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時を超えていけ!フィナーレ編
246 ヴィノクールに向かえ
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「わあああああ!」
もう十分ぐらい叫んでいると思う。マーブル模様の中、まるで洗濯機の中に入ったかのような混沌の中、私は必死にベルトを掴んでいる。これは辛い。ジェーンはこれを経験したのかと思うと、泣けてくるよ。
次の瞬間、いきなり目前に真っ青な空が見えた。私は息を飲んだ。これは、これは……過去の世界!?と、思っていると、赤いランプが点滅し始めたのだった。
『重大な損傷を受けています。爆発するので、外に逃げてくださいね。』
チェイスの声のアナウンスだった。え!?爆発!?私はベルトを取って、扉を開けたが……やはり、そこは遥か上空で、下に広がっているのは、茶色の岩山が目立つ、荒野地帯だった。こんな景色、ルミネラ帝国には無い。それは嬉しいが、早いとこ、飛び降りないといけないが……。
「ど、どうしよう。行くしかないか!うおおおお!」
私は意を決して飛び降りた。その時だった。すぐに時空間歪曲機は大爆発をして、私は咄嗟に慣れない魔術で闇の防御壁を作り、飛んできた破片から身を防いだが、爆風で更に地面へ加速していくことになった。
ああ、地面に緑でもあれば違ったかもしれないが、これはまずいことになった。ゲームオーバーだ。ああ~終わったなあ。この上空から岩に激突して、平気な奴の顔が見てみたいもんだ。諦めて落ちていると、私は何かにぶつかって、それを咄嗟に掴んだ。
「ギエエエエエ!」
「わっわわ、ごめん!でもありがとうね!」
それは、ルミネラ時代ではもう絶滅していた、メガインコと言う大きな鳥だった。鳥は私にしがみ掴まれて、テンパってはいるものの、飛行は安定している。ああ、良かった!インコちゃん、私を連れていってくれ!
インコは、ある方向に進んでいるようだ。私はギルドで習ったモンスターのあやし方を思い出して、インコを我が頬で優しく撫でた。もう左手しかないので、頬を使うしか無かったのだ。すりすりと頬であやしていると、インコは少し落ち着いて、飛び続けた。
インコは荒野地帯を真っ直ぐに進んだ。すると目前に、街が見えてきた。この辺まで来ると空気が澄んでいて、うねり岩がどこまでも続く、綺麗な景色になった。インコは街の片隅の森の中に突っ込み、その中にある、一つの大きな木の上で止まった。大きな巣があった。彼の家らしく、私は邪魔してはいけないと、そそくさと木から飛び降りた。
ああ、ここまでやってきたが、さっきは死ぬとこだった。しかもあの機械が大破してしまった。こりゃ、帰る事は難しそうだ。ジェーンに会った所で、彼が元の世界に返してくれる保証もないしなあ……と、とぼとぼ道なりに歩いていると、街に出た。ここは、どこだろうか?
近くに、酒屋があり、その前に、黒くて厳ついボディの車が止まっていて、そのボンネットに黒いスタッズのついたベストを羽織ったおじいさんが座っていて、仲間との会話を楽しんでいた。
明らかにゴロツキのワルだが、この辺は静けさがあって、もう少し街中に行くにも、あまり、誰にも見つかりなくないし、彼らに聞くのが妥当だと考えた私は、笑顔で彼らに近づいた。
するとおじいさんが私に気付いて、ヒューヒューと口笛を吹いてきた。
「おお!見たこと無い姉ちゃんだな!この魔法都市は初めてかい?はっはっは!」
「おいおい、やめろ、怖がっているじゃねえかよ!ヒッヒッヒ!」
怖がっているのでは無い、苦笑いしているのだ。私はボンネットのおじいさんに聞いた。
「こんにちは、我が名はギルバー……私の名前はキルディアです。」
危ない、つい警戒心が強くなりすぎて、騎士の癖が出てしまった。私は続けた。
「えっと、聞きたいことがあるんです。ジェーン……アレクセイ・ジェーンを知っていますか?」
ライダー風おじいさんたちが、顔を合わせて、思い出し始めた。ボンネットに座る、ヤモリ目のヒゲ爺さんが答えた。
「ジェーン、ジェーンねえ……あいつか!この酒屋の娘さん!あの子はジェイデンだったか?あれ?」
あれ?まさか知らないのかな。もしかして、違う時代に来ちゃったかな。だったら詰んでるんですけども。
「ち、違います!女性じゃなくて、男性で……アレクセイって名前ですよ?あ!そうだ、この男性です!」
と、私は首につけていたチョーカーのロケット部分を開けて、彼らに見せた。すると流石に誰だか分かったようで、「ああ!」と、皆が言った。
「この人なら勿論知っているよ!でも名前はジェーンじゃねえな。アレクセイ・ソフィア・シードロヴァ・イエモリ様だ。でもよ、探してるって言ったって、この前事故で亡くなったんだって聞いたな。」
「そうらしいなあ、可哀想によ、はっはっは!」
おじいさんの友人が面白そうに笑った。よかった、話が通じた。この時代であっているようだ。だがしかし、ジェーンでは無いとはどう言うことなのか。彼は……そうか!偽名を使っていたのか!馬鹿やろおおお!
私はウォッフォンでメモ……をしようと思ったが、この世界では御法度だし、そもそもウォッフォンは私のナイトアームの手首についていた。はあ、ソフィアね。頭で覚えた。
ボンネットに座っていたおじいさんが、私のことをじろじろ見ながらこちらに降りて、近づいてきた。
「んでよお、さっきの写真、中々セクシーな感じだけど、どう言う関係だったの?でも知らねえんだろ?どう言うことだ?お前は何者だ?」
やばい。私はヘラヘラ笑って答えた。
「……気がついたらここにいたんです。記憶が無くて……。違う人に聞いたら、この写真はジェーンだって答えてくれたものだから、この人を探していたんです!」
これは、私の人生で最高の出来の嘘だった。するとおじいさんは目を丸くした。
「あらまあ、それは大変だなぁ……。言っとくが、その男はジェーンじゃねえ。そう言ったのは誰だか知らねえが、そんな大ホラ吹きの言うことなんか信じないでくれ。その写真の男は明らかにソフィア様だ。まあ、アレクセイは合ってたがな。さっきも言ったが、その男は事故で死んでるよ。じゃあ、姉ちゃんはどうする?」
「そうですね、じゃあ彼の妹……とかいれば、会いたいかも。家族、とかいるでしょ?きっと。」
おじいさんは私を手招いた。おじいさんはそのイカツイ車に乗り、扉を開けた。
「乗りな。中央研究所のある、ヴィノクールまで連れて行ってやるよ。」
「え?ヴィノクールに中央研究所があるの?」
周りの皆が笑い始めた。隣で立っていたおじいさんが、私に言った。
「なんだあ、本当に記憶喪失なのかい?ヴィノクールが首都だよ!こんなこと、赤ん坊だって知ってるのに。とは言っても、三十年ほど前からそう呼ばれているから、知らない人もいるっちゃいるけどさ。山籠りの仙人とか。あっはっは!」
それを言っておけよジェーン。歴史の教科書なんて、全然覚えていないんだから。私はお言葉に甘えて、車に乗った。おじいさんがアクセルをふかし始めた所で、私は気付いた。ルミネラ帝国では車が許可されているのは高速道路の上だけだ。しかしここは、草むらの上だし、しかも……。
「よし、掴まっていな。」
授業を思い出した。はるか昔、上空の境界線干渉規制がまだ厳密に定まっていなかった頃、人々は空を飛ぶ車で自由に往来することが出来たと。そんな夢物語の真っ只中に、私は今存在している。勿論、車で空を飛んだことのない私は、叫んだ。さっきのインコよりも揺れが激しくて怖い。
「あああああああああ!」
「記憶なくしてりゃあ、そうなるわな!あっはっは!飛ばすよ、このブラウンプラントからヴィノクールはちょいとばかり、距離があるからな。」
「ブラウンプラント……!?」
聞いたことがある。ああ、ジェーンが言っていた!光の神殿の時に、ここは以前ブラウンプラントだったって。確か彼のおばあちゃんが、この街で教鞭を取っていたって。
ここは、ジェーンの時代のようだが、彼が亡くなっているということは、あの事故の後なんだろう。でもこの世界で生きているんだよね。なんだか頭が混乱しそうだ。兎に角、ジェーンのことを聞いてみようと、私はおじいさんに質問した。
「アレクセイは、副所長だったんですよね?」
「何言ってんだい、あんなの実質的にはキングだったじゃないか。ノアズのトップは、シードロヴァ様の才能を使い、それに奢って、彼を無理矢理働かせ続ける割には、手柄は自分のものにしていた。あんなのによく、シードロヴァ様も従っていたと、俺は思うね。俺たち民はよ、シードロヴァ様を応援していたが、あんな事故が起きてしまったとはね。まあ、今は妹君のイルザ様がいるからいいっちゃいいけど、まだボードンだって、フーリガンだって、黙っちゃいねえからな。」
話がちょっと途中から分からないが、組織の対立があったのは知っているから、その事だろう。それにしてもジェーン、搾取され続けていたのか。きっと辛かっただろうに。それでも研究室が使いたかったから、我慢して頑張っていたんだろうな。
「イルザ様は、ノアズにいますか?」
「いると思うぜ。他に行く場所ねえよ、彼女は今のクイーンだ。最高権力者。今はその身を、いろんな奴に狙われているからな。」
なんだか物騒だ。ナイトアームが無いとダメだったかな。しかしもう遅い。私はもう、ジェーンの世界にいる。そして我々を乗せた車は暫く空を飛んで行き、私はおじいさんの若かりし頃のトークを聞き続けた。
ヴィノクールは、地上にあった。湖に囲まれた私の知っている街ではなかった。大きな街で、住宅街と商業の街道と、ビジネス街、それからセレブ街に分かれていると、おじいさんから聞いた。
どうして、私にそんなに優しくするのだろうと少し聞いてみると、おじいさんは昔、彼の友達が同じく記憶喪失だったらしく、その時を思い出したらしい。
もう十分ぐらい叫んでいると思う。マーブル模様の中、まるで洗濯機の中に入ったかのような混沌の中、私は必死にベルトを掴んでいる。これは辛い。ジェーンはこれを経験したのかと思うと、泣けてくるよ。
次の瞬間、いきなり目前に真っ青な空が見えた。私は息を飲んだ。これは、これは……過去の世界!?と、思っていると、赤いランプが点滅し始めたのだった。
『重大な損傷を受けています。爆発するので、外に逃げてくださいね。』
チェイスの声のアナウンスだった。え!?爆発!?私はベルトを取って、扉を開けたが……やはり、そこは遥か上空で、下に広がっているのは、茶色の岩山が目立つ、荒野地帯だった。こんな景色、ルミネラ帝国には無い。それは嬉しいが、早いとこ、飛び降りないといけないが……。
「ど、どうしよう。行くしかないか!うおおおお!」
私は意を決して飛び降りた。その時だった。すぐに時空間歪曲機は大爆発をして、私は咄嗟に慣れない魔術で闇の防御壁を作り、飛んできた破片から身を防いだが、爆風で更に地面へ加速していくことになった。
ああ、地面に緑でもあれば違ったかもしれないが、これはまずいことになった。ゲームオーバーだ。ああ~終わったなあ。この上空から岩に激突して、平気な奴の顔が見てみたいもんだ。諦めて落ちていると、私は何かにぶつかって、それを咄嗟に掴んだ。
「ギエエエエエ!」
「わっわわ、ごめん!でもありがとうね!」
それは、ルミネラ時代ではもう絶滅していた、メガインコと言う大きな鳥だった。鳥は私にしがみ掴まれて、テンパってはいるものの、飛行は安定している。ああ、良かった!インコちゃん、私を連れていってくれ!
インコは、ある方向に進んでいるようだ。私はギルドで習ったモンスターのあやし方を思い出して、インコを我が頬で優しく撫でた。もう左手しかないので、頬を使うしか無かったのだ。すりすりと頬であやしていると、インコは少し落ち着いて、飛び続けた。
インコは荒野地帯を真っ直ぐに進んだ。すると目前に、街が見えてきた。この辺まで来ると空気が澄んでいて、うねり岩がどこまでも続く、綺麗な景色になった。インコは街の片隅の森の中に突っ込み、その中にある、一つの大きな木の上で止まった。大きな巣があった。彼の家らしく、私は邪魔してはいけないと、そそくさと木から飛び降りた。
ああ、ここまでやってきたが、さっきは死ぬとこだった。しかもあの機械が大破してしまった。こりゃ、帰る事は難しそうだ。ジェーンに会った所で、彼が元の世界に返してくれる保証もないしなあ……と、とぼとぼ道なりに歩いていると、街に出た。ここは、どこだろうか?
近くに、酒屋があり、その前に、黒くて厳ついボディの車が止まっていて、そのボンネットに黒いスタッズのついたベストを羽織ったおじいさんが座っていて、仲間との会話を楽しんでいた。
明らかにゴロツキのワルだが、この辺は静けさがあって、もう少し街中に行くにも、あまり、誰にも見つかりなくないし、彼らに聞くのが妥当だと考えた私は、笑顔で彼らに近づいた。
するとおじいさんが私に気付いて、ヒューヒューと口笛を吹いてきた。
「おお!見たこと無い姉ちゃんだな!この魔法都市は初めてかい?はっはっは!」
「おいおい、やめろ、怖がっているじゃねえかよ!ヒッヒッヒ!」
怖がっているのでは無い、苦笑いしているのだ。私はボンネットのおじいさんに聞いた。
「こんにちは、我が名はギルバー……私の名前はキルディアです。」
危ない、つい警戒心が強くなりすぎて、騎士の癖が出てしまった。私は続けた。
「えっと、聞きたいことがあるんです。ジェーン……アレクセイ・ジェーンを知っていますか?」
ライダー風おじいさんたちが、顔を合わせて、思い出し始めた。ボンネットに座る、ヤモリ目のヒゲ爺さんが答えた。
「ジェーン、ジェーンねえ……あいつか!この酒屋の娘さん!あの子はジェイデンだったか?あれ?」
あれ?まさか知らないのかな。もしかして、違う時代に来ちゃったかな。だったら詰んでるんですけども。
「ち、違います!女性じゃなくて、男性で……アレクセイって名前ですよ?あ!そうだ、この男性です!」
と、私は首につけていたチョーカーのロケット部分を開けて、彼らに見せた。すると流石に誰だか分かったようで、「ああ!」と、皆が言った。
「この人なら勿論知っているよ!でも名前はジェーンじゃねえな。アレクセイ・ソフィア・シードロヴァ・イエモリ様だ。でもよ、探してるって言ったって、この前事故で亡くなったんだって聞いたな。」
「そうらしいなあ、可哀想によ、はっはっは!」
おじいさんの友人が面白そうに笑った。よかった、話が通じた。この時代であっているようだ。だがしかし、ジェーンでは無いとはどう言うことなのか。彼は……そうか!偽名を使っていたのか!馬鹿やろおおお!
