3 / 154
海水浴に行きましょう。編
第2話 海水浴に行きましょう。2
しおりを挟む
「ひどいー」
掠れた声で抗議をした。アレクセイは溜め息をついた。
「どっちが?」
え?まさかおれなのかーー。
「嫌なら嫌って言えばいいじゃん!」
「海なら行ったはずだがー」
アレクセイは憮然としたまま、妻を抱き寄せた。
「おまえ、ちっとも泳がせてくんなかったじゃんか!海見ながら一日セックスしてただけだろ!」
「とてもよかった」
アレクセイは楽しそうに思い返す目をした。
「川に行っても同じだしーー。ばかたれっ!おれは健全に泳ぎたいんだよ!」
「だからといってセージと行くとはなー」
「なんだよー。一緒に行きたいなら行きたいって、言えばいいのにさーー」
琉生斗はぶつぶつ言いながら、アレクセイにキスをねだった。
「無言はねえだろー?愛している、ぐらい言えよ」
「あぁ」
アレクセイは耳にキスをしながら、「愛している、ルート」と囁いた。琉生斗は、うんうんそうそう、と頷く。
「愛し合おう、ルート」
琉生斗は笑顔のまま固まった。
「ーー終わったよな……」
「準備運動はな」
「もう、無理だってーー。足もあがんないってー」
「そのままでいい」
頬を撫でる手が熱い。
「本日は製造終了だ!」
アレクセイは笑った。
「後ろだけでいけるだろ?」
甘くねっとりとするような声で囁かれ、琉生斗は気を失いかけた。
「おまえなんか知るか!ばーかばーか、ばーかぁ!」
ーー日差しが眩しい。
まるでオレを祝福しているようだ。
王族専用の食堂室で、セージはごきげんな顔で朝食を食していた。
「まぁ、セージ。とても楽しそうね」
ラズベリーがにこにこと紅茶を口につける。
「そうだ、親父。ビーチ貸してよ。海に行きたいんだ」
セージが言うと、アダマスは頷いた。
「いいぞ。楽しむといい。いつなのだ?」
あら、わたくしとは行かないのね、とラズベリーががっかりする。
「もう、親と行く歳じゃねえよ」
「そうは言っても、危険は多いですから。ご学友と行くにせよ、近衛兵を連れて行きなさい」
「ヒョロ兄貴はうるせえなー」
セージはぶーたれた。
いや、トードォがいるのなら、近衛兵などいらないだろうーー。あんなのいたら鬱陶しくてしょうがないー。
急に、廊下が騒がしくなった。
「なんだ、うるさい」
アダマスがパボンに言うと、近衛兵長は頷いて出て行く。
が、慌てて引き返してきた。
「へ、陛下!」
パボンほどの男が、取り乱して駆け込んでくる。
「な、どうしたパボンー」
「アレクセイ殿下がー!」
「アレクセイがどうした?」
「剣を抜いております!」
!
「な、な、なー」
言葉が出ない。
何があったのだ。
クリステイルは目を見開きながら、セージを見た。
弟が青ざめている。
「セージーー」
クリステイルは頭を押さえた。
バン!
扉は塵も残らないほど、きれいに消し飛んだ。
「セージーー」
恐ろしいほど美しく、その美しさ故に身が震えるほどに怖い、長兄アレクセイの降臨である。
衣服も騎士の正装服だ。
「あ、あ、アレクセイ殿下!」
ラズベリーが腰を優雅に抜かした。ミントも仰天してカップを落とす。
「兄上!ここでは剣をお仕舞い下さい」
なんとかクリステイルがアレクセイをとめる。国王の御前、いくらなんでも抜き身はまずい。
「大義名分があれば問題はない」
「え?」
「セージ、決闘を申し込む」
アレクセイが白手袋を外し、セージの目の前に落とした。
!
「何を言っているんだ!おまえとセージで、決闘になるわけがないだろう!」
大人げない、と言う父親の言葉に、セージの顔は引きつった。
「そうですよ!兄上、落ち着いて下さい!セージ、兄上に何をしたんだ!」
クリステイルに詰め寄られ、セージはそっぽ向く。
「兄ちゃんには、何もしてねえよ」
「じゃあ、何だ!」
セージは不貞腐れた顔のまま、ぼそりと言う。
「海に、ルートを誘ったんだけどーー」
あほたれ!!!
クリステイルは頭を抱えた。ラズベリーも項垂れる。
「何をしとるんだ!セージ!」
アダマスは激高した。
「いいじゃんか!ヒョウマとトードォを連れて行けば、ただの楽しい海水浴じゃんー」
「人妻を誘うとはなー」
「兄上、構えないで下さいー。セージ、聖女様はご結婚なされ、れっきとしたアレクセイ妃殿下です。二度と軽率な真似はしないようにー」
「えー、ルートが行きたいなら、行かしてあげればいいじゃん。ケチな旦那ー」
黙れーー、クリステイルは泣きそうになる。兄の顔を見ると、もう攻撃しそうな顔だ。
パボンや近衛兵達も、腰を抜かしたまま役にたちそうもないー。
もう、終わった。自分の人生もここまでかーー。
掠れた声で抗議をした。アレクセイは溜め息をついた。
「どっちが?」
え?まさかおれなのかーー。
「嫌なら嫌って言えばいいじゃん!」
「海なら行ったはずだがー」
アレクセイは憮然としたまま、妻を抱き寄せた。
「おまえ、ちっとも泳がせてくんなかったじゃんか!海見ながら一日セックスしてただけだろ!」
「とてもよかった」
アレクセイは楽しそうに思い返す目をした。
「川に行っても同じだしーー。ばかたれっ!おれは健全に泳ぎたいんだよ!」
「だからといってセージと行くとはなー」
「なんだよー。一緒に行きたいなら行きたいって、言えばいいのにさーー」
琉生斗はぶつぶつ言いながら、アレクセイにキスをねだった。
「無言はねえだろー?愛している、ぐらい言えよ」
「あぁ」
アレクセイは耳にキスをしながら、「愛している、ルート」と囁いた。琉生斗は、うんうんそうそう、と頷く。
「愛し合おう、ルート」
琉生斗は笑顔のまま固まった。
「ーー終わったよな……」
「準備運動はな」
「もう、無理だってーー。足もあがんないってー」
「そのままでいい」
頬を撫でる手が熱い。
「本日は製造終了だ!」
アレクセイは笑った。
「後ろだけでいけるだろ?」
甘くねっとりとするような声で囁かれ、琉生斗は気を失いかけた。
「おまえなんか知るか!ばーかばーか、ばーかぁ!」
ーー日差しが眩しい。
まるでオレを祝福しているようだ。
王族専用の食堂室で、セージはごきげんな顔で朝食を食していた。
「まぁ、セージ。とても楽しそうね」
ラズベリーがにこにこと紅茶を口につける。
「そうだ、親父。ビーチ貸してよ。海に行きたいんだ」
セージが言うと、アダマスは頷いた。
「いいぞ。楽しむといい。いつなのだ?」
あら、わたくしとは行かないのね、とラズベリーががっかりする。
「もう、親と行く歳じゃねえよ」
「そうは言っても、危険は多いですから。ご学友と行くにせよ、近衛兵を連れて行きなさい」
「ヒョロ兄貴はうるせえなー」
セージはぶーたれた。
いや、トードォがいるのなら、近衛兵などいらないだろうーー。あんなのいたら鬱陶しくてしょうがないー。
急に、廊下が騒がしくなった。
「なんだ、うるさい」
アダマスがパボンに言うと、近衛兵長は頷いて出て行く。
が、慌てて引き返してきた。
「へ、陛下!」
パボンほどの男が、取り乱して駆け込んでくる。
「な、どうしたパボンー」
「アレクセイ殿下がー!」
「アレクセイがどうした?」
「剣を抜いております!」
!
「な、な、なー」
言葉が出ない。
何があったのだ。
クリステイルは目を見開きながら、セージを見た。
弟が青ざめている。
「セージーー」
クリステイルは頭を押さえた。
バン!
