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第一章 ホシとペットと仲間と
第50話 責野の信頼
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<三人称視点>
ギルド内、職員が慌ただしく動く中、責野が声を上げる。
「ドローンは回った!?」
「はい! 現在、彦根ホシ及び対峙している魔物を映しています!」
「上出来よ!」
この街の東、工場近くのダンジョンから出現した巨大な魔物。
それと共に、駆けつけた少年──ホシを映すように上空からドローンが撮影している。
「ここまでくれば魔核の存在は隠せない。それなら、少しでも映像に残すことで対策を考える方がよっぽど有意義よ」
これは責野の独断。
今から行われるであろう戦いを、映像記録として残しておくためのようだ。
「それにしても局長、あの魔物は一体……」
「そうね」
ゴツゴツの黒ずんだ体を持った、二足歩行の巨大な魔物。
上半身には光る魔核も確認できる。
映像に捉えてなお、不気味としか言いようがない化け物だ。
責野は嫌な予感を口にする。
「……あれ自体が、魔素の巨大な塊のようなものかしら」
「「「!!」」」
「言うならば【魔素溜まり】ね」
責野の言葉にひきつった顔を見せる職員たち。
それでも責野は真っ直ぐに映像を見つめていた。
「それでも……それでも彼なら」
そう言いながら思い返すのは、ほんの三分前のこと。
───
「……ふが?」
リビングで口を開けながら寝ていたホシ。
スマホに通話がきていることに気づき、咄嗟に体を起こして応答する。
「もしもし?」
『彦根ホシ君ね。責野です』
「え、責野さん?」
当然、ホシにも聞き馴染みのある名前だ。
(引っ越してきたお隣さん!)
しかし、責野の言葉は少し重ためのよう。
『まずは、ごめんなさい』
「え?」
『私はあなたに謝らないといけない』
開口一番、責野はホシに謝罪をする。
ギルド関係者であることを隠して、ただのお隣さんかのように振る舞っていたことについてだ。
『……』
今から責野は、自分がギルド局長であることを自白する。
ホシの協力を仰ぐために。
『私は実は──』
「知ってましたよ」
『!』
だが、責野が伝える前にホシが口を開く。
あたかも全て知っていたかのような口ぶりだ。
『知ってたの?』
「はい」
『……そう、なのね』
「責野さん、あなたは本当は──」
若干の罪悪感を覚える責野。
目を瞑ってその言葉を待った。
「うちのペットが好きなんですよね」
『……はい?』
だが返ってきたのは、予想とは大きく違った言葉。
(いや、間違ってはない。ないけど!)
困惑する責野はよそに、ホシは続ける。
「俺、世間知らずで。ペット達がすごい魔物だと知らずに、留守中は家の外に出さないようにしてたんです。おじいちゃんにそう言われてましたから」
『え、うん』
「でも、ペット達もやっぱりたまには外に出たがるみたいで」
『……』
(なんの話をしているのかしら……)
もう返事をする間もなく、責野は話に耳を傾け続ける。
「そんな時です。俺が学校に行ってから、たまに責野さんがペットの面倒を見てくれてるって知りました」
『……そ、それが?』
「俺、嬉しかったんです」
『!』
ホシは感謝を伝え続ける。
「家に帰ったら上機嫌のペット達がいる。それは責野さんのおかげだったんですよね。魔物を怖がらずに面倒を見てくれる責野さんに対して、お隣さんに恵まれたなって思いました」
『それはどうも』
「だから俺、やります」
『……!』
“だから”の意味はあまり分からなかったが、ホシは決意を見せる。
「何かお願いがあるんですよね」
『そうね』
「責野さんの為なら、なんでもしますよ」
『じゃ、じゃあ……』
責野はごくりと固唾を飲んでホシに告げた。
『──この街を救ってほしいの』
───
責野はもう一度目を開いて、確信を言葉にする。
『コメントをくれたから』という理由だけで、Sランク深層までヒカリを助けに行ったホシ。
独特な感性なのは間違いないが、責野はその時と同じものを感じた。
「彼ならやってくれるわ」
ギルド内、職員が慌ただしく動く中、責野が声を上げる。
「ドローンは回った!?」
「はい! 現在、彦根ホシ及び対峙している魔物を映しています!」
「上出来よ!」
この街の東、工場近くのダンジョンから出現した巨大な魔物。
それと共に、駆けつけた少年──ホシを映すように上空からドローンが撮影している。
「ここまでくれば魔核の存在は隠せない。それなら、少しでも映像に残すことで対策を考える方がよっぽど有意義よ」
これは責野の独断。
今から行われるであろう戦いを、映像記録として残しておくためのようだ。
「それにしても局長、あの魔物は一体……」
「そうね」
ゴツゴツの黒ずんだ体を持った、二足歩行の巨大な魔物。
上半身には光る魔核も確認できる。
映像に捉えてなお、不気味としか言いようがない化け物だ。
責野は嫌な予感を口にする。
「……あれ自体が、魔素の巨大な塊のようなものかしら」
「「「!!」」」
「言うならば【魔素溜まり】ね」
責野の言葉にひきつった顔を見せる職員たち。
それでも責野は真っ直ぐに映像を見つめていた。
「それでも……それでも彼なら」
そう言いながら思い返すのは、ほんの三分前のこと。
───
「……ふが?」
リビングで口を開けながら寝ていたホシ。
スマホに通話がきていることに気づき、咄嗟に体を起こして応答する。
「もしもし?」
『彦根ホシ君ね。責野です』
「え、責野さん?」
当然、ホシにも聞き馴染みのある名前だ。
(引っ越してきたお隣さん!)
しかし、責野の言葉は少し重ためのよう。
『まずは、ごめんなさい』
「え?」
『私はあなたに謝らないといけない』
開口一番、責野はホシに謝罪をする。
ギルド関係者であることを隠して、ただのお隣さんかのように振る舞っていたことについてだ。
『……』
今から責野は、自分がギルド局長であることを自白する。
ホシの協力を仰ぐために。
『私は実は──』
「知ってましたよ」
『!』
だが、責野が伝える前にホシが口を開く。
あたかも全て知っていたかのような口ぶりだ。
『知ってたの?』
「はい」
『……そう、なのね』
「責野さん、あなたは本当は──」
若干の罪悪感を覚える責野。
目を瞑ってその言葉を待った。
「うちのペットが好きなんですよね」
『……はい?』
だが返ってきたのは、予想とは大きく違った言葉。
(いや、間違ってはない。ないけど!)
困惑する責野はよそに、ホシは続ける。
「俺、世間知らずで。ペット達がすごい魔物だと知らずに、留守中は家の外に出さないようにしてたんです。おじいちゃんにそう言われてましたから」
『え、うん』
「でも、ペット達もやっぱりたまには外に出たがるみたいで」
『……』
(なんの話をしているのかしら……)
もう返事をする間もなく、責野は話に耳を傾け続ける。
「そんな時です。俺が学校に行ってから、たまに責野さんがペットの面倒を見てくれてるって知りました」
『……そ、それが?』
「俺、嬉しかったんです」
『!』
ホシは感謝を伝え続ける。
「家に帰ったら上機嫌のペット達がいる。それは責野さんのおかげだったんですよね。魔物を怖がらずに面倒を見てくれる責野さんに対して、お隣さんに恵まれたなって思いました」
『それはどうも』
「だから俺、やります」
『……!』
“だから”の意味はあまり分からなかったが、ホシは決意を見せる。
「何かお願いがあるんですよね」
『そうね』
「責野さんの為なら、なんでもしますよ」
『じゃ、じゃあ……』
責野はごくりと固唾を飲んでホシに告げた。
『──この街を救ってほしいの』
───
責野はもう一度目を開いて、確信を言葉にする。
『コメントをくれたから』という理由だけで、Sランク深層までヒカリを助けに行ったホシ。
独特な感性なのは間違いないが、責野はその時と同じものを感じた。
「彼ならやってくれるわ」
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