48 / 114
スズの指輪編
第46話 暗いダンジョンが似合わない男
しおりを挟む
アルカトラズ地下ダンジョンの入り口は、魔法陣だった。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?
琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
「ーー言うと思った」
兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
琉生斗は眉間にシワを寄せた。
魔法陣が光り、ダンジョンから出てきた集団がいる。袋を担いで、琉生斗達の横を無言で通り過ぎて行った。疲れているのか、かなり青い顔をしている。
「へぇ~!感動~!すごい力ね~」
町子の目が爛々と輝いた。
「ーーたしかにーー。威圧感が凄いね」
兵馬が顔をしかめた。
「ん?そうなの?」
琉生斗は不思議そうな顔をした。
「わからないの?」
「うん。よくわからん」
「でも、ルート君、魔導師や魔法剣士の強さはわかるでしょ~?」
「ん~?ーー深い所からなら、何か感じるけど」
「ーー最初は楽そうね~。兵馬君、東堂君は~?」
「通信ができないー。忙しいのかな」
兵馬はかなりの距離を、精神魔法でやり取りできるようになっていた。
「他の前衛か~。誰かいるかしら~」
「いよいよ、おれの出番か」
琉生斗はカッコつけてみた。
二人共相手にはしてくれなかったがーー。
「ーーあっ、ううん。いいってー。だからー!」
兵馬の口調がきつくなる。
「どうしたんだ?」
「誰かに、精神魔法で割り込まれたのね~」
「ハッキングされるみたいな?」
「そうそう~。かなり高度な魔法よ~。網を張らなきゃいけないし~」
いや、最初から兵馬に網を張っているのだろうーー、琉生斗はここに転移してくる人物が誰だかわかった。
兵馬が溜め息をついた。
キラッと光が走り、目の前にラルジュナが降り立つ。
「やっほー!ヒョウマお待たせー☆」
「帰っていいよ」
「冷たいー」
「前衛としてはどうなんだ?」
真顔で問う琉生斗に、町子が疲れた顔を見せる。
「ーールート君~。ラルジュナさんは竜殺しよ~」
「じゃあ、東堂より強くて、相方より弱いんだ」
「ルート、基準が間違ってるよー」
ラルジュナは楽しそうに笑った。
「アルカトラズに何の用なのー?」
兵馬がかいつまんで説明すると、ラルジュナは笑顔になった。
「いいねー。ピンクダイヤかー。色付きは地下50階ぐらいじゃないと難しいかなー。昔ね、地下66階でレッドダイヤがたくさん出て、アレクセイと分けたよー」
「ーーもしかして、5カラットのがあった?」
「あったよー。アダマス陛下にあげたけどー」
ムサイエフ・レッドダイヤかーー、あっちの名前が何でついたんだ?
琉生斗は尋ねた。
「それって、ムサイエフって名前?」
「うんー。陛下はそう呼んでたねー」
たまたまなのか、何かが連動するのかー?
「地下30階から行くー?人も少ないから楽だよー」
記憶魔法陣あるしー、とラルジュナが言うので、琉生斗は頷いた。
「僕はほんとに役に立たないから、待ってるよ」
と、逃げようとした兵馬をがっしりと掴み、ラルジュナは魔法陣を起動したーー。
ダンジョン内は灯りがともり、はっきりと見渡せるようになっていた。
「うわぁ!本格的なダンジョンだ!」
「あれー?魔物がいないねー」
いつもならすぐに襲ってくるんだけどー。
ラルジュナが辺りをみまわす。
「ルートがいると……」
兵馬がラルジュナの上着の裾を引っ張っる。それを琉生斗は殺意をもって見ていた。
「あっ、そうかー。ドラゴンはもっと深く潜らないといないよー、残念ー♡」
誰も楽しみにはしていないがーー。
「町子はドラゴン倒せるのか?」
「戦った事がないわ~」
「普通、会わないよねー」
昔、自分めがけて出て来たなぁーー、琉生斗は懐かしさに頷く。
「古代からあるダンジョン~!」
町子が嬉しそうにはしゃいだ。
「お宝はあるの?」
「この辺りは上級者なら来れるから、たいして残ってないかもねー」
「なら、もう少し地下にすればよかったんじゃ」
「次の魔法陣は、100階なんだー。間を記憶させるの忘れててねー」
「意外にうっかりさんなんだな」
相方と同じだ。類は友を呼ぶ、かーー。
「そうー、支えて貰うほうが好きなんだー♡」
ラルジュナは兵馬にくっついた。
琉生斗は頬を引きつらせる。
「そうだー、ルートー。旦那に行き先行ってないでしょー?」
ラルジュナが兵馬と手をつなぎながら話しかけてくる。
某食器用洗剤のCMかよ、と琉生斗は苦々しくそれを見ている。
「出かけるとは言ったよ」
「そうなのー?じゃあ、あいつが聞いてなかったのかなー?」
ラルジュナが目をくるくると動かした。
「ん?ラルジュナさん、相方といたの?」
「うん。おたくの王太子に頼まれた事があってねー、ついでにあいつの用事もすませたんだー」
「それは、お世話になりました。何の用事だったんだ?」
「それはねーー。秘密だよー☆」
明るく言われる。
なぜだか、背後に星が見えるような気がする。
暗いダンジョン内に、これだけふさわしくない人がこの世にいるとは。
「ーー言うと思った」
兵馬ーー。
おまえ、この人の何がいいんだ?
琉生斗は眉間にシワを寄せた。
76
お気に入りに追加
60
あなたにおすすめの小説
幽閉王子は最強皇子に包まれる
皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。
表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。
僕の番
結城れい
BL
白石湊(しらいし みなと)は、大学生のΩだ。αの番がいて同棲までしている。最近湊は、番である森颯真(もり そうま)の衣服を集めることがやめられない。気づかれないように少しずつ集めていくが――
※他サイトにも掲載
ある日、人気俳優の弟になりました。2
ユヅノキ ユキ
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。
平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
転移したらなぜかコワモテ騎士団長に俺だけ子供扱いされてる
塩チーズ
BL
平々凡々が似合うちょっと中性的で童顔なだけの成人男性。転移して拾ってもらった家の息子がコワモテ騎士団長だった!
特に何も無く平凡な日常を過ごすが、騎士団長の妙な噂を耳にしてある悩みが出来てしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる