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第42話 地下二階の名物

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 「あー、始まっちゃった」

 いちごの『炎の息ファイアブレス』、ブルーハワイの『シャボン水玉』がぶつかり合う。
 お互いに好みの気温が違うことから、二人はこうなることが多々ある。
 いちごとブルーハワイ名物、環境の取り合いだ。

「ぼぉー!」
「受けて立つわ!」
「うわあ」

 こうなるなら階層を分けろって話なんだけど、どっちも地下二階がお気に入りみたいなんだよね。
 いちごもああ見えて意外と気が強いし。

「はげしー」

 そんな部屋の様子で、俺の右半身は暑く、左半身は寒い状態になった。

《ファーwww》
《北風と太陽みたいなww》
《フェニックスとセイレーン》
《でもこれは互角やろ》
《ホシ君大丈夫なんか!?》
《ホシくーーーん!w》

 そんな中でも、両者は譲らず。

「やるわね!」
「ぼぼぉ!」

 そうして、二人がさらに力を溜め始める。

《まずい!》
《なんか力を溜めてる!!》
《大丈夫か!?》

「ん」

 それ以上はちょっとダメかも。
 中央にいる俺はパンっと拍手をした。

「そこまで!」

「……!」
「ぼっ!?」

 途端に、両者の手が止まる。
 こういうところは素直なんだけどなあ。
 
《え?》
《なんだ今の》
《止まった……?》
《衝撃波が走ったような?》

「ん?」

 衝撃波って、一体なんのことを言ってるんだ?
 昔からこうしたらお互いにやめてくれたけど。

 まあとにかく、これ以上は部屋に被害が出るかもしれない。
 止めて正解だろう。

「やりすぎはよくないよ」
「ぼぅ……」
「はーい……」

《やっぱりホシ君が頂点なんだ》
《これを止められるのはホシ君しかいないだろうな》
《二人ともしょんぼりしてる》

「でも、二人のおかげで配信が盛り上がったよ。ありがとう」
「「……!」」

 その言葉に、二人は嬉しそうにこちらを向く。

「あたしに感謝するのね!」
「ぼぼぉーう!」
「じゃあ、二人も仲直りして」
「「……」」

 二人はお互いに向き直る。

「あんたもやるじゃない、焼きと──いちご」
「ぼぅぼぅ!」
「うんうん」

 仲直りの握手をして、照れくさそうに口角を上げる二人。
 この二人も決して仲が悪いわけではないからな。

 そうして、終了時間になったことに気づく。
 キリも良いしここで締めるのがベストだろう。

「では、今日はここまでにしますね。ありがとうございました!」
「んじゃね~」
「ぼぅ~!」

《おつ!》
《お疲れ様!》
《良かった良かった》
《なんだかんだ良い形》
《今日の配信も面白かった!》
《またね~》

 こうして、「普通の生活スペース」である地下二階も成功(?)を収めて、今回の配信も終えたのだった。







「で? ブルーハワイは何で帰って来たの」

 配信を終えて、リビングでおやつを食べながら話しかける。

「帰ってきちゃ悪いの!」
「いや、今回のバカンスは一か月は帰らないって言って出てったから」
「そうだったかしら」
「そうだよ」

 ブルーハワイは水飴みずあめを舐めながら答える。
 やっぱり子どもだな。
 俺みたいにおやつはプリンにしないと。

「ちょっと変なものを見ちゃったのよ」
「変なもの?」
「うん。すごい量の魔素の塊・・・・って言うのかしら? 光る心臓みたいなもの。それをたくさんの魔物が持ってたの」
「へー」

 なんだろう。
 魔物に変化でも起こっているのかな。

「それを一応伝えておこうと思って。意味ないかもだけど」
「そっか」
「とりあえずそれだけよ。また気が向いたら出掛けるわ」
「分かったよ」

 そうして、水飴を食べ終わったブルーハワイは、地下へと降りて行った。
 久しぶりに、めろんやわたあめともたわむれるんだろう。

「それにしても……」

 今のブルーハワイの話を思い返す。

「魔素の塊ってなんのことだろう」
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