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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)
第70話 亡霊城攻略 6 ー聖女は忍びになるー
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「今回、魔法騎士団の演習が、亡霊城の亡霊退治と聞きましたがー」
髪の毛を整えながら、ミハエルは尋ねた。
「あ、そうみたい。よくわからんけど」
もうちょい後ろ短くしたい、駄目です、というやり取りの後、若い司祭カロリンが掃除に入ってくる。
「なら、神官の派遣要請が来るでしょうなー」
「ん?なんで?」
「亡霊は人を呪うことができます」
ほぇー、と琉生斗は言った。
「その呪いを解除できるのが神官だからです」
「そうなんだ、カロリンもできるのか?」
髪の毛を凝った木箱に収め、片付けながらカロリンが答える。
「未熟な身ではありますが、腐食化を戻したりはできますよ」
腐食化って、ゾンビかーー。なかなか大変そうだな。
「おれは神殿預かりか?」
また、修行の日々かー。人妻になっても変わらない毎日だな。
「いえ、神官がかなり同行しますから、それではこちらの警備が手薄になりますー」
ミハエルの言葉に、琉生斗は目を見張った。
「まさか陛下のとこか!絶対嫌だぞ!」
「わかっております。陛下など、もしものときにあなたを守らないでしょー」
ひどい言われようだがその通りだ、と琉生斗も頷いた。
「たしか、この辺りにーー」
ミハエルは本棚から、一枚の紙を抜いた。
「これですな」
琉生斗の前に紙を広げる。
「何?迷路?」
「そうです。亡霊城の地下迷宮です」
「はあー」
だから何なのだろう。琉生斗は首を傾げる。
「ここに、光る錫杖が刺さっているそうです」
ミハエルは複雑な迷路の真ん中に指を置いた。
「ん?」
光る錫杖?
「刺さっている?」
「ええ、大昔の教皇がここを訪れたときに取られたらしいのです。ですが、亡霊にとっては天敵のような物なので、亡霊王が地下に封印したようなのです」
琉生斗は目を細めた。
「いつかは取り戻したいと言われていたそうなのですがーー。教皇か聖女様にしか抜けないらしいのです」
まじの話なのか、それはーー。そのときに取り返せばよかっただけなのでは?
「何?おれにじいちゃんの武器を取ってこいって?」
「さすが!聖女様、話が早い!」
おだてられる。
「自分で行けよ」
琉生斗は行儀悪く姿勢をくずした。
「最近腰が痛いのですよー。前の機会には、教皇を誰がなるかで揉めてそれどころじゃなかったし。その前は私、教皇じゃなかったですから知らなかったしー」
ミハエルは腰を叩いた。
「本当は誰にでも抜けるんじゃないのか?」
「無理ですな」
神宝ですからよほどの位ではないと、とミハエルは偉そうに言った。
「ふーん、アレクが何て言うかなー」
「もちろん、私がわからないように、目眩ましの聖魔法をおかけいたします」
「え?言わねーの?」
「聖女様が行くと演習の邪魔になりますからー」
ミハエルの言葉に琉生斗は頷いた。
「それもそうだな。亡霊と戦闘になる?」
琉生斗の質問に、ミハエルは苦笑した。
まだまだ、自分をわかっていませんねーー。
「聖女様には寄ってきません。自分から向かっていく場合は別ですがー」
おれだと亡霊を追いかける側になるのかー、琉生斗は目を丸くした。
「呪いをかけてくる事ができる亡霊は、ある程度進まないと出てきませんので、少なくなった頃に入り、錫杖を手にし、神官の転移で戻ります」
完璧な計画ー、とミハエルが手を叩く。
「アレク、一日一回はおれに会いに来るけど」
そこもどうごまかすのか。
「時空竜の間に籠もっている事にしましょう。女神様の呼び出しは、スズ様にもありましたから」
オッケー、抜かりはないわけだなーー。
「いいぜ、じいちゃんの為に取ってきてやんよーー」
琉生斗は地図を確認しながら進む。
「あれ?入口に戻っちまった」
よく地図を見るとスタートから縦に行って曲がって帰ってくる。横に抜ける道がない。
「隠し通路かー」
琉生斗は壁を叩きながら進む。音が軽い部分に気付いた。周辺をよく探すと、床に小さな出っ張りがある。それを押すと、壁が動いた。
「よし!うわ、カビくせー」
古い埃とカビの臭いが、むわっと広がる。
「じいちゃん、これが嫌だったんじゃねえのか」
進みながら、くしゃみをひとつ。
「もうー」
おれも大丈夫かなーー、とぶつぶつ言いながら琉生斗は進んでいく。地図をよく確認し、注意深く辺りを見回す。
ん?
何か視線を感じるなーー、嫌な感じではないがーー。琉生斗は壁をよく見た。
触れると壁はなく、琉生斗は倒れ込むように転んだ。そのまま、ドンッ、と階段を転がり落ちる。
「いてぇー!」
ガシャッ!カーーン!カラカラカラーー………。
ランタンがさらに落ちていく。
「お、ヤバい!」
掴もうとしたが、ランタンはそのまま通路を転がっていった。琉生斗のまわりが真っ暗になる。
「あちゃー」
ランタンを目印にゆっくりと進んだ。
追いつき、拾う。
『あなた、誰?』
琉生斗は飛び跳ねた。
髪の毛を整えながら、ミハエルは尋ねた。
「あ、そうみたい。よくわからんけど」
もうちょい後ろ短くしたい、駄目です、というやり取りの後、若い司祭カロリンが掃除に入ってくる。
「なら、神官の派遣要請が来るでしょうなー」
「ん?なんで?」
「亡霊は人を呪うことができます」
ほぇー、と琉生斗は言った。
「その呪いを解除できるのが神官だからです」
「そうなんだ、カロリンもできるのか?」
髪の毛を凝った木箱に収め、片付けながらカロリンが答える。
「未熟な身ではありますが、腐食化を戻したりはできますよ」
腐食化って、ゾンビかーー。なかなか大変そうだな。
「おれは神殿預かりか?」
また、修行の日々かー。人妻になっても変わらない毎日だな。
「いえ、神官がかなり同行しますから、それではこちらの警備が手薄になりますー」
ミハエルの言葉に、琉生斗は目を見張った。
「まさか陛下のとこか!絶対嫌だぞ!」
「わかっております。陛下など、もしものときにあなたを守らないでしょー」
ひどい言われようだがその通りだ、と琉生斗も頷いた。
「たしか、この辺りにーー」
ミハエルは本棚から、一枚の紙を抜いた。
「これですな」
琉生斗の前に紙を広げる。
「何?迷路?」
「そうです。亡霊城の地下迷宮です」
「はあー」
だから何なのだろう。琉生斗は首を傾げる。
「ここに、光る錫杖が刺さっているそうです」
ミハエルは複雑な迷路の真ん中に指を置いた。
「ん?」
光る錫杖?
「刺さっている?」
「ええ、大昔の教皇がここを訪れたときに取られたらしいのです。ですが、亡霊にとっては天敵のような物なので、亡霊王が地下に封印したようなのです」
琉生斗は目を細めた。
「いつかは取り戻したいと言われていたそうなのですがーー。教皇か聖女様にしか抜けないらしいのです」
まじの話なのか、それはーー。そのときに取り返せばよかっただけなのでは?
「何?おれにじいちゃんの武器を取ってこいって?」
「さすが!聖女様、話が早い!」
おだてられる。
「自分で行けよ」
琉生斗は行儀悪く姿勢をくずした。
「最近腰が痛いのですよー。前の機会には、教皇を誰がなるかで揉めてそれどころじゃなかったし。その前は私、教皇じゃなかったですから知らなかったしー」
ミハエルは腰を叩いた。
「本当は誰にでも抜けるんじゃないのか?」
「無理ですな」
神宝ですからよほどの位ではないと、とミハエルは偉そうに言った。
「ふーん、アレクが何て言うかなー」
「もちろん、私がわからないように、目眩ましの聖魔法をおかけいたします」
「え?言わねーの?」
「聖女様が行くと演習の邪魔になりますからー」
ミハエルの言葉に琉生斗は頷いた。
「それもそうだな。亡霊と戦闘になる?」
琉生斗の質問に、ミハエルは苦笑した。
まだまだ、自分をわかっていませんねーー。
「聖女様には寄ってきません。自分から向かっていく場合は別ですがー」
おれだと亡霊を追いかける側になるのかー、琉生斗は目を丸くした。
「呪いをかけてくる事ができる亡霊は、ある程度進まないと出てきませんので、少なくなった頃に入り、錫杖を手にし、神官の転移で戻ります」
完璧な計画ー、とミハエルが手を叩く。
「アレク、一日一回はおれに会いに来るけど」
そこもどうごまかすのか。
「時空竜の間に籠もっている事にしましょう。女神様の呼び出しは、スズ様にもありましたから」
オッケー、抜かりはないわけだなーー。
「いいぜ、じいちゃんの為に取ってきてやんよーー」
琉生斗は地図を確認しながら進む。
「あれ?入口に戻っちまった」
よく地図を見るとスタートから縦に行って曲がって帰ってくる。横に抜ける道がない。
「隠し通路かー」
琉生斗は壁を叩きながら進む。音が軽い部分に気付いた。周辺をよく探すと、床に小さな出っ張りがある。それを押すと、壁が動いた。
「よし!うわ、カビくせー」
古い埃とカビの臭いが、むわっと広がる。
「じいちゃん、これが嫌だったんじゃねえのか」
進みながら、くしゃみをひとつ。
「もうー」
おれも大丈夫かなーー、とぶつぶつ言いながら琉生斗は進んでいく。地図をよく確認し、注意深く辺りを見回す。
ん?
何か視線を感じるなーー、嫌な感じではないがーー。琉生斗は壁をよく見た。
触れると壁はなく、琉生斗は倒れ込むように転んだ。そのまま、ドンッ、と階段を転がり落ちる。
「いてぇー!」
ガシャッ!カーーン!カラカラカラーー………。
ランタンがさらに落ちていく。
「お、ヤバい!」
掴もうとしたが、ランタンはそのまま通路を転がっていった。琉生斗のまわりが真っ暗になる。
「あちゃー」
ランタンを目印にゆっくりと進んだ。
追いつき、拾う。
『あなた、誰?』
琉生斗は飛び跳ねた。
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