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第一部

第6話 お茶会の招待状~Sideエミール~

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 エミールは自室で腕を組みながら、ちょこまかと動き回ってそわそわしていた。

(もう父上から『証拠』の課題を言われてから3日経つ。リュシー嬢に会えばすぐに証明できるのに! どうやって会えばいいのだ……)


 すると、ノックの音が響き渡る。

「入っていいぞ」

「失礼します」

 そこには執事が立っており、エミールは要件を聞くと、父親であるエストレ子爵が呼んでいるということだった。

「わかった、すぐにいく」

 執事のあとを追い、エミールはエストレ子爵の執務室へと向かった。



◇◆◇



 エミールはエストレ子爵の執務室の前に立つと、ドアをノックする。
 「入れ」との子爵の声がドアの向こうから聞こえる。

 ドアを開けてエミールは部屋に入り、執務机につくエストレ子爵の前に立つ。

「お呼びでしょうか、父上」

「あれから3日たったぞ、リュシー嬢からの求愛の『証拠』はまだか?」

「もう少しお待ちください。ただいま準備をしている状態でございます」

「準備……? お前がそんな用意周到には思えんがな」

「……」

 図星をつかれたエミールはエストレ子爵に返す言葉が見つからず、黙ってしまう。

「やはり、口からの出まかせか」

 エストレ子爵はエミールに目線を向けることはなく、領内から届く手紙に目を通しながら話す。

「そんなことはございません!! 必ずすぐに『証拠』をお見せします!!」

 前のめりになり、腕を大きく広げながら反論するエミール。



「失礼します」


 執事がドアをノックして執務室に入り、そのまま二人の傍に近寄る。

「以前エストレ子爵がご交流されたことがある、マルベール侯爵家より、リュシー様からエミール様宛で招待状が届いております」

「──っ! ほら、父上! リュシー嬢からこの僕宛に招待状が届いたではありませんか!! これで求愛の『証拠』が揃いましたね!」

「招待状くらいで『証拠』になるか! リュシー嬢の直接のお言葉を聞かない限りは納得できん」

 エストレ子爵は手紙の返事をペンで執筆していた手を止め、エミールに向かって告げた。


「それでは、リュシー嬢を直接うちに連れてきます! それなら信じてくださいますか?!」

「そうだな、それでリュシー嬢の口からお前への愛を聞ければ納得しよう」

「かしこまりました! それでは、お茶会に参加して約束を取り付けてまいります!!」

「……ああ」

「それではお茶会の準備があるので、失礼します!」


 そういうと、エミールは上機嫌にエストレ子爵の執務室を去った。



 エミールの去った執務室にて、エストレ子爵は執事に命じていた。

「エミールにはしらせず、お茶会の様子を私にあとで報告しろ」

「かしこまりました、旦那様」


「お前の言う求愛が本物か、しっかり見届けさせてもらうぞ」

 そう呟き、子爵は再び手紙の執筆にとりかかった──
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