上 下
49 / 102
第2章 王都編 ②新たな出会い

店長の思惑

しおりを挟む
 リール達が帰った後のゾロダロン商会の店内。

「ふぅ。凄いことになってきたな。」
 汗をかきながらサンクはつぶやく。

「お疲れのようだね。副店長サンクよ」
 店長のヨキムが話掛けてくる。

「お疲れ様です。ヨキムさん。どうかしましたか?」

「いや。ちょっとした噂なんだが、冒険者ギルドで大金を稼いだそうではないか。」

 サンクは冒険者ギルドでリールに賭けて、金貨7万枚を稼いでいる。
 金貨1枚=1000万円くらいの価値。



「そうですね。ありがたい事に」

「リールさんとはどんな人なんだ?」

「リールさんですか?そうですね、欲がないのに実行する力がある人ですね。自分や仲間の為に動く人だと思います。」
 サンクは悩みながら答える。


「なるほど。商売人には向かないだろうな。」


「いえ。やろうと思えばそれなり以上の結果は出せると思いますよ。貧困街を造り変えるみたいなんで。」

「貧困街を?」

「ええ、ゾロダロン商会が独占していた貧困街の権利書を持って先ほど話をしていきました。」

「もう意味がわからないな。なぜ貧困街の権利書がリールさんの手にあるんだ?」

「家が欲しいみたいで、土地があるから貧困街に建てるみたいですよ。明日は貧困街の家の建て替えと道の整備を始めます。」

「ん?責任者はサンクになったのか?」

「はい。雑用みたいなものですよ。」

「いやいや!貧困街が発展すれば王都の規模も上がるだろ!どんな店を建てるんだ?」
 ヨキムは声量を上げる。


「ミランダレ商会の仕事ではありませんよ。リールさんからの注文です。店はリールさん次第です。まだ詳しく分かりません。」
 サンクは淡々と話す。

「そうか。恐ろしいな、親しい内は良いが敵になったら勝てるのか?」

「無理ですね。敵になるタイプでも無いでしょう。その前に店でなく、個人に対してミランダレ商会が何かする必要ないですね。」

「だろうな。ゾロダロン商会と手を組む事はないのか?」

「絶対ないですね。」

「なぜだ?」

「リールさんの仲間の実家魔道具屋ココラーンにゾロダロン商会がギラン一味を使って潰そうとしたらしいです。」


「ギラン一味を!銀貨800枚の賞金首だぞ!大丈夫なのか!」


「ええ、もうギラン一味を潰したみたいです。なのでゾロダロン商会とリールさんが手を組むことは絶対にありません。」

「そうか。ギラン一味を。話を聞けば聞くほど意味がわからないな。」

「いや、リールさんは簡単ですよ」
 サンクは笑いながら話す。


「なぜだ?そんな人の事わかるのか?」
 ヨキムは不思議そうに聞く。


「俺の邪魔をするな。それだけですよ」

「そうだな。ゾロダロン商会は大変だな。」

「ええ、リールさんが言うには後2週間でゾロダロン商会は終わるそうですよ。」

「ハハハ!流石にそれは無理だろ!ミランダレ商会がどれだけゾロダロン商会を越せなかったと思っている!」
 ヨキムは笑っている。


「そうですね。だからこそ面白い挑戦ですよね?」

「確かにな。何で俺じゃないんだ!」

「ヨキムさんは、使われるタイプじゃないでしょう。だから店長として活躍してますから。」

「そうだな。欲を出して失敗するタイプだから無難に生活しているが悔しいな。それが俺の良さだと思うが。」

「そうですね。何かあったら助けてくださいね。」

「もちろんだ!任せろ。」

「「ハハハ」」

 2人は笑い出す。


「おい!2人して何してる!」
 ミランダが遠くから呼ぶ。

「サンク!出掛けるぞ!」

「分かりました。それではヨキムさん。行ってきます。」

「頑張ってこい。」

「はい」


 ミランダとサンクは店を出ていく。


「あの生活は俺には無理だな」

「店長~」
 女性店員が呼んでいる。


「ここだ!どうしたんだ?」
 ヨキムは仕事に戻っていく。

 店長ヨキムとほとんど店にいない副店長のサンクか働く店。ミランダレ商会本店。
 ヨキムのリーダーシップによりこの店は維持できているのだろう。

 副店長のいない日々が続く。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

【完結】言いたいことがあるなら言ってみろ、と言われたので遠慮なく言ってみた

杜野秋人
ファンタジー
社交シーズン最後の大晩餐会と舞踏会。そのさなか、第三王子が突然、婚約者である伯爵家令嬢に婚約破棄を突き付けた。 なんでも、伯爵家令嬢が婚約者の地位を笠に着て、第三王子の寵愛する子爵家令嬢を虐めていたというのだ。 婚約者は否定するも、他にも次々と証言や証人が出てきて黙り込み俯いてしまう。 勝ち誇った王子は、最後にこう宣言した。 「そなたにも言い分はあろう。私は寛大だから弁明の機会をくれてやる。言いたいことがあるなら言ってみろ」 その一言が、自らの破滅を呼ぶことになるなど、この時彼はまだ気付いていなかった⸺! ◆例によって設定ナシの即興作品です。なので主人公の伯爵家令嬢以外に固有名詞はありません。頭カラッポにしてゆるっとお楽しみ下さい。 婚約破棄ものですが恋愛はありません。もちろん元サヤもナシです。 ◆全6話、約15000字程度でサラッと読めます。1日1話ずつ更新。 ◆この物語はアルファポリスのほか、小説家になろうでも公開します。 ◆9/29、HOTランキング入り!お読み頂きありがとうございます! 10/1、HOTランキング最高6位、人気ランキング11位、ファンタジーランキング1位!24h.pt瞬間最大11万4000pt!いずれも自己ベスト!ありがとうございます!

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

捨てられた転生幼女は無自重無双する

紅 蓮也
ファンタジー
スクラルド王国の筆頭公爵家の次女として生を受けた三歳になるアイリス・フォン・アリステラは、次期当主である年の離れた兄以外の家族と兄がつけたアイリスの専属メイドとアイリスに拾われ恩義のある専属騎士以外の使用人から疎まれていた。 アイリスを疎ましく思っている者たちや一部の者以外は知らないがアイリスは転生者でもあった。 ある日、寝ているとアイリスの部屋に誰かが入ってきて、アイリスは連れ去られた。 アイリスは、肌寒さを感じ目を覚ますと近くにその場から去ろうとしている人の声が聞こえた。 去ろうとしている人物は父と母だった。 ここで声を出し、起きていることがバレると最悪、殺されてしまう可能性があるので、寝たふりをして二人が去るのを待っていたが、そのまま本当に寝てしまい二人が去った後に近づいて来た者に気づくことが出来ず、また何処かに連れていかれた。 朝になり起こしに来た専属メイドが、アイリスがいない事を当主に報告し、疎ましく思っていたくせに当主と夫人は騒ぎたて、当主はアイリスを探そうともせずに、その場でアイリスが誘拐された責任として、専属メイドと専属騎士にクビを言い渡した。 クビを言い渡された専属メイドと専属騎士は、何も言わず食堂を出て行き身支度をして、公爵家から出ていった。 しばらく歩いていると、次期当主であるカイルが後を追ってきて、カイルの腕にはいなくなったはずのアイリスが抱かれていた。 アイリスの無事に安心した二人は、カイルの話を聞き、三人は王城に向かった。 王城で、カイルから話を聞いた国王から広大なアイリス公爵家の領地の端にあり、昔の公爵家本邸があった場所の管理と魔の森の開拓をカイルは、国王から命られる。 アイリスは、公爵家の目がなくなったので、無自重でチートし続け管理と開拓を命じられた兄カイルに協力し、辺境の村々の発展や魔の森の開拓をしていった。 ※諸事情によりしばらく連載休止致します。 ※小説家になろう様、カクヨム様でも掲載しております。

【完結】処刑後転生した悪女は、狼男と山奥でスローライフを満喫するようです。〜皇帝陛下、今更愛に気づいてももう遅い〜

二位関りをん
恋愛
ナターシャは皇太子の妃だったが、数々の悪逆な行為が皇帝と皇太子にバレて火あぶりの刑となった。 処刑後、農民の娘に転生した彼女は山の中をさまよっていると、狼男のリークと出会う。 口数は少ないが親切なリークとのほのぼのスローライフを満喫するナターシャだったが、ナターシャへかつての皇太子で今は皇帝に即位したキムの魔の手が迫り来る… ※表紙はaiartで生成したものを使用しています。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

処理中です...