3 / 12
魔界監獄の掃除人
ニンゲン鑑賞会
しおりを挟む 次の日。
朝、レナが目が覚めるとまだサーザは起こしに来ない為、体を起こしカーテンを少し開けた。
太陽の光が少し入ってきて、レナは眩しそうに目を細め、それから目を開けると、視界の隅で動く人影を見つけた。
下に見える庭の、生け垣の向こうでしゃがみ込み、帽子を被った人が何かをやっている。
(あれ?あの帽子…見たことあるような……あ!あの時の!)
レナが、アモリーと馬車に乗った時に、一緒に乗っていた男性もあのような帽子を被っていた。つばが長めのハンチング帽だ。
ガサガサと生け垣の辺りを屈み込んで動いていると思ったら、少しして何かが走り去った。
(ネコ?)
その帽子を被った男性は立ち上がり、何だかとても悔しそうに地団駄を踏んでいる。
(分かりやすい…きっと逃げられて残念がっているのね。そういえば、たまたまバリウェリーに行った時にも野良を愛でるって言っていたもの。本当にあの人も好きなんだ。でも、このスウォンヒル国の決まり事で無闇に触れ合うのはダメだとあるから、ああやってこっそり触れ合っているのかな。あ、手に持っているのは…おやつ?)
帽子を被った男性が何を持っているのかまでは見えなかったが、朝の人が少ない時間にきっとおやつを持って行って食べさせ、愛でているのかとレナは想像した。
と、部屋の扉を叩く音がし、サーザが入ってきた。
「おはようございます。お早いですね。」
そう言ってウォークインクローゼットへと入っていき、今日着る服を持ってきた。
初日にレナは、サーザに身支度をと言われた時に、『サーザのお薦めを持ってきて。たくさんあるから迷ってしまうから。』と伝えたのだ。自分で出来る、と言ったが、『いえ、私の仕事ですのでやらせて下さいませ。』とサーザに言われたし、意外と一人では着にくいものばかりだったので仕方なくお願いする事にしたのだ。
ウォークインクローゼットには、様々な物が入っていて全て使っていいと言われている。ドレスやワンピースなど、レナが今まであまり着ていない格好の物が多く、自分では良く分からないからだった。
「そういえば、私の仕事って、どうすればいいの?」
身支度を終え、朝食の準備をサーザがしてくれている時にレナは聞いた。
「まだ準備があるそうで、申し訳ありませんがすぐには出来ないそうです。でも、準備が出来ましたら、その時はすぐにお伝え致しますね。」
「そう。それまでは、こんなダラダラと過ごしていいの?」
「レナ様はダラダラとなんて過ごしておりませんよ。朝もきちんと早起きされますし、夜だって早く寝られます。貴族のお嬢様方は太陽が真上にくる頃にようやく起きる人だっているのですよ。それにレナ様はまだこの国に慣れていないのですから、ゆっくりでいいのですよ、先は長いですからね。」
「そう…そうね。」
「あぁ、ウィンフォード様より伝言です。『昨日は姉が突撃して済まなかった。でも姉を元気にしてくれて本当に感謝している。』だそうですよ。本当でしたら、こちらへご自分の口から言いたかったそうですが、忙しくて来られなかったそうです。」
「そうなの?わざわざそんな…」
「あ、それから『あきびと商会のアスガーにもちゃんと伝えといた。残念がっていたが、気に病まない様に。レナにはレナの好きな事が出来るように手配をしているから、済まないがもう少し待って欲しい』との事です。」
サーザは、ウィンフォードの声を真似て言うのでレナはフフフフと笑いながら聞いていた。
「申し訳ないわ。わざわざ…でも嬉しい。」
「レナ様、もし良ければ、レナ様がウィンフォード様の仕事部屋に行かれますか?それなら会えますよ。直接お礼を申し上げたら、ウィンフォード様も喜びます。」
「ウィンフォード様が喜ぶ事はないと思うけれど、私が行って、仕事の邪魔にならないの?」
「とんでもない!むしろ、休ませないと体が持ちませんから。陛下も、仕事が出来るからとウィンフォード様に頼り過ぎなのですよ!あ、ここだけの話ですよ?」
時折サーザは、こうして楽しくレナへと会話をするのだった。
「では、夕食の後にでも、ウィンフォード様の元へ行けるように手配しておきますね。」
「ありがとう、よろしくね。」
レナは、
(ウィンフォード様にまた会えるなんて!なんだか嬉しいわ!気も遣ってくれて優しいし。ま、仕事だからなのでしょうけどね。)
と、少しだけ会えるのを嬉しく思った。
朝、レナが目が覚めるとまだサーザは起こしに来ない為、体を起こしカーテンを少し開けた。
太陽の光が少し入ってきて、レナは眩しそうに目を細め、それから目を開けると、視界の隅で動く人影を見つけた。
下に見える庭の、生け垣の向こうでしゃがみ込み、帽子を被った人が何かをやっている。
(あれ?あの帽子…見たことあるような……あ!あの時の!)
レナが、アモリーと馬車に乗った時に、一緒に乗っていた男性もあのような帽子を被っていた。つばが長めのハンチング帽だ。
ガサガサと生け垣の辺りを屈み込んで動いていると思ったら、少しして何かが走り去った。
(ネコ?)
