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第一章 ホシとペットと仲間と
第45話 ヒカリの決意
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「魔核?」
責野とヒカリがギルドで話をする、数時間前。
ヒカリは目を通していたデータに首を傾げた。
「聞いたことないわね」
今見ているのは、ギルドから送られてきた『緊急案件』と題されたデータ。
そこには、魔物の概念を覆すような数々の情報が載っていた。
多くは「魔核の存在について」だ。
「こんなことって、あるの……?」
『魔核』──大量の魔素が固まって出来る心臓のようなもの。
これを持つ魔物は、魔素を自ら循環させることで、ダンジョン外でも生活できる。
さらに、「魔核持ちDランクは通常Aランクに匹敵する」ほど、魔核を備えた魔物は強力に育つという。
「そんなの……!」
ヒカリはSランク探索者にふさわしき知識量から、魔核の恐ろしさを想像する。
魔物はダンジョン内に充満する「魔素」を吸って生活する。
魔素がない場所では生きられないのだ。
つまり、どんなに強力な魔物が現れようと、ダンジョンを脱出すれば安全。
その最後の逃げ道があるからこそ、人間側の優位性は保たれていた。
だが、それが地上にも侵攻できるとしたら?
「しかも……!」
ヒカリの体には段々と寒気が走り始める。
地上には魔素が存在しない。
それはすなわち、魔素の恩恵を受けて人外の動きを発揮する探索者も、地上ではたただの人間ということ。
魔物への対抗手段がないのだ。
「そんな理不尽、まるで彼のような……あれ?」
そこでヒカリの思考が一度止まる。
“理不尽”と結びついて頭に浮かんだのは、彦根ホシ、そして彼の周りについてだ。
「ペット達も魔核を持っていたのかしら……って!」
そうして、「強さ」、「ダンジョン外に出られる」という点から真実に辿り着く。
だが、それと同時にヒカリは体を震わせた。
「あんなのがダンジョンから出てきたら、お終いだわ!」
ホシの配信を思い出すことによって、魔核持ちの恐ろしさをより実感したのだ。
仮にあれらは例外の強さだとしても、やはりただの人間が魔物に勝つ未来は想像できない。
「なら一層、私がやらなきゃ」
今回の『魔核の調査』という依頼。
これはギルドからの直接依頼だ。
規則によって、受けられるのはAランク以上の探索者のみ。
「……うん」
ホシがいてくれたらと思わないこともないが、ヒカリは決意を固めた。
Sランク探索者というプライドに懸けて、依頼を承諾するようだ。
「私にしか務まらないものね」
またヒカリは、何人か存在するSランクの中でも、どうして自分が選ばれたかを自覚している。
上級探索者と配信者、それらを両立させているのはヒカリ以外に見当たらないからだ。
「映像に収めてほしいっていうのは、そういうことね」
ギルドは映像から解析などを行うのだろう。
そこで、ダンジョン内での撮影に長けているヒカリが選ばれたのだ。
「行こう」
そうして、ヒカリはギルドへ向かった。
それから責野局長をはじめとしたギルド職員たちと話し、直接依頼を正式に受けたのだった。
責野とヒカリがギルドで話をする、数時間前。
ヒカリは目を通していたデータに首を傾げた。
「聞いたことないわね」
今見ているのは、ギルドから送られてきた『緊急案件』と題されたデータ。
そこには、魔物の概念を覆すような数々の情報が載っていた。
多くは「魔核の存在について」だ。
「こんなことって、あるの……?」
『魔核』──大量の魔素が固まって出来る心臓のようなもの。
これを持つ魔物は、魔素を自ら循環させることで、ダンジョン外でも生活できる。
さらに、「魔核持ちDランクは通常Aランクに匹敵する」ほど、魔核を備えた魔物は強力に育つという。
「そんなの……!」
ヒカリはSランク探索者にふさわしき知識量から、魔核の恐ろしさを想像する。
魔物はダンジョン内に充満する「魔素」を吸って生活する。
魔素がない場所では生きられないのだ。
つまり、どんなに強力な魔物が現れようと、ダンジョンを脱出すれば安全。
その最後の逃げ道があるからこそ、人間側の優位性は保たれていた。
だが、それが地上にも侵攻できるとしたら?
「しかも……!」
ヒカリの体には段々と寒気が走り始める。
地上には魔素が存在しない。
それはすなわち、魔素の恩恵を受けて人外の動きを発揮する探索者も、地上ではたただの人間ということ。
魔物への対抗手段がないのだ。
「そんな理不尽、まるで彼のような……あれ?」
そこでヒカリの思考が一度止まる。
“理不尽”と結びついて頭に浮かんだのは、彦根ホシ、そして彼の周りについてだ。
「ペット達も魔核を持っていたのかしら……って!」
そうして、「強さ」、「ダンジョン外に出られる」という点から真実に辿り着く。
だが、それと同時にヒカリは体を震わせた。
「あんなのがダンジョンから出てきたら、お終いだわ!」
ホシの配信を思い出すことによって、魔核持ちの恐ろしさをより実感したのだ。
仮にあれらは例外の強さだとしても、やはりただの人間が魔物に勝つ未来は想像できない。
「なら一層、私がやらなきゃ」
今回の『魔核の調査』という依頼。
これはギルドからの直接依頼だ。
規則によって、受けられるのはAランク以上の探索者のみ。
「……うん」
ホシがいてくれたらと思わないこともないが、ヒカリは決意を固めた。
Sランク探索者というプライドに懸けて、依頼を承諾するようだ。
「私にしか務まらないものね」
またヒカリは、何人か存在するSランクの中でも、どうして自分が選ばれたかを自覚している。
上級探索者と配信者、それらを両立させているのはヒカリ以外に見当たらないからだ。
「映像に収めてほしいっていうのは、そういうことね」
ギルドは映像から解析などを行うのだろう。
そこで、ダンジョン内での撮影に長けているヒカリが選ばれたのだ。
「行こう」
そうして、ヒカリはギルドへ向かった。
それから責野局長をはじめとしたギルド職員たちと話し、直接依頼を正式に受けたのだった。
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