15 / 154
列車は走るよ。何乗せて?編
第14話 列車は走るよ。何乗せて? 5
しおりを挟む
バッカイア帝国の国民の歓迎を受けながら、琉生斗達は魔導列車を降りた。異国のきつい香りに琉生斗はくすぐったいものを感じる。
「なんか、ニオイがきつくね?」
アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。
「バッカイア帝国は香油や香水が盛んな国だ」
「はー」
たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。
おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。
娯楽の国、バッカイア帝国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。
この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」
トルイストが呆れたように言う。
「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」
東堂は鼻の下を伸ばす。
「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」
トルイストの言葉にファウラも頷いた。
「あー、そうなんすねー」
こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。
まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。
アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。
「あれ、いつまで続くと思います?」
東堂はトルイストに尋ねた。
「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」
生真面目にトルイストが答える。
この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。
「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」
ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。
「それぐらい、清らかなのでしょうね」
おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。
「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
声を顰める。
「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」
「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」
「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」
頭をかいた後、東堂はにやりとした。
「じゃあどうすんです?」
東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。
「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」
あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。
「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」
トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。
「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」
そのときはぜひ教えてくれーー。
琉生斗はひまわり畑の中にいた。
広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。
「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」
「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」
琉生斗は笑った。
「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」
何気なく呟く。
アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。
「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」
こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。
『加賀にスカート履かせてみないか?』
中一のときのクラスメイトが言った。
『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』
ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。
無知なウジ虫達め。
絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。
当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。
「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」
何がいいかなー。
「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」
食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。
「それどころではなかったからなー」
自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。
「ルート……」
静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」
「何か悩みがあるのか?」
琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。
あっーー!
「なんか、ニオイがきつくね?」
アレクセイに小声で聞くと、そうだな、と返事が返ってきた。
「バッカイア帝国は香油や香水が盛んな国だ」
「はー」
たしかに、ラルジュナも香水くさい。だが、ここでは普通のこと。
