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魔法騎士大演習 亡霊城編(ファンタジー系 長編)

第69話 亡霊城攻略 5 ー教皇と神官達とー

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 三日目を過ぎると、呪いを受けた魔法騎士が出はじめた。
 身体が徐々に腐っていく呪いだ。
「おやおや、出番ですか」
 呪いを解くのは神官の聖魔法だ。
 今晩はなんと、教皇ミハエルが来ていた。
「呪いを解いたら転移で戻ってくるようにーー」
「はい!」
 神官達が頷いた。
「まぁ、亡霊を減らしてあげてもいいですが、危険は避けるように」
 減らしてあげても、とは、将軍達は頬を引きつらせた。神官達に兵馬は挨拶をしようとして近付く。
 そのとき、
「ねえ、ヒョウマ!パパに鉄道の模型を見せたら、すっごい喜んじゃって、もっと欲しいって!」
 ラルジュナが急いで天幕に入ってきた。
「ほんとー、嬉しいなー。プランチックの木を削って列車本体を作るんだぁ」
「あるある、たくさんあるよ、プランチックの木!」
 ラルジュナは兵馬を引っ張る。
「ねえねえ、アレクセイ。ヒョウマ借りてもいい?」
「ーーどうする?」
 アレクセイは兵馬を見て確認をした。
「じゃあ、作り方教えに行くよ。バッカイアの職人ならあっという間に作れると思うよ」
「やったー!国一番の職人呼ぶよー!」
 ラルジュナははしゃぎながら、兵馬を連れて出ていった。
「ーー本当に、ヒョウマは多才じゃなー」
 ミハエルは溜め息をついた。
「バッカイアに欲しいと言われたらどうするのです?アレクセイ殿下の補佐官の大変な優秀さは、今や各国で耳にしますよ」
 ミハエルの言葉に、アレクセイは眉を顰めた。
「ルートが許さないだろうな」
 親友がいなくなったときの琉生斗の心を思うと、そんな残酷な選択肢は与えたくはない。
 琉生斗のメンタルの安定に、彼は絶対に欠かせない人物だ。
「冗談ですよ。我々も、ヒョウマには感謝してもしきれませんよ」
 カレンという天使も兵馬の言う事しか聞かないし、とつぶやきミハエルは椅子に腰をかけた。
 それは天使ではないだろう、と将軍達は思った。
「ーールートは?」
「申し上げた通り、時空竜の女神様が、時空竜の間に聖女様をお呼びになられました。まだ出てこないでしょう」

 このタイミングでかーー。

 アレクセイはミハエルの言葉に、スズ様にもそういうときがあった事を思い出す。
『呼ばれているから、しばらく帰らないわ』と言って、数日後、何もなかったように帰ってくる。
 聖女だけが知りえる事なのだろうがーー。
 
 自分がいないときに呼び出すーー。
 それは女神様らしくはないと、アレクセイは感じた。どうせなら、自分がいるときに呼び出しそうなものだがー。

 女神様には嫌われている自覚のあるアレクセイであった。

 琉生斗は琉生斗で出発前にキスをしているときに、急にそんな話をしてきた。
「なんか、時空竜の女神様が、時空竜の間に来て、って言うんだ。よくわからんけど行ってくるわ」
 本人も何があるかはわかっていなさそうだったのだが、ミハエルに詳細を尋ねると、そんな返事が返ってきた。
 
 会いに来ても会えるかどうかーー。

 少し苛立つ言い方だった。人の妻に、と言いたいところだが、教皇ミハエルは琉生斗の養父という立場がある。
 時空竜の間なら、危険は皆無だろうがー。



 神官の聖魔法により、呪われた者は呪いを解かれ離脱していく。魔導師達も回収が忙しいーー。
 その中、エバンは神官の数人が、妙な動きをしている事に気付いた。
 何かを探しながら廊下を歩いている。
 魔法騎士達が亡霊を退治した後なので、廊下には亡霊はいない。たまに、ふらふらと漏れ落ちた亡霊が浮いているが、神官の方には寄っていかない。
 聖魔法をもつ彼らには本能が拒否するのであろう。
 エバンは、自分の仕事に専念するように神官達から目を離した。

 魔法騎士達が少しの休憩を入れ、また戦いに行く。

 かっこいいな、とエバンは思う。
 魔法と剣術で戦う兵士のトップ集団、憧れないわけがない。
 が、
「おい!しっかり魔法を撃て!」
「う、腕がーー。休ませてくれー」
 魔力も限界、体力も限界にきている魔法騎士の多い事。一週間不眠不休でも動ける、ティンに聞いてた内容と違う事に、少しがっかりするエバン少年だった。
 もちろん、果敢に戦う者達もいる。
 何かと噂にのぼる東堂は、時空竜の女神様に下賜された聖剣デュランダルを存分に振るっていた。
「おし!ようやく三階かよ!」
「ーーなんでファウラ様と会えずにあんたに会うのよー」
「向こうは、階段があったんだよ。こっちからは亡霊が多すぎて行けなかったがー」
 ひーん。と高位な魔法を連発しながら美花は泣く。
「毎日会ってんのに、そんなに会いたいか?」
 結婚する頃には、燃え尽きるな。
「ひどい!」
 美花は、大雷雨ビッグサンダーストームを放った。巨大雷を伴った洪水のような雨だ。
 モロフは結界で東堂を守ったが、威力が強すぎて二人とも前方へ吹っ飛ばされ、びしょ濡れになった。
「おまえな!」
「あたしの心を傷つけた罰だわ!」
「振られろ!」
「うっさい!」
 もう一つおまけに、天空の槍セレスティアルスピアだ!
 空宙から光る槍が出現し、亡霊と東堂に向かって突撃していく。
「ぎゃあ!あほか!」
「合流しても、安心しないことね。残った組の人数が多いところが勝ちなんだから!」
 美花は言い切った。
「オレ、一緒の組なのにー」
 モロフが嘆いた。ちなみにクリステイルは、会議のために早々に離脱している。東堂達と合流したときの美花の目にも、耐えられなかったのかもしれない。
 なんでいるの?という冷めた目にーー。
「何にせよ!でかい魔法が撃てる奴はありがてー」
 東堂は亡霊と斬り結んだ。何と、亡霊は大鎌を振り回してきた。
「三階からは武器持ちかよ!」
 
 カシャンカシャン、遠くから音がする。
「え?」
 人間の骨の標本が、剣を構えて向かってくる。
「何だよ!あれは!」
「亡霊剣士だ!」
「亡霊じゃねえだろ!」
 大鎌をさばき、剣を受ける。斬り合う中でも、一体一体が強い事を知る。
「まじかよ!」
 ゴールをかすりすらしない状況に、東堂は気を失いそうな気持ちだった。





「あっ」  
 神官の一人が声を漏らした。
 仲間の神官が、しっ、と口に人差し指を当てる。
 彼らは周囲に気付かれないように、地下への隠し階段を開けた。
 千里眼鏡はミハエルが、神官の動きを悟られぬよう操作しているだろう。
 一人が隠し階段の中に消えた。
 残りの五人は何事もなかったように、戦闘の場に戻って行く。

 一人階段を下りる神官は、真っ暗になると魔導具のランタンを付けた。
 目深に被ったフードを外す。
「さて、どこだー」
 
 琉生斗・・・は地図を現在地に合わせ、中へと進んでいった。
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