129 / 208
その遺跡は神経が衰弱する。編 (ファンタジー系)
第32話 その遺跡は神経が衰弱する。 3 ー東堂は遊びたいー
しおりを挟む
案の定、先程の部屋に戻る。
「俺だな」
東堂はカードを眺める。
「トランプって何枚あるんだ?」
「ジョーカー除いて52枚だよ」
「なんでそんな中途半端な数なんだ?」
「トランプは各マークが13枚、ジョーカーを除いて全部で52枚あるだろ?これは1年が52週、364日であることを意味してんだ」
「俺が持ってたやつ、ジョーカー2枚あったぞ」
「そういうのもあるだろうけど、基本1枚」
「じゃあ、いま50枚になったのか。あっ、これは雲だな」
雲のマークと雪だるまのマークを引き、東堂は終わった。
「雪だるまはともかくーー」
「雲はやべーな……」
二人は青ざめた。
「兵馬が当てても、3人とも、海の中に落ちたな」
「逃げられないんだろうねーー」
溜め息をつきながら、琉生斗はカードをめくる。
「おっ、雪だるまだ!」
2枚のカードが光りだしたーー。
突如、目の前に巨大な雪だるまがドン!ドン!ドドン!と、あらわれた。
「ルート……」
「ああ、思ってたのと違うーー」
雪だるま作るんじゃねえんだ。雪だるま倒そうー、なんだ。
東堂が嬉しそうに剣をかまえた。
雪だるまが棍棒を振り回した。東堂の剣は巨大な棍棒を弾き、雪だるまの身体を叩くように斬った。
パシャーん!
雪が飛び散る。
東堂の勢いはとまらず、もう一体の雪だるまも、真っ向斬りで倒していく。最後の雪だるまは、しばらく棍棒と撃ち合い、楽しそうな顔をしながら真横に斬る。
「わりに戦闘狂だよな」
「ねー」
東堂は物足りなそうに、雪だるまの砕けたあとを見る。
「もっといねえかな?」
探そうとするのを、琉生斗達は引っ張って魔法陣に乗せた。
その頃、神聖ロードリンゲン国では、
「アレクセイ、皆が怯えているぞ」
アダマスが恐る恐る、息子の機嫌を伺っていた。
御前会議中、恐ろしいほど不機嫌なアレクセイに、誰もが声をかけれずにいた。
「そうですか」
返事も素っ気ない。
「まぁ、特に今日は何もありませんから、早めに終わりましょうーー」
クリステイルが締めようとした、その時ーー。
ワカッターー?
アダマスとクリステイルはその圧力に負けて気を失いかけた。将軍達も同様だ。
アレクセイは平常の態度で、溜め息をついた。
ワカリマセンーー。妻ダケデモ、オ返シ下サイーー。
ダメ。ドコカハ見セテアゲルーー。
壁に鏡が現れた。
それは、千里眼の魔法のように波打って、琉生斗達が映し出される。
アレクセイは周辺をよく見た。
眉を顰めた。知らない場所だ。
ガンバリナーー。
ここを探し出せと、女神様はおっしゃるのか。
ワカリマシターー。
アレクセイは鏡の前に立つ。愛しい人は元気そうで安堵する。
こめかみに指を当て、光を走らせる。
遠いー、何のかすりもないー。
どこまで遠くにいるのか。
「な、女神様のお声とは、ああいうものなのかー」
アダマスが青ざめながら、身を起こした。パボンがふらつきながらも、アダマスを介抱する。
「兄上、平気なのですかー?」
クリステイルも震えている。
「ようやくだー。ルートは最初から、これが常だ」
あの精神力の強さは、どこからきているのか。
「本当に、素晴らしい人だ」
アレクセイは目を細めて語る。
「いやはや」
アンダーソニーは首を振る。
「久々にこのように震えました」
息を大きく吐く。
「はあ、怖かったー」
ルッタマイヤが本音を漏らした。
「殿下、知ってる場所ですか?」
気力で姿勢を正したヤヘルの問いに、アレクセイは首を振る。
「わからん。おまえは?」
「さっぱりです!」
ガハハっ、とヤヘルが笑った。
「古い遺跡でしょうかー」
ルッタマイヤが指を口に当てた。艶っぽい仕草に、クリステイルはドキリとする。
「しかし、面白い遊びですな。訓練に取り入れてみようか?」
「それはいいですな。士長」
アンダーソニー達の話を聞きながら、アレクセイはさらに眉根を寄せた。
遊びーー?
「さて、どれを引こうかなー」
考える兵馬の後ろに、東堂が立つ。
「変なことしないでね」
「何のフラグだ?」
東堂が背中を押す真似をした。
「そういうとこ、本当に無理!」
「まあ、男子はこうだよな」
女子とは違うよなー、と琉生斗は聖女の塔を思い出した。
「ぎゃあ!ルート!」
兵馬はとんでもない声をあげた。
「どうした!」
「く、雲だよ!」
「えっ!」
カードは光りーー。
「ぎゃあああ!」
と、兵馬は目を剥いた。
「俺だな」
東堂はカードを眺める。
「トランプって何枚あるんだ?」
「ジョーカー除いて52枚だよ」
「なんでそんな中途半端な数なんだ?」
「トランプは各マークが13枚、ジョーカーを除いて全部で52枚あるだろ?これは1年が52週、364日であることを意味してんだ」
「俺が持ってたやつ、ジョーカー2枚あったぞ」
「そういうのもあるだろうけど、基本1枚」
「じゃあ、いま50枚になったのか。あっ、これは雲だな」
雲のマークと雪だるまのマークを引き、東堂は終わった。
「雪だるまはともかくーー」
「雲はやべーな……」
二人は青ざめた。
「兵馬が当てても、3人とも、海の中に落ちたな」
「逃げられないんだろうねーー」
溜め息をつきながら、琉生斗はカードをめくる。
「おっ、雪だるまだ!」
2枚のカードが光りだしたーー。
突如、目の前に巨大な雪だるまがドン!ドン!ドドン!と、あらわれた。
「ルート……」
「ああ、思ってたのと違うーー」
雪だるま作るんじゃねえんだ。雪だるま倒そうー、なんだ。
東堂が嬉しそうに剣をかまえた。
雪だるまが棍棒を振り回した。東堂の剣は巨大な棍棒を弾き、雪だるまの身体を叩くように斬った。
パシャーん!
雪が飛び散る。
東堂の勢いはとまらず、もう一体の雪だるまも、真っ向斬りで倒していく。最後の雪だるまは、しばらく棍棒と撃ち合い、楽しそうな顔をしながら真横に斬る。
「わりに戦闘狂だよな」
「ねー」
東堂は物足りなそうに、雪だるまの砕けたあとを見る。
「もっといねえかな?」
探そうとするのを、琉生斗達は引っ張って魔法陣に乗せた。
その頃、神聖ロードリンゲン国では、
「アレクセイ、皆が怯えているぞ」
アダマスが恐る恐る、息子の機嫌を伺っていた。
御前会議中、恐ろしいほど不機嫌なアレクセイに、誰もが声をかけれずにいた。
「そうですか」
返事も素っ気ない。
「まぁ、特に今日は何もありませんから、早めに終わりましょうーー」
クリステイルが締めようとした、その時ーー。
ワカッターー?
アダマスとクリステイルはその圧力に負けて気を失いかけた。将軍達も同様だ。
アレクセイは平常の態度で、溜め息をついた。
ワカリマセンーー。妻ダケデモ、オ返シ下サイーー。
ダメ。ドコカハ見セテアゲルーー。
壁に鏡が現れた。
それは、千里眼の魔法のように波打って、琉生斗達が映し出される。
アレクセイは周辺をよく見た。
眉を顰めた。知らない場所だ。
ガンバリナーー。
ここを探し出せと、女神様はおっしゃるのか。
ワカリマシターー。
アレクセイは鏡の前に立つ。愛しい人は元気そうで安堵する。
こめかみに指を当て、光を走らせる。
遠いー、何のかすりもないー。
どこまで遠くにいるのか。
「な、女神様のお声とは、ああいうものなのかー」
アダマスが青ざめながら、身を起こした。パボンがふらつきながらも、アダマスを介抱する。
「兄上、平気なのですかー?」
クリステイルも震えている。
「ようやくだー。ルートは最初から、これが常だ」
あの精神力の強さは、どこからきているのか。
「本当に、素晴らしい人だ」
アレクセイは目を細めて語る。
「いやはや」
アンダーソニーは首を振る。
「久々にこのように震えました」
息を大きく吐く。
「はあ、怖かったー」
ルッタマイヤが本音を漏らした。
「殿下、知ってる場所ですか?」
気力で姿勢を正したヤヘルの問いに、アレクセイは首を振る。
「わからん。おまえは?」
「さっぱりです!」
ガハハっ、とヤヘルが笑った。
「古い遺跡でしょうかー」
ルッタマイヤが指を口に当てた。艶っぽい仕草に、クリステイルはドキリとする。
「しかし、面白い遊びですな。訓練に取り入れてみようか?」
「それはいいですな。士長」
アンダーソニー達の話を聞きながら、アレクセイはさらに眉根を寄せた。
遊びーー?
「さて、どれを引こうかなー」
考える兵馬の後ろに、東堂が立つ。
「変なことしないでね」
「何のフラグだ?」
東堂が背中を押す真似をした。
「そういうとこ、本当に無理!」
「まあ、男子はこうだよな」
女子とは違うよなー、と琉生斗は聖女の塔を思い出した。
「ぎゃあ!ルート!」
兵馬はとんでもない声をあげた。
「どうした!」
「く、雲だよ!」
「えっ!」
カードは光りーー。
「ぎゃあああ!」
と、兵馬は目を剥いた。
73
お気に入りに追加
234
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
【完結済】(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
完結済。騎士エリオット視点を含め全10話(エリオット視点2話と主人公視点8話構成)
エロなし。騎士×妖精
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
いいねありがとうございます!励みになります。
【完結】転生したのは俺だけじゃないらしい。〜同時に異世界転生した全く知らない4人組でこの世界を生き抜きます(ヒキニートは俺だけ)〜
カツラノエース
ファンタジー
「お、おい......これはどういうことだ......?」
痩せ型ヒキニートの伊吹冬馬は、今自分が居る場所に酷く混乱していた。
それもそのはず、冬馬は先程まで新作エロゲを買いに行っている途中だったからだ。
なのに今居る場所は広大な大地が広がる草原......そして目の前には倒れている3人の美少女。
すると、たちまちそんな美少女たち3人は目を覚まし、冬馬に対して「ここに誘拐してきたのか!」と、犯罪者扱い。
しかし、そんな4人にはある共通点があった。
それは、全員がさっき死ぬような体験をしたという事。
「まさか......ここ、異世界?」
見た目も性格も全然違う4人の異世界転生スローライフが今始まる。
完結まで書いたので、連続で投稿致します。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)
美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!
【完結】白い塔の、小さな世界。〜監禁から自由になったら、溺愛されるなんて聞いてません〜
N2O
BL
溺愛が止まらない騎士団長(虎獣人)×浄化ができる黒髪少年(人間)
ハーレム要素あります。
苦手な方はご注意ください。
※タイトルの ◎ は視点が変わります
※ヒト→獣人、人→人間、で表記してます
※ご都合主義です、あしからず
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる