252 / 253
時を超えていけ!フィナーレ編
252 みんなへのプレゼント
しおりを挟む
ジェーンが帰ってきたことをチェイスに伝えると、彼は今日だけ時空間歪曲機の移動を許可してくれた。ジェーンが過去から再び帰ってきたことは、ユークでニュースになり、晴れてジェーンは、過去の人間であることが、帝国中に知れ渡ってしまった。
それもあり、帝都の研究者達は、ジェーンに興味津々で、帝国研究所からはオファーがあったようだが、ジェーンがソーライ研究所に残りたいと断ったようだ。
雪を運ぶため、時空間歪曲機に三人で乗って、ユークの港に到着すると、遠くの空が夕暮れ色に染まっているのが見えた。ソーライ研究所の皆は呼びかけると、すぐに集まってくれて、リンやアリスは勝手に帰ったジェーンのことを責めて、どついた。
港の漁師から始まり、雪があると言うことが、どんどんと広まり、住人の多くが港に集まって来て、皆が雪を一度でも触るために、列をなしてしまったので、タージュ博士が人々の整理をし始めた。
報道陣がジェーンを囲んでいる。彼は過去の世界のことを聞かれても、うまく濁して、今回の出来事について、その感想だけをカメラに向かって話していた。私がそれをじっと見ていると、隣に誰かがやって来た。リンだった。ニヤニヤと笑っている。
「ねえ、キリー。過去の世界まで迎えに行ってさ、二人の仲はどうなったの?」
「……恋人になった。」
「え!?」リンが口を隠して叫んだ。周りにいた職員メンバーも私のことを驚いた顔で見ている……そんな、分かってたくせにさ。私は恥ずかしくなって、頭を掻いた。
「え!?じゃあ、ジェーンはキリーの彼氏なの?ああ!この指輪!」
「あ、ああ。これはジェーンに貰ったよ、はは。」
「そうなんだ……でもさ、」
「え?」
リンが私の手を引っ張り、皆から少し離れたところに連れて行った。一体どうしたのか?彼女は至って真剣な顔で、私に聞いた。
「二人のこと応援してた。でもさ、思ったの。」
「何を?」
「……キリーは初心者ドライバーなんだよ?今回、運転が初めてなのに、最初から大型バスに乗るなんて、ちょっと危険じゃない?」
「は?」
何の例えなのか、何の話なのか、さっぱり分からない。リンは至って真剣な顔で、私に耳打ちした。
「普通に考えて、身長高い人は……その、あれが、大きいって。」
「……おばか!」
私はリンをどついた。なんてことを言ってくるんだ。リンは口を尖らせて、「だってキリーのことが心配だったんだもん」と、言っていたが、何かを思い出したのか、いきなり手をパンと叩いた。
「そうだ!そうだった!ヒッヒッヒ!……キハシ君どこ~!?」
と、リンが辺りを見回して彼の姿を探した。すぐそこにいたキハシ君を見つけると、リンが何かを彼に話した。すると彼の表情が一瞬曇り、そして何故か、ウォッフォンを使ってリンにお金を渡し始めた。何があったのだろう。それを彼らに聞こうとしたら、声をかけられた。振り返るとジェーンだった。
「はあ、ここまで質問責めに遭うとは思いませんでした。」
「うん、そりゃあ過去から来た人間がいたら、質問しちゃうよ。ふふ。」
「ええ、確かにそうかもしれませんね。そして、後少しで陛下がここに到着するようです。私はその前に、やるべきことがありますから、少し、時空間歪曲機を移動させます。」
「え?どこに?」
「あまり住人に見られてはいけないと思います。ですから、遠くに停めてくるだけですよ。すぐに戻ります。」
「分かった。」
ジェーンが、時空間歪曲機に小走りで向かって行った。私は彼の後ろ姿を暫く見つめてから、皆の方を見た。港がワイワイと賑わっている。