その帽子を被った男性は立ち上がり、何だかとても悔しそうに地団駄を踏んでいる。
(分かりやすい…きっと逃げられて残念がっているのね。そういえば、たまたまバリウェリーに行った時にも野良を愛でるって言っていたもの。本当にあの人も好きなんだ。でも、このスウォンヒル国の決まり事で無闇に触れ合うのはダメだとあるから、ああやってこっそり触れ合っているのかな。あ、手に持っているのは…おやつ?)
帽子を被った男性が何を持っているのかまでは見えなかったが、朝の人が少ない時間にきっとおやつを持って行って食べさせ、愛でているのかとレナは想像した。
と、部屋の扉を叩く音がし、サーザが入ってきた。
「おはようございます。お早いですね。」
そう言ってウォークインクローゼットへと入っていき、今日着る服を持ってきた。
初日にレナは、サーザに身支度をと言われた時に、『サーザのお薦めを持ってきて。たくさんあるから迷ってしまうから。』と伝えたのだ。自分で出来る、と言ったが、『いえ、私の仕事ですのでやらせて下さいませ。』とサーザに言われたし、意外と一人では着にくいものばかりだったので仕方なくお願いする事にしたのだ。
ウォークインクローゼットには、様々な物が入っていて全て使っていいと言われている。ドレスやワンピースなど、レナが今まであまり着ていない格好の物が多く、自分では良く分からないからだった。
「そういえば、私の仕事って、どうすればいいの?」
身支度を終え、朝食の準備をサーザがしてくれている時にレナは聞いた。
「まだ準備があるそうで、申し訳ありませんがすぐには出来ないそうです。でも、準備が出来ましたら、その時はすぐにお伝え致しますね。」
「そう。それまでは、こんなダラダラと過ごしていいの?」
「レナ様はダラダラとなんて過ごしておりませんよ。朝もきちんと早起きされますし、夜だって早く寝られます。貴族のお嬢様方は太陽が真上にくる頃にようやく起きる人だっているのですよ。それにレナ様はまだこの国に慣れていないのですから、ゆっくりでいいのですよ、先は長いですからね。」
「そう…そうね。」
「あぁ、ウィンフォード様より伝言です。『昨日は姉が突撃して済まなかった。でも姉を元気にしてくれて本当に感謝している。』だそうですよ。本当でしたら、こちらへご自分の口から言いたかったそうですが、忙しくて来られなかったそうです。」
「そうなの?わざわざそんな…」
「あ、それから『あきびと商会のアスガーにもちゃんと伝えといた。残念がっていたが、気に病まない様に。レナにはレナの好きな事が出来るように手配をしているから、済まないがもう少し待って欲しい』との事です。」
サーザは、ウィンフォードの声を真似て言うのでレナはフフフフと笑いながら聞いていた。
「申し訳ないわ。わざわざ…でも嬉しい。」
「レナ様、もし良ければ、レナ様がウィンフォード様の仕事部屋に行かれますか?それなら会えますよ。直接お礼を申し上げたら、ウィンフォード様も喜びます。」
「ウィンフォード様が喜ぶ事はないと思うけれど、私が行って、仕事の邪魔にならないの?」
「とんでもない!むしろ、休ませないと体が持ちませんから。陛下も、仕事が出来るからとウィンフォード様に頼り過ぎなのですよ!あ、ここだけの話ですよ?」
時折サーザは、こうして楽しくレナへと会話をするのだった。
「では、夕食の後にでも、ウィンフォード様の元へ行けるように手配しておきますね。」
「ありがとう、よろしくね。」
レナは、
(ウィンフォード様にまた会えるなんて!なんだか嬉しいわ!気も遣ってくれて優しいし。ま、仕事だからなのでしょうけどね。)
と、少しだけ会えるのを嬉しく思った。
35
お気に入りに追加
42
あなたにおすすめの小説
癒やし系尊大魔王様vs疲れ気味な村の戦士
青野イワシ
BL
《あらすじ》森の奥にある湖に突如魔王城が出現した。しかも湖畔の村に住む住民の元に魔物までやって来て、城を訪ねるよう催促までし始めた。そんな中、村の警備を担っていた戦士に白羽の矢が立ってしまい──
ヒトナー多腕多眼バルクマッチョ魔王様×苦労人気質の人間戦士のハートフルかもしれない話です。
良縁全部ブチ壊してくる鬼武者vs俺
青野イワシ
BL
《あらすじ》昔々ある寒村に暮らす百姓の長治郎は、成り行きで鬼を助けてしまう。その後鬼と友人関係になったはずだったが、どうも鬼はそう思っていなかったらしい。
鬼は長治郎が得るであろう良縁に繋がる“赤い糸”が結ばれるのを全力で邪魔し、長治郎を“娶る”と言い出した。
長治郎は無事祝言をあげることが出来るのか!?
という感じのガチムチ鬼武者終着系人外×ノンケ百姓の話です
売りをしていたらオネェな不良に怒られました
天宮叶
BL
病気の母の治療費と生活費を稼ぐために売りをしていた棗は、ある日学校で売りの仕事をしている所を、有名な不良である沖に見られてしまい……
オネェ不良✕ビッチな受け
の可愛いお話です💕
イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる