上 下
3 / 16

3

しおりを挟む
「推しの配下になってる時点で嬉しすぎて死ねるんだけどしかもモブとか言いながら普通にメイ可愛いし神様ありがとうございます……ゲホッ」

早口で言い切り、ちょっとむせた。
これではいかんと深呼吸する。

「でも……ゲーム通りならここにいるシルヴェちゃんもいつか死んじゃうってことだよね」

ついでにメイもシルヴェちゃんを庇い死ぬ。
メイが命をかけて守ったのに、その後すぐにシルヴェちゃんが死ぬストーリーを考えたシナリオライターを呪ってやりたい。
これではメイの無駄死にではないか。
モブの命をなんだと思ってるんだ。

「私的には推しを庇って死ねるなら本望なんだけど……無駄死には嫌だな……シルヴェちゃんには生きてて貰いたいし」

そう、私はいいのだ!
もうどうせ一度死んでるし。
だがしかし、シルヴェちゃんが死ぬ未来だけは許せない。

と、いうことで私はその後数時間、悩みに悩んで一つの結論を出した。

「見てなさい!推しとの距離を近づけつつ、なんとか更生させて死亡エンドを回避して見せるわ!」

ビシィッとドアを指差し、ポーズを決める。
そう、極めて簡単な問題であった。

更生させてしまえばいいのだ!

最強最悪の敵キャラと呼ばれたシルヴェちゃん。偽情報を流し大規模な戦争を起こしてみたり、一度国を救ってから自ら滅ぼしてみたり、国……いや、世界規模でかなりえげつない事をやっていたりする。しかも、楽しみながら。
そのせいで正義感の強い主人公の手によって殺されてしまうのだ。
悪役なシルヴェちゃんだからこそ推していたっていうのもなくは無い。
けど、更生すれば主人公に会っても敵対することなくむしろ仲間として共闘するシーンも見れるかもしれないと考えれば、悪くはない。
そうなれば多分……私、メイも死なずに済むし。
……因みに、推しとの距離を近づけつつ、というセリフは仲良くなった方が更生させやすいかだ。うん。私の願望だけじゃない。

「正義のシルヴェちゃんも見てみたいかも……ふふふ……」

そんな事を言っていると、扉が開き誰かが部屋に入ってきた。
少しドキドキしたが、一番に白銀の髪の毛が目に入り、緊張は歓喜に変わる。

「シルヴェちゃん……!」

先手必勝!そう思い抱きつこうとしたら避けられた。
勢い余り、壁に激突する。

「いでっ……」

そんな私をシルヴェちゃんはニコニコと眺めてこう言った。

「元気そうで、なによりですね。ところで、とうとう頭でもおかしくなりましたか?」

笑顔が怖い。

「ふぁ……えっと……これは不可抗力といいますか……も、申し訳ありませんでしたぁぁぁぁ!」

ズサササー、とスライディング土下座をかます私。
そして気づいた。
メイはシルヴェの手下……部下みたいなものである。つまり、部下は上司に抱きつこうとしたりしない。寝ぼけて顔をペタペタ触るようなこともしない。タメ口で話しかけることも無いだろう。キャラ崩壊が著しいにもほどがある。

やらかしたぁぁぁぁぁ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

殿下、恋はデスゲームの後でお願いします

真鳥カノ
ファンタジー
気付けば乙女ゲームの悪役令嬢「レア=ハイラ子爵令嬢」に転生していた! いずれゲーム本編である王位継承権争いに巻き込まれ、破滅しかない未来へと突き進むことがわかっていたレア。 自らの持つ『祝福の手』によって人々に幸運を分け与え、どうにか破滅の未来を回避しようと奮闘していた。 そんな彼女の元ヘ、聞いたこともない名の王子がやってきて、求婚した――!! 王位継承権争いを勝ち抜くには、レアの『幸運』が必要だと言っていて……!? 短編なのでさらっと読んで頂けます! いつか長編にリメイクします!

