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第一章 胎動編
【暗】拾捌ノ詩 ~頂上の戦 澄夜と神凛~
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「始めェェエエ!!!!」
掛け声と共に夜伽の挙げられた左手は振り下ろされ、始まった誓約。
ほぼ同時に駆け出し、距離を詰めた二柱。
澄夜は駆けながら両手に握られた赤き刀身より白煙が立ち上りし、二振りの日本刀を後方へと置くように捨て、周囲の砂鉄が澄夜の右掌に集まり、黒い日本刀を生成した。
(薙刀はリーチが長い……懐に入ってしまえば……)
神凛は右手に握った双雷刃を使い、大雑把な右の横薙ぎを放つ。
(流石は母上、尋常じゃなく速い。しかしその動きは読んでいた)
澄夜は咄嗟に身を低くし、左の横髪を掠らせながらも回避、そのまま空いた神凛の右胴へと飛び込み右薙を放つ。
「とっ━━」
取った!そう言おうとした矢先、突然神凛の姿が澄夜の視界から消えると同時に澄夜の刃は空を切る。しかし澄夜がその事を認識する前に刀が上へと弾かれた。
「え?」
ほんの刹那、視線が弾かれた刀へと向くのと同時に澄夜は長年の勘。否、それは危険を察知した知性体としての本能により無意識に後方へと飛んだ。その行動には思考すら入り込む余地は無く、人の脊髄反射に似た現象である。しかし……。
「ゴフッ……」
腹部を襲う激痛。視線を腹部へ向けた澄夜の瞳に飛び込んできた視覚情報。最速である本能的な回避すら意味を成さぬほど高速な薙刀の柄。少し遅れて聞こえたズンッという音。
「音が……遅れ……て……」
澄夜は神体の腹部が潰れる感覚を覚え、口から黒い液を零しながら吹っ飛ばされた。
吹き飛ばされながら、視線を神凛へと戻した澄夜。神凛の奇抜な体勢から今起こった事を容易に察した。
(恐らく母上は右の横薙を放ち、こちらが回避の為身を低くし、横薙を放った直後、音すら置き去りにしつつ左の薙刀を既にこちらの刃が通過した位置の地面に刺したのだろう。そして地面に薙刀を突き立てた勢いと左腕のみの力で地面へと刺した薙刀を棒の代わりに宙返りを行い、一度こちらの右薙を躱し、すでに通過したこちらの刀の峰側から刀身を横から上方向へと蹴り上げる事で必然的に身を高くさせると同時に右の横薙を行った薙刀の柄を手離し、石突近くにつけられた飾り房を一瞬掴み、再度石突近くの柄を握ることで右腕の捻れを解消しつつ、そのままがら空きとなった私の腹部を打ったのだろう。
澄夜は吹っ飛ばされながらも考えていた。
(まずは体勢を立て直さないと……間一髪、後方へと跳んだ事で動けなくなる程のキズではない。まずは距離をとることが先決……)
〔咄嗟に後方に飛び威力を軽減したか……しかし──〕
神凛は着地と同時に右手で澄夜の顔面を掴む。
『遅いのぅ、逃げられると思うたか?神草』
(な、自ら吹っ飛ばした私に追いついて……)
そして左手に握られた薙刀を、前方の地面に投擲し、必然的にこちらに向かい突き出す石突。神凛は澄夜の頭部をそのまま──。
ズドン……
砂煙が舞い上がり、少しの静寂の後、砂煙の中から勢いよく飛び出して来たのは澄夜である。澄夜は地面を数度弾み、地面をゴロゴロと転がり、程なく仰向けに止まる。
「クッ……」
地面に手をつきながらゆっくりとその神体を起こす澄夜。ポタポタと黒い液が手をついた周囲の地面を濡らす。
そっと左手で腹部を触る澄夜。腹部はぐっしょりと濡れていた。想像はしていた。先程受けた腹部を捉えた数度の打撃。視界の下の方で現に捉えている地面に出来た黒き水溜まりへと滴り波紋を作る黒き水滴。未だに戻らぬ腹部の感覚。腹部にも相当な負傷を負ったのだろう。
(神体の再構成──。いや今はそんな余裕は無い)
両者、陰ノ神以前に戦神である。双方戦闘に長けた神。必然的に洞察眼、状況把握に長けているのだ。
(直ぐに追撃してきてもいいはず……しかし母上は未だ砂煙の中……用心にするに越したことなし)
口から滴る黒い液を袖で拭うと、砂煙から視線を外さずに両手に白煙を纏う紅き刀身の日本刀を生成する。
澄夜は両足で立ち上がるもふらつき座り込む。
ほぼ同時に砂煙から出てきた神凛。右腕は手首から切断され、断面から黒い液が絶え間なく溢れ出している。
『ほう……よく研ぎ澄まされし勘、そして技をしておる。神体の再構成などという悪手を選なきこと天晴れである』
神凛の口角が吊り上がる。
『大抵の神妖怪共なら既に塵芥残さず無に帰しておろうが、よもや朕の手首を切断して逃れるとは、ただの神草ではないな……ん?』
神凛は切断された右腕の断面をまじまじと見つめる。
〔再生が上手くできない。断面を焼く刀か……実に厄介……まぁよい〕
神凛は顔色一つ変えずに左手で作った手刀にて自らの右腕を肘より切断する。
『神草、御前は朕に面を掴まれた瞬間、朕の腕を切ることは叶ったはず、しかしそれを行わなかった所を見るに……』
その断面がボコボコと隆起し、激しく黒い液を撒きながら新しい腕を形成し始めた。
『さしづめ石包で頭を割られる寸前で避け、朕を串刺しにでもするつもりだったのだろう?』
本来ならば神体の再構成を行っている今この瞬間が澄夜にとっては絶好の好機である。しかし、澄夜は攻撃以前に立ち上がれなかった。それ程迄に腹部へのダメージが顕著だったのだ。
神凛は二度三度、右手の掌握動作を行いながら澄夜に歩み寄る。
「グッ……」
澄夜は右手に細い棒状の黒い塊を形成、それをまるで杖の様に使って苦しそうに立ち上がる。
『ふむ……まだ双眸は死なぬか……その気力、尊敬に値する』
神凛は神妙な面持ちで自らの左頬を擦り左掌を見つめる。
〔だが……神草が行った行為の意図、そしてさきの霊球に起きた事象──〕
先程、石突へと澄夜の頭部を押し込んだ神凛。だが石突に接触する寸前で澄夜が生成した赤き刀身の小刀にて腕を切り落とされ、同時に澄夜が神体を捩った事で串刺しは回避されたのだ。神凛はその事を読んでいた。澄夜の腹部を目掛けて蹴りを繰り出そうとしたその時、澄夜は一つ奇妙な行動をした。
なんと神凛の左頬を撫でたのだ。防御や攻撃ならまだしも相手の頬を撫でるという本来有り得ない行為は神凛の経験上理解出来なかった。
澄夜はそのまま神凛の蹴りを腹部に受け地面に衝突、咄嗟に受身を取った様だが、ただでさえ地面を割る程の威力を有する神凛の蹴りである。蹴りが直撃した腹部のダメージが大きく澄夜は口から黒い液を吹いた。
更に追撃せんと神凛は左掌に生成した赤黒い雷を纏った霊力の球体を澄夜の腹部めがけ突き出した──のだが澄夜の腹部に直撃する瞬間、霊球が突然縮小した。これは神凛が霊球を圧縮したのでは無い。まるで何かに霊球に込められた神力が吸収されるかの如く、突然霊球に込められた霊力かま減衰したのだ。神凛は咄嗟に霊球を炸裂させる事で澄夜を砂煙の外に弾き出し、今に至る。
「けほっごほっ……なんなのですか母
上……。私のお腹に恨みでも……?」
『神草。意識と外界を隔てる境界の形状は整っているものだが……此方の境界。その形状、妙であるな?まるで──』
一瞬、口ごもった神凛に、すかさず澄夜は言葉を重ねた。
「お腹だけ別の存在であると言いたいのですか母上」
『ふむ……自覚は有するか……その腹、霊球を吸収した事を鑑みるに何かしらのカラクリがあると見た』
「……」
澄夜はゆっくりと腰を落とし、深く構え、ゆっくりと右足を踏み出す。踏み出した右足が地面に接触した瞬間、異常な加速を生じさせ、グンッと距離詰めた。
〔先程より速くなりおった……その速さ隠しておったか……いやこれは、火事場の馬鹿力だな。しかし先程より直線的……迎え撃つに易し〕
片方の薙刀を地面に突き刺し、もう片方を両手持ちにて構えた神凛は膝を曲げ前方に跳躍しようとする。しかし神凛はそのまま前方に転倒しそうになる。
『な、脚底が地より離れぬ!神草何を──』
既に澄夜は神凛の懐に入り込んでいる。
咄嗟に神凛は、次の瞬間には繰り出されているであろう攻撃を防御せんと足を地面から剥がす為に、意識の一部を両足に向けること刹那の遅れ。
刹那の一瞬であろうと、神凛の意識が澄夜から逸れた事実。今の澄夜にとっては十分すぎる隙だった。意識を澄夜に戻した神凛は言葉を漏らす。
『な、いな──』
神凛の意識がそれた瞬間起こった、澄夜の更なる加速。それは神凛の防御の瓦解をより顕著にした。
「母上!先の御返しです!」
澄夜が突き出した右拳は深々と神凛の腹部に食い込む。
『グッ……コポッ……』
ヌメっとした感覚。
澄夜の右拳に伝わる外皮を突き破り内側にまで達したのだ。澄夜の前腕から肘へと黒い液が伝い、肘から地面へとポタポタと滴る。
ふいに澄夜は視線を上げた。上を見上げた理由は澄夜自身にも理解出来なかったが、知性体としての本能から来る危機感知能力によるのかもしれない。
「ヒッ……」
澄夜の視界に飛び込んできたのは不自然なまでに口角が吊りあがった神凛の満面の笑顔。しかし、その目は強膜が黒く染まり、真紅の光を放つ双眸であった。
そして神凛の振り上げられた両手に握られていた物、勿論神凛の愛刀である双雷刃である。しかし澄夜に向けられたのは刃ではなく黒い稲妻を放つ薙刀の石突。
本来はこちらに刃を向け、突き刺さす技だろう。しかし一部の陰ノ神にとって首は飾りに近しい役目でしかない。その事を神凛が知らない訳が無い。それは神凛が薙刀の刃ではなく石突を向けているという行動が物語っている。
(まさか!)
澄夜は神凛の腹部に深々と突き刺さった右腕を引き抜こうと両足に力を入れるもビクともしない。
「抜けろォォォ!!」
澄夜の叫びを嘲笑うかの如く神凛は石突に陣を展開する。
(あれは、封い──)
澄夜は右腕を引き抜こうと更に脚に力を入れた。次第に澄夜自身の脚が後方へと引く力に耐えられず、ブチッブチッと澄夜の右腕からは繊維が引きちぎれる音が伝わる。
次第に澄夜の思考は腕を引き抜き、次に繰り出されようとしている封印の陣が施された薙刀による一撃を防御する事より、右腕を千切れてでも薙刀を回避する方向性の思考へとかわりつつあった。
(はやく……)
ブチブチッ……
(はやく……!)
ブツン……ズドンッ
刹那の差で澄夜の右腕が肘から千切れる方が早かった。澄夜の鼻頭を焦がしつつもスレスレを石突が通過し、地面に接触した石突は巨大なクレーターを生じさせ砂煙を舞いあげるのと同時に、澄夜は再び吹っ飛ばされ地面を転がる。
(クッ……さっきのアレは束縛方の封印術……危うく地面に……しかし1つ準備が出来た……この距離だと巻き添えを受ける……もう少し距離を取ろう……)
澄夜はうつ伏せとなり、匍匐前進で距離を取ろうとした。
『距離をとる取る気か……させ──』
腹部から千切れた澄夜の右腕を引き抜き追撃を加えんと跳躍する姿勢をする神凛は突然片膝を地面に付け口を押える。指の間から滴る黒い液。
〔朕が思う以上に傷が深いか……だが神草も同じく傷を負っている。最低限、神体を再構成しよう〕
「させません!」
澄夜がボロボロの神体を大きく捻り、左拳を神凛に向け突き出す。
「禍夜廻陣鉄華繚乱」
澄夜は左の拳を開く。同時に神凛の神体内部から外皮を突き破り黒く太い針が無数に生える。程なくして黒い針の先端が、まるで華の様に開き、神凛は黒い華に包まれる。
「終わりです母上。私が先の突撃の際に握っていた二振りの日本刀何処に行ったと思いますか?」
ホワンッと神凛の胸部が淡い赤色の光を放つ。
『…………フッ……朕が神体の内部か……流石は我が娘』
既に黒い華に覆われ表情は分からないが、澄夜には神凛が笑っている気がした。澄夜は左拳を強く握ると同時に神凛の神体がまるで腹部を中心に圧縮されていくかの如く、次第に黒い華が神体へとくい込み、神凛の神体は撓み、潰れ始める。
「禍夜廻陣 磁核引壊 黒核ノ法呪……私の大技、犠牲法呪の一つです」
程なく延々と黒い液が滲み出す掌サイズの球体となった神凛を見下ろし、澄夜は座り込む。
「勝て……た……母上……に……平安の世に猛威を振った母上に……それに……」
澄夜は目から溢れる涙を拭う。この涙は悲しさからでは無い。初めて母に兵法を褒められた事に対する感動である。
「流石は朕が娘か……」
澄夜は先程の神凛の言葉を噛み締める。
『とでも言うと思ったか?神草』
「え!?」
ズブシュッ……
澄夜が振り向くより早く、胸元から突き出す刃。
ゴポッ……
澄夜の口から大量の黒い液が溢れ出す。それでも振り向いた澄夜の目に飛び込んできた光景。変に小綺麗な右腕。そこから伸びるウネウネと蠢く繊維で構成された人の形。
嫌でも澄夜は理解し、後悔する。自身の詰めの甘さを。
澄夜が無意識に除外していた神凛が切り落とされた腕より全身を再構成する可能性……。
肉片から全身を再構成することは澄夜自身も可能である。裏を返せば澄夜の母親であり、師匠でもある神凛がその精度の再構成が出来ないはずがないのだ。
