上 下
76 / 102
第2章 王都編 ②新たな出会い

犯罪奴隷 デルモンド1

しおりを挟む
 サンクに話を聞いた翌日、リール達4人は冒険者ギルドへ向かっていた。

 時刻午前10時。
 冒険者ギルドの中には、賭け勝負の場所以外は騒がしくない。
 朝依頼を受けた冒険者は、もう出ているのだ。

「すみません。デルモンドを捕まえたリールと言いますが、デルモンドと面会できますか?」
 リールはランク板を受付に見せながら話し掛ける。

「はい。リールさんですね。デルモンドは地下の犯罪奴隷商会に居ますが、会うのはオススメしません。」
 受付の女性は答える。
 リールがデルモンドに会いにくる事は、ミランダレ商会から伝わっていた。

「会えるなら会います。犯罪奴隷として売られていますよね?」

「そうですか。分かりました。こちらの道から地下に降りてください。その先にギルドが運営している奴隷商会があります。」
 受付の女性は、受付隣の道を指指しながら話す。

 リール達は、道を進んでいく。
 歩いて行くとテーブルの奥に、男性3人が見えた。男性の後ろには鉄の扉が見える

「あなたがリールさんですね?私はレンタルスと言います。ギルド職員で犯罪奴隷商人の代表をしています。よろしくお願いします。」
 物腰の柔らかい50歳ほどの男性が立ち上がり頭を下げる。

「こんにちは。リールと言います。デルモンドって居ますか?」
 リールも頭を下げ質問する。

「はい、居ますよ」
 レンタルスは、後ろの扉を指指しながら答える。

「それでは面会お願いしたいのですが、できますか?」

「もちろん大丈夫ですよ。それでは一緒にいきましょう。」
 後ろの扉を開け、歩いて行く。リール達も後を付いていく。

 中には、中央の道の両脇に牢屋があり、多くの囚人達が入っている。リールは見覚えのある人もあり、捕まえた犯罪者達の多くが、ここに収監されている。
 リールを見て叫ぶ囚人もいるが、牢屋には魔力減退と弱体化の魔法がかけられているため、囚人の力の10%ほどの力しか残っていない。

「こちらですね」
 レンタルスが牢屋の前で止まる。中には3人の男達が座っていた。違法奴隷商人の所にいた3人だ。死体の2人は埋葬されたらしい。

「久しぶりだな、デルモンド」
 リールは中にいる、一番大きな男に話し掛ける。以前よりも体は痩せており、筋力も落ちているだろう。

「お前はリール!何しにきた!」
 威勢良く叫ぶが、体が震えている。

「いやー、デルモンドに復讐されるのが怖くて怖くて、しょうが無いから見に来ただけだ。」
 リールは笑いながら答える。

「いやそれは、気の迷いと言いますか。」
 デルモンドはおどおどと下を向いて話ている。収監された当日は威勢良く復讐を叫んでいたが、時間と共にどうしようもない不安が襲ってくるのだ。
 それは洗脳魔法で、リールには逆らえ無いと思ってしまうような魔法が掛かっているのだ。強制ではなく反発出来るが、実力で負けた影響もあり、リールに逆らえなくなり、名前を聞いただけで、震えるほど精神的にやられていた。

「こんなに強い人をこんな目にあわせるなんて、リールさんは思ったよりも凄い人なんですね。」
 レンタルスは感心して見ている。デルモンドは看守やギルド職員には高圧的な態度をとっているのだ。リールの名前を出すとおとなしくなるのは、看守の間での常識となっている。

「それなりには強いだろうな。それよりもデルモンド!このまま牢屋で生きて行くか、それとも俺の奴隷として一緒に来るかどうする?」
 リールは洗脳魔法を解除し、デルモンドに聞く。

「俺は!お前を倒す!そうだ何で弱気になってたんだ!リールお前を倒すなら何だってやるぞ!」
 デルモンドは威勢良く立ち上がり叫ぶ。いまだに足は震えていた。

「俺は今街を造っていて、そこの護衛の人材を探している。お前ならそれなりには強いから、雇って見ようと思う。問題を起こせは、即殺すがそれでも良いか?」

「問題か。犯罪行為はもちろんしない。しかし!リールと闘う機会は欲しいがどうにかなるか?」
 デルモンドが聞いてくる。

「そうだな。条件を決めようか。」
 リールは考える。他の3人とも話し合う。
「まず金貨10枚で1回勝負。後は良い事を1000回したら1回勝負だな。」

「それは。今さら俺が何言っても無駄だな。よしわかった!俺が力を貸してやるぞ!」
 デルモンドが笑顔で答える。いまだに足は震えているが。

「それでデルモンドっていくらなんだ?」
 リールはレンタルスに聞く。

「はい。中金貨5枚です。」

「高過ぎない!」
 ユキが声を上げる。

「そうですね。それだけデルモンドは価値があります。これほどの戦力を自由に出来る権利は、誰だって欲しいですからね。最近ギルドの賭けで大きな損益を出してしまったので、その負債も上乗せされています。」
 レンタルスが笑顔で答える。リール達の賭けのせいで、冒険者ギルドに多大な損益を出してしまったのだ。まさかリールが勝つとは冒険者ギルドも思っていなかったため、オッズを高額にしてしまったのだ。その失態はオッズや賭けの管理人は、ゾロダロン商会の息が掛かっており、賄賂を受け取っていたため処分されている。

「そうか。中金貨5枚だって。自分で稼げるか?」
 リールはデルモンドに声をかける。

「仕事さえあれば大丈夫だ。」

「わかった。買おう。」
 リールはマジックバックからお金を取り出す。

「ありがとうございます。他に売れる見込みはあってもこんな高額ではとても買ってくれませんからね。リールさんなら余裕で払ってくれると思いましたよ。」
 レンタルスは笑いながらお金を受けとる。デルモンドは檻から出された。

「それでは奴隷の管理方法ですが、魔法は使えますよね?契約魔法で力を縛る事が出来るので、覚えておいてください。」
 レンタルスはデルモンドの契約魔法の所有者をリールへと変える。デルモンドの左手の甲に黒丸の模様が見える。黒丸に魔力を込めると力が調整出来るのだ。

「難しい契約はありませんので、力の調整だけはちゃんとしてくださいね。奴隷が犯罪行為をしたら所有者も責任がありますので。」

「分かりました。」
 リールはデルモンドの左手の甲に魔力を込める。力を100%使える様にした。

「ふふふ。はははは!これから自由だ!いやごめんなさい。」
 デルモンドは身体に力を込め叫ぶ。リールはすぐに洗脳魔法で、リールには逆らえない魔法を使う。
 普通なら洗脳出来ないが、デルモンドがリールに対して恐怖があるためすぐにかかってしまうのだ。

「よし!もう良いな」
 リール達は牢屋を後にしようとする。

「ちょっと待ってくれ!」
 中にいた男に声を掛けられる。

 スーツを来た男が話掛けてきた。ゾロダロン商会の幹部の男だった。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。 処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。 口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る… ※表紙はaiartで生成したものを使用しています。

処理中です...