ジェーンが、この世界を選んでくれた。その為に色々なものを犠牲にしたけれど、私と一緒にいる道を選んでくれたのだから、私は、彼を幸せにしたいと思った。帰ったら、思いっきりハグをしたい。ああ、早くここに帰ってこないかな……なんて、私は一丁前に女心を抱いているみたいだ。
それは隠そう。デレデレするのは彼の方であってほしい。私しか知らないデレデレ……ああ、早くそのバリエーションを増やしてやりたい。
「おい、気持ち悪いぞ。」
「え?」
気がつくとそこに、クラースさんが立っていた。私の顔を見て、彼は笑っていた。確かに、ちょっと不敵な笑みを浮かべてしまっていた気がする。私は恥ずかしくなって、顔を手で覆った。
「良かったな、ジェーンが戻って来てくれて。」
「うん、良かった。どうなるかと思ったけど、彼は実は、ここに戻ってくるつもりだったんだって。」
「ああ、そうらしいな。もうニュースになっているから、それで俺も知ったよ。まあ、ジェーンがいた方が、賑やかでいい。俺だってそう思う。とにかく今日は、あまりはしゃぎすぎるなよ。明日仕事なんだから。」
「分かってるよ!そんな、何もはしゃがないよ!リンといいクラースさんといい……。」
そうか?と、笑いながらクラースさんは知り合いの方へと向かって行った。色々と話し込んでいて気付かなかったが、いつの間にか港のライトが光っていて、空は夜へと切り替わっていた。ウォッフォンでニュースを見ると、確かにジェーンの記事ばかりで、私はちょっと笑った。
生放送の動画があったので、それをクリックして、見てみた。するとその映像はここ、ユークの港からで、リポーターのお姉さんが雪の入っていたバケツ(もう水になっているけど)を紹介していたようで、バケツを仕切りに手で指しながらペラペラ話していた。
そしてお姉さんが、カンペを見ながら言った。
『さあて雪の次は、何と!花火です!ジェーンさんの帰還を祝う、ユークのとある市民の方から、差し入れだそうです!引き続き、花火も中継します!』
「おおおおお!」
と、周りの観衆のボルテージも一気に上がっている。皆が徐々に空を見上げていて、どこで花火が上がるのか、予想を立てているようだった。ジェーン、早く帰ってこないかな、折角の花火だ。彼と見たい。私はジェーンを探した。すると、人をかき分けるように、ジェーンが急いでこちらに向かってくるのが見えた。
彼と目が合った時、彼が私に微笑んだ。単純に嬉しかった。急いで来たのか、息を切らすジェーンと手を繋いだ私は、彼に言った。
「誰かがジェーンの為に、花火をプレゼントしてくれたらしいよ!誰だろうね!」
「いえ、私です。大きな花火ですよ。」
「え?そうなの?」
ジェーンはこくりと頷いて、空を見上げた。花火なんて、持って来てたっけ?疑問に思っていると、ジェーンが突然、私の頭を掴んで、彼の方へと引き寄せた。こんな、人前でこんな、密着するなんて……そのドキドキ感のせいで、疑問など吹き飛んでしまった。
「ちょっとちょっと!すっごいラブラブじゃん、あはは~!」
リンのテンションの高い笑い声と、ウォッフォンカメラのシャッター音が何度か聞こえた。それが終わると、リンはラブ博士と手を繋いで、私たちの隣へとやって来た。
「ねえねえ、花火あるらしいね!どこから上がるんだろう?ここから見えるかな?」
それにはジェーンが答えた。
「ええ、ここからなら一番よく見えるはずです。」
「へえ~ジェーン知ってるんだ!ラッキー!あ……あれじゃない?なんか、ある!あるある花火きたァー!」
リンが空を指差して叫んだ。私も微笑みながらリンの指差した先を見た。確かに、夜空の中心に向かって、何かが飛んでいっている。何か、しかも見たことがある気がした。まあ花火は何度か見たことあるし、でも花火っぽくない気もする。ここでトリビアだが、私は動体視力がいい。
それは何か……それは、時空間歪曲機だった。
ぱああああああああん!
