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第一章 ホシとペットと仲間と
第3話 Fランク探索者、Sランク魔物をぶっとばす
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「ケガはない?」
ナナミの頭の上から、声が聞こえてくる。
声の主を確認すると、ナナミの頬に一筋の涙が流れた。
そこには、ホシが立っていたからだ。
《ホシ君ー!!》
《生きてたのかー!!》
《まじかよ!?》
《じゃあさっきの音は……?》
《ドゴーンって》
《え、てかワイバーン倒れてね?》
《おい、まさか……》
最高画質に切り替わったことにより、視聴者も状況を把握し始める。
それでも困惑が拭いきれなかった。
「まさか……ホシがやったの?」
「え、うん」
「でも……!」
「それより大丈夫?」
「えっ」
ナナミに対して、ホシは本当に心配そうに尋ねた。
「撮れ高は」
「……はい?」
《は?》
《え?》
《???》
《なにいってんだこいつ》
《どういうこと?》
ホシ以外の者が全員困惑する中、ホシは言葉を続ける。
「あの鳥、ナナミが倒すのかなーって」
「む、無理に決まってるでしょ!」
「そうなの?」
どうも両者の話が噛み合わない。
ナナミは、まさかと思って聞き返した。
「もしかして……倒せるの?」
「まあ倒せるだろうけど」
「本当に……?」
「え、うん」
ナナミはぎゅっとホシの手を掴んだ。
「お、お願い!」
「わかった。ナナミンがそう言うなら!」
できるかできないかではない。
今はホシを信じる以外に道がなかった。
「じゃあ家以外のダンジョンは初めてだけど、張り切っちゃおうかなー」
ぴょん、ぴょんと跳ねるホシ。
こんな状況にもかかわらず、明らかに余裕のある姿だった。
「──ギャオオオオオオオ!」
「ほっ!」
先ほどの同じ、尻尾の振り回し。
その巨体からは信じられないスピードだが、ホシは悠々とかわす。
《おお!?》
《よけた!?》
《はっや!》
《今消えなかったか?》
《なんか身軽じゃね?》
「おりゃあああああ!」
「え!?」
さらに、高く跳びあがったかと思えば、ダンジョンの壁を走り始めたホシ。
ナナミは目を疑う。
《はあ!?》
《壁を走ってんぞ!?》
《意味分からん意味分からん!》
《どういうこと!?》
《え、これ合成じゃないよね??》
《なんじゃそりゃ!》
まるで現実とは思えない光景に、増え続ける視聴者の同時接続数。
3万、5万、10万……なんと、あっという間に15万人を突破する。
「ギャオオオオ!」
「うーん」
必死に飛翔して、ホシを追いかけるワイバーン。
だが、明らかにホシの方が速い。
「あの子の方がよっぽど速いかな」
「ギャオ!?」
「ていや!」
「グギャアァァァ!」
何か不思議なことを言いながら、ワイバーンをボコボコにしていくホシ。
ナナミも視聴者も目を奪われる。
「どういう、こと……?」
《これ現実?》
《ありえなくね》
《てか笑ってるし》
《Fランクじゃないのか……?》
《何者なんだよ!》
「──ギャオオオオオオオ!!」
そんなホシに、ワイバーンは怒りを露わにする。
これで終わらせるつもりなのか、再び大きく口を開け、炎を集めた。
「ホシ! 逃げて!」
「……」
ナナミの声はホシには届かない。
さらに何をするかと思えば──
「撃ってみれば?」
ホシは煽った。
「──ギャオオオオオオオオオオ!!」
怒り狂ったワイバーンのこれまでで一番の咆哮。
それと共に放たれたのは、ダンジョンの壁をも壊さんとする「ファイアブレス」。
「逃げてよーーー!!」
ナナミの声は虚しく、それを真っ向から受けたホシ。
だが……
「うーん」
「!?」
ファイアブレスが通り、抉られた大地から聞こえてくるふぬけた声。
その場から一歩も動かず、眩い光の中から姿を現してホシは言い放った。
「あの子に比べたらぬるいかも」
「ギャオッ!?」
《は?》
《異次元すぎるだろ……》
《もう訳わからん》
《なんか笑えてきた》
《わかるw》
《ははっ》
《ぶっ倒せ!》
「撮れ高は十分かな」
ホシは拳をぐっと握る。
初めから武器は持っていない。
「とあー!」
「──ギャアアアアアア」
最後までしまらない掛け声でワイバーンをぶん殴るホシ。
ワイバーンの長い首はぐにゃりと曲がり、そのまま地上へ崩れ落ちた。
やがてその体はダンジョンへと取り込まれ、跡形もなくなっていく。
見事に討伐したのだ。
《なんだその声www》
《しまらねえw》
《とあー(棒)》
《かっこくよくなくて草》
《ワイバーン君の方が配信者してる》
《でもすごかった》
《まじで信じられない》
去った危機に、ここ一番に盛り上がるコメント欄。
同時接続数はすでに50万人を突破。
誰もが無理だと諦めた状況の中、無名のFランク探索者がワイバーンを倒したのだ。
話題にならないはずがない。
「よかった……」
ナナミも全身の力が抜け、その場にへたりこむ。
だがそんな中、マイクにも拾われないような小さな声で、ホシはボソっとつぶやいた。
「うちのペット達の方が手応えあるな」
ナナミの頭の上から、声が聞こえてくる。
声の主を確認すると、ナナミの頬に一筋の涙が流れた。
そこには、ホシが立っていたからだ。
《ホシ君ー!!》
《生きてたのかー!!》
《まじかよ!?》
《じゃあさっきの音は……?》
《ドゴーンって》
《え、てかワイバーン倒れてね?》
《おい、まさか……》
最高画質に切り替わったことにより、視聴者も状況を把握し始める。
それでも困惑が拭いきれなかった。
「まさか……ホシがやったの?」
「え、うん」
「でも……!」
「それより大丈夫?」
「えっ」
ナナミに対して、ホシは本当に心配そうに尋ねた。
「撮れ高は」
「……はい?」
《は?》
《え?》
《???》
《なにいってんだこいつ》
《どういうこと?》
ホシ以外の者が全員困惑する中、ホシは言葉を続ける。
「あの鳥、ナナミが倒すのかなーって」
「む、無理に決まってるでしょ!」
「そうなの?」
どうも両者の話が噛み合わない。
ナナミは、まさかと思って聞き返した。
「もしかして……倒せるの?」
「まあ倒せるだろうけど」
「本当に……?」
「え、うん」
ナナミはぎゅっとホシの手を掴んだ。
「お、お願い!」
「わかった。ナナミンがそう言うなら!」
できるかできないかではない。
今はホシを信じる以外に道がなかった。
「じゃあ家以外のダンジョンは初めてだけど、張り切っちゃおうかなー」
ぴょん、ぴょんと跳ねるホシ。
こんな状況にもかかわらず、明らかに余裕のある姿だった。
「──ギャオオオオオオオ!」
「ほっ!」
先ほどの同じ、尻尾の振り回し。
その巨体からは信じられないスピードだが、ホシは悠々とかわす。
《おお!?》
《よけた!?》
《はっや!》
《今消えなかったか?》
《なんか身軽じゃね?》
「おりゃあああああ!」
「え!?」
さらに、高く跳びあがったかと思えば、ダンジョンの壁を走り始めたホシ。
ナナミは目を疑う。
《はあ!?》
《壁を走ってんぞ!?》
《意味分からん意味分からん!》
《どういうこと!?》
《え、これ合成じゃないよね??》
《なんじゃそりゃ!》
まるで現実とは思えない光景に、増え続ける視聴者の同時接続数。
3万、5万、10万……なんと、あっという間に15万人を突破する。
「ギャオオオオ!」
「うーん」
必死に飛翔して、ホシを追いかけるワイバーン。
だが、明らかにホシの方が速い。
「あの子の方がよっぽど速いかな」
「ギャオ!?」
「ていや!」
「グギャアァァァ!」
何か不思議なことを言いながら、ワイバーンをボコボコにしていくホシ。
ナナミも視聴者も目を奪われる。
「どういう、こと……?」
《これ現実?》
《ありえなくね》
《てか笑ってるし》
《Fランクじゃないのか……?》
《何者なんだよ!》
「──ギャオオオオオオオ!!」
そんなホシに、ワイバーンは怒りを露わにする。
これで終わらせるつもりなのか、再び大きく口を開け、炎を集めた。
「ホシ! 逃げて!」
「……」
ナナミの声はホシには届かない。
さらに何をするかと思えば──
「撃ってみれば?」
ホシは煽った。
「──ギャオオオオオオオオオオ!!」
怒り狂ったワイバーンのこれまでで一番の咆哮。
それと共に放たれたのは、ダンジョンの壁をも壊さんとする「ファイアブレス」。
「逃げてよーーー!!」
ナナミの声は虚しく、それを真っ向から受けたホシ。
だが……
「うーん」
「!?」
ファイアブレスが通り、抉られた大地から聞こえてくるふぬけた声。
その場から一歩も動かず、眩い光の中から姿を現してホシは言い放った。
「あの子に比べたらぬるいかも」
「ギャオッ!?」
《は?》
《異次元すぎるだろ……》
《もう訳わからん》
《なんか笑えてきた》
《わかるw》
《ははっ》
《ぶっ倒せ!》
「撮れ高は十分かな」
ホシは拳をぐっと握る。
初めから武器は持っていない。
「とあー!」
「──ギャアアアアアア」
最後までしまらない掛け声でワイバーンをぶん殴るホシ。
ワイバーンの長い首はぐにゃりと曲がり、そのまま地上へ崩れ落ちた。
やがてその体はダンジョンへと取り込まれ、跡形もなくなっていく。
見事に討伐したのだ。
《なんだその声www》
《しまらねえw》
《とあー(棒)》
《かっこくよくなくて草》
《ワイバーン君の方が配信者してる》
《でもすごかった》
《まじで信じられない》
去った危機に、ここ一番に盛り上がるコメント欄。
同時接続数はすでに50万人を突破。
誰もが無理だと諦めた状況の中、無名のFランク探索者がワイバーンを倒したのだ。
話題にならないはずがない。
「よかった……」
ナナミも全身の力が抜け、その場にへたりこむ。
だがそんな中、マイクにも拾われないような小さな声で、ホシはボソっとつぶやいた。
「うちのペット達の方が手応えあるな」
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