「斬り落とした……腕から……」
『ご明察、流石は若きといえど陰ノ神』
神凛はそのまま振り抜く。
神凛が刺し振り抜いた刃は澄夜を上半身と下半身に
力なく横たわる。それを見ていた夜伽が簾の奥の篝夜陽皇大神に問う。
「澄夜さんが横たわってしまいました姉様。誓約は終わりにしますか?」
「あら、夜伽さん。それは貴方が一番よく分かってるのではないでしょうか。この程度で倒れる程、澄夜さん……いえ彼女達は弱くは無いことを……」
夜伽は口を扇子で隠し、クスクスと笑う。
「姉様には敵いません……あら、ところで朕とした事が忘れていました」
「何か忘れていたのですか?夜伽さん」
夜伽は社の階を降り、最下段から下を覗き込み、わざと神凛に聞こえる声量で呟く。
「神凛、その神体の再構成力、まるで人々が千度潰しても尚死なぬ 阿久多牟之の様だの。輪廻転生の暁には 阿久多牟之にでも成るのです?」
※ 阿久多牟之とは現在で言うゴキブリである
夜伽が忘れていた事、それは平安の世当時の神死穢お馴染み、夜伽の神凛に対する煽りである。
「朕としたことがつい本音を……陰ノ神に転生などありませんでしたね」
「降りてこい、夜伽。今此処で白黒つけてやろうぞ」
「あら、御誘いですか。本物の神凛なら御受けするのですが、己れの様な神器が真似ただけの雷虫とこの朕がやり合うなどとは片腹痛し。消しますよ」
「いいだろう。この神草の後、その首貰うから待っておれ」
「己れにその様な事が出来るのですか?」
黒い千早の袖で口元を隠し、クスクスと笑う夜伽。
「夜伽さん……」
「は、はい姉様」
夜伽の背後、簾の奥に御座す篝夜陽皇大神からの「要らぬ戯れは後」と言う怒気がひしひしと伝わってくる。
「それより神凛、良いんですか?朕に気を取られて」
ペタッ……
神凛の胸に何者かが触れる。
「のぅ神凛、己れがやり合っている相手が一体何者なのか分かっておるのか?」
視線を前方に戻した神凛の目に映ったモノ。それは澄夜である。それも一回り小さな澄夜。しかし先程とは何かが違う。
「神穢……天与斥引渡世天淵」
それに気付く頃には神凛の胸部には大穴が空いていた。
『後光……神御衣……渡世天淵……この神草……成り……おった……奴に……』
恐る恐る振り返る神凛。
神凛からはるか後方にかけて円錐型に放たれたであろうそれは、抉れた地面を見るに離れれば離れるほど、深く広範囲を削り取っており、途方もなく後方にぽっかりと空いた巨大な穴からは純白の空間とは対を成す漆黒の虚無が覗く。
『慈愛の神格が眠りに落ち、酷薄の神格が目覚めたか…………」
コポッ……ビチャビチャ……
神凛の口から流れた黒い液が顎を伝い、顎先から雫となって滴る。そして削り取られた胸部からもまるで滝の様に絶え間なく黒い液が溢れ出し、ゆっくりと片膝を地面につく。
『いいだろう……認めよう……朕に挑みし神草達よ……此方は強き者だ……最早……加減は要らぬな……』
「……!?」
澄夜?は後方に跳び、神凛から距離をとった。その理由はとても単純。殺されるかもという本能的に感じた死の恐怖からである。
次の瞬間、神凛へと降り注ぐ数多の赤黒き稲妻。それらは空間を引き裂き、空気を帯電させ、白き空間を這うかの如くひび割れを広げてゆく。
「……クッ……なんという……出力…………まさか……」
夜伽は簾を見て、奥に座す篝夜陽皇大神へ声をかける。
「姉様?あの神凛は誓約用の傀儡のはずでは……?」
「いいえ夜伽さん。澄夜さん達と相対するは正真正銘の神凛さんです。それは夜伽さんが一番わかっているはずでしょう?夜伽こと 文車皇大神が平安の世にて多くの場面にて鎬を削った好敵手であり、貴方と同じ二大陰極神の一柱。火雷皇大神こと神凛さんです」
「分かりました姉様。ではこの誓約空間の外側から朕達の結界術にて補強します」
夜伽は袖口から五冊の書物を取り出し、そっと自身を囲うように地面に置いた。
夜伽は立ち上がり、パンパンッと二度柏手を打つ。
まるで夜伽の柏手に呼応するかの如く、パラパラとページが捲れる五冊の書物。
「朕は渇望する大厄を避ける権能を━━」
夜伽の両掌にて開かれる一対の扇子
「朕は忌避する政を妨げる無知なる禍を━━」
舞にしてはあまりに丁重。一挙手一投足存在するにも関わらず、意識的にしか形を認知出来ない万物の様に、ただ存在する事、舞っている事実が当たり前のあまり意識的にしか気付かれ無いほどの洗練され世界に溶け込んだ作法。そして強大無比であるにも関わらずあまりに静か過ぎる霊気の揺らぎ。
夜伽は両の足を揃え、右足を前に出し左膝を、そして右掌に持った扇子を階に置き、立ち上がりながら、そのまま扇子をゆっくりと頭上まで挙げ、そっと左手を離す。
ヒラヒラと舞い落ちる扇子。
書物の止まった頁を横目に五回別々の形の掌印を結び、舞い落ちる扇子を一糸乱れぬ所作にて左手の指先で摘み、袖口から取り出した小刀を口に咥え、刃先をなぞる様にスッと右の人差し指に切込みを入れ、黒き液が滴る人差し指で小刀の刀身をもう一度なぞる。そして━━
夜伽は小刀の柄を右手で握り、それを円陣の中心へと突き立てた。
突き立てられた小刀。体液で黒く染ったその刃からは、まるで流れ出すかの如く絶え間なく黒い液が溢れ出す。
ゴポッ……ゴボゴボゴボ……
泡立ち、範囲を広げてゆく黒い液。
程なく黒い液が周囲の書物を呑み込んだ瞬間、書物があった場所に灯る紅い光。
それらは互いを結ぶかのようにそれぞれが紅き光のラインを描き、何かしらの模様を形成した。
逆五芒星である。
それに続き、程なく逆五芒星の頂角には円が形成され、一度広範囲に拡がった黒い液が逆五芒星の頂点に形成された円に吸い込まれるかの如く寄り集まり半球を形成する。
揺らめき泡立ちながら半球は少しずつ縮んでゆく。その過程で次第に人型となってゆき、仕舞いには五人のボロ布を被った人型に至る。
それ等は一度、夜伽に向かい片膝を着き会釈した後、立ち上がる。
「人使いならぬ神使いが悪いですよ夜伽様、先の戦いにて愛娘、華寅に負わされた負傷がまだ完全に回復していないのに……」
ボロ布を頭から被った五人の内の一人、「穀雨」と書かれた白い顔布をした人型がくねくねと身体を捩らせている。
「木通さん、くねくねと身体を捩らせていないで、あの莫大な霊力の奔流を然るべき場に導きなさい」
「夜伽様~ご冗談を━━」
「貴方には朕が冗談を言っているように見えるのですか?木通さん」
「プフッ……アハハ……………本気?」
フッと真顔になる木通。
「はい、本気です」
「いやいや、アレに巻き込まれたら私は塵になるよ!私に消滅しろと!?世界の肥やしになれと!?」
「消し飛ばされたらその時はその時です」
「冷た!塩対応にもほどない!?」
コツンッ
「痛っ!」
「コレッ、夜伽様に失礼じゃろう?」
木通の頭を小突いたのは頭からボロ布を被り、「霜降と書かれた顔布にて素顔を隠したボブカットの白髪を携えた少女。
「何するのさ~玉簾~」
「次は頭部を割る……」
玉簾は太刀を鞘から少し引き抜き、光が差した光を反射した刀身がキラリと光る。
それを見た木通は凄まじく自然な動作で頭を垂れる。玉簾もまたいとも自然な動作で抜刀し太刀を振り被る。
「土下座とは首を差し出すことですじゃ。良かろう。その首落とすとしようかの」
玉簾が太刀を振り下ろそうとした瞬間、夜伽が制止する
「木通さん!首を無闇矢鱈に差し出さないで下さい。玉簾さんも他神を斬首しようとしないで下さい。今は有事です戯れは後ほど」
「「御意」」
「牡丹華神さん、霜柱神さん、 霎神さん。あなた方は二柱の補助を」
「「「御意」」」
木通と玉簾の二柱が片膝を地面に付き頭を下げ、それに続くように他の三柱も頭を垂れ、平伏する。
「夜伽様、失礼なのを承知で問わせて頂くのじゃが、神穢弐拾肆節の二柱、穢漆拾弐候の三柱だけでは実力不足かとぞんじますじゃ。現に誓約に身を置かれておられる冠名「葉月」の澄夜様を除いて他の 神死穢十二月命の方々はお呼びにならなかったのです?」
そう切り出したのは玉簾だった。
「他の 神死穢十二月命の方々は儀式による招集を行いましたが一柱もいらっしゃりませんでした。おそらく各々に馳せ参じる事が出来ない、または馳せ参じない事情があるのでしょう。それに──」
「夜伽さん?」
「は、はい姉様」
大社簾の奥、篝夜陽皇大神の少し低い聲に夜伽は肩をビクッと動かす。
「貴方が下位の神々に説明するのは後でも出来るはず、そうしている間にも誓約は進行され、展開は大きく変わりました。上をご覧なさい」
神凛と澄夜を除くその場の柱が見上げた天井はまるでガラスが割れたかのように砕け、そこから見えるのは上下反転した現世の夜景である。
「何あれ……」
木通がボソッと疑問をもらす。それに低いトーンの篝夜陽皇大神が答える
「この短時間で、誓約の結界を破り、更には隠世の数多の層を破り、現世との直通の境界穴が開いてしまいました。それほどの力とは、相も変わらず感服致しますね」
空気が張り詰め、全ての時間が止まったかのような静寂の中、篝夜陽皇大神が再び口を開く。
「始まりますよ。平安の世に最強の鉾と詠われた伝説の戦神の戦いが……」
【退穢庁 総本部 中心部 瓦礫の塔】
空に出現した巨大な割れ目、そこより流れ出す気を感じとり見上げる小夜。
「アレは何?澄夜様の気──」
「隙を見せたな、黒水の穢神!」
小刀で時雨の一閃をすんでのところで受け止めた小夜。しかし、ジリジリと押し込まれる。
(なっ……押し込まれ……人間の身でなんて馬鹿力してるんだ……コイツ片手なのに……」 )
「五月雨、今です!あわせなさい!」
恍惚な表情を浮かべ空を見ていた五月雨はハッとした表情を浮かべ時雨の元へと走る。
「ごめん、おねぇちゃん余所見してた!」
「ちっ……」
小夜は舌打ちをして、斬首しようと振るわれた時雨の一閃を防ごうとする力の向きを変え受け流しつつも、頭を下げる事で頭上を刃が通過する様に受け流した。
そして間髪入れずに時雨の腹部に蹴りを入れ、時雨に続こうとする五月雨にぶつける。
(一瞬気を取られて防御が間に合わなかった)
右頬に浅い太刀傷がつき、黒い液が小夜の右頬を伝う。
どれだけ痛めつけようと立ち上がろうとする二人に対し、小夜は吼えた。
「邪魔だ、痴れ者が!!」
【退穢庁 総本部 中心部 雪奈の巨竹】
「これはこれは神凛様の霊力質、そして神凛様の霊力質とぶつかるのは澄夜お嬢様と██お嬢様の霊力質とは……あちらも面白そうなことをなさっているのだね」
陽炎神は白無垢の袖で口元を隠しクスッと笑った。
【篝夜陽神宮 水無月大社 大広間】
大広間の中心で泣く白無垢姿の少女。その手には長脇差が握られており、それを首に当てている。刃先を黒い液が伝い、畳に染みを作る。
「恐ろしいのじゃ……恐ろしいのじゃ……恐ろしいのじゃ……天地人が恐ろしいのじゃ……」
突然トントントンと軽く障子が叩かれる。
「ピッ……」
少女は大きく肩を動かして驚き、音源とは反対側の角に丸まり、涙を流しながら自分の首に長脇差を構える。
程なくして障子がスッと開かれ、大広間に入ってきたのは白髪に、白い大正時代の学生服の様な装衣を身に纏った少年。顔には顔布「秋分」という文字が書かれている。
「失礼します。 皆盡神様?」
少年は顔布を上げて大広間を見回し少女を見つけるとそっと抱え上げる
「また幼子の姿で広間の端っこで丸まられて……怖かったですね。恐ろしかったですね。短時間とはいえ、大広間に一柱にして申し訳ありません」
「うぅ……」
少女の黒い涙が少年の装衣を黒く染める。
「さて出ましょうかね 皆盡神様」
少年は少女を抱え大社の外へと足を運ぶ。外には既に水無月大社に仕える陰ノ神々が空を見上げていた。
「あ、おーい!空が凄いことになってるぞ!」
見上げている者達の内、巫女服を纏い「処暑」と書かれた顔布をした白髪を三つ編みにした女性が走ってくる。
「お、 皆盡神様が大社から外に、これは珍しい!」
女性が一柱、盛り上がっているのを横目に少年は空を見上げる。そこには誓約を行う空間の天井にも現れたモノと同じ逆さの現世が割れた空から覗いていた。ひとつ違うのは隠世の地面から割れた空に向かい二重螺旋の形で立つ、光の柱であった。
「これは凄い……それで貴方がアレをやったのですか?」
「出来るか!!」
「冗談です。しかしこの急激に高まる霊力質は澄夜様と██様、そしてあともう一柱は……あぁ懐かしい神凛様ですね。おっと……」
少女が少年の腕の中から飛び降り、スタッと着地するとみるみる成長し始めた。
暫くして本来の姿であろう容姿となった少女は両手を祈るように組み涙を浮かべ、叫ぶ。
「澄夜姉様ァァ、朕は姉様を応援しておりますじゃァァ!!」
「………………」
「…………」
「……」
「涼風」と書かれた顔布をした青年が微動だにしない少女に駆け寄る。
「あのぅ」
少女からの返答は無く、辺りに静寂が包む。
「 皆盡神様?」
少女を覗き込んだ青年の動きがピタッと止まった。
「え……泡吹いてる……」
少女は立ったまま白目を向き、泡を吹いていた。
「立ったまま気を失ってる!?」
「あぁやはり……無謀でしたか……」
気絶した少女の名は水雫月 林鐘。 神死穢十二月命第漆格「水無月」こと 皆盡神。
掛け声と共に夜伽の挙げられた左手は振り下ろされ、始まった誓約。
ほぼ同時に駆け出し、距離を詰めた二柱。
澄夜は駆けながら両手に握られた赤き刀身より白煙が立ち上りし、二振りの日本刀を後方へと置くように捨て、周囲の砂鉄が澄夜の右掌に集まり、黒い日本刀を生成した。
(薙刀はリーチが長い……懐に入ってしまえば……)
神凛は右手に握った双雷刃を使い、大雑把な右の横薙ぎを放つ。
(流石は母上、尋常じゃなく速い。しかしその動きは読んでいた)
澄夜は咄嗟に身を低くし、左の横髪を掠らせながらも回避、そのまま空いた神凛の右胴へと飛び込み右薙を放つ。
「とっ━━」
取った!そう言おうとした矢先、突然神凛の姿が澄夜の視界から消えると同時に澄夜の刃は空を切る。しかし澄夜がその事を認識する前に刀が上へと弾かれた。
「え?」
ほんの刹那、視線が弾かれた刀へと向くのと同時に澄夜は長年の勘。否、それは危険を察知した知性体としての本能により無意識に後方へと飛んだ。その行動には思考すら入り込む余地は無く、人の脊髄反射に似た現象である。しかし……。
「ゴフッ……」
腹部を襲う激痛。視線を腹部へ向けた澄夜の瞳に飛び込んできた視覚情報。最速である本能的な回避すら意味を成さぬほど高速な薙刀の柄。少し遅れて聞こえたズンッという音。
「音が……遅れ……て……」
澄夜は神体の腹部が潰れる感覚を覚え、口から黒い液を零しながら吹っ飛ばされた。
吹き飛ばされながら、視線を神凛へと戻した澄夜。神凛の奇抜な体勢から今起こった事を容易に察した。
(恐らく母上は右の横薙を放ち、こちらが回避の為身を低くし、横薙を放った直後、音すら置き去りにしつつ左の薙刀を既にこちらの刃が通過した位置の地面に刺したのだろう。そして地面に薙刀を突き立てた勢いと左腕のみの力で地面へと刺した薙刀を棒の代わりに宙返りを行い、一度こちらの右薙を躱し、すでに通過したこちらの刀の峰側から刀身を横から上方向へと蹴り上げる事で必然的に身を高くさせると同時に右の横薙を行った薙刀の柄を手離し、石突近くにつけられた飾り房を一瞬掴み、再度石突近くの柄を握ることで右腕の捻れを解消しつつ、そのままがら空きとなった私の腹部を打ったのだろう。
澄夜は吹っ飛ばされながらも考えていた。
(まずは体勢を立て直さないと……間一髪、後方へと跳んだ事で動けなくなる程のキズではない。まずは距離をとることが先決……)
〔咄嗟に後方に飛び威力を軽減したか……しかし──〕
神凛は着地と同時に右手で澄夜の顔面を掴む。
『遅いのぅ、逃げられると思うたか?神草』
(な、自ら吹っ飛ばした私に追いついて……)
そして左手に握られた薙刀を、前方の地面に投擲し、必然的にこちらに向かい突き出す石突。神凛は澄夜の頭部をそのまま──。
ズドン……
砂煙が舞い上がり、少しの静寂の後、砂煙の中から勢いよく飛び出して来たのは澄夜である。澄夜は地面を数度弾み、地面をゴロゴロと転がり、程なく仰向けに止まる。
「クッ……」
地面に手をつきながらゆっくりとその神体を起こす澄夜。ポタポタと黒い液が手をついた周囲の地面を濡らす。
そっと左手で腹部を触る澄夜。腹部はぐっしょりと濡れていた。想像はしていた。先程受けた腹部を捉えた数度の打撃。視界の下の方で現に捉えている地面に出来た黒き水溜まりへと滴り波紋を作る黒き水滴。未だに戻らぬ腹部の感覚。腹部にも相当な負傷を負ったのだろう。
(神体の再構成──。いや今はそんな余裕は無い)
両者、陰ノ神以前に戦神である。双方戦闘に長けた神。必然的に洞察眼、状況把握に長けているのだ。
(直ぐに追撃してきてもいいはず……しかし母上は未だ砂煙の中……用心にするに越したことなし)
口から滴る黒い液を袖で拭うと、砂煙から視線を外さずに両手に白煙を纏う紅き刀身の日本刀を生成する。
澄夜は両足で立ち上がるもふらつき座り込む。
ほぼ同時に砂煙から出てきた神凛。右腕は手首から切断され、断面から黒い液が絶え間なく溢れ出している。
『ほう……よく研ぎ澄まされし勘、そして技をしておる。神体の再構成などという悪手を選なきこと天晴れである』
神凛の口角が吊り上がる。
『大抵の神妖怪共なら既に塵芥残さず無に帰しておろうが、よもや朕の手首を切断して逃れるとは、ただの神草ではないな……ん?』
神凛は切断された右腕の断面をまじまじと見つめる。
〔再生が上手くできない。断面を焼く刀か……実に厄介……まぁよい〕
神凛は顔色一つ変えずに左手で作った手刀にて自らの右腕を肘より切断する。
『神草、御前は朕に面を掴まれた瞬間、朕の腕を切ることは叶ったはず、しかしそれを行わなかった所を見るに……』
その断面がボコボコと隆起し、激しく黒い液を撒きながら新しい腕を形成し始めた。
『さしづめ石包で頭を割られる寸前で避け、朕を串刺しにでもするつもりだったのだろう?』
本来ならば神体の再構成を行っている今この瞬間が澄夜にとっては絶好の好機である。しかし、澄夜は攻撃以前に立ち上がれなかった。それ程迄に腹部へのダメージが顕著だったのだ。
神凛は二度三度、右手の掌握動作を行いながら澄夜に歩み寄る。
「グッ……」
澄夜は右手に細い棒状の黒い塊を形成、それをまるで杖の様に使って苦しそうに立ち上がる。
『ふむ……まだ双眸は死なぬか……その気力、尊敬に値する』
神凛は神妙な面持ちで自らの左頬を擦り左掌を見つめる。
〔だが……神草が行った行為の意図、そしてさきの霊球に起きた事象──〕
先程、石突へと澄夜の頭部を押し込んだ神凛。だが石突に接触する寸前で澄夜が生成した赤き刀身の小刀にて腕を切り落とされ、同時に澄夜が神体を捩った事で串刺しは回避されたのだ。神凛はその事を読んでいた。澄夜の腹部を目掛けて蹴りを繰り出そうとしたその時、澄夜は一つ奇妙な行動をした。
なんと神凛の左頬を撫でたのだ。防御や攻撃ならまだしも相手の頬を撫でるという本来有り得ない行為は神凛の経験上理解出来なかった。
澄夜はそのまま神凛の蹴りを腹部に受け地面に衝突、咄嗟に受身を取った様だが、ただでさえ地面を割る程の威力を有する神凛の蹴りである。蹴りが直撃した腹部のダメージが大きく澄夜は口から黒い液を吹いた。
