冒険したくない冒険者〜生涯賃金を稼いだら冒険者辞めてもいいよね？〜

第2章 王都編 ②新たな出会い

王都での平凡な日常1

　時刻午後2時過ぎ。

　リール達4人は、昼食を済ませ街をぶらつく。
　いつもよりも、高級な昼食になった。

　ロンダール南東地区へ向かって歩く。
　歩いているうちに賑やかな音や声が聞こえてくる。


「それにしてもこんなに早く出来るとはね。」
　ユキがロンダール南東地区手前で言う。綺麗な木材にロンダール南東地区と書かれた看板が区切るように立て掛けられている。
　街の中は建物は無いが、土台が出来上がり、道が整備されている。奥の建物や道は全く手付かずだが、手前側は早急に造られている。

「そうだな。労働者が沢山いるからな。街からも働きたい人が来てるみたいだからな。」
　ミランダレ商会や大工職人達、浮浪者や奴隷だった人達、さらに街で仕事の無い人などが働きにきている。総勢1000人以上がロンダール南東地区で働いている。

「凄いけど統治している貴族の人は大丈夫なの？」

「さあ？サンクさんに任せてるから知らないぞ？」
　リールは何も聞いていない。
　王都は4つの貴族が、南西、南東、北西、北東の地区ごとに統治している。その上に王族が貴族達をまとめているのだ。

「こんなになるまで放置しているような人だから、ろくでもない人でしょうね。ゾロダロン商会にお金でも渡されて言いなりになるような貴族様でしょうね。」
　以前の状況を知っている人達は、良い印象を全く持っていない。建物は荒み、犯罪者達の溜まり場になっているからだ。4貴族の間でも問題にはなっていたが、ゾロダロン商会の税金のおかげで、収入が入っているため、誰も強く言えないのだ。
　ゾロダロン商会系列の店は全地区にあるが、なぜか南東地区に多くの税金が納められている。存在しない店の収益が、本店以上の税金を納める結果となっていた。

「サンクさんに任せてるから大丈夫だろう。貴族なんかと関わっても面倒な事になるからな。最悪・・・いや大丈夫だろう」
　リールは今後の成り行きを考える。

「そうね。普通の商人の相手だと思って来てみれば、下手な犯罪者よりも力を持った冒険者ですもの。接し方を間違えたら痛い目どころでは、済まされ無いでしょうね。」
　ユキは笑いながら話す。

「気にするほどの事でもないさ。理不尽な事が起きたら、その時はその時で頑張るさ。せっかく綺麗な街になりそうだからな。」
　リール達は大工達が奏でる音が響く街を歩く。
　リールの事を知っている人達は、手を上げて声を掛け挨拶している。リール達も軽く声を掛けながら歩いていく。

「そうね。変な事はしないようにね？貴族様なんかと関わってもろくな事は無いのよ？」

「大丈夫だろう。しょせんBランクの冒険者なんか気にもしないさ。いざとなったらケイン達に頑張ってもらうさ。SSランクなら貴族の知り合いくらいは欲しいだろさ。」
　リールは無責任に考える。

「そうね。お金はもう一生遊べるお金は手に入れたから良いけど、そうだ夢でもあるの？」

「夢か。のんびり安全に暮らせれば良いけどな。安全には強さが必要だからな。ユリカももっと強くなって安心したいからな。」
　リールの右腕に掴まり歩くユリカを見る。

「ん？絶対大丈夫とは言えないけど、ほとんどの事は大丈夫だと思うよ？リールが助けてくれるもん！」
　ユリカは笑顔で答える。

「そうだな。万が一の確率も減らしたいけどな。レベルを上げれるだけ上げておくのが目標だな。魔力封じの魔法を使われたりしたら大変だからな。」
　リールは魔法なしでもそれなりには能力はあるだろうが、魔族相手ではとても敵わない。

「ミウロ達の今後も楽しみの一つだからな。皆でどこかに旅にでも行けたら楽しいだろうな。」

「はい！せっかくなら世界を見てみたいです！」
　ミウロが笑顔で答える。

「ミウロだけでなく、シュナや他の子供達も強くなってもらいたいな。せめて犯罪者に負けない強さは、必要だからな。」

「そうですね。いつかは離ればなれになりますが、家族なので健康に過ごして欲しいです！」

「そうだな。やることはいろいろあるが、時間はいっぱいあるからな。のんびり過ごしていこうか。」
　リール達はのんびり歩いていく。


「こんにちは、リールさん。丁度相談がありまして、お時間よろしいですか？」
　早足でサンクが近づいてきた。

「こんにちは、サンクさん。時間は大丈夫ですよ。何かありましたか？」

「相談したい事が3つありまして。私だけでは判断が難しくて、リールさん達にぜひ意見を頂戴したいと思いまして。」

「分かりました。どこで話ますか？」

「それではこちらで」
　リール達はサンクの後を付いて歩いて行く。