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第二章
虫の知らせ
しおりを挟む王子の婚約者を選ぶパーティーで、隣町の名家ブロッサム家のサニー嬢と出会った。
私は真っ黒なドレスを身にまとっていた。
サニー嬢は言った。
「あら、なぜカラスが紛れ込んでいるのかしら?」
扇子で口元を隠し、私は言い返した。
「派手なドレスが、軽い頭に良くお似合いですわよ」
「何よ!?」
サニー嬢が持っていた葡萄酒を私にかけた。
「あら、ごめんなさい。手が滑りましたわ」
そこに、褐色の美青年が現れハンカチを差し出してくれた。
「大丈夫ですか? お嬢様? お名前は?」
「ライム家のレイズと申します」
「そちらのお嬢様も、お行儀が良くありませんよ」
「……失礼致します」
サニー嬢はとがめられたのが気まずかったのか、早々に立ち去った。
「あなたは黒いドレスなのですね。良かったですね」
「ええ、黒は何色にも染まりませんもの」
私がそういうと、青年は美しい笑顔を浮かべた。
「おもしろい方ですね」
パーティーでは、音楽がなり始めた。
「一曲、ごいっしょに踊りませんか?」
「喜んで。ところで貴方のお名前は?」
「申し遅れました。ロイ・レイモンドです」
それを聞いて、私は心臓が止まる思いをした。
「ロイ・レイモンド様? 王子様でしたのね。大変失礼致しました」
「いいえ、お気になさらずに」
レイモンド様は音楽に合わせてステップを踏んだ。
私はレイモンド様のリードに合わせて、くるりと回る。
一曲踊り終わったところで、二人でバルコニーに出た。
「ライム家のレイズ様とは、一度お話をしてみたいと思っていたんです」
「まあ、どうして?」
私がそう言うと、レイモンド様が私の耳元でささやいた。
「正義のために悪役になることも、いとわないと聞いていたものですから」
「あら、悪役ですって? 噂を信じてはいけませんわ」
私はクスクスと笑った。
「貴方の黒く長い髪と、黒い瞳は魅力的ですね」
「カラスのようだと言われましたわ」
私が微笑みながらそう言うと、レイモンド様も微笑んだ。
「ドレスが黒いおかげで、葡萄酒の染みも目立ちませんよ」
レイモンド様はそう言って、私のドレスを軽く撫でた。
「また、お会いしましょう」
「ご縁があれば」
「人混みは苦手なのですが、仕事ですので仕方有りませんね」
レイモンド様はそう言って、パーティー会場に戻っていってしまった。
「王子に見初められたのかしら? 運の良いこと」
悔しがるサニー嬢を思い浮かべて、私は一人微笑んだ。
私は真っ黒なドレスを身にまとっていた。
サニー嬢は言った。
「あら、なぜカラスが紛れ込んでいるのかしら?」
扇子で口元を隠し、私は言い返した。
「派手なドレスが、軽い頭に良くお似合いですわよ」
「何よ!?」
サニー嬢が持っていた葡萄酒を私にかけた。
「あら、ごめんなさい。手が滑りましたわ」
そこに、褐色の美青年が現れハンカチを差し出してくれた。
「大丈夫ですか? お嬢様? お名前は?」
「ライム家のレイズと申します」
「そちらのお嬢様も、お行儀が良くありませんよ」
「……失礼致します」
サニー嬢はとがめられたのが気まずかったのか、早々に立ち去った。
「あなたは黒いドレスなのですね。良かったですね」
「ええ、黒は何色にも染まりませんもの」
私がそういうと、青年は美しい笑顔を浮かべた。
「おもしろい方ですね」
パーティーでは、音楽がなり始めた。
「一曲、ごいっしょに踊りませんか?」
「喜んで。ところで貴方のお名前は?」
「申し遅れました。ロイ・レイモンドです」
それを聞いて、私は心臓が止まる思いをした。
「ロイ・レイモンド様? 王子様でしたのね。大変失礼致しました」
「いいえ、お気になさらずに」
レイモンド様は音楽に合わせてステップを踏んだ。
私はレイモンド様のリードに合わせて、くるりと回る。
一曲踊り終わったところで、二人でバルコニーに出た。
「ライム家のレイズ様とは、一度お話をしてみたいと思っていたんです」
「まあ、どうして?」
私がそう言うと、レイモンド様が私の耳元でささやいた。
「正義のために悪役になることも、いとわないと聞いていたものですから」
「あら、悪役ですって? 噂を信じてはいけませんわ」
私はクスクスと笑った。
「貴方の黒く長い髪と、黒い瞳は魅力的ですね」
「カラスのようだと言われましたわ」
私が微笑みながらそう言うと、レイモンド様も微笑んだ。
「ドレスが黒いおかげで、葡萄酒の染みも目立ちませんよ」
レイモンド様はそう言って、私のドレスを軽く撫でた。
「また、お会いしましょう」
「ご縁があれば」
「人混みは苦手なのですが、仕事ですので仕方有りませんね」
レイモンド様はそう言って、パーティー会場に戻っていってしまった。
「王子に見初められたのかしら? 運の良いこと」
悔しがるサニー嬢を思い浮かべて、私は一人微笑んだ。
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