更に追撃せんと神凛は左掌に生成した赤黒い雷を纏った霊力の球体を澄夜の腹部めがけ突き出した──のだが澄夜の腹部に直撃する瞬間、霊球が突然縮小した。これは神凛が霊球を圧縮したのでは無い。まるで何かに霊球に込められた神力が吸収されるかの如く、突然霊球に込められた霊力かま減衰したのだ。神凛は咄嗟に霊球を炸裂させる事で澄夜を砂煙の外に弾き出し、今に至る。
「けほっごほっ……なんなのですか母
上……。私のお腹に恨みでも……?」
『神草。意識と外界を隔てる境界の形状は整っているものだが……此方の境界。その形状、妙であるな?まるで──』
一瞬、口ごもった神凛に、すかさず澄夜は言葉を重ねた。
「お腹だけ別の存在であると言いたいのですか母上」
『ふむ……自覚は有するか……その腹、霊球を吸収した事を鑑みるに何かしらのカラクリがあると見た』
「……」
澄夜はゆっくりと腰を落とし、深く構え、ゆっくりと右足を踏み出す。踏み出した右足が地面に接触した瞬間、異常な加速を生じさせ、グンッと距離詰めた。
〔先程より速くなりおった……その速さ隠しておったか……いやこれは、火事場の馬鹿力だな。しかし先程より直線的……迎え撃つに易し〕
片方の薙刀を地面に突き刺し、もう片方を両手持ちにて構えた神凛は膝を曲げ前方に跳躍しようとする。しかし神凛はそのまま前方に転倒しそうになる。
『な、脚底が地より離れぬ!神草何を──』
既に澄夜は神凛の懐に入り込んでいる。
咄嗟に神凛は、次の瞬間には繰り出されているであろう攻撃を防御せんと足を地面から剥がす為に、意識の一部を両足に向けること刹那の遅れ。
刹那の一瞬であろうと、神凛の意識が澄夜から逸れた事実。今の澄夜にとっては十分すぎる隙だった。意識を澄夜に戻した神凛は言葉を漏らす。
『な、いな──』
神凛の意識がそれた瞬間起こった、澄夜の更なる加速。それは神凛の防御の瓦解をより顕著にした。
「母上!先の御返しです!」
澄夜が突き出した右拳は深々と神凛の腹部に食い込む。
『グッ……コポッ……』
ヌメっとした感覚。
澄夜の右拳に伝わる外皮を突き破り内側にまで達したのだ。澄夜の前腕から肘へと黒い液が伝い、肘から地面へとポタポタと滴る。
ふいに澄夜は視線を上げた。上を見上げた理由は澄夜自身にも理解出来なかったが、知性体としての本能から来る危機感知能力によるのかもしれない。
「ヒッ……」
澄夜の視界に飛び込んできたのは不自然なまでに口角が吊りあがった神凛の満面の笑顔。しかし、その目は強膜が黒く染まり、真紅の光を放つ双眸であった。
そして神凛の振り上げられた両手に握られていた物、勿論神凛の愛刀である双雷刃である。しかし澄夜に向けられたのは刃ではなく黒い稲妻を放つ薙刀の石突。
本来はこちらに刃を向け、突き刺さす技だろう。しかし一部の陰ノ神にとって首は飾りに近しい役目でしかない。その事を神凛が知らない訳が無い。それは神凛が薙刀の刃ではなく石突を向けているという行動が物語っている。
(まさか!)
澄夜は神凛の腹部に深々と突き刺さった右腕を引き抜こうと両足に力を入れるもビクともしない。
「抜けろォォォ!!」
澄夜の叫びを嘲笑うかの如く神凛は石突に陣を展開する。
(あれは、封い──)
澄夜は右腕を引き抜こうと更に脚に力を入れた。次第に澄夜自身の脚が後方へと引く力に耐えられず、ブチッブチッと澄夜の右腕からは繊維が引きちぎれる音が伝わる。
次第に澄夜の思考は腕を引き抜き、次に繰り出されようとしている封印の陣が施された薙刀による一撃を防御する事より、右腕を千切れてでも薙刀を回避する方向性の思考へとかわりつつあった。
(はやく……)
ブチブチッ……
(はやく……!)
ブツン……ズドンッ
刹那の差で澄夜の右腕が肘から千切れる方が早かった。澄夜の鼻頭を焦がしつつもスレスレを石突が通過し、地面に接触した石突は巨大なクレーターを生じさせ砂煙を舞いあげるのと同時に、澄夜は再び吹っ飛ばされ地面を転がる。
(クッ……さっきのアレは束縛方の封印術……危うく地面に……しかし1つ準備が出来た……この距離だと巻き添えを受ける……もう少し距離を取ろう……)
澄夜はうつ伏せとなり、匍匐前進で距離を取ろうとした。
『距離をとる取る気か……させ──』
腹部から千切れた澄夜の右腕を引き抜き追撃を加えんと跳躍する姿勢をする神凛は突然片膝を地面に付け口を押える。指の間から滴る黒い液。
〔朕が思う以上に傷が深いか……だが神草も同じく傷を負っている。最低限、神体を再構成しよう〕
「させません!」
澄夜がボロボロの神体を大きく捻り、左拳を神凛に向け突き出す。
「禍夜廻陣鉄華繚乱」
澄夜は左の拳を開く。同時に神凛の神体内部から外皮を突き破り黒く太い針が無数に生える。程なくして黒い針の先端が、まるで華の様に開き、神凛は黒い華に包まれる。
「終わりです母上。私が先の突撃の際に握っていた二振りの日本刀何処に行ったと思いますか?」
ホワンッと神凛の胸部が淡い赤色の光を放つ。
『…………フッ……朕が神体の内部か……流石は我が娘』
既に黒い華に覆われ表情は分からないが、澄夜には神凛が笑っている気がした。澄夜は左拳を強く握ると同時に神凛の神体がまるで腹部を中心に圧縮されていくかの如く、次第に黒い華が神体へとくい込み、神凛の神体は撓み、潰れ始める。
「禍夜廻陣 磁核引壊 黒核ノ法呪……私の大技、犠牲法呪の一つです」
程なく延々と黒い液が滲み出す掌サイズの球体となった神凛を見下ろし、澄夜は座り込む。
「勝て……た……母上……に……平安の世に猛威を振った母上に……それに……」
澄夜は目から溢れる涙を拭う。この涙は悲しさからでは無い。初めて母に兵法を褒められた事に対する感動である。
「流石は朕が娘か……」
澄夜は先程の神凛の言葉を噛み締める。
『とでも言うと思ったか?神草』
「え!?」
ズブシュッ……
澄夜が振り向くより早く、胸元から突き出す刃。
ゴポッ……
澄夜の口から大量の黒い液が溢れ出す。それでも振り向いた澄夜の目に飛び込んできた光景。変に小綺麗な右腕。そこから伸びるウネウネと蠢く繊維で構成された人の形。
嫌でも澄夜は理解し、後悔する。自身の詰めの甘さを。
澄夜が無意識に除外していた神凛が切り落とされた腕より全身を再構成する可能性……。
肉片から全身を再構成することは澄夜自身も可能である。裏を返せば澄夜の母親であり、師匠でもある神凛がその精度の再構成が出来ないはずがないのだ。
「斬り落とした……腕から……」
『ご明察、流石は若きといえど陰ノ神』
神凛はそのまま振り抜く。
神凛が刺し振り抜いた刃は澄夜を上半身と下半身に
力なく横たわる。それを見ていた夜伽が簾の奥の篝夜陽皇大神に問う。
「澄夜さんが横たわってしまいました姉様。誓約は終わりにしますか?」
「あら、夜伽さん。それは貴方が一番よく分かってるのではないでしょうか。この程度で倒れる程、澄夜さん……いえ彼女達は弱くは無いことを……」
夜伽は口を扇子で隠し、クスクスと笑う。
「姉様には敵いません……あら、ところで朕とした事が忘れていました」
「何か忘れていたのですか?夜伽さん」
夜伽は社の階を降り、最下段から下を覗き込み、わざと神凛に聞こえる声量で呟く。
「神凛、その神体の再構成力、まるで人々が千度潰しても尚死なぬ 阿久多牟之の様だの。輪廻転生の暁には 阿久多牟之にでも成るのです?」
※ 阿久多牟之とは現在で言うゴキブリである
夜伽が忘れていた事、それは平安の世当時の神死穢お馴染み、夜伽の神凛に対する煽りである。
「朕としたことがつい本音を……陰ノ神に転生などありませんでしたね」
「降りてこい、夜伽。今此処で白黒つけてやろうぞ」
「あら、御誘いですか。本物の神凛なら御受けするのですが、己れの様な神器が真似ただけの雷虫とこの朕がやり合うなどとは片腹痛し。消しますよ」
「いいだろう。この神草の後、その首貰うから待っておれ」
「己れにその様な事が出来るのですか?」
黒い千早の袖で口元を隠し、クスクスと笑う夜伽。
「夜伽さん……」
「は、はい姉様」
夜伽の背後、簾の奥に御座す篝夜陽皇大神からの「要らぬ戯れは後」と言う怒気がひしひしと伝わってくる。
「それより神凛、良いんですか?朕に気を取られて」
ペタッ……
神凛の胸に何者かが触れる。
「のぅ神凛、己れがやり合っている相手が一体何者なのか分かっておるのか?」
視線を前方に戻した神凛の目に映ったモノ。それは澄夜である。それも一回り小さな澄夜。しかし先程とは何かが違う。
「神穢……天与斥引渡世天淵」
それに気付く頃には神凛の胸部には大穴が空いていた。
『後光……神御衣……渡世天淵……この神草……成り……おった……奴に……』
恐る恐る振り返る神凛。
神凛からはるか後方にかけて円錐型に放たれたであろうそれは、抉れた地面を見るに離れれば離れるほど、深く広範囲を削り取っており、途方もなく後方にぽっかりと空いた巨大な穴からは純白の空間とは対を成す漆黒の虚無が覗く。
『慈愛の神格が眠りに落ち、酷薄の神格が目覚めたか…………」
コポッ……ビチャビチャ……
神凛の口から流れた黒い液が顎を伝い、顎先から雫となって滴る。そして削り取られた胸部からもまるで滝の様に絶え間なく黒い液が溢れ出し、ゆっくりと片膝を地面につく。
『いいだろう……認めよう……朕に挑みし神草達よ……此方は強き者だ……最早……加減は要らぬな……』
「……!?」
澄夜?は後方に跳び、神凛から距離をとった。その理由はとても単純。殺されるかもという本能的に感じた死の恐怖からである。
次の瞬間、神凛へと降り注ぐ数多の赤黒き稲妻。それらは空間を引き裂き、空気を帯電させ、白き空間を這うかの如くひび割れを広げてゆく。
「……クッ……なんという……出力…………まさか……」
夜伽は簾を見て、奥に座す篝夜陽皇大神へ声をかける。
「姉様?あの神凛は誓約用の傀儡のはずでは……?」
「いいえ夜伽さん。澄夜さん達と相対するは正真正銘の神凛さんです。それは夜伽さんが一番わかっているはずでしょう?夜伽こと 文車皇大神が平安の世にて多くの場面にて鎬を削った好敵手であり、貴方と同じ二大陰極神の一柱。火雷皇大神こと神凛さんです」
「分かりました姉様。ではこの誓約空間の外側から朕達の結界術にて補強します」
夜伽は袖口から五冊の書物を取り出し、そっと自身を囲うように地面に置いた。
夜伽は立ち上がり、パンパンッと二度柏手を打つ。
まるで夜伽の柏手に呼応するかの如く、パラパラとページが捲れる五冊の書物。
「朕は渇望する大厄を避ける権能を━━」
夜伽の両掌にて開かれる一対の扇子
「朕は忌避する政を妨げる無知なる禍を━━」
舞にしてはあまりに丁重。一挙手一投足存在するにも関わらず、意識的にしか形を認知出来ない万物の様に、ただ存在する事、舞っている事実が当たり前のあまり意識的にしか気付かれ無いほどの洗練され世界に溶け込んだ作法。そして強大無比であるにも関わらずあまりに静か過ぎる霊気の揺らぎ。
夜伽は両の足を揃え、右足を前に出し左膝を、そして右掌に持った扇子を階に置き、立ち上がりながら、そのまま扇子をゆっくりと頭上まで挙げ、そっと左手を離す。
ヒラヒラと舞い落ちる扇子。
書物の止まった頁を横目に五回別々の形の掌印を結び、舞い落ちる扇子を一糸乱れぬ所作にて左手の指先で摘み、袖口から取り出した小刀を口に咥え、刃先をなぞる様にスッと右の人差し指に切込みを入れ、黒き液が滴る人差し指で小刀の刀身をもう一度なぞる。そして━━
夜伽は小刀の柄を右手で握り、それを円陣の中心へと突き立てた。
突き立てられた小刀。体液で黒く染ったその刃からは、まるで流れ出すかの如く絶え間なく黒い液が溢れ出す。
ゴポッ……ゴボゴボゴボ……
泡立ち、範囲を広げてゆく黒い液。
程なく黒い液が周囲の書物を呑み込んだ瞬間、書物があった場所に灯る紅い光。
それらは互いを結ぶかのようにそれぞれが紅き光のラインを描き、何かしらの模様を形成した。
逆五芒星である。
それに続き、程なく逆五芒星の頂角には円が形成され、一度広範囲に拡がった黒い液が逆五芒星の頂点に形成された円に吸い込まれるかの如く寄り集まり半球を形成する。
揺らめき泡立ちながら半球は少しずつ縮んでゆく。その過程で次第に人型となってゆき、仕舞いには五人のボロ布を被った人型に至る。
それ等は一度、夜伽に向かい片膝を着き会釈した後、立ち上がる。
「人使いならぬ神使いが悪いですよ夜伽様、先の戦いにて愛娘、華寅に負わされた負傷がまだ完全に回復していないのに……」
ボロ布を頭から被った五人の内の一人、「穀雨」と書かれた白い顔布をした人型がくねくねと身体を捩らせている。
「木通さん、くねくねと身体を捩らせていないで、あの莫大な霊力の奔流を然るべき場に導きなさい」
「夜伽様~ご冗談を━━」
「貴方には朕が冗談を言っているように見えるのですか?木通さん」
「プフッ……アハハ……………本気?」
フッと真顔になる木通。
「はい、本気です」
