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第10話「敗者復活戦」
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- 第10話「敗者復活戦」 -
この漫才の大会には、準決勝敗退者のうち、1組だけが決勝に勝ち進む、敗者復活戦の制度があった。ここで勝ち進めば、決勝に進める。
「小栗、本当にあのネタでいくのか?」
僕はこくんとうなづいた。
「絶対大丈夫、これしかない」
「でも、ライブでのウケはまあまあだったぞ。これで復活……」
「できるよ!大丈夫だ」
僕には、一つ策があった。一か八かの賭けだが、これしかない。
「それにしても、風が強いな」
「ああ」
僕はニヤリとした。この風が追い風となる。
しばらくて、司会進行がマイクを持ってステージに上がった。
「さあ!始まりました!今年の敗者復活戦!この戦いを勝ち抜き、決勝に進出するのは、どのコンビなのか!敗者復活戦!開始!」
観客席から拍手が起きた。始まりが告げられた。
「トップバッターを飾るのは、コンビ結成8年目、
『東京ボーイズ』です!」
東京ボーイズが「どーもー」とステージに出て行った。それなりに名も売れた、我々の先輩だ。シュールなぼやきネタを得意とする。しかし、観客はすぐに違和感に気がついた筈だ。
「声が、通らない?」
毎年テレビ放送で敗者復活戦を見ていて感じ取っていたが、敗者復活戦はマイクがとにかくひどい。声が通らないのはもうわかっている。さらに今年も同じ型のマイク。ぼやきネタなど掻き消される。さらに、風の強いのもネタに影響した。ビュウウウ!!という風の音がする度に漫才は音が聞こえなくなり、決勝東京ボーイズはネタが全くウケないまま終わってしまった。
「思った通りだ」
続くカバーラバーズ、ばーばりあん、チョコーレトあんぱんと、ことごとく音が掻き消され、ウケないまま終わった。
「小栗、あのネタを選んだのまさか……」
「そのまさかだよ」
俺らの番がやってきた。
「どーもー!」
するとボケの牧田は「うおっしゃーー!!!」
と雄叫びをあげた。
「何してるんだよ!」
「これが俺の日常」
「サイコパスだよ!」
「今日は俺の日々をお客さんに叫んでやるぜ!
イエイ!」
僕らが選んだのは、いままでやっていたシュールなコント漫才の中にあった、「日常生活」
というネタだった。しかし、これをボケの牧田がハイテンションでやることにより、パワーアップした。前にライブでやった時のウケは良くなかったが、今の天候ならこのネタはウケる。
間違いない!
「朝ごはんは!!釘です!」
「歯が折れちゃうよ!」
「ミルクはかけない!」
「かけろよ!」
「牛乳はかける!」
「それがミルクじゃん!」
僕らのハイテンション漫才にどかんどかんと笑いが起きた。いい感じだ、いや、最高だ!その時、「ビュウウウヴヴヴ!」今日一番強い風が吹いた。まずい、これは僕らの声も搔き消すかもしれない」
「おい小栗!」
牧田がとっさにアドリブを入れた。
「どうした?」
「俺の人生に!追い風が吹いたぜ!」
観客はもう大爆笑だった。牧田、すごいぜ。
「もうええわ!」
こう言ってから大きな拍手が起きた。あとは、他のコンビのネタ次第だ。僕らがネタを終え、楽屋に戻ると、もう他の芸人のネタは見る気にならなかった。疲れ果てて、そのまま座り込んで終わるのを待っていた。
この漫才の大会には、準決勝敗退者のうち、1組だけが決勝に勝ち進む、敗者復活戦の制度があった。ここで勝ち進めば、決勝に進める。
「小栗、本当にあのネタでいくのか?」
僕はこくんとうなづいた。
「絶対大丈夫、これしかない」
「でも、ライブでのウケはまあまあだったぞ。これで復活……」
「できるよ!大丈夫だ」
僕には、一つ策があった。一か八かの賭けだが、これしかない。
「それにしても、風が強いな」
「ああ」
僕はニヤリとした。この風が追い風となる。
しばらくて、司会進行がマイクを持ってステージに上がった。
「さあ!始まりました!今年の敗者復活戦!この戦いを勝ち抜き、決勝に進出するのは、どのコンビなのか!敗者復活戦!開始!」
観客席から拍手が起きた。始まりが告げられた。
「トップバッターを飾るのは、コンビ結成8年目、
『東京ボーイズ』です!」
東京ボーイズが「どーもー」とステージに出て行った。それなりに名も売れた、我々の先輩だ。シュールなぼやきネタを得意とする。しかし、観客はすぐに違和感に気がついた筈だ。
「声が、通らない?」
毎年テレビ放送で敗者復活戦を見ていて感じ取っていたが、敗者復活戦はマイクがとにかくひどい。声が通らないのはもうわかっている。さらに今年も同じ型のマイク。ぼやきネタなど掻き消される。さらに、風の強いのもネタに影響した。ビュウウウ!!という風の音がする度に漫才は音が聞こえなくなり、決勝東京ボーイズはネタが全くウケないまま終わってしまった。
「思った通りだ」
続くカバーラバーズ、ばーばりあん、チョコーレトあんぱんと、ことごとく音が掻き消され、ウケないまま終わった。
「小栗、あのネタを選んだのまさか……」
「そのまさかだよ」
俺らの番がやってきた。
「どーもー!」
するとボケの牧田は「うおっしゃーー!!!」
と雄叫びをあげた。
「何してるんだよ!」
「これが俺の日常」
「サイコパスだよ!」
「今日は俺の日々をお客さんに叫んでやるぜ!
イエイ!」
僕らが選んだのは、いままでやっていたシュールなコント漫才の中にあった、「日常生活」
というネタだった。しかし、これをボケの牧田がハイテンションでやることにより、パワーアップした。前にライブでやった時のウケは良くなかったが、今の天候ならこのネタはウケる。
間違いない!
「朝ごはんは!!釘です!」
「歯が折れちゃうよ!」
「ミルクはかけない!」
「かけろよ!」
「牛乳はかける!」
「それがミルクじゃん!」
僕らのハイテンション漫才にどかんどかんと笑いが起きた。いい感じだ、いや、最高だ!その時、「ビュウウウヴヴヴ!」今日一番強い風が吹いた。まずい、これは僕らの声も搔き消すかもしれない」
「おい小栗!」
牧田がとっさにアドリブを入れた。
「どうした?」
「俺の人生に!追い風が吹いたぜ!」
観客はもう大爆笑だった。牧田、すごいぜ。
「もうええわ!」
こう言ってから大きな拍手が起きた。あとは、他のコンビのネタ次第だ。僕らがネタを終え、楽屋に戻ると、もう他の芸人のネタは見る気にならなかった。疲れ果てて、そのまま座り込んで終わるのを待っていた。
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