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その遺跡は神経が衰弱する。編 (ファンタジー系)

第34話 その遺跡は神経が衰弱する。 5 ー東堂はすぐに脱ぐー

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「なんか、敵がいなくてつまんねえな」
 東堂がボヤいた。琉生斗には羨ましい思考だ。
「まだ、3組しか減ってないよ」
 一方で兵馬は顔に疲れが出ている。
「お、おまえはもうちょい体力をつけたほうがー」
 琉生斗が気を使いながら言った。
「うるさい!」
「おい、魔物、っぽいカードと、氷のカードだ」
「えっ?雪だるま以外に氷系がー」
「はいはい。おれー、おい!」
 琉生斗はカードを指差した。
「雲が出たぜー」
「ぎゃあ!まだあんの?次は死ぬよ!」
「大丈夫、大丈夫ー」
 東堂は軽く言った。
「同じマークが2組あるのかー。あーあ。今日の晩ごはんエビチリだったのにー、夜までに帰れるかな?」
「ルートが作るの?」
「今日は、アレク」
 エビチリを作る王子様。兵馬は笑う。
「ルート、海老と中華好きだもんね」
 僕も海老天好きー、と兵馬が言う。
「そうだ、おまえに相談したいんだけどよ。ツバメが巣を作るだろ?あれを、食べるんだよな?」 
「うん、草とか泥を使ってるのは食べれないよ。ツバメの消化した海藻と、唾液で作った巣ね」
「これからツバメ、来るよな」
「うーん。覚えてないけど、飛んでたかなー。何ー、美容の為に巣をとるの?」
「あぁ」
 聖女の目はまじだ。
「来来国とか、ラーメンがあるんだから、なかったの?」
「フカヒレはあったんだけどー」
 もちろん買いました。
「ルート、美容男子バカにしてたのにね」
「いま、ルッタマイヤさんおすすめの、化粧水やクリームもつけてんだぜ」
「ありゃー」
 兵馬は笑う。


 琉生斗が一発引きをした。
 そこは、密林のように異常に暑い場所だった。
「あっちーー」
 東堂が騎士服を脱いだ。ランニングシャツになる。
「おまえ、すぐ脱ぐなー」
「暑いのは我慢できねえ。どうよ、俺の筋肉!」
「はいはい。ご立派ですね」
 海や空に比べると、これはマシなほうだな、と琉生斗は感じた。
 しかし、すごい暑さだ。これは水がないと危ないだろう。ヘロヘロの兵馬を見て、琉生斗は辺りを見まわした。
「水欲しいー」
「そうだよな」
 どんどん汗が、流れていく。
「なあ、これって温泉じゃなくて、サウナか?」
 琉生斗が尋ねた。そういや、外国ってサウナだよな。
「俺入ったことねえな」
「おれ、フィンランドで入ったことはあるけど、あそこには雪があるから、雪の上に寝たり、湖に飛び込むんだよ」
「真っ裸でか?」
「ああ」
「殿下が見たら鼻血吹くな」
「中坊の裸見て吹くわけないだろ!」
 本当に、人の旦那を変態扱いしやがってーー、と琉生斗は先へ進む。
 先には湖があった。
「いや、知らねー時期だから、想像で」
「おまえもおれの中坊の頃知らねーだろ。いまよりチビで、くそ生意気だったわ」
「昔はもっと、目付きの悪い花蓮みたいだったよ」
 兵馬の言葉に東堂は目を丸くした。
「そりゃ、モテただろうな」
 琉生斗は服を着たまま湖に飛び込むんだ。
「つめてー!」
 顔を擦る。
 それを見て兵馬は、足をつける。
「ーー東堂!」
 背中に感じた気配に、兵馬は尖った声を出した。
「バレたか……」
 と、言いながら東堂は兵馬を押して、自分はパンツ一丁で飛び込むんだ。
「ぼへっ、ひどい!」
「兵馬!大丈夫か!」
 琉生斗が近くまできて、兵馬を支えた。
「あいつはもー」
 ぶつぶつと琉生斗は呟いた。
 のんきに泳いでいる東堂を見て、兵馬は目を細めた。
「魔法陣はどこだろ?」
「おい!向こう岸にあったぜ!」
「えー!」
「連れてってやるよー!」
 元気だな、おまえー。琉生斗は呆れた。




「わりに、減ってきたな」
 森、滝、嵐、炎の橋、雨に魔物、そして二度目の雪だるまのカードをこなし、元気な東堂に対し、肩で息をする兵馬。琉生斗は励ましながら東堂に聞こえないように兵馬に囁く。
「兵馬、あのマーク、気づいてるか?」
「ーールートがあえて言わないやつでしょ」
「あれが出たらーー」
「わかってるよー」
 二人は通じ合っていた。
「ん?何だ?このヘビが3匹のカード?」
 東堂が首を捻った。
「ヘビだろ」
 琉生斗は答えた。なるほど、と東堂が言っている。
「おれの番な……」
 慎重に琉生斗はカードを選んだ。
 ヘビのカードが出た。琉生斗は兵馬に合図を送る。兵馬は、こくん、と頷いた。
「おっ、ヘビが揃ったぞー」
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