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おまけ 僕の世界は色づき始めた

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「もうあがっていいよ!」
「わかりました、それではお先に失礼します」
「あいよ。明日は休みでいいからね!」
「ありがとうございます!」

 店主に見送られた彼は、店から数分ほど歩いた街の一角にある家に帰る。
 バッグを置いた彼はその足で二階へと上って行った。
 一階は綺麗に整頓されているが、二階は少し散らかっている。
 部屋の端にある机はほとんど画材道具で埋め尽くされて、鉛筆を削った跡がそのまま残っていた。

「寝坊しちゃったから、そのままにしてたんだった」

 彼は鉛筆の削った木くずをゴミ箱に捨てる。
 そうして、机を綺麗に片づけた時、一つの手紙を見つけた。

「あ……」

 そこには「ルイスさんへ」と書かれていた。
 手紙を開けると、そこには見覚えのある彼の義理の姉の文字が目に入る。

『ルイスさんへ

 新しい街での暮らしはそろそろ慣れましたか?
 少し前にそちらの街に移り住んだと聞きました。
 アンリ様から聞いたのですが、リースで住んで絵を描くのが夢だったそうですね!
 その夢が叶ったこと、私も嬉しく思います。

 パン屋さんで朝働いているとも聞きました。
 これにはアンリ様が驚いていて、「ルイスは朝が弱かったのに」なんて言っていました。
 リースは豊かな自然もあり、芸術の街だと聞きます。
 いつかは私たちもそちらに行ってもいいですか?

 アンリ様はルイスさんが旅に出た日から、「ルイスは一人で大丈夫だろうか」とばかりです。
 私が大丈夫だと言っても、全然聞いてくれないのです。
 でも何かあればすぐに連絡してくださいね!
 私かアンリ様がすぐに飛んでいきますから!
 
 それでは、またお手紙書きますね。
 あなたの夢がきっと、もっとたくさん叶いますように。
 
                   エリーヌ』

 彼は手紙をそっと閉じてもう一度封筒に入れると、大切に木の箱にその手紙をしまう。

「もう、お姉様も結局過保護なんだから……」

 たくさん入った手紙の束に、また一つ手紙が重なる。
 彼は大事そうにその手紙を出していくつか眺めながら、また箱にしまった。

 うんと背伸びをした彼は、まだ午前中の明るい空を見て微笑む。
 行き交う人並、レンガの街並みを眺めて思う。

「ああ、また描きたい」

 そうして彼はすぐ横の小さなテーブルにあった筆をとって、窓の前に置いたキャンバスに描いていく。
 モノクロでなくなった彼の絵は、無限の世界を映し出していた──

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