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第39話 フェニックスのいちご

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「その辺のフェニックスです!」

 いちごを紹介すると、コメントが大量に流れる。

《やっぱりかー!!》
《ってどの辺だよww》
《どこにでもいると思ってる?w》
《Sランクの超貴重な魔物だよ!!》
《どれだけ貴重かは調べてこなかったのね》
《そ の 辺 の フ ェ ニ ッ ク ス》
《またパワーワードをww》

「あれ」

 調べてきたことを賞賛されるかと思ったのに、なんだか反応が違う。
 俺んちにいるぐらいだから、他所よそのダンジョンにも普通にいると思ったんだけどな。

「まあいいか」

 そうして、俺はいちごに目を向ける。

「いちご、いつもの頼んでいい?」
「ぼぼっ!」

 いちごは元気な返事をすると、パタパタっと上の方に飛んで行く。
 そのままいつもの定位置に付いた。

《何をする気だ?》
《さっき寒いって言ったよな?》
《え、うそでしょ》
《まさか……》

「ぼぅぅぅ……」

 息を大きく吸ったいちご。
 それから、それを思いっ切り吐き出すように『炎の息ファイアブレス』を放出した。

「ぼー!」

 『炎の息ファイアブレス』は俺の目の前の壁に直撃する。

《ぎゃあああああ》
《ホシ君!?》
《やべえって!!》
《燃えてるって!!》
《大丈夫かーーー!》

「ふぅ~あったかい」

《え》
《は!?》
《何言ってんだこいつ!?》

 困惑するコメント欄に俺は説明した。

「うちの暖房代わりです」

《どこがやねんww》
《くっそ燃えてるけどww》
《ホシ君だから無事なだけだろwww》
《流れ変わってきました》

「えー、でも」

 中々共感してくれないみたいだ。
 ならばと、俺はこれに至る経緯も付け加えた。

「うち、両親もいないし、祖父母もいませんので」

《ん?》
《どした?》
《なんかしんみりする話?》

「高校のお金とかは姉さんが工面してくれています。だから、配信を始める前の俺は節約することしかできませんでした」

《そっか》
《ホシ君;;》
《ええ子やなあ》

「だから、暖房にかかる電気代もフェニックスで代用しようと」

《なるほど……って、ならねえよ!w》
《そうはならんやろwww》
《想像ぶっ飛びすぎで草》
《フェニックスを暖房にするなww》
《見に来てよかったわww》
《これがホシ君よww》

「そうですかね」

 これでも共感は得られなかったみたいだ。
 我ながらナイスアイディアだと思ったんだけどな。

《というか、壁とかは大丈夫なのか?》

「ここ、元は洞窟みたいなダンジョンだったんです。だからダンジョン産の壁なんですよ。いちごの『炎の息』もへっちゃらです」 

《え、それって普通のダンジョンと変わらない壁?》

「そうです!」

 普通に受け答えしていたつもりが、コメント欄が急に騒がしくなる。

《え、ダンジョンの壁だよね?》
《普通は壊せないぞ??》
《それが出来たら一気に深層とかまで行けるし》

 コメント欄が混乱している(?)中、質問に答えた。

《ちなみにどうやって今の形にしたんだ?》

「えと、殴ったりして」
 
《ファーwww》
《どんなパワーだよww》
《一応ダンジョン内だし……》
《確かに魔素の力は使えるのか》
《それにしてもだろw》
《ホシ君らしくて草》
《まあ、それなら耐熱性もうなずけるかあ》
《ホシ君の力にはうなずけんけどな》

 何やら議論が広げられているらしい。
 でも、できちゃったものはしょうがない。
 そう思うのは俺だけなのかな。

「ぼぉっ!」
「お。いちご、ありがとうな。暖かくなったよ」

 そこにいちごが戻って来た。
 みんな気になるのか、いちごへの質問が飛び交う。

《いちごちゃんともよく遊ぶの?》

「遊びます! 暑さの我慢大会とかしてますね」

《暑さの我慢大会!?》
《それってどんな……?》

「いちごが自ら炎を発して、どっちが耐えられるかっていう」

《フェニックスと暑さ我慢大会ww》
《こいつは……w》
《ドラゴンと相撲、フェンリルと追いかけっこに続いて……》
《またやべえエピソード出てきたな》
《ホシ君すぎて草》
 
 その中でも、前のことを覚えてくれている視聴者さんも。

《そういえばワイバーンの火球の時、何か言ってなかったか?》
《言ってたかも》
《あの子に比べたらぬるいかも、とか》
《それっていちごのこと?》

「あ、そうです。いちごに比べたらって話です」

《そっかあw》
《それは納得してしまう》
《さすがにフェニックスよりは熱くなかったかあw》

 視聴者数も伸び始め、段々と納得してくれる雰囲気になっていく。

《だからダンジョンに生活スペースあるんだ》
《地上でやったらあえなく全焼だもんなww》
《便利……なのか?》
《※ホシ君以外は耐えられません》

「ほっ」

 全てのコメントは確認できないけど、なんとなく理解してくれたみたい。
 反応も悪くないし、良かった良かった。

 そうして、ちょうど言おうと思っていた事への質問が飛んでくる。

《じゃあ、暑い時どうすんの?》

「あ、それはですね!」

 俺が説明を始めようとした時──

「ちょっとちょっとー! なんか面白そうなことやってんじゃない!」

 やんちゃな声と共に、地下二階の扉を乱暴に開く音が聞こえた。
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