青紫なひとりごと

蒼村 咲

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物語って誰のもの?

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物語というのは、いったい誰のものなのだろうとふと考えた。

「著作権は書き手にあるのだから、もちろん書き手のものだ」
「いやいや、解釈は読む人に任せられるのだから、読み手のものだ」

そんなふうに考える人が多いかもしれない。
視点が違うだけでどちらの考え方も正しいと思う。

でもふと思ったのだ。

物語は、もしかしたら「物語によって救われる全ての人」のものではないかと。
そこに書き手と読み手の区別はない。そんな区別には意味がないし、必要ですらない。


世の中には、物語を読む人と読まない人がいる。

両者の違いはきっと、物語を必要としているかどうかだ。
物語を読むことに魅力を感じるのは、当人にとって物語が何らかの意味を持っているからなのだ。

ゆえに、物語の持つ力を必要としない人は、物語に魅力を感じない。
物語に魅力を感じない人は、物語を読みふけることはない。


それはきっと、書き手についても同じこと。

物語を綴ることで、何かから逃れられたのかもしれない。
何かから解放されたのかもしれない。

あるいは、物語を生み出したいという意志があったのかもしれない。
書き手の中で物語が、物語として生み出されるのを待ち続けていたのかもしれない。


物語は、それを必要とする人のためにある。

秋の雨に濡れた夜道を歩きながら、ふとそんなことを思った。
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