おれの鼻がロードリンゲンに染まってんだろうなーー、と琉生斗は思う。
娯楽の国、バッカイア帝国が誇る大型遊具施設バスラパーク。ロードリンゲンとは規模が違い、複合遊具の大きさや数、アスレチック、ボルダリングの充実、何よりも客のテンションが高い。
この時期ならではの水の遊具や、きらびやかな水着の女性に、東堂は興奮して鼻血を出した。
「生きててよかったー」
「おまえは破廉恥な奴だな」
トルイストが呆れたように言う。
「え!?師団長、興奮しませんか!」
「何をだ?」
「ほら、セクシーな水着のお姉さまがいっぱいですよー」
東堂は鼻の下を伸ばす。
「自分の女でもないのに、じろじろ見ては失礼だろう」
トルイストの言葉にファウラも頷いた。
「あー、そうなんすねー」
こういう国民性なんだなー、さすがは聖女の国だ、と東堂は深く感銘を受けた。
まあ、あそこに水着の美女の視線をすべて集めるイケメンがいるけど、本人興味のきょの字も無さそうだよなーー。
アレクセイは琉生斗の為にアイスを買い、琉生斗は嬉しそうにそれを食べていた。アレクセイに食べさせたりして、ちょっとは我慢できないのかあのバカップルは、と魔法騎士達は含み笑いがとまらない。
「あれ、いつまで続くと思います?」
東堂はトルイストに尋ねた。
「知らん、というかわからないな。殿下のそういう噂は一度も聞いたことがないので、判断ができない」
生真面目にトルイストが答える。
この人とも親しくなったよなー、と東堂は思う。こんなくだけた話をする間柄じゃなかったのにーー。
「臣籍降下するなら是非教皇にと、神殿から打診があったそうです」
ファウラが話す。内情に詳しいのは、王妃ラズベリーから聞いたのかもしれない。
「それぐらい、清らかなのでしょうね」
おまえ違うのかよ、と東堂は意外そうな目でファウラを見た。美花は女性達と遊具で遊んでいる、これはチャンスだ。
「えっ。大隊長は色々ありましたか?」
声を顰める。
「それなりにです」
「どっかの令嬢とかですかー?」
「トードォ、そんな訳ないだろ。令嬢なんかに手を出したら、即結婚させられるに決まっている」
「そうですね。難しいんですよ。お付き合いする人って。父にバレたら、邪魔されますしね」
「はー、高貴な人は大変だ。下々は気楽でいいっすね」
頭をかいた後、東堂はにやりとした。
「じゃあどうすんです?」
東堂の疑問に、公爵家と侯爵家のご令息は目を見合わせた。
「ーー妓館だな。自国ではなく、それも最高クラスのな」
「口が堅い、病気もない、そこですね」
「付き合うなら婚約させられるからなー」
「極端なんですよね」
あぁ、やっぱりそうなんだな。向こうでも、偉い奴ほど夜の街に行くもんな、と東堂は納得した。
「じゃあ、きっと殿下も妓館でサクッとしてたんですねー」
トルイストとファウラが口を噤んだ。何とも判断のできない顔だ。
「我々には何ともーー」
「おまえ、聞いてみたらどうだ?」
二人が疑問を東堂へぶん投げた。
「機会があったら聞いてみます」
そのときはぜひ教えてくれーー。
琉生斗はひまわり畑の中にいた。
広大な土地に、見渡す限りのひまわりだ。
「ルートは花が好きだな」
「そうかもなー。ばあちゃんがよく、胡蝶蘭とかデンファレとか鉢植えもらうんだけど、世話すんのおれだった」
「ーー花はどうした?」
「近所の人で、欲しい人にあげた。万年筆とか、皿や、服や家具なんかは、学校のバザーに持って行ったら、すげぇー勢いでなくなったよ」
琉生斗は笑った。
「ーーひとつぐらい、身に付けてたらよかったな」
何気なく呟く。
アレクセイが後ろから琉生斗を抱きしめた。
「もう、いい加減痛いカップルだと言われてんぞ」
「言われてもいい。きみとずっとこうしてたい」
「そう?」
こいつもたいがい変わってんなー、おれの何がいいんだーー。
『加賀にスカート履かせてみないか?』
中一のときのクラスメイトが言った。
『おお!協力するぜ!履かせて犯してみる?』
『やりたい!』
ゲラゲラ笑う彼らは、犯す、という言葉が、相手にどれほどの恐怖を与えるか、知らないのだろう。
無知なウジ虫達め。
絡んできたクラスメイトを、全員病院送りにして停学になった。
当時は、あの親父の子供だし仕方がない、と言われていた。暴力を受けて育つと切れやすくなるらしく、その後は切れないように努力した。
自分は自分が思う、理想の自分になってきているのだろうかー。
夜の公園でうずくまるあいつは、どこへいったのだろうーー。
「ルート、ベンチに座ろう。何か食べたいものはないか?」
「あぁ」
何がいいかなー。
「香水とか盛んだと、味が濃そうだ」
「そうだなー、香辛料がよくきいているな」
「アレクは好き嫌いないなー」
食べれないのは可哀想だけどーー。琉生斗の言葉に、アレクセイは薄く笑った。
「それどころではなかったからなー」
自分の事を話すなんて珍しいな、と琉生斗は目を丸くした。
「ルート……」
静かに見つめられて、琉生斗の胸は早鐘を打つ。
「な、なんだよー」
「何か悩みがあるのか?」
琉生斗はアレクセイの目をじっと見つめた。何か、自分はおかしかったのだろうか、彼が不安気に見つめるほどにー。
あっーー!
89
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。
夜のトラフグ
BL
シエル・クラウザーはとある事情から、大貴族の主催するパーティーに出席していた。とはいえ歴史ある貴族や有名な豪商ばかりのパーティーは、ただの平民にすぎないシエルにとって居心地が悪い。
しかしそんなとき、ふいに視界に見覚えのある顔が見えた。
(……あれは……アステオ公子?)
シエルが通う学園の、鼻持ちならないクラスメイト。普段はシエルが学園で数少ない平民であることを馬鹿にしてくるやつだが、何だか今日は様子がおかしい。
(………具合が、悪いのか?)
見かねて手を貸したシエル。すると翌日から、その大貴族がなにかと付きまとってくるようになってーー。
魔法の得意な平民×ツンデレ貴族
※同名義でムーンライトノベルズ様でも後追い更新をしています。
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
婚約破棄からが本番です
アケチカ
BL
「リディアス! 貴様との婚約は破棄させてもらう!」
お決まりの断罪劇に、リディアスはようやくここまで来たかと物思いにふける。あと少し頑張れば物語から解放されるはずだと。
ちょっぴり前世の記憶を持ったまま、リディアスとして乙女ゲームの悪役令嬢(悪役令息)として転生してしまった。ゲームのシナリオを踏まえつつ、断罪後の未来に向けて奮闘するのだが……君、攻略対象でしょうが。なんで僕の方に来るのさ。
アルフレッド(攻)リディアス(受)
ヒロインがでしゃばる回があります。BLに女は要らん!という方はご注意を。
一応R18にしてますが、保険です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる