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第31話 導かれた先
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「ぼぼぉっ!」
リザの危機を身を挺して守ったことで、彼女と仲を深めることができたフレイ。
そんなフレイが先導して向かった先は──火山。
「ここは……」
ダンジョン『マグメル火山』の最奥に佇む、大きな火山だ。
入った瞬間誰もが目にするが、誰もが避ける場所である。
「リザは“行かない”って言わなかったっけ」
「……ええ、そうよ」
その理由は、火山がダンジョンのゴールではないからだ。
本来のルートでは、北にある火山に向かわず、東へ進む。
その先に次のダンジョンへつながる場所があるという。
加えて、火山付近は温度も高い。
火をエサとするここらの魔物は、火山に近づくにつれて強くなる傾向にあるのだ。
あるのはデメリットのみ。
目印にはするもの、なるべく近づかないのがセオリーだ。
つまり、今までのデータには存在しないルートを辿ったことになる。
「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
「へーそうなのか!」
フレイのボディランゲージに、エアルがうなずく。
『野生』で培った感性で、なんとなく話したいことがわかるようだ。
「この先に“何か”あるって」
「ぼぼぉ!」
「え、この先って……」
目の前にあるのは火山のみ。
つまり、火口から飛び込もうと言うのだ。
「いやいや!」
あまりに無茶な提案に、リザはレリアを覗き見る。
「レリアは賛成なわけ……?」
「そうねえ。エアル君が行くというなら行くわ」
「……っ」
「ま、どちらにしろあなた次第だけど」
その返事に、リザは口元に手を当てる。
(でも、そんなの……)
情報に抜かりが無いリザは、このパーティーの司令塔だ。
時に危険を察知し、時に「NO」と言うべき責任がある。
さらに、リザが最も信頼していたのは“データ”だ。
ただですら自殺行為に近い行動の上、今までの探索データにも無いときた。
戸惑ってしまうのも無理はない。
加えて、火口に潜る手段もないのだ。
「火口に入れば、一瞬で火だるまよ?」
ダンジョン全体に暑さをもたらすほどの火山だ。
その中心である火口など、どれだけの熱さかなど分かったものじゃない。
だが、それにはフレイが元気に両翼を広げた。
「ぼぉっ!」
「おー! それはフレイが守ってくれるって」
「そんなこと……──ッ!」
そうして思い出されるのは、フレイがリザを守った先ほど一連の流れだ。
フレイは魔物に対しては、炎で何も残さぬほど燃やし尽くした。
だが、リザに対しては「あたたかい」と感じる程度だった。
そこから予測されるのは、フレイは“感情によって炎の温度を操れる”ということ。
聞いたこともない事象だが、“頂上種”フェニックスならば、そのぐらいできても不思議ではない。
それらから考え抜き、リザはエアルに再び向き直った。
「エアル、本当に大丈夫なのね?」
「多分ね!」
「……! ふふっ」
そして、ふぅと一息つく。
この状況においても、曖昧な返事をするエアル。
だが今まで、彼の“多分”は外れたことがない。
どんな異常事態が起ころうと、エアルの多分は全てを解決してきた。
「どうかな、リザ!」
その上、命すら惜しくないほど、未知に惹かれているエアルの目。
キラキラした眼差しは、まさしく探索者のそれだった。
「わかったわ」
「リザ……!」
ようやくリザは首を縦に振る。
それが意外だったのか、レリアは「へえ」と彼女を覗き見る。
「情報屋さんも、意外と情に流されるのね」
「ま、直感も大切だって学んだから」
「フフフッ、そうね」
二人が同時に見つめるのは──エアルだ。
レリアはすっかりエアルを信頼している。
また同時に、リザの中で最も信頼するものが、「データ」から「エアルの直感」へと移り替わろうとしていたのだ。
そしてリザは、頼みの綱であるフレイをひょいっと抱き上げる。
「頼める? フレイちゃん」
「ぼぉっ!」
元気な返事を上げたフレイは、バサっと両翼を広げる。
それと共に、大きく眩い炎を灯し始めた。
「ぼおおおおおおおおおっ!」
「「「……!」」」
先ほどの比ではない。
縦に横に、真っ直ぐ十字に伸びる炎は『炎の化身』と呼ぶにふさわしい。
まさに“頂上種”フェニックスの姿だ。
「ぼぉ」
「みんな、一か所に固まってって!」
通訳のエアルが手招きをする。
「ええ!」
「フフフッ」
「わふ」
全員が集まると、フレイは大きな炎で彼らをそっと包み込む。
見た目と反し、やはり炎は全く熱くない。
それどころか、心から温められるような不思議な感覚だ。
「ぼおぉっ!」
包み込んだ炎でエアル達を持ち上げると、フレイは一気に飛び立つ。
「いけーフレイ!」
「わふっ!」
「フフフッ」
「くぅっ……!」
少年のような眼差しのエアルとラフィ。
不敵に笑うレリア。
必死に炎に掴まるリザ。
反応はそれぞれながら、みんな前方から目を離せない。