……スッキリとした爆音が響き、夜空には、それは見事に大きい七色の火花が、綺麗にまあるく弾けた。そして、その破片はキラキラと、スパンコールの輝きを放ちながら、ゆっくりと落ち始めた。こんなに、美しい花火は見たことないが、見たことないがああああ!?
「うああああああああああ!」
私がずっと叫んでいると、ジェーンが笑った。
「はっはっは……そんなに喜んで頂けるとは、仕込んだ甲斐がありました。」
私はギュンとジェーンの方を振り向いた。
「その、うああじゃないんだけど!ちょっと、ちょっと何してんの!?あれを集めるのに、どれだけ苦労したか!あれの完成にどれだけ……!?」
ジェーンがぷいっとそっぽを向きながら答えた。
「あそこまで木っ端微塵にすれば、もう修復などは出来ません。それにあの機械を使用することは重罪ですし、もう必要ありません。チェイスは組み立てられますが、それは私の方から釘を刺しておきます。兎に角、私の居場所はここなのです。それとも何です?やはり、帰って欲しいですか?」
彼がムッとした顔で私を見た。不意にも、可愛いと思ってしまった。彼はここにいる。それだけで、幸せだ。私は、ジェーンの手をギュッと握った。ナイトアームの方だったが、温かい気がした。
彼が照れた顔で、指と指を絡ませた。この握り方は、とてもいい。
「……ジェーンの居場所はここだよ。」
「はい……キルディア、」
「ん?」
「愛しております。」
背後から「ウゥ~!」と、聞こえた。私は無視してジェーンに微笑んだ。
「……ん、ありがとう。」
「あなたは?」
「言わなくても分かるでしょう?」
「率直に仰ってくれませんと……私は物分かりが悪いもので。」
ここで言うの……?少し、躊躇したけど、意を決してジェーンに言った。
「ジェーン、とても愛しています。」
「ふふ、」と、彼が頬を染めて、優しく笑った。「ありがとう。それと、」
それと?私は首を傾げた。ジェーンは唇をトントンと叩いて、何か企んでいるような、意地の悪い微笑みを私に向けた。こ、この場所でキスをしろと言っているらしい……それはちょっと、まだ、恥ずかしい。
「ま、また後で、家帰ってから、ね?」
「……承知致しました。その分、帰宅してから、堪能させて頂きます。」
今日の夜は、大変なことになりそうだ。私は、ジェーンと一緒に、また夜空を見上げた。七色のかけらは海へと消えていき、代わりに、無数の星々がきらきらと瞬いていた。
それもあり、帝都の研究者達は、ジェーンに興味津々で、帝国研究所からはオファーがあったようだが、ジェーンがソーライ研究所に残りたいと断ったようだ。
雪を運ぶため、時空間歪曲機に三人で乗って、ユークの港に到着すると、遠くの空が夕暮れ色に染まっているのが見えた。ソーライ研究所の皆は呼びかけると、すぐに集まってくれて、リンやアリスは勝手に帰ったジェーンのことを責めて、どついた。
港の漁師から始まり、雪があると言うことが、どんどんと広まり、住人の多くが港に集まって来て、皆が雪を一度でも触るために、列をなしてしまったので、タージュ博士が人々の整理をし始めた。
報道陣がジェーンを囲んでいる。彼は過去の世界のことを聞かれても、うまく濁して、今回の出来事について、その感想だけをカメラに向かって話していた。私がそれをじっと見ていると、隣に誰かがやって来た。リンだった。ニヤニヤと笑っている。
「ねえ、キリー。過去の世界まで迎えに行ってさ、二人の仲はどうなったの?」
「……恋人になった。」
「え!?」リンが口を隠して叫んだ。周りにいた職員メンバーも私のことを驚いた顔で見ている……そんな、分かってたくせにさ。私は恥ずかしくなって、頭を掻いた。
「え!?じゃあ、ジェーンはキリーの彼氏なの?ああ!この指輪!」
「あ、ああ。これはジェーンに貰ったよ、はは。」
