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目を開けると、知らない天井が見えた。

寝かされていたベッドから起き上がり周りを見渡すと、どこか見覚えのある部屋のレイアウトが確認できる。
目を何度擦っても、変わらず見知らぬ天井はそこにあり、部屋のレイアウトも変わることはない。

15回目あたりで私はやっと、これは現実なのだと受け入れることができた。

多分、私はゲーム内で推しが死んだことを知りふて寝した後に地震やら火災やらが起こり、一度死んでしまったのであろう。
寝ているうちに亡くなったため、苦しみとかを感じなかったのは不幸中の幸いか。
そして、この世界に転生した。
にわかに信じ難いが、前世に読んでいたラノベ等の知識を持っているため、納得することができた。
この世界が前世のゲームと同じであるならば、今の私は……。

近くに窓があることに気づき、反射して映る自分の姿を覗き込む。

「おぉっ」

胸のあたりまで届いているふわっふわで赤紫色の髪の毛に、紫色の瞳。
長いまつ毛は私が瞬きをするたびにパチパチと揺れる。
……自分で言うのもなんだが、今の私は前世の私と比にならないくらいの美少女だ。
勿論シルヴェちゃんには劣るけど。

どこか、見覚えのある顔だった。
誰だっけ……?と自分の顔をまじまじと見ながら考えると、倒れる前にシルヴェちゃんに「メイ」と呼ばれていたことを思い出す。

「メイ……思い出した!メイって、ゲームの中で、シルヴェちゃんの手下ポジションのキャラじゃない!」

我が際推しのシルヴェちゃんはゲーム内で最強最悪と言われた敵キャラであり、世界規模で悪行をはたらく大悪人(だが尊い……!)である。
つまり、その手下ポジションのメイもかなり非道なことをしてきているわけで。

「え、まさかの犯罪者スタート??」

私の記憶が確かであれば、メイはこの先、ゲーム内の主人公(確かイケメン)やその仲間たち(わりと強い)に追い回され、最後はシルヴェちゃんを庇い、死に至る。

メイが死ぬシーンを見たときは、「やるじゃんこのモブ」とか思っていたけど、まさかそのメイに転生してしまうだなんて……!

普通の人なら絶望するのかもしれない。
主人公の見た目ははゲーム内で人気が高かったし、その仲間たちもそこそこの人気キャラである。
どうせなら主人公サイドに転生したかったー!とか、最強最悪の敵キャラを庇って死ぬモブになるとかあり得なーい!とか、言っているのかもしれない。
だから私はあえてこう言おう。

「やばい、最高、幸せすぎる」

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