私はウォッフォンでメモ……をしようと思ったが、この世界では御法度だし、そもそもウォッフォンは私のナイトアームの手首についていた。はあ、ソフィアね。頭で覚えた。
ボンネットに座っていたおじいさんが、私のことをじろじろ見ながらこちらに降りて、近づいてきた。
「んでよお、さっきの写真、中々セクシーな感じだけど、どう言う関係だったの?でも知らねえんだろ?どう言うことだ?お前は何者だ?」
やばい。私はヘラヘラ笑って答えた。
「……気がついたらここにいたんです。記憶が無くて……。違う人に聞いたら、この写真はジェーンだって答えてくれたものだから、この人を探していたんです!」
これは、私の人生で最高の出来の嘘だった。するとおじいさんは目を丸くした。
「あらまあ、それは大変だなぁ……。言っとくが、その男はジェーンじゃねえ。そう言ったのは誰だか知らねえが、そんな大ホラ吹きの言うことなんか信じないでくれ。その写真の男は明らかにソフィア様だ。まあ、アレクセイは合ってたがな。さっきも言ったが、その男は事故で死んでるよ。じゃあ、姉ちゃんはどうする?」
「そうですね、じゃあ彼の妹……とかいれば、会いたいかも。家族、とかいるでしょ?きっと。」
おじいさんは私を手招いた。おじいさんはそのイカツイ車に乗り、扉を開けた。
「乗りな。中央研究所のある、ヴィノクールまで連れて行ってやるよ。」
「え?ヴィノクールに中央研究所があるの?」
周りの皆が笑い始めた。隣で立っていたおじいさんが、私に言った。
「なんだあ、本当に記憶喪失なのかい?ヴィノクールが首都だよ!こんなこと、赤ん坊だって知ってるのに。とは言っても、三十年ほど前からそう呼ばれているから、知らない人もいるっちゃいるけどさ。山籠りの仙人とか。あっはっは!」
それを言っておけよジェーン。歴史の教科書なんて、全然覚えていないんだから。私はお言葉に甘えて、車に乗った。おじいさんがアクセルをふかし始めた所で、私は気付いた。ルミネラ帝国では車が許可されているのは高速道路の上だけだ。しかしここは、草むらの上だし、しかも……。
「よし、掴まっていな。」
授業を思い出した。はるか昔、上空の境界線干渉規制がまだ厳密に定まっていなかった頃、人々は空を飛ぶ車で自由に往来することが出来たと。そんな夢物語の真っ只中に、私は今存在している。勿論、車で空を飛んだことのない私は、叫んだ。さっきのインコよりも揺れが激しくて怖い。
「あああああああああ!」
「記憶なくしてりゃあ、そうなるわな!あっはっは!飛ばすよ、このブラウンプラントからヴィノクールはちょいとばかり、距離があるからな。」
「ブラウンプラント……!?」
聞いたことがある。ああ、ジェーンが言っていた!光の神殿の時に、ここは以前ブラウンプラントだったって。確か彼のおばあちゃんが、この街で教鞭を取っていたって。
ここは、ジェーンの時代のようだが、彼が亡くなっているということは、あの事故の後なんだろう。でもこの世界で生きているんだよね。なんだか頭が混乱しそうだ。兎に角、ジェーンのことを聞いてみようと、私はおじいさんに質問した。
「アレクセイは、副所長だったんですよね?」
「何言ってんだい、あんなの実質的にはキングだったじゃないか。ノアズのトップは、シードロヴァ様の才能を使い、それに奢って、彼を無理矢理働かせ続ける割には、手柄は自分のものにしていた。あんなのによく、シードロヴァ様も従っていたと、俺は思うね。俺たち民はよ、シードロヴァ様を応援していたが、あんな事故が起きてしまったとはね。まあ、今は妹君のイルザ様がいるからいいっちゃいいけど、まだボードンだって、フーリガンだって、黙っちゃいねえからな。」
話がちょっと途中から分からないが、組織の対立があったのは知っているから、その事だろう。それにしてもジェーン、搾取され続けていたのか。きっと辛かっただろうに。それでも研究室が使いたかったから、我慢して頑張っていたんだろうな。
「イルザ様は、ノアズにいますか?」
「いると思うぜ。他に行く場所ねえよ、彼女は今のクイーンだ。最高権力者。今はその身を、いろんな奴に狙われているからな。」
なんだか物騒だ。ナイトアームが無いとダメだったかな。しかしもう遅い。私はもう、ジェーンの世界にいる。そして我々を乗せた車は暫く空を飛んで行き、私はおじいさんの若かりし頃のトークを聞き続けた。
ヴィノクールは、地上にあった。湖に囲まれた私の知っている街ではなかった。大きな街で、住宅街と商業の街道と、ビジネス街、それからセレブ街に分かれていると、おじいさんから聞いた。
どうして、私にそんなに優しくするのだろうと少し聞いてみると、おじいさんは昔、彼の友達が同じく記憶喪失だったらしく、その時を思い出したらしい。
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