上 下
14 / 27
Ⅳ章 トラブル☆メーカー!?お姉ちゃん!

page14 お姉ちゃん、登場な件

しおりを挟む
スカイドラゴン討伐が終わり、壊れた建物の復興が行われるなか、俺とアリスの2人はレオハルトさんに呼ばれてギルマスの執務室にきていた。
ロロナとリリィの2人は復興を手伝っておりあっちこっちで引っ張りだこだ。

「うむ、良くきたのであるな。」

赤い絨毯に両面の壁には本棚やら壁に掛けられた剣やらが飾られており正面の窓の前に執務机がある。
左側の壁際にはローテーブルとソファがあり応接スペースになっている様だった。
レオハルトさんがそう言ってこちらを見てからまた視線を執務机の書類に落とす。

「それで、どのようなご用件でしょうか?」

アインさんでさえ復興の手伝いをしている中俺とアリスだけが呼び出された。
何かやらかしたかな?

「うむ。そなたらの実力を見込んでとあるクエストを頼みたいのだ。
少々癖のあるクエストでな。
アインには頼めぬ物なのだ。」

レオハルトさんがそう言ってアリスに書類を渡す。

「闇ギルド、リヴィラの調査?」

「うむ。
この国ではあらゆる職種のギルドがある。
その中で闇ギルドと呼ばれるギルドが存在する。
暗殺ギルドや盗賊ギルドと呼ばれる物だ。
国から正式なギルドと認められていないにも関わらずギルドとして運営しておってな。
国としても手を焼いているのだがその中にリヴィラと言うギルドがある。
冒険者ギルドと名乗っているが実体は非公式の闇ギルドだ。」

レオハルトさんはそう言ってからもう一枚資料をアリスに手渡した。

「現在わかっているのはその内容のみ。
所在も所属人数も分からん。」

レオハルトさんに渡された紙にはギルドマスターを名乗る男性の名前と絵、ギルドの紋章と思われるカラスのマーク、これまでの犯罪歴が載っていた。

「それで、調査と言ってもこれでは無理だぞ。」

「あぁ、それだけの情報では国も人を動かさん。
だがな、もし、確実に現れる場所と日程が分かっていたら?」

レオハルトがそう言って俺達を見た。

「捕らえるチャンスですね。
けど。それなら衛兵とかの仕事になるのでは?」

「うむ、普通ならな。
今回はそうではない。
泳がせて尾行して本拠地を暴くのが目的なのだ。
だから、冒険者ギルドに話が回ってきた。
それも、王都では無い冒険者ギルドにな。」

レオハルトがそう言ってニヤリと笑う。

「王都の冒険者ギルドではマズイのですか?」

「うむ。Aランク以上の冒険者は皆顔が割れているのだ。
それでは尾行もこんなんであろう?
だが、幸いな事にこの街の冒険者ギルドのAランク冒険者は王都では顔が割れていない。
だから、王都でも尾行がしやすいのだ。」

レオハルトさんが言った。
つまり、今回の任務の舞台は王都と言うわけか。

「あの、じゃあなんで2人なんですか?」

「うむ。さすがに2人だけでは心もと無いだろう。
今回はその道に精通した冒険者1名が共にクエストを受ける。
正確にはその者が国王陛下から受けたクエストなのだがその者からAランク冒険者を1人貸してほしいと打診を受けたのだ。」

レオハルトさんが言った。
それで俺達か。
何となく事情は分かってきた。

「それで、その人って?」

「じゃじゃーん!私だよっ☆」

そう言って執務室の扉が勢い良く開かれる。
そこには身長154cm程でライトブラウンの毛先がウェーブした肩までの髪、優しそうな蒼い瞳に整った目鼻立ち。
B程度の胸に括れた腰、服装は白いブラウスに黒いロングスカートに黒いくるぶし丈のブーツ、ピンク色の長袖のベストを着ておりベストの胸元にはピンク色のリボンがあしらわれていて袖口と裾はフリルになっている。

「この子は?」

「彼女はティア。この国のSランク冒険者だ。
まぁ、彼女がSランク冒険者だと知る者は少ないがな。」

レオハルトさんが言った。
マジか。
この子俺達よりランク高いのかよ。
まぁ、でも国王から直接クエストを受ける位だから実力はあるのだろうな。

「私はアリスで・・・」

「きゃー!可愛いっ!私の事はお姉ちゃんって呼んでね。
ほら、呼んでごらん。」

「え、でも・・・」

ティアはいきなりアリスに抱きついてアリスの頭をなでなでする。

「ほらほら、お姉ちゃん、だよ?」

ティアがそう言ってアリスをなでなでする。

「お、お姉ちゃん・・・」

「うんうん、いいこいいこ。」

そう言ってなでなでを続ける。
何だこの子は。

「ティアはこれでも優秀な暗殺者なのだがな。
女の子としかパーティーを組まず、組んだ相手にはお姉ちゃんと呼ばせる。
そして溺愛するのだ。」

えっと、これがSランクのしかも暗殺者?
どうみてもただのシスコン少女なんだが・・・ 

「あはは、私の暗殺は特殊でね?
お菓子を使った毒殺なんだ。」

ティアがそう言って微笑む。

「ティアは表向きは冒険者でなくパティシエを名乗っている。
それも、名の知れた有名な旅のパティシエとな。
貴族の間では一生に1度は食わなければ貴族の名折れとまで言われる腕前でな。
その腕で要人に近づき菓子を振る舞い毒殺する。
それがティアのやり方だ。」

レオハルトさんが言った。
なんか、可愛い顔してやってることエグイな。この子。

「今回のクエストに私が選ばれた理由だけどね、リヴィラのギルドマスターってとある貴族なんだよ。
だから、私が一番適任なの。
しかも、その貴族は自身がリヴィラのギルマスだとはバレてないと思ってるらしくてね。
まぁ、名前も変えてるしリヴィラでは顔を出してないからね。
けど、それじゃ私の眼は騙せないよ!
同じ匂いがしたもん!」

ティアがそう言ってドヤ顔をしてアリスを見る。
誉めて誉めてと尻尾を振る犬のような感じだ。

「匂い?」

「うん!パティシエとして活動してると貴族のお屋敷にお呼ばれする事が多くてね。
ま、暗殺対象の下見なんだけど。
それでね、貴族って香水付けること多いから匂いには敏感になるんだよ。
暗殺の時の手懸かりにもなるしね。」

ティアはそう言って微笑む。
ふざけた子かと思ったが暗殺者としての技量はありそうだ。

「それで、何故俺達が?」

「うむ、その話はティアから。」

「はーい!
あのね、今回の相手なんだけど私が暗殺できるのはギルドマスターの貴族だけなの。
相手が貴族なら屋敷にお呼ばれしてお菓子を振る舞えるけど闇ギルドの連中にお菓子を振る舞うなんて難しいからね。
けど、ギルドの所在地は絞り込めててね。
その1つが屋敷にある隠し通路の先・・・屋敷の地下なんだ。
ギルマスを暗殺した後素早くそっちもやる必要がある。
でも、そっちは普通の戦闘になるからね。
私1人では難しいってわけ。」

ティアが言った。

「ティアの得意とするは暗殺。
普通の戦闘も可能だが闇ギルド相手では難しいのだ。
我輩からも頼む。
手伝ってはくれぬか?」

「手伝うのは良いのですが俺達はどうやって屋敷に入るのですか?
いきなりティア以外がついていったら怪しまれません?
それも、悪事を働く貴族なら敏感ですよね?」

俺が言った。

「中々鋭いねぇ。
その通りだよ。
でもね、大丈夫。お姉ちゃんに任せてね!
暗殺の決行は1週間後なんだけどね。
それまでに5件程貴族の屋敷にお呼ばれしてるの。
まぁ、国王陛下が仕組んでくれたんだけどね。
そこで私がアリスちゃんを私の妹だって溺愛しながら自慢するから。
国王陛下が手を回してて貴族たちはそれを言いふらしてくれるの。
それでターゲットの屋敷でも同じ様に妹だって溺愛するの。
もちろん、国王陛下からその事を言いふらす様にターゲットは言われてるよ。
私の今後の宣伝の為だってね。
これでアリスちゃんも簡単に入れるって訳。
国王陛下からの命令を無下にする訳にいかないからターゲットも他の貴族に倣いアリスちゃんを招き入れてくれるから。」

ティアはそう言ってウインクをした。
暗殺の事になると真面目なんだな。
まぁ、当然か。

「と言うことで明日から早速貴族のお屋敷にお呼ばれしているから一緒によろしくね。
それと、この仕事終わるまでは一緒の宿で一緒の布団に寝ようね、アリスちゃん!」

ティアがそう言ってアリスの頭をなでなでする。
もしかして、そっちが目的だったりしないか?

「ティアとアリスに任せれば問題は無いと信じているのである。
健闘を祈るのである。」

レオハルトさんが言った。
俺達はティアと共に王都へ向かう事になったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

わがまま姉のせいで8歳で大聖女になってしまいました

ぺきぺき
ファンタジー
ルロワ公爵家の三女として生まれたクリスローズは聖女の素質を持ち、6歳で教会で聖女の修行を始めた。幼いながらも修行に励み、周りに応援されながら頑張っていたある日突然、大聖女をしていた10歳上の姉が『妊娠したから大聖女をやめて結婚するわ』と宣言した。 大聖女資格があったのは、その時まだ8歳だったクリスローズだけで…。 ー--- 全5章、最終話まで執筆済み。 第1章 6歳の聖女 第2章 8歳の大聖女 第3章 12歳の公爵令嬢 第4章 15歳の辺境聖女 第5章 17歳の愛し子 権力のあるわがまま女に振り回されながらも健気にがんばる女の子の話を書いた…はず。 おまけの後日談投稿します(6/26)。 番外編投稿します(12/30-1/1)。 作者の別作品『人たらしヒロインは無自覚で魔法学園を改革しています』の隣の国の昔のお話です。

転生したら赤ん坊だった 奴隷だったお母さんと何とか幸せになっていきます

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
転生したら奴隷の赤ん坊だった お母さんと離れ離れになりそうだったけど、何とか強くなって帰ってくることができました。 全力でお母さんと幸せを手に入れます ーーー カムイイムカです 今製作中の話ではないのですが前に作った話を投稿いたします 少しいいことがありましたので投稿したくなってしまいました^^ 最後まで行かないシリーズですのでご了承ください 23話でおしまいになります

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

Lunaire
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】 『ゆるり冒険VR日和 ~のんびり異世界と現実のあいだで~』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/166917524】

悪役令嬢は永眠しました

詩海猫
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」 長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。 だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。 ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」 *思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m

処理中です...