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第2章・モフモフで可愛いケモノっ子

037:やっぱりな

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 俺の目の前に憎き《ジャック=ラムズ》という大海賊が、ニヤニヤと明らかに俺の事を見下している顔で立っている。
 今にも俺は飛び出して、ジャックの顔面を殴り飛ばしニヤニヤ面を、どうにか泣きっ面にしてやりたいと心の中で燃える。


「何しに来たんだ、ガキ」

「テメェを、ぶっ飛ばしてやる為に来たんだ。その首を俺に渡す準備はできているんだろうな」

「なんだって? 俺の首を取りに来たって? ふっふっふっふっふっ……お前に俺は取れねぇぞ?」


 ジャックは葉巻に火をつけて吸うと、俺に対して何をしに来たのかと言って来たが、ニヤニヤしている事から俺の事を本気で煽りに来ているのだなと感じ取れる。


「言ってろ。直ぐにテメェの首を………ゔわぁ!?」

「おいおい。なんで気を抜いてんだ? 戦争は、せーので始まらねぇぞ!!」


 俺がジャックに宣戦布告の様なモノを言おうとした瞬間に、ジャックは突然に動き出して俺の事を殴り飛ばした。
 そのまま殴り飛ばされた俺は、山のところまで吹き飛んで、山が凹むくらいの威力で殴られる。
 こんなに流暢に喋っている暇があるのならばという、ジャックの意思表示である。


「俺に殴り飛ばされて負けたんだ。この大海賊の俺様にな………この先、お前の誉のなるだろう」


 山が凹むくらいの威力で殴り飛ばされたのだから、ジャックは俺が完全に気を失って瞬殺しただろうと判断する。
 それどころか大海賊であり、これから もっと名前を上げる自分に負けたのだから拍が付き、己の誉になるだろうと嫌味を言う。


「はっはっはっ!! さっさと帰って酒を飲み直すか………あんな雑魚を相手にする身にもなって欲しいもんだ」

「こっちこそ、こんなもんで勝ったと思う雑魚を相手にする気持ち………分かるか?」

「なんだと!? 完璧に攻撃を入れたはずだが………」


 完璧に倒し切ったはずなのに、砂煙の中から俺の声が聞こえてジャックは少し動揺を見せた。


「少しの油断が隙を生んだな………まだまだ、テメェも大海賊なんかじゃねぇ!!」

・高速移動魔法Level2
・筋力増強魔法Level2

――――高速肉弾スマッシュ・アタック――――

「ゔぉがぁああああ!!!!!」


 俺は砂煙の中から人の目では認識できない速度で飛び出すと、ジャックの腹を目掛けてパワーパンチを打ち込む。
 殴り飛ばすのではなく体の中を衝撃波を通す様に殴り、ジャックは地面に跪いて蹲ったのである。


「どうしたんだ? こんなもんで、倒れられたら前に負けた、俺が可哀想だと思わないか?」

「き…」

「き?」

「気持ち良いぃいいいい!!!!!」


 俺もジャックと同じで油断していたのかもしれない。
 ジャックはセックスしているのかと思うくらいに、口角が上がって気持ち良さそうな顔をしていた。
 やはりジャックの能力は油断できないなと再認識する。


「こんなによぉ。気持ち良いパンチは、もらったこと無いぜぇ」

「ちっ。本気で気味が悪りぃな………」


 ジャックは立ち上がると殴られた腹の部分を摩って、ニヤニヤしながら近寄ってくる。
 俺はストックのスキルは舐められないと、近寄られた分の数歩後ろに下がって距離を取る。


「俺のスキルを知ったみたいだな。だが、知ったところで対策なんてない!!」

「ちっ。なら気を失うまで、ボコボコにしてやるよ!!」

「やれるもんならやってみろ!!」


 ジャックは自分のスキルが相手に知られたところで、対策方法なんて無いんだと言って自信満々である。
 それに対して俺は気を失う威力の攻撃を出すか、気を失うまで殴り続けてやるという対策法を持って来た。


「昨日の二の舞になるだけだ………自信があるのならやってみろよ!!」

・オリジナルスキル『痛み備蓄ストック

「くっ!! またもダメージを蓄積させて、スピードが上がったのか………」

・土魔法Level2《ストーンウォール》


 ジャックは痛みの快楽によってスイッチが入り、完全なハイ状態になったのである。
 そんなのと真っ向から衝突したら、こっちの身が持たないと思って、俺はジャックとの間に土魔法で石の壁を作った。


「小賢しいマネをするんじゃ………どこに消えた?」

「後ろへの警戒は散漫みたいだな!!」

・炎魔法Level1:ファイヤーボール
・風魔法Level2:ストーム

――――炎龍の吐息ドラゴニック・ブレス――――


 ジャックはストーンウォールを殴り壊すと、俺を殴ろうとするが、さっきまでいた場所から俺は移動しており見失う。
 ストーンウォールで視線を俺から移動させて、視界を塞いだ瞬間にジャックの背後に回り込んで炎龍の吐息ドラゴニック・ブレスを放った。
 炎龍の吐息ドラゴニック・ブレスは周囲を燃やし尽くす勢いで、これを真っ向から喰らったジャックは黒焦げになるだろう。


「こんな火じゃ、焼肉だってできねぇぞ!!」

「これでも無傷かよ!!」


 ジャックは炎を掻き分ける様に、炎の中から現れて俺の首を掴んで地面に押さえつけられる。
 そのままジャックは腕を振り上げて俺の顔面を数発、遠慮もなく殴り続ける。


「人の顔を遠慮もなく殴るんじゃねぇ!!」

「ちっ。逃げるんじゃねぇよ……そのまま殴り続けられていたら気持ちよくなってたってのによぉ」

「そんな気持ち良さはいらねぇよ!!」


 俺はジャックの腹に寝ながら膝を入れると、隙間ができスルッと脱出するのである。



* * *



 エッタさんたちの前に、ミア&クロエの女海賊が格下を相手しているかの様な余裕ぶりを見せる。


「シュナちゃん。足元を凍らせられる?」

「できるにゃ………」

・氷魔法Level4《氷の時代アイス・エイジ


 エッタさんは小さな声でシュナちゃんに、足元を凍らせる様に頼んで、早速氷の時代アイス・エイジを使った。
 エッタさんたち以外の地面が、一瞬にして凍るとミア&クロエの足元も凍って踏ん張りずらく俊敏さを奪った。


「こんな事をして、オレたちが弱くなると思ってんのかぁ?」

「そうだ、そうだ!! こんな事をしたからって、あたいらの強さは揺るがないんだよ!!」

「それは、これを受けてから言ってよ!!」

・風魔法Level6《ストームバレット》
・火魔法Level2《ファイヤーアロー》

――――火風の矢バースト・アロー――――


 エッタさんはミア&クロエの足元を踏ん張りの効かないモノにしてから、風と火の魔法を合わせた矢を放った。
 ミア&クロエは避けようとするが、足元が滑って避ける事ができずに攻撃を受けるしか無い。


「この程度の攻撃で逃げた方が、オレたちの名前に傷が付くってところか………受けて立ってやる!!」

「あたしらを舐めんじゃ無いわよ!!」


 エッタさんたちからすれば無防備な状態で、もろに攻撃がクリーンヒットする為に、この一撃で終わってもおかしくは無いと感じる。
 そのまま矢はミア&クロエに直撃すると、周囲を巻き込んで大爆発が起きた。


「やったかわん?」

「いや、気配が消えてないにゃ………」

「やっぱり侮れないわ」


 完璧に攻撃がクリーンヒットした事で、カエデちゃんは倒したかと思ったが、シュナちゃんとエッタさんは気配が消えていない事から倒せていないと分かる。
 すると地面の上の氷が、何故だかパリンッと一気に割れて無傷のミア&クロエが3人の前に戻ってくる。


「やっぱり思ったよりも弱い攻撃だった」

「少し焦ったのが恥ずかしくなるぅ」

「本番は、ここから………その余裕が、いつまで保つのかしら」


 これは開幕のセレモニーの様なモノで、ここからが本番だとエッタさんたちは集中力を高める。
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