「ぼおおおおおおおおおおっ!」
そして、炎を纏ったフェニックスの姿のまま、ぐつぐつと音を立てる火口へフレイは突っ込んだ──。
リザの危機を身を挺して守ったことで、彼女と仲を深めることができたフレイ。
そんなフレイが先導して向かった先は──火山。
「ここは……」
ダンジョン『マグメル火山』の最奥に佇む、大きな火山だ。
入った瞬間誰もが目にするが、誰もが避ける場所である。
「リザは“行かない”って言わなかったっけ」
「……ええ、そうよ」
その理由は、火山がダンジョンのゴールではないからだ。
本来のルートでは、北にある火山に向かわず、東へ進む。
その先に次のダンジョンへつながる場所があるという。
加えて、火山付近は温度も高い。
火をエサとするここらの魔物は、火山に近づくにつれて強くなる傾向にあるのだ。
あるのはデメリットのみ。
目印にはするもの、なるべく近づかないのがセオリーだ。
つまり、今までのデータには存在しないルートを辿ったことになる。
「ぼぉ! ぼぼぉっ!」
「へーそうなのか!」
フレイのボディランゲージに、エアルがうなずく。
『野生』で培った感性で、なんとなく話したいことがわかるようだ。
「この先に“何か”あるって」
「ぼぼぉ!」
「え、この先って……」
目の前にあるのは火山のみ。
つまり、火口から飛び込もうと言うのだ。
「いやいや!」
あまりに無茶な提案に、リザはレリアを覗き見る。
「レリアは賛成なわけ……?」
「そうねえ。エアル君が行くというなら行くわ」
「……っ」
「ま、どちらにしろあなた次第だけど」
その返事に、リザは口元に手を当てる。
(でも、そんなの……)
情報に抜かりが無いリザは、このパーティーの司令塔だ。
時に危険を察知し、時に「NO」と言うべき責任がある。
さらに、リザが最も信頼していたのは“データ”だ。
ただですら自殺行為に近い行動の上、今までの探索データにも無いときた。
戸惑ってしまうのも無理はない。
加えて、火口に潜る手段もないのだ。
「火口に入れば、一瞬で火だるまよ?」
ダンジョン全体に暑さをもたらすほどの火山だ。
その中心である火口など、どれだけの熱さかなど分かったものじゃない。
だが、それにはフレイが元気に両翼を広げた。
「ぼぉっ!」
「おー! それはフレイが守ってくれるって」
「そんなこと……──ッ!」
そうして思い出されるのは、フレイがリザを守った先ほど一連の流れだ。
フレイは魔物に対しては、炎で何も残さぬほど燃やし尽くした。
だが、リザに対しては「あたたかい」と感じる程度だった。
そこから予測されるのは、フレイは“感情によって炎の温度を操れる”ということ。
聞いたこともない事象だが、“頂上種”フェニックスならば、そのぐらいできても不思議ではない。
それらから考え抜き、リザはエアルに再び向き直った。
「エアル、本当に大丈夫なのね?」
「多分ね!」
「……! ふふっ」
そして、ふぅと一息つく。
この状況においても、曖昧な返事をするエアル。
だが今まで、彼の“多分”は外れたことがない。
どんな異常事態が起ころうと、エアルの多分は全てを解決してきた。
「どうかな、リザ!」
その上、命すら惜しくないほど、未知に惹かれているエアルの目。
キラキラした眼差しは、まさしく探索者のそれだった。
「わかったわ」
「リザ……!」
ようやくリザは首を縦に振る。
それが意外だったのか、レリアは「へえ」と彼女を覗き見る。
「情報屋さんも、意外と情に流されるのね」
「ま、直感も大切だって学んだから」
「フフフッ、そうね」
二人が同時に見つめるのは──エアルだ。
レリアはすっかりエアルを信頼している。
また同時に、リザの中で最も信頼するものが、「データ」から「エアルの直感」へと移り替わろうとしていたのだ。
そしてリザは、頼みの綱であるフレイをひょいっと抱き上げる。
「頼める? フレイちゃん」
「ぼぉっ!」
元気な返事を上げたフレイは、バサっと両翼を広げる。
それと共に、大きく眩い炎を灯し始めた。
「ぼおおおおおおおおおっ!」
「「「……!」」」
先ほどの比ではない。
縦に横に、真っ直ぐ十字に伸びる炎は『炎の化身』と呼ぶにふさわしい。
まさに“頂上種”フェニックスの姿だ。
「ぼぉ」
「みんな、一か所に固まってって!」
通訳のエアルが手招きをする。
「ええ!」
「フフフッ」
「わふ」
全員が集まると、フレイは大きな炎で彼らをそっと包み込む。
見た目と反し、やはり炎は全く熱くない。
それどころか、心から温められるような不思議な感覚だ。
「ぼおぉっ!」
包み込んだ炎でエアル達を持ち上げると、フレイは一気に飛び立つ。
「いけーフレイ!」
「わふっ!」
「フフフッ」
「くぅっ……!」
少年のような眼差しのエアルとラフィ。
不敵に笑うレリア。
必死に炎に掴まるリザ。
反応はそれぞれながら、みんな前方から目を離せない。
「ぼおおおおおおおおおおっ!」
そして、炎を纏ったフェニックスの姿のまま、ぐつぐつと音を立てる火口へフレイは突っ込んだ──。
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