「いやいや、アレに巻き込まれたら私は塵になるよ!私に消滅しろと!?世界の肥やしになれと!?」
「消し飛ばされたらその時はその時です」
「冷た!塩対応にもほどない!?」
コツンッ
「痛っ!」
「コレッ、夜伽様に失礼じゃろう?」
木通の頭を小突いたのは頭からボロ布を被り、「霜降と書かれた顔布にて素顔を隠したボブカットの白髪を携えた少女。
「何するのさ~玉簾~」
「次は頭部を割る……」
玉簾は太刀を鞘から少し引き抜き、光が差した光を反射した刀身がキラリと光る。
それを見た木通は凄まじく自然な動作で頭を垂れる。玉簾もまたいとも自然な動作で抜刀し太刀を振り被る。
「土下座とは首を差し出すことですじゃ。良かろう。その首落とすとしようかの」
玉簾が太刀を振り下ろそうとした瞬間、夜伽が制止する
「木通さん!首を無闇矢鱈に差し出さないで下さい。玉簾さんも他神を斬首しようとしないで下さい。今は有事です戯れは後ほど」
「「御意」」
「牡丹華神さん、霜柱神さん、 霎神さん。あなた方は二柱の補助を」
「「「御意」」」
木通と玉簾の二柱が片膝を地面に付き頭を下げ、それに続くように他の三柱も頭を垂れ、平伏する。
「夜伽様、失礼なのを承知で問わせて頂くのじゃが、神穢弐拾肆節の二柱、穢漆拾弐候の三柱だけでは実力不足かとぞんじますじゃ。現に誓約に身を置かれておられる冠名「葉月」の澄夜様を除いて他の 神死穢十二月命の方々はお呼びにならなかったのです?」
そう切り出したのは玉簾だった。
「他の 神死穢十二月命の方々は儀式による招集を行いましたが一柱もいらっしゃりませんでした。おそらく各々に馳せ参じる事が出来ない、または馳せ参じない事情があるのでしょう。それに──」
「夜伽さん?」
「は、はい姉様」
大社簾の奥、篝夜陽皇大神の少し低い聲に夜伽は肩をビクッと動かす。
「貴方が下位の神々に説明するのは後でも出来るはず、そうしている間にも誓約は進行され、展開は大きく変わりました。上をご覧なさい」
神凛と澄夜を除くその場の柱が見上げた天井はまるでガラスが割れたかのように砕け、そこから見えるのは上下反転した現世の夜景である。
「何あれ……」
木通がボソッと疑問をもらす。それに低いトーンの篝夜陽皇大神が答える
「この短時間で、誓約の結界を破り、更には隠世の数多の層を破り、現世との直通の境界穴が開いてしまいました。それほどの力とは、相も変わらず感服致しますね」
空気が張り詰め、全ての時間が止まったかのような静寂の中、篝夜陽皇大神が再び口を開く。
「始まりますよ。平安の世に最強の鉾と詠われた伝説の戦神の戦いが……」
【退穢庁 総本部 中心部 瓦礫の塔】
空に出現した巨大な割れ目、そこより流れ出す気を感じとり見上げる小夜。
「アレは何?澄夜様の気──」
「隙を見せたな、黒水の穢神!」
小刀で時雨の一閃をすんでのところで受け止めた小夜。しかし、ジリジリと押し込まれる。
(なっ……押し込まれ……人間の身でなんて馬鹿力してるんだ……コイツ片手なのに……」 )
「五月雨、今です!あわせなさい!」
恍惚な表情を浮かべ空を見ていた五月雨はハッとした表情を浮かべ時雨の元へと走る。
「ごめん、おねぇちゃん余所見してた!」
「ちっ……」
小夜は舌打ちをして、斬首しようと振るわれた時雨の一閃を防ごうとする力の向きを変え受け流しつつも、頭を下げる事で頭上を刃が通過する様に受け流した。
そして間髪入れずに時雨の腹部に蹴りを入れ、時雨に続こうとする五月雨にぶつける。
(一瞬気を取られて防御が間に合わなかった)
右頬に浅い太刀傷がつき、黒い液が小夜の右頬を伝う。
どれだけ痛めつけようと立ち上がろうとする二人に対し、小夜は吼えた。
「邪魔だ、痴れ者が!!」
【退穢庁 総本部 中心部 雪奈の巨竹】
「これはこれは神凛様の霊力質、そして神凛様の霊力質とぶつかるのは澄夜お嬢様と██お嬢様の霊力質とは……あちらも面白そうなことをなさっているのだね」
陽炎神は白無垢の袖で口元を隠しクスッと笑った。
【篝夜陽神宮 水無月大社 大広間】
大広間の中心で泣く白無垢姿の少女。その手には長脇差が握られており、それを首に当てている。刃先を黒い液が伝い、畳に染みを作る。
「恐ろしいのじゃ……恐ろしいのじゃ……恐ろしいのじゃ……天地人が恐ろしいのじゃ……」
突然トントントンと軽く障子が叩かれる。
「ピッ……」
少女は大きく肩を動かして驚き、音源とは反対側の角に丸まり、涙を流しながら自分の首に長脇差を構える。
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「うぅ……」
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「あ、おーい!空が凄いことになってるぞ!」
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「これは凄い……それで貴方がアレをやったのですか?」
「出来るか!!」
「冗談です。しかしこの急激に高まる霊力質は澄夜様と██様、そしてあともう一柱は……あぁ懐かしい神凛様ですね。おっと……」
少女が少年の腕の中から飛び降り、スタッと着地するとみるみる成長し始めた。
暫くして本来の姿であろう容姿となった少女は両手を祈るように組み涙を浮かべ、叫ぶ。
「澄夜姉様ァァ、朕は姉様を応援しておりますじゃァァ!!」
「………………」
「…………」
「……」
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「あのぅ」
少女からの返答は無く、辺りに静寂が包む。
「 皆盡神様?」
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「え……泡吹いてる……」
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「立ったまま気を失ってる!?」
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闇闇の実だよ~
面白いね~やっぱり実話はおもろいわ〜
次は怨の詩見るね~楽しみ〜
最新話読みました(`・ω・´)キリッ
いいね連打しときました(`・ω・´)キリッ
まっこと有り難きです( ´•ᴗ•ก )
_(┐「ε:)_(ΦωΦ)フフフ…
いらっしゃいませ(。ᵕᴗᵕ。)