「そうなんだ……でもさ、」
「え?」
リンが私の手を引っ張り、皆から少し離れたところに連れて行った。一体どうしたのか?彼女は至って真剣な顔で、私に聞いた。
「二人のこと応援してた。でもさ、思ったの。」
「何を?」
「……キリーは初心者ドライバーなんだよ?今回、運転が初めてなのに、最初から大型バスに乗るなんて、ちょっと危険じゃない?」
「は?」
何の例えなのか、何の話なのか、さっぱり分からない。リンは至って真剣な顔で、私に耳打ちした。
「普通に考えて、身長高い人は……その、あれが、大きいって。」
「……おばか!」
私はリンをどついた。なんてことを言ってくるんだ。リンは口を尖らせて、「だってキリーのことが心配だったんだもん」と、言っていたが、何かを思い出したのか、いきなり手をパンと叩いた。
「そうだ!そうだった!ヒッヒッヒ!……キハシ君どこ~!?」
と、リンが辺りを見回して彼の姿を探した。すぐそこにいたキハシ君を見つけると、リンが何かを彼に話した。すると彼の表情が一瞬曇り、そして何故か、ウォッフォンを使ってリンにお金を渡し始めた。何があったのだろう。それを彼らに聞こうとしたら、声をかけられた。振り返るとジェーンだった。
「はあ、ここまで質問責めに遭うとは思いませんでした。」
「うん、そりゃあ過去から来た人間がいたら、質問しちゃうよ。ふふ。」
「ええ、確かにそうかもしれませんね。そして、後少しで陛下がここに到着するようです。私はその前に、やるべきことがありますから、少し、時空間歪曲機を移動させます。」
「え?どこに?」
「あまり住人に見られてはいけないと思います。ですから、遠くに停めてくるだけですよ。すぐに戻ります。」
「分かった。」
ジェーンが、時空間歪曲機に小走りで向かって行った。私は彼の後ろ姿を暫く見つめてから、皆の方を見た。港がワイワイと賑わっている。
ジェーンが、この世界を選んでくれた。その為に色々なものを犠牲にしたけれど、私と一緒にいる道を選んでくれたのだから、私は、彼を幸せにしたいと思った。帰ったら、思いっきりハグをしたい。ああ、早くここに帰ってこないかな……なんて、私は一丁前に女心を抱いているみたいだ。
それは隠そう。デレデレするのは彼の方であってほしい。私しか知らないデレデレ……ああ、早くそのバリエーションを増やしてやりたい。
「おい、気持ち悪いぞ。」
「え?」
気がつくとそこに、クラースさんが立っていた。私の顔を見て、彼は笑っていた。確かに、ちょっと不敵な笑みを浮かべてしまっていた気がする。私は恥ずかしくなって、顔を手で覆った。
「良かったな、ジェーンが戻って来てくれて。」
「うん、良かった。どうなるかと思ったけど、彼は実は、ここに戻ってくるつもりだったんだって。」
「ああ、そうらしいな。もうニュースになっているから、それで俺も知ったよ。まあ、ジェーンがいた方が、賑やかでいい。俺だってそう思う。とにかく今日は、あまりはしゃぎすぎるなよ。明日仕事なんだから。」
「分かってるよ!そんな、何もはしゃがないよ!リンといいクラースさんといい……。」
そうか?と、笑いながらクラースさんは知り合いの方へと向かって行った。色々と話し込んでいて気付かなかったが、いつの間にか港のライトが光っていて、空は夜へと切り替わっていた。ウォッフォンでニュースを見ると、確かにジェーンの記事ばかりで、私はちょっと笑った。
生放送の動画があったので、それをクリックして、見てみた。するとその映像はここ、ユークの港からで、リポーターのお姉さんが雪の入っていたバケツ(もう水になっているけど)を紹介していたようで、バケツを仕切りに手で指しながらペラペラ話していた。
そしてお姉さんが、カンペを見ながら言った。
『さあて雪の次は、何と!花火です!ジェーンさんの帰還を祝う、ユークのとある市民の方から、差し入れだそうです!引き続き、花火も中継します!』
「おおおおお!」
と、周りの観衆のボルテージも一気に上がっている。皆が徐々に空を見上げていて、どこで花火が上がるのか、予想を立てているようだった。ジェーン、早く帰ってこないかな、折角の花火だ。彼と見たい。私はジェーンを探した。すると、人をかき分けるように、ジェーンが急いでこちらに向かってくるのが見えた。
彼と目が合った時、彼が私に微笑んだ。単純に嬉しかった。急いで来たのか、息を切らすジェーンと手を繋いだ私は、彼に言った。
「誰かがジェーンの為に、花火をプレゼントしてくれたらしいよ!誰だろうね!」
「いえ、私です。大きな花火ですよ。」
「え?そうなの?」
ジェーンはこくりと頷いて、空を見上げた。花火なんて、持って来てたっけ?疑問に思っていると、ジェーンが突然、私の頭を掴んで、彼の方へと引き寄せた。こんな、人前でこんな、密着するなんて……そのドキドキ感のせいで、疑問など吹き飛んでしまった。
「ちょっとちょっと!すっごいラブラブじゃん、あはは~!」
リンのテンションの高い笑い声と、ウォッフォンカメラのシャッター音が何度か聞こえた。それが終わると、リンはラブ博士と手を繋いで、私たちの隣へとやって来た。
「ねえねえ、花火あるらしいね!どこから上がるんだろう?ここから見えるかな?」
それにはジェーンが答えた。
「ええ、ここからなら一番よく見えるはずです。」
「へえ~ジェーン知ってるんだ!ラッキー!あ……あれじゃない?なんか、ある!あるある花火きたァー!」
リンが空を指差して叫んだ。私も微笑みながらリンの指差した先を見た。確かに、夜空の中心に向かって、何かが飛んでいっている。何か、しかも見たことがある気がした。まあ花火は何度か見たことあるし、でも花火っぽくない気もする。ここでトリビアだが、私は動体視力がいい。
それは何か……それは、時空間歪曲機だった。
ぱああああああああん!
……スッキリとした爆音が響き、夜空には、それは見事に大きい七色の火花が、綺麗にまあるく弾けた。そして、その破片はキラキラと、スパンコールの輝きを放ちながら、ゆっくりと落ち始めた。こんなに、美しい花火は見たことないが、見たことないがああああ!?
「うああああああああああ!」
私がずっと叫んでいると、ジェーンが笑った。
「はっはっは……そんなに喜んで頂けるとは、仕込んだ甲斐がありました。」
私はギュンとジェーンの方を振り向いた。
「その、うああじゃないんだけど!ちょっと、ちょっと何してんの!?あれを集めるのに、どれだけ苦労したか!あれの完成にどれだけ……!?」
ジェーンがぷいっとそっぽを向きながら答えた。
「あそこまで木っ端微塵にすれば、もう修復などは出来ません。それにあの機械を使用することは重罪ですし、もう必要ありません。チェイスは組み立てられますが、それは私の方から釘を刺しておきます。兎に角、私の居場所はここなのです。それとも何です?やはり、帰って欲しいですか?」
彼がムッとした顔で私を見た。不意にも、可愛いと思ってしまった。彼はここにいる。それだけで、幸せだ。私は、ジェーンの手をギュッと握った。ナイトアームの方だったが、温かい気がした。
彼が照れた顔で、指と指を絡ませた。この握り方は、とてもいい。
「……ジェーンの居場所はここだよ。」
「はい……キルディア、」
「ん?」
「愛しております。」
背後から「ウゥ~!」と、聞こえた。私は無視してジェーンに微笑んだ。
「……ん、ありがとう。」
「あなたは?」
「言わなくても分かるでしょう?」
「率直に仰ってくれませんと……私は物分かりが悪いもので。」
ここで言うの……?少し、躊躇したけど、意を決してジェーンに言った。
「ジェーン、とても愛しています。」
「ふふ、」と、彼が頬を染めて、優しく笑った。「ありがとう。それと、」
それと?私は首を傾げた。ジェーンは唇をトントンと叩いて、何か企んでいるような、意地の悪い微笑みを私に向けた。こ、この場所でキスをしろと言っているらしい……それはちょっと、まだ、恥ずかしい。
「ま、また後で、家帰ってから、ね?」
「……承知致しました。その分、帰宅してから、堪能させて頂きます。」
今日の夜は、大変なことになりそうだ。私は、ジェーンと一緒に、また夜空を見上げた。七色のかけらは海へと消えていき、代わりに、無数の星々がきらきらと瞬いていた。
0
お気に入りに追加
61
あなたにおすすめの小説
【完結】「幼馴染が皇子様になって迎えに来てくれた」
まほりろ
恋愛
腹違いの妹を長年に渡りいじめていた罪に問われた私は、第一王子に婚約破棄され、侯爵令嬢の身分を剥奪され、塔の最上階に閉じ込められていた。
私が腹違いの妹のマダリンをいじめたという事実はない。
私が断罪され兵士に取り押さえられたときマダリンは、第一王子のワルデマー殿下に抱きしめられにやにやと笑っていた。
私は妹にはめられたのだ。
牢屋の中で絶望していた私の前に現れたのは、幼い頃私に使えていた執事見習いのレイだった。
「迎えに来ましたよ、メリセントお嬢様」
そう言って、彼はニッコリとほほ笑んだ
※他のサイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
【完結】「お迎えに上がりました、お嬢様」
まほりろ
恋愛
私の名前はアリッサ・エーベルト、由緒ある侯爵家の長女で、第一王子の婚約者だ。
……と言えば聞こえがいいが、家では継母と腹違いの妹にいじめられ、父にはいないものとして扱われ、婚約者には腹違いの妹と浮気された。
挙げ句の果てに妹を虐めていた濡れ衣を着せられ、婚約を破棄され、身分を剥奪され、塔に幽閉され、現在軟禁(なんきん)生活の真っ最中。
私はきっと明日処刑される……。
死を覚悟した私の脳裏に浮かんだのは、幼い頃私に仕えていた執事見習いの男の子の顔だった。
※「幼馴染が王子様になって迎えに来てくれた」を推敲していたら、全く別の話になってしまいました。
勿体ないので、キャラクターの名前を変えて別作品として投稿します。
本作だけでもお楽しみいただけます。
※他サイトにも投稿してます。
「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
【電子書籍化進行中】声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
八重
恋愛
※発売日少し前を目安に作品を引き下げます
修道院で生まれ育ったローゼマリーは、14歳の時火事に巻き込まれる。
その火事の唯一の生き残りとなった彼女は、領主であるヴィルフェルト公爵に拾われ、彼の養子になる。
彼には息子が一人おり、名をラルス・ヴィルフェルトといった。
ラルスは容姿端麗で文武両道の次期公爵として申し分なく、社交界でも評価されていた。
一方、怠惰なシスターが文字を教えなかったため、ローゼマリーは読み書きができなかった。
必死になんとか義理の父や兄に身振り手振りで伝えようとも、なかなか伝わらない。
なぜなら、彼女は火事で声を失ってしまっていたからだ──
そして次第に優しく文字を教えてくれたり、面倒を見てくれるラルスに恋をしてしまって……。
これは、義理の家族の役に立ちたくて頑張りながら、言えない「好き」を内に秘める、そんな物語。
※小説家になろうが先行公開です
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる