんじゃないのかい?」

「ダメなんだよ。僕が行かないと、他の人たちに皺寄せがいっちゃうからね………それに僕には夢があるんだ」


 ブラックな会社に就職してからも俺は祖母たちと一緒に暮らしており、みるみるうちに酷くなった顔を見て心配してくれる。
 しかし俺には夢があるんだ、その為にも仕事を辞めるわけにはいかない………あれ? 俺の夢って何だっけ。


「そうだ。母さんに腹一杯の飯を食わしてやる事だ………」


 俺の意識は前世の記憶から戻ってきた。
 全身痛みで体が動くのか、それどころか死ぬのではないかと感じる程のダメージを受けている。
 あぁこのまま目を瞑れば気持ち良くなれるんじゃないか?
 それなら、こんなに頑張らなくなって他の人たちが倒してくれるよな………んな訳ねぇだろ。


「俺が諦めたら、俺の様な子供が世界中に増える………それだけは絶対にダメだ!! 人ってのは死んだら、何も残らない。死んだら終わりなんだ!!」


 俺はゆっくりではあるが全身に力を込めて、フラフラになりながらも俺の様な子供を増やしたくない気持ちで立ち上がる。
 凄まじい猫背で無いと立っていられないくらいに、痛みと疲労で目が回りそうだが、根性と正義感でギリギリのところを保っているのである。
 そのまま俺は瓦礫を退かして、俺の方なんて見ずにテントの方へ行こうとするジャックに声をかける。


「おいっ!! 何を勝った気になってんだよ!!」

「何っ!? 嘘だろ……完璧に喰らったはずだろ。アレを喰らって立ってられるわけがねぇ」


 俺が立ち上がった事にジャックは素直に驚いて、何で立ち上がれるのかと歯をグッと噛み締める。
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