上 下
33 / 52

第33話 僕が応える番

しおりを挟む
 「「「うわあーーー!!」」」

 たくさん見える中でも、一際大きなフェニックスがエアル達に接近してくる。
 それに気づいた彼らは後方に退避するも、すでに入口付近にいるために追いつかれてしまった。
 
「「「……っ」」」

 ちょうど真上に来た大きなフェニックスは、バサっバサっと炎を羽ばたかせながら彼らをじろりと見る。
 その迫力ある姿には、彼らも立ち止まるしかない。
 
 そうして──

《お主らは人間だな》
「「「……!」」」

 神々しくも聞こえる声が、大きなフェニックスから聞こえてくる。
 なんと人語で話しかけてきたのだ。

 予想だにしないまさかの行動に一行が驚いていると、そばからフレイが飛び立つ。
 フレイはそのまま、エアル達の盾になるように両翼を広げた。
 
「ぼぉっ! ぼぼぉっ!」
《……お主か》

 口ぶりから、二匹は顔見知りなのだろう。
 大きさで言えば親子にすら見える。

 だが、大きなフェニックスはギロリとエアル達に視線を向けた。

《ならばなおさらだ》

 フレイが何かうったえかけたのは分かったが──交渉は決裂。

《こやつらはここで排除しなければならない》
「「「……ッ!」」」

 大きさフェニックスは、バサっと炎の翼を羽ばたかせる。

「うわっ!」
「くぅっ!」

 一行に向かってきた熱風は、エアルとレリアがとっさに防ぐ。
 振り回した『エクスカリバー』に、『桜吹雪』の“無数の斬撃”だ。
 
「きゃあっ!」

 それでも大きな衝撃が伝わってきた。
 なんとか耐えきったリザ達だったが、再び目を開いた景色は──まさに一変。

「こ、これは……!」

 辺りは焼け焦がれ、熱風を防いだ一行を避けるように地面がくり抜かれている。
 空気は明らかに重く、熱気を帯びているように感じる。

 たった“一振り”。
 生活するに必要なその動作を行っただけで、周辺の環境を変えてしまった。
 この大いなる力こそが“頂上種”だ。

『防いだのは見事なり。だが──』

 大きなフェニックスは、今なお鋭い眼光で睨みつける。
 
『次はない』
「「「……ッ!」」」

 その威圧感は、今までの魔物と明らかに一線を画する。
 彼らが初めて“頂上種”を相手にした瞬間だった。

「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
《お主は黙っておれ》
「ぼぉっ!」

 同じ種族のはずのフレイの言葉も、大きなフェニックスには通じない。
 上下関係があるのだろう。

 ならばと、ひとりの少年がみんなを守るように横へ腕を伸ばした。

「リザ達は下がってて」
「ちょっ……!?」

 エアルだ。
 そして、宙で飛んでいるフレイにも声をかけた。

「フレイ、みんなをお願いできるかな」
「ぼ、ぼぉ……」
「大丈夫」
「……! ぼぉっ」

 一瞬心配そうな顔を浮かばせたフレイだったが、「大丈夫」の一言で地上へ降りてくる。
 そのまま、リザ達を守るように炎の翼を広げた。 

「リザ、わがままを聞いてくれてありがとう」
「エアル……!」
「だから今度は僕が応える番だ」

 まだ余裕を残しつつも真剣な表情のエアルは、抜いていたエクスカリバーを前に構える。
 その先は──大きなフェニックス。

「ここは、僕が!」
《ほう》

 フェンリルの時も行われることはなかった、エアルと“頂上種”の戦い。
 それが今、ここで幕を開ける──。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)私はあなた方を許しますわ(全5話程度)

青空一夏
恋愛
 従姉妹に夢中な婚約者。婚約破棄をしようと思った矢先に、私の死を望む婚約者の声をきいてしまう。  だったら、婚約破棄はやめましょう。  ふふふ、裏切っていたあなた方まとめて許して差し上げますわ。どうぞお幸せに!  悲しく切ない世界。全5話程度。それぞれの視点から物語がすすむ方式。後味、悪いかもしれません。ハッピーエンドではありません!

婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました

山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。  でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。  そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。  長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。 脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、 「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」 「なりすましヒロインの娘」 と同じ世界です。 このお話は小説家になろうにも投稿しています

ちびっ子ボディのチート令嬢は辺境で幸せを掴む

紫楼
ファンタジー
 酔っ払って寝て起きたらなんか手が小さい。びっくりしてベットから落ちて今の自分の情報と前の自分の記憶が一気に脳内を巡ってそのまま気絶した。  私は放置された16歳の少女リーシャに転生?してた。自分の状況を理解してすぐになぜか王様の命令で辺境にお嫁に行くことになったよ!    辺境はイケメンマッチョパラダイス!!だったので天国でした!  食べ物が美味しくない国だったので好き放題食べたい物作らせて貰える環境を与えられて幸せです。  もふもふ?に出会ったけどなんか違う!?  もふじゃない爺と契約!?とかなんだかなーな仲間もできるよ。  両親のこととかリーシャの真実が明るみに出たり、思わぬ方向に物事が進んだり?    いつかは立派な辺境伯夫人になりたいリーシャの日常のお話。    主人公が結婚するんでR指定は保険です。外見とかストーリー的に身長とか容姿について表現があるので不快になりそうでしたらそっと閉じてください。完全な性表現は書くの苦手なのでほぼ無いとは思いますが。  倫理観論理感の強い人には向かないと思われますので、そっ閉じしてください。    小さい見た目のお転婆さんとか書きたかっただけのお話。ふんわり設定なので軽ーく受け流してください。  描写とか適当シーンも多いので軽く読み流す物としてお楽しみください。  タイトルのついた分は少し台詞回しいじったり誤字脱字の訂正が済みました。  多少表現が変わった程度でストーリーに触る改稿はしてません。  カクヨム様にも載せてます。

かつてダンジョン配信者として成功することを夢見たダンジョン配信者マネージャー、S級ダンジョンで休暇中に人気配信者に凸られた結果バズる

竜頭蛇
ファンタジー
伊藤淳は都内の某所にあるダンジョン配信者事務所のマネージャーをしており、かつて人気配信者を目指していた時の憧憬を抱えつつも、忙しない日々を送っていた。 ある時、ワーカーホリックになりかねていた淳を心配した社長から休暇を取らせられることになり、特に休日に何もすることがなく、暇になった淳は半年先にあるS級ダンジョン『破滅の扉』の配信プロジェクトの下見をすることで時間を潰すことにする. モンスターの攻撃を利用していたウォータースライダーを息抜きで満喫していると、日本発のS級ダンジョン配信という箔に目が眩んだ事務所のNO.1配信者最上ヒカリとそのマネージャーの大口大火と鉢合わせする. その配信で姿を晒すことになった淳は、さまざまな実力者から一目を置かれる様になり、世界に名を轟かす配信者となる.

さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。

ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。 彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。 「誰も、お前なんか必要としていない」 最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。 だけどそれも、意味のないことだったのだ。 彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。 なぜ時が戻ったのかは分からない。 それでも、ひとつだけ確かなことがある。 あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。 私は、私の生きたいように生きます。

夫に惚れた友人がよく遊びに来るんだが、夫に「不倫するつもりはない」と言われて来なくなった。

ほったげな
恋愛
夫のカジミールはイケメンでモテる。友人のドーリスがカジミールに惚れてしまったようで、よくうちに遊びに来て「食事に行きませんか?」と夫を誘う。しかし、夫に「迷惑だ」「不倫するつもりはない」と言われてから来なくなった。

おてんば末っ子令嬢、実は前世若頭だった!? 〜皆で領地を守ります!〜

撫羽
ファンタジー
組長の息子で若頭だった俺が、なんてこったい! 目が覚めたら可愛い幼女になっていた! なんて無理ゲーだ!? 歴史だけ古いヤクザの組。既に組は看板を出しているだけの状況になっていて、組員達も家族のアシスタントやマネージメントをして極道なのに平和に暮らしていた。組長が欠かさないのは朝晩の愛犬の散歩だ。家族で話し合って、違う意味の事務所が必要じゃね? と、そろそろ組の看板を下ろそうかと相談していた矢先だった。そんな組を狙われたんだ。真っ正面から車が突っ込んできた。そこで俺の意識は途絶え、次に目覚めたらキラキラした髪の超可愛い幼女だった。 狙われて誘拐されたり、迫害されていた王子を保護したり、ドラゴンに押しかけられたり? 領地の特産品も開発し、家族に可愛がられている。 前世極道の若頭が転生すると、「いっけー!!」と魔法をぶっ放す様な勝気な令嬢の出来上がりだ! 辺境伯の末娘に転生した極道の若頭と、前世でも若頭付きだった姉弟の侍従や皆で辺境の領地を守るぜ! ムカつく奴等にはカチコミかけるぜ!

異世界に召喚されたけど、聖女じゃないから用はない? それじゃあ、好き勝手させてもらいます!

明衣令央
ファンタジー
 糸井織絵は、ある日、オブルリヒト王国が行った聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界ルリアルークへと飛ばされてしまう。  一緒に召喚された、若く美しい女が聖女――織絵は召喚の儀に巻き込まれた年増の豚女として不遇な扱いを受けたが、元スマホケースのハリネズミのぬいぐるみであるサーチートと共に、オブルリヒト王女ユリアナに保護され、聖女の力を開花させる。  だが、オブルリヒト王国の王子ジュニアスは、追い出した織絵にも聖女の可能性があるとして、織絵を連れ戻しに来た。  そして、異世界転移状態から正式に異世界転生した織絵は、若く美しい姿へと生まれ変わる。  この物語は、聖女召喚の儀に巻き込まれ、異世界転移後、新たに転生した一人の元おばさんの聖女が、相棒の元スマホケースのハリネズミと楽しく無双していく、恋と冒険の物語。 2022.9.7 話が少し進みましたので、内容紹介を変更しました。その都度変更していきます。

処理中です...