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第六話

小さなメッセージ

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見慣れた背中が、なんだかやけに小さい。私は、声をかけようとして止めた。背中には、『そっとしておいてくれ』と書いてあったから。私は、上げかけた手をそっと下ろした。
昨日、彼は長年の片思いを終わらせた。それも、大勢の生徒や先生の前で。昔流行った、某バラエティ番組を真似したのだ。屋上へ上がり、好きな子の名前を叫んだ。そして、あっさりフラれた。
フラれるなんて、思ってなかったんだろうな。だって、あんなに仲良かったもんね。自信満々で告白して、フラれたんだ。
本当はね、内心ではざまぁみろって思ったの。だって、私の気持ちに気づかなったんだから。
でもね、やっぱり落ち込んでいる君を見たくない。
「ねぇ。映画、観に行かない?タダ券もらったんだ」
できるだけ自然に誘ってみた。少しでもいつもと違えば、君は気づいてしまう。これが、慰めるためだと。それは、お互い嫌だよね?きっと、私なら慰められたくなんかない。だって、余計に惨めじゃない。でも、早く笑顔に戻ってほしいんだ。
「・・・どんな映画?」
久しぶりに聞く君の声。ちょっとだけ掠れているのは、やっぱり泣いたから?
「秘密」
私は、いつも通りにふざけた。もしかしたら、ここで告白したらチャンスがあるかもしれない。でも、失恋した事につけこむのはプライドが許さないの。
大ヒットまではいかなかったB級のコメディ映画。隣の席で、彼がゲラゲラ笑ってる。笑いながら、泣いてた。
「くっだらねぇ」
そう言いながら、泣いていた。
小さなメッセージは、届いたようだ。映画のラスト、主人公が呟くのだ。

「失恋なんて、明日には忘れてるよ」

と。
明日になったら、元の君に戻っているといいな。
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