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第16話 二度目の配信

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<ホシ視点>


 放課後、坂道でチャリを押しながらつぶやく。

「なんだよ~、ナナミのやつ」

 さっき、学校帰りにナナミに連絡をした。
 配信機材をもらった時に「コラボしてみたい」って言ってたし。
 けど、断られた。

『今すぐにコラボしたら、あんたにたかってるみたいだわ。今はそれぞれ自分の活動に注力すべきよ』

 なーんて言われて。

「そういうものなのか~」

 配信者としてはナナミの方が先輩だし、その辺はよく理解しているだろう。
 ここは素直に言う事を聞いておこう。

「じゃあ俺は、何をしようかなあ」

 ぼーっと考えながら、ツブヤイターを開く。
 SNSは見とけってアドバイスを守る俺、偉い。

『1041人があなたをフォローしました』
『969人がいいねしました』
『562人があなたをフォローしました』

「相変わらず変なことになってるし」

 気がつけばフォロワーは30万人。
 ナナミに聞いたら「がはっ」って気絶してたので、意外とすごいのかもしれない。

 だけどそんな中、一つ気になる話題を見つける。

『日向ヒカリ、近日中にSランクダンジョンに挑戦することを表明』

「あれ。この人って」

 配信でいくつかコメントをくれた人だ。
 周りが騒いでいたから覚えてる。

「たしかすごい人のはず……あ、やっぱり」

 史上最年少のSランク探索者。
 チャンネル登録150万人。
 顔も可愛い女子高生探索者。

「すげー」

 少し調べただけで、こんなにも話題が出てくる。
 きっと俺とは関わることのない、すごい人なんだろうなあ。

「がんばってね」

 そっと応援しておいた。

 だけど、この時の俺は知らなかった。
 彼女の挑戦が、俺を配信者として成長させてくれることになるとは──。





 「こ、これでいいんだよね?」

 周りを見渡しながら、一つ一つの機材を確認した。
 浮遊型カメラ、マイク……ナナミからもらった配信機材だ。
 うん、どれも問題なく動いている。

「緊張するなあ……」

 日向ヒカリさんを調べてから、数日。
 暗めの洞窟のようなここは、すでにダンジョンの中だ。
 これも、今からダンジョン配信を行うため。

「ダンジョン配信って人気なんだなあ」

 SNSのアンケート機能を使って「どんな配信が見たいですか」と聞いてみたところ、ダンジョン配信が圧倒的に人気だった。

 やっぱり人気コンテンツなんだね。
 改めて実感したよ。

「ああ、もう時間だ!」

 そんなこんなをしている内に、告知していた時間の1分前。

 急に心臓がバクバクする。
 うまくできるかなあ……いや!

「ええい、もう押してしまえ!」

 俺は配信を開始させた。
 その瞬間、コメントがあふれるように流れる。

《こんばんは!!》
《こん》
《きたああああ!》
《うおおおお》
《待ってたぞー!》
《まちわびてました》
《配信嬉しい!》
《お、ダンジョンだ!》

「うわあっ!」

 いきなり目に追いつかないぐらいのコメント。
 俺は思わず声を上げてびっくりしてしまう。

「す、すごい。こんなに……って、3万人!?」

 まだ開始わずか1分。
 にもかかわらず、同時接続数がいきなり3万人との表示が。

《すげえええ!》
《やっば!》
《まじかよw》
《みんな見たかったんだな》
《猿山の配信でさらに注目度上がってたからな》
《今日はまだまだ来るだろうな》

「ふわあ……」

 すごく嬉しいなあ。
 誰も見に来なかったらどうしようと思ってたけど、開始してよかった。

 そうして、尋ねてくるようなコメントも流れる。

《ここはどこですか? ダンジョン?》

「はい! ここはナナミと来た『翼竜ダンジョン』です!」

 ダンジョンには名前が付けられる。
 大抵は地域とかが多いんだけど、ワイバーンが出るからそう呼ばれるようになったんだって。
 あの時の配信の影響……ではないでしょ、さすがに。

《そもそも、なんでダンジョン内から始めるんだw》
《まじでそれ》
《良かったそれツッコむ人がいて》

「え、普通は違うんですか?」

《ちげーよw》
《ダンジョン内は危険だし》
《安全なところから開始するでしょ》

「な、なるほど。でも別にどこも変わらないかなって……」

《ホシ君にすればなあw》
《それもそうかw》
《聞いておいてだけど、なんかすみません》

「いえいえ! 配信にはまだ不慣れなので言ってもらえると助かります!」

《配信に不慣れというか……》
《強すぎて危機感がないんだよきっと笑》
《やっぱちょっとズレてるw》
《そこがいいんだけどね》
《変わらないでほしいわw》

「そ、そうですか」
 
 なんかちょっとズレてるらしい。
 配信も中々難しいなあ。

「ん」

 そうして軽く挨拶もしたところで、カメラの後ろの子と目が合う。

 そうだった。
 今日は演出を考えてきたんだ。

「それはそうと、今日は皆さんにお見せしたい子がいるんですよ」

《え?》
《なんだ?》
《めろんちゃん?》

「あ、めろんいますよ。ほら」
「キュイ~!」

 手招きすると、カメラの後ろからめろんが姿を現した。
 今は可愛く小さなミニドラゴンの姿だ。

《めろんちゃん!》
《かわいい》
《相変わらずかわええ》
《めろんちゃんモエー》
《小っちゃーい笑》
《粋な演出じゃんw》

「そうでしょ~」

 最後のコメントを見て嬉しくなる。
 カメラの後ろに忍ばせておいたのが功を奏したみたい。

 でも、これだけじゃない。

「ですが、今日はもう一匹!」

《!?》
《え!?》
《もう一匹!?》
《まじか!》
《猿山の時よく見えなかったんだよな》

「そうみたいですね」

 猿山君が遊びにきてくれた日、彼は配信をしていたらしい。
 そこでペットが何匹か映ったらしいんだけど、姉さんの計らいなのか、うまく影になってて見えなかったそう。

 そこで紹介したいなあと思って連れて来たんだ。
 あとすっごく行きたそうにしてたし。

「おいで~」

 俺が屈んで手を広げると、子犬・・のようなペットが配信に姿を見せた。
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