扉は塵も残らないほど、きれいに消し飛んだ。
「セージーー」
恐ろしいほど美しく、その美しさ故に身が震えるほどに怖い、長兄アレクセイの降臨である。
衣服も騎士の正装服だ。
「あ、あ、アレクセイ殿下!」
ラズベリーが腰を優雅に抜かした。ミントも仰天してカップを落とす。
「兄上!ここでは剣をお仕舞い下さい」
なんとかクリステイルがアレクセイをとめる。国王の御前、いくらなんでも抜き身はまずい。
「大義名分があれば問題はない」
「え?」
「セージ、決闘を申し込む」
アレクセイが白手袋を外し、セージの目の前に落とした。
!
「何を言っているんだ!おまえとセージで、決闘になるわけがないだろう!」
大人げない、と言う父親の言葉に、セージの顔は引きつった。
「そうですよ!兄上、落ち着いて下さい!セージ、兄上に何をしたんだ!」
クリステイルに詰め寄られ、セージはそっぽ向く。
「兄ちゃんには、何もしてねえよ」
「じゃあ、何だ!」
セージは不貞腐れた顔のまま、ぼそりと言う。
「海に、ルートを誘ったんだけどーー」
あほたれ!!!
クリステイルは頭を抱えた。ラズベリーも項垂れる。
「何をしとるんだ!セージ!」
アダマスは激高した。
「いいじゃんか!ヒョウマとトードォを連れて行けば、ただの楽しい海水浴じゃんー」
「人妻を誘うとはなー」
「兄上、構えないで下さいー。セージ、聖女様はご結婚なされ、れっきとしたアレクセイ妃殿下です。二度と軽率な真似はしないようにー」
「えー、ルートが行きたいなら、行かしてあげればいいじゃん。ケチな旦那ー」
黙れーー、クリステイルは泣きそうになる。兄の顔を見ると、もう攻撃しそうな顔だ。
パボンや近衛兵達も、腰を抜かしたまま役にたちそうもないー。
もう、終わった。自分の人生もここまでかーー。
133
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ツンデレ貴族さま、俺はただの平民です。
夜のトラフグ
BL
シエル・クラウザーはとある事情から、大貴族の主催するパーティーに出席していた。とはいえ歴史ある貴族や有名な豪商ばかりのパーティーは、ただの平民にすぎないシエルにとって居心地が悪い。
しかしそんなとき、ふいに視界に見覚えのある顔が見えた。
(……あれは……アステオ公子?)
シエルが通う学園の、鼻持ちならないクラスメイト。普段はシエルが学園で数少ない平民であることを馬鹿にしてくるやつだが、何だか今日は様子がおかしい。
(………具合が、悪いのか?)
見かねて手を貸したシエル。すると翌日から、その大貴族がなにかと付きまとってくるようになってーー。
魔法の得意な平民×ツンデレ貴族
※同名義でムーンライトノベルズ様でも後追い更新をしています。
楽な片恋
藍川 東
BL
蓮見早良(はすみ さわら)は恋をしていた。
ひとつ下の幼馴染、片桐優一朗(かたぎり ゆういちろう)に。
それは一方的で、実ることを望んでいないがゆえに、『楽な片恋』のはずだった……
早良と優一朗は、母親同士が親友ということもあり、幼馴染として育った。
ひとつ年上ということは、高校生までならばアドバンテージになる。
平々凡々な自分でも、年上の幼馴染、ということですべてに優秀な優一朗に対して兄貴ぶった優しさで接することができる。
高校三年生になった早良は、今年が最後になる『年上の幼馴染』としての立ち位置をかみしめて、その後は手の届かない存在になるであろう優一朗を、遠くから片恋していくつもりだった。
優一朗のひとことさえなければ…………
平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです
おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの)
BDSM要素はほぼ無し。
甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。
順次スケベパートも追加していきます
笑わない風紀委員長
馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。
が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。
そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め──
※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。
※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。
※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。
※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる