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第3章ロンダール南東地区の日常

面白い事 募集

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 人材派遣場にて一枚の張り紙があった。

【面白い事募集。ザンバードに依頼ある人。依頼料金・要相談。】

 ザンバードの3人はアイリスと話していた。

「いっぱい来てますよ。護衛依頼から素材集めなどなど。」
 リール達は、笑顔で話すアイリスから説明を受ける。

「新人冒険者のレベル上げとか面白そうですよ。みんなここで依頼を受けてくれてる人達です。」
 Dランク冒険者達からの依頼だ。盗賊に負ける程の実力のため、街中の依頼しか受ける事が出来ないのだ。

「それなら護衛隊で鍛えてえば楽だろ。」
 護衛隊も人材派遣場で雇っている。演習はデルモンド自ら鍛えているため、期待できる。

「他にはドワーフの方達からで、素材の発掘作業の護衛依頼ですね。ミスリルの発掘出来る洞窟があるので、護衛してほしいそうですよ。」

 職人街のドワーフ達からの依頼だ。ミスリルは銀色に輝き魔法と相性の良い鉱石と知られている。鉄よりも軽いため、冒険者達が武器や防具に重宝している鉱石だ。

「面白そうだな。強い魔物もいるのか?」

「そうですね。Aランクの冒険者程の実力が必要らしいです。」
 アイリスはドワーフ達に洞窟の場所を教えてもらっていない。ドワーフ達が記入した書類を見て話している。

「ドワーフ達の秘密の場所らしいので、信頼出来る人だけに護衛依頼してるみたいです。依頼金は、小銀貨50枚とミスリルの武器か防具らしいです。」

「ぜひ行きましょう!」
 ユキが鼻息荒く話す。

 リールとユリカの武器と防具は、新人冒険と変わらない装備なのだ。鉄の剣と鉄の盾。弓矢もお手頃価格の低級の弓矢だ。

「少しは見た目で強そうな印象を与えなさい!Bランクならミスリル装備はぜひ欲しい!」
 ミスリルの装備は、小銀貨80枚もする高級品で上位冒険者でもほとんど持っていない。 リールの装備は、新人冒険者と変わらない最低ランクの装備だ。

「じゃあ、その依頼でも受けようかな。」
 リール達は、ドワーフ達の依頼を承諾した。



 翌日午前8時。

「よお!リールの兄ちゃん。今日はよろしくな!」
 ドワーフのゴードンとザードンが今回依頼者だ。身長150センチ程の茶髪で筋肉質な男で、ロンダール南東地区の職人街の鍛冶職人だ。

「よろしくお願いします。」
 ザンバードの3人は挨拶を済ませる。

「ここから北に300キロ程の場所にミスリルが取れる場所があるからよ。馬車を用意して移動で6日、採掘1日の7日の旅になる。」
 ゴードンは説明する。
 馬車が通れる場所を通って、安全に街で泊まって行くらしい。

「移動は任せてくれ。」
 リールは空の旅をする予定だ、

 ゴードンとザードンは首を傾げている。
 理解出来ていない2人を街の外へ連れていく。

 人気が無い場所まで5人は歩いていく。

「そろそろ良いかな。」
 リールはマジックバッグから、絨毯を床に広げる。ブラッドベアーの毛皮で出来た絨毯だ。5人が寝転んでも充分くつろげる広さがある。毛皮がふわふわで気持ちの良い絨毯だ。
 5人は絨毯に腰をおろす。

「行くよ。」
 リールは風魔法を使い絨毯を浮かばせる。

「「おおおお!」」
 ゴードンとザードンは絨毯にしがみつき、声をあげる。絨毯の毛をむしる程の力を込めている。

「あっちの方向で良いですか?」
 リールは地上100メートル程の高さで絨毯を飛ばし、北方向へ指をさす。


「ああ。あってるよ。」
 ゴードンが答えるとリールは、スピードを上げ飛ばしていく。

「風は来ないんだな。それにしても兄ちゃん!もっと早く言ってくれよ!これならあと4人は連れて来れたのに。」
 ゴードンは残念そうに話す。移動や仕事の関係で2人だけで来たのだ。馬車のレンタル代金も損をしてしまったが今はどうでもいい。

「また来れば良いじゃないですか。初めてなので旅行感覚でいきましょうよ。」
 リールは呑気に話す。ユリカとユキはマジックバッグから座って食べる高さのテーブルを出して、買ってきたフルーツジュースや肉とポテトを挟んだサンドイッチ、野菜を煮込んだスープが入った鍋を並べていく。

「ゴードンさんとザードンさんも食べましょうよ。朝ごはんまだなので買って来ましたから。」
 リール達はマジックバッグに食材や調味料、街で買った料理など大量に入っているのだ。

「うう。そうだな。」
 2人は外を見る。鳥の魔物が襲い掛かってくるが、風の魔法に触れると力無く落ちていく。麻痺毒がかけられた風魔法の障壁だ。地面には無惨に魔物の死体が肉片を撒き散らしている。


 リール達は、そのまま3時間ほど空の旅を続け、ようやく洞窟に到着した。



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