ただのFランク探索者さん、うっかりSランク魔物をぶっとばして大バズりしてしまう~今まで住んでいた自宅は、最強種が住む規格外ダンジョンでした~

むらくも航

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第一章 ホシとペットと仲間と

第47話 現れたお姉さん

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 「あっちです! みんな逃げて!」

 茶髪のボブヘアを揺らしながら、一人の少女が大声を上げて指示をする。
 ダンジョン配信者としても活躍するナナミだ。 

「きゃあああ!!」
「おい早く進めって!」
「とにかく離れろ!!」

 ナナミが買い物に来ていたショッピングモールは、無秩序な状態である。
 事の始まりはほんの一分前。

「「「グオオオォォォ!!」」」

 ゴゴゴゴという地震のような音と共に、突如として一階の地中から魔物の群れが現れたのだ。

 休日のショッピングモールという人が多い空間。
 そこは一瞬にして大混乱におちいった。

「皆さん、とにかく南口へ!」

 そんな中でも、ナナミは人々を誘導する。
 地上に出てきた魔物たちがまだ様子をうかがっているのに加え、彼女の功労もあって被害は出ていない。
 それでも、さすがに動揺は隠せていなかった。

(なにがどうなってるの!?)

 日頃からダンジョン配信を行っている彼女は知っているからだ。
 魔物という存在の恐ろしさを。
 ただの人間が、魔物の前では如何に無力かを。

(こんなのって……!)

「!」

 そうして、ナナミは持ち歩きサイズの浮遊型カメラが起動したことに気づく。

《こんにちは~》
《ナナミン!》
《昼間から珍しいね》

 せっかく来てくれた視聴者には悪いが、挨拶もなしにナナミはカメラに向かって叫ぶ。

「ショッピングモール『ブドウ』で災害発生! 近隣住民、来ようとしている人は今すぐに離れて!」

《!?》
《どういうこと!?》
《いきなり!?》
《何があったんだ!?》

「魔物が、魔物が発生してるの!」

 この状況において、片手一つで発信できるネットは、テレビよりも早く世間へ伝えることができる。
 ナナミは人々を誘導するだけでなく、二次災害の事も考えて発信したのだ。

 ──だが、そんな時。

「グオオオオオ!」
「!」

 いよいよ魔物たちが咆哮ほうこうを上げて動き出す。
 中には鬼型魔物【オーガ】などもいるが、多くは【ゴブリン】や【オーク】といった魔物たち。

 そんなダンジョン内では比較的弱い部類だが、この状況で人がどうこうできるものではない。

「……ッ!」

 そうして、ナナミもその場から離れようとする。

「ママぁぁぁーーー!」
「うそ!」

 しかし、見えていなかった場所に、座り込んで泣き叫ぶ女の子。
 母とはぐれてパニックなのか、周りが見えていない。

「グルゥ……」
「!」

 その近くに寄る一体の魔物。
 ナナミは手を伸ばし、一心に女の子に向かって足を動かす。

「うわーーーん!」
「くっ……!」

 だが、その場所までが遠い。

「グオオッ!」
「ダメーーー!」

 女の子に魔物の手が迫った──その時。

「あらあら」
「……!?」
「グルッ!?」

 どこからともなく、黄緑色のツタが現れる。
 そのツタは女の子をひょいっとすくい上げ、ナナミの隣に着地させた。
 ついでに魔物を拘束までしていたようだ。

 ナナミはツタの元を視線で辿り、目を見開く。

「あなたは……!」
「ここのお店、ホシ君が好きなお野菜たくさんあるのに」

 そうつぶやいた女性は、被っていた麦わら帽子を取り、腕にかけていたエコバッグを地面に置く。
 隠れていた黄緑色の長い髪はふぁさっと地面に向かって伸び、真っ白な肌と相まって、神秘的な雰囲気を覚えさせる。

 女性はナナミに振り返り、ニッコリとした顔を浮かべた。

「迷わず助けようとしたのは褒めてあげるわ」
「……!」
「あとはお姉さんに任せなさい」
 
 そこに立っていたのは、エルフのお姉さん──エリカだった。
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