【完結】間違えたなら謝ってよね! ~悔しいので羨ましがられるほど幸せになります~

綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
「こんな役立たずは要らん! 捨ててこい!!」  何が起きたのか分からず、茫然とする。要らない? 捨てる? きょとんとしたまま捨てられた私は、なぜか幼くなっていた。ハイキングに行って少し道に迷っただけなのに?  後に聖女召喚で間違われたと知るが、だったら責任取って育てるなり、元に戻すなりしてよ! 謝罪のひとつもないのは、納得できない!!  負けん気の強いサラは、見返すために幸せになることを誓う。途端に幸せが舞い込み続けて? いつも笑顔のサラの周りには、聖獣達が集った。  やっぱり聖女だから戻ってくれ? 絶対にお断りします(*´艸`*) 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2022/06/22……完結 2022/03/26……アルファポリス、HOT女性向け 11位 2022/03/19……小説家になろう、異世界転生/転移(ファンタジー)日間 26位 2022/03/18……エブリスタ、トレンド(ファンタジー)1位

公爵夫人アリアの華麗なるダブルワーク〜秘密の隠し部屋からお届けいたします〜

白猫
恋愛
主人公アリアとディカルト公爵家の当主であるルドルフは、政略結婚により結ばれた典型的な貴族の夫婦だった。 がしかし、5年ぶりに戦地から戻ったルドルフは敗戦国である隣国の平民イザベラを連れ帰る。城に戻ったルドルフからは目すら合わせてもらえないまま、本邸と別邸にわかれた別居生活が始まる。愛人なのかすら教えてもらえない女性の存在、そのイザベラから無駄に意識されるうちに、アリアは面倒臭さに頭を抱えるようになる。ある日、侍女から語られたイザベラに関する「推測」をきっかけに物語は大きく動き出す。 暗闇しかないトンネルのような現状から抜け出すには、ルドルフと離婚し公爵令嬢に戻るしかないと思っていたアリアだが、その「推測」にひと握りの可能性を見出したのだ。そして公爵邸にいながら自分を磨き、リスキリングに挑戦する。とにかく今あるものを使って、できるだけ抵抗しよう!そんなアリアを待っていたのは、思わぬ新しい人生と想像を上回る幸福であった。公爵夫人の反撃と挑戦の狼煙、いまここに高く打ち上げます! ➡️登場人物、国、背景など全て架空の100%フィクションです。

【完結】元婚約者であって家族ではありません。もう赤の他人なんですよ?

つくも茄子
ファンタジー
私、ヘスティア・スタンリー公爵令嬢は今日長年の婚約者であったヴィラン・ヤルコポル伯爵子息と婚約解消をいたしました。理由?相手の不貞行為です。婿入りの分際で愛人を連れ込もうとしたのですから当然です。幼馴染で家族同然だった相手に裏切られてショックだというのに相手は斜め上の思考回路。は!?自分が次期公爵?何の冗談です?家から出て行かない?ここは私の家です!貴男はもう赤の他人なんです! 文句があるなら法廷で決着をつけようではありませんか! 結果は当然、公爵家の圧勝。ヤルコポル伯爵家は御家断絶で一家離散。主犯のヴィランは怪しい研究施設でモルモットとしいて短い生涯を終える……はずでした。なのに何故か薬の副作用で強靭化してしまった。化け物のような『力』を手にしたヴィランは王都を襲い私達一家もそのまま儚く……にはならなかった。 目を覚ましたら幼い自分の姿が……。 何故か十二歳に巻き戻っていたのです。 最悪な未来を回避するためにヴィランとの婚約解消を!と拳を握りしめるものの婚約は継続。仕方なくヴィランの再教育を伯爵家に依頼する事に。 そこから新たな事実が出てくるのですが……本当に婚約は解消できるのでしょうか? 他サイトにも公開中。

処理中です...