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第1話 突然の婚約破棄
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「クラリス・マリエット侯爵令嬢。貴様はエーヴ・クロード伯爵令嬢他ならびにその友人に社交の場で侮辱の数々をおこなった。よって、王太子であるこの私、ディオン・フォルジュに相応しくないと判断して、婚約破棄を言い渡す。そして、私に相応しい知性を兼ね備えたエーヴ・クロード伯爵令嬢を新しい婚約者とする」
妃教育の最中に呼び出されたから何かと思えば、いきなり婚約破棄の申し渡しですか。
特に驚きもしない私に対して、王太子であるディオン様は私を蔑んだ目で見遣り、そしてその隣には弱々しそうに彼を頼りながらも、彼に見えないようににやついているクロード伯爵令嬢がいる。
なるほど、最近やたらと私が悪者にされるような事案が多く発生していたのもこのためですか。
先日のお茶会の時も紅茶をクロード伯爵令嬢は自らこぼしてドレスを汚したのに、それを私のせいにしていたわね。
ああ、そうそう、階段でわざと躓いて転んでみせて、私を指さして「押された!」と言い張ってたし。
他にも私がクロード伯爵の悪口を言っていたとか、私が家の権威を振りかざしてるとかいろいろ噂を立ててたらしいですし。
そんなの誰が信じるのだろうか、と思っていたけど、まさかこの王太子が信じるとは……。
しかも、その悪女──クロード伯爵令嬢と今度は婚約なさる気なんて。
「なんだ? あまりの自分の悪事に言葉が出ないか?」
なんですって? 「自分の悪事」にですって?
言葉が出ないのはあなたが単純にバカだからよ。
ああ、あなたを信じていた私がバカみたいじゃない……。
クロード伯爵令嬢はディオン様の前でか弱い女の子を演じると、彼は「俺が守るから!」といった感じで彼女のうるうるした目を見つめる。
そうね、まあ彼女は可愛らしい見た目でいかにもお姫様のようなふわっとした雰囲気。
でもその奥に隠された悪女の顔を、彼はまだ気づいていなさそう。
はあ、こんな男と離れられてむしろ清々するわ。
私は最後の別れといわんばかりに素晴らしく品のある動きでカーテシーをすると、笑顔を浮かべて言い放つ。
「ええ、ぜひとも婚約破棄をお受けいたしますわ。クロード伯爵令嬢、王太子殿下をどうぞよろしくお願いいたします」
「なっ!」
唖然とその場で立ち尽くすディオン様と、頬を引きつりながら顔を歪めるクロード伯爵令嬢。
ええ、その顔、いい気味だわ。せいぜいそのバカ男に一生振り回されていなさい。
それに、もうあなたはこれで終わりね。
私はスカートを翻して二人に背を向けると、そのまま両手を扉を開けて退室した──
煌びやかな絵画や彫刻品の数々が並んでいる廊下を歩きながら、私は少しばかり感傷に浸る。
気づいていたのよ、ディオン様に好きな人ができたことを。
知っていたのよ、その人はふんわりとした柔らかい髪と笑顔で皆を魅了するクロード伯爵令嬢だってこと。
わかっていたのよ、いずれ私はもうあなたの傍にいられなくなることを。
私は段々勉学にも励まなくなった彼に、何度も何度も声をかけてきちんと勉強をしてほしいとお願いしたわ。
だけど、いくら私があなたに言っても、あなたの耳に、心にはもう私の思いは届かなかった──
このままではあなたは王太子でいられなくなってしまうわ、と言ったけどそれもだめだった。
「そんなことになるわけない」って言い張って、また彼女のところへ行ってしまった。
あなたを思う気持ちはもう、届かないわね……。
そう、なら仕方ないわね。
あなたにはそれ相応の罰が待っているでしょう。
あなたが選んだのよ、破滅する未来を──
妃教育の最中に呼び出されたから何かと思えば、いきなり婚約破棄の申し渡しですか。
特に驚きもしない私に対して、王太子であるディオン様は私を蔑んだ目で見遣り、そしてその隣には弱々しそうに彼を頼りながらも、彼に見えないようににやついているクロード伯爵令嬢がいる。
なるほど、最近やたらと私が悪者にされるような事案が多く発生していたのもこのためですか。
先日のお茶会の時も紅茶をクロード伯爵令嬢は自らこぼしてドレスを汚したのに、それを私のせいにしていたわね。
ああ、そうそう、階段でわざと躓いて転んでみせて、私を指さして「押された!」と言い張ってたし。
他にも私がクロード伯爵の悪口を言っていたとか、私が家の権威を振りかざしてるとかいろいろ噂を立ててたらしいですし。
そんなの誰が信じるのだろうか、と思っていたけど、まさかこの王太子が信じるとは……。
しかも、その悪女──クロード伯爵令嬢と今度は婚約なさる気なんて。
「なんだ? あまりの自分の悪事に言葉が出ないか?」
なんですって? 「自分の悪事」にですって?
言葉が出ないのはあなたが単純にバカだからよ。
ああ、あなたを信じていた私がバカみたいじゃない……。
クロード伯爵令嬢はディオン様の前でか弱い女の子を演じると、彼は「俺が守るから!」といった感じで彼女のうるうるした目を見つめる。
そうね、まあ彼女は可愛らしい見た目でいかにもお姫様のようなふわっとした雰囲気。
でもその奥に隠された悪女の顔を、彼はまだ気づいていなさそう。
はあ、こんな男と離れられてむしろ清々するわ。
私は最後の別れといわんばかりに素晴らしく品のある動きでカーテシーをすると、笑顔を浮かべて言い放つ。
「ええ、ぜひとも婚約破棄をお受けいたしますわ。クロード伯爵令嬢、王太子殿下をどうぞよろしくお願いいたします」
「なっ!」
唖然とその場で立ち尽くすディオン様と、頬を引きつりながら顔を歪めるクロード伯爵令嬢。
ええ、その顔、いい気味だわ。せいぜいそのバカ男に一生振り回されていなさい。
それに、もうあなたはこれで終わりね。
私はスカートを翻して二人に背を向けると、そのまま両手を扉を開けて退室した──
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だけど、いくら私があなたに言っても、あなたの耳に、心にはもう私の思いは届かなかった──
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