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番外編 閑話 DとRの密会①
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エリーヌとアンリがエリカリア島へ向かうために馬車に乗り込んだ。
そうして男と女が二人を見送った後、女が声をかける。
「あなた様は一緒に行かれなくてよかったのですか?」
「ええ、私は所用を済ませなければならないので」
そう言って屋敷の方へと歩き出した彼について女も共に歩く。
「そう言えばルイス様からお手紙が届いていたのですが、アンリ様に渡しそびれてしまいました」
女はポケットに大事にしまっていた手紙を取り出して、両手で男に渡した。
それをじっと見つめた男に少し微笑んだ後、空を見上げる。
「ルイス様はお強くなった、そして、アンリ様も変わられた」
「ええ、この屋敷の雰囲気も明るくなりました。そして、『毒』から解き放ったのは……」
女はそれ以上は言わなかった。
男もその先を気づいているだろう、と思ったからである。
「エリーヌ様もご一緒に行かれるとは」
「ご結婚されてからまだ数ヵ月ですし、新婚といえばそうですしおかしなことではありませんね」
女は意外だといった様子で男のほうを見ている。
「なんですか、そんな顔で私を見て。ああ、なるほど、もしかして実はあなたは私の事を好きで……」
「いえ、それはないです」
女ははっきりと否定した。
「あなたのような何を考えているかわからない意味不明な人間はご遠慮します」
そう言って女はその場を去ろうとした。
その時、男がふと女の手を掴んだ。
「え……」
「あなたは戦場での過去がある。その腕はエマニュエル家の警護でとても役に立っています」
男はそこまで言って女を引き寄せ、耳元で囁く。
「しかし、決して無理だけはしないように、と私から命じます」
男は女を解き放つと、ふっと一つ笑って屋敷へと戻っていく。
彼の姿が見えなくなった後、女は呟いた。
「無駄にいい声させないでよ、あのバカ男……」
女もまた屋敷に戻って職務に戻っていった──。
そうして男と女が二人を見送った後、女が声をかける。
「あなた様は一緒に行かれなくてよかったのですか?」
「ええ、私は所用を済ませなければならないので」
そう言って屋敷の方へと歩き出した彼について女も共に歩く。
「そう言えばルイス様からお手紙が届いていたのですが、アンリ様に渡しそびれてしまいました」
女はポケットに大事にしまっていた手紙を取り出して、両手で男に渡した。
それをじっと見つめた男に少し微笑んだ後、空を見上げる。
「ルイス様はお強くなった、そして、アンリ様も変わられた」
「ええ、この屋敷の雰囲気も明るくなりました。そして、『毒』から解き放ったのは……」
女はそれ以上は言わなかった。
男もその先を気づいているだろう、と思ったからである。
「エリーヌ様もご一緒に行かれるとは」
「ご結婚されてからまだ数ヵ月ですし、新婚といえばそうですしおかしなことではありませんね」
女は意外だといった様子で男のほうを見ている。
「なんですか、そんな顔で私を見て。ああ、なるほど、もしかして実はあなたは私の事を好きで……」
「いえ、それはないです」
女ははっきりと否定した。
「あなたのような何を考えているかわからない意味不明な人間はご遠慮します」
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その時、男がふと女の手を掴んだ。
「え……」
「あなたは戦場での過去がある。その腕はエマニュエル家の警護でとても役に立っています」
男はそこまで言って女を引き寄せ、耳元で囁く。
「しかし、決して無理だけはしないように、と私から命じます」
男は女を解き放つと、ふっと一つ笑って屋敷へと戻っていく。
彼の姿が見えなくなった後、女は呟いた。
「無駄にいい声させないでよ、あのバカ男……」
女もまた屋敷に戻って職務に戻っていった──。
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