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第二話
永遠に離さない
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男に抱かれて気持ちがいいなんて、育也はこれまで知らなかった。男娼だった頃は、ただただ辛く長い行為だったのに、今では幸福を確かめる儀式のようだ。
「あ・・・っ」
太い指と熱い舌が全身を余すとこなく愛撫し、身体の奥深くにはドクンッ、ドクンッと脈打つ鼓動を感じる。愛する男に抱かれているのだと思うと、それだけで何もかもが満たされた。涙で潤んだ瞳に、自分を甘く支配する男の顔が見える。
二階堂秋臣。育也が、幼い頃から恋い焦がれた相手。背中に指を這わせれば、古い傷が触れた。その傷は、かつて秋臣が育也を庇ってできたものだ。その傷は、育也と秋臣を今も繋いでいる。育也だけの、愛の証しなのだ。
「毎日、毎日男に抱かれていると、だんだんどうでもいいと思えてきたんだ。この身体で母さん達を守れるならって・・・」
繋がったまま育也が呟けば、秋臣が気遣わしげに頬や額に唇を押し当てる。できたら、忘れたい記憶。だが、決して消えてはくれない記憶。
育也は、手探りで枕元の巾着袋を握った。育也がまだ幼い頃に、秋臣から貰った貝殻。楽しかった思い出は、全てそこに詰まっていた。
「これさえあれば、平気だった。いつも、心は秋臣に抱かれていたから」
汗で濡れた前髪が額に落ち、秋臣を普段よりも男らしく、艶めいて見せた。間近で見つめた漆黒の瞳には、快楽に染まった自分の顔が見える。
「秋臣にこうして抱かれる日がくるなんて、思ってもいなかった」
秋臣が買ってくれなかったら、自分は今でも孤独だった。育也は、感謝の気持ちをどうにか伝えたかった。
繋がったまま秋臣に口付ければ、中の彼がグッと硬くなる。
「・・・っ、あっ、さっきイッたばかりだろ・・・っ」
「すみません。あまりに嬉しくて」
厚い胸板を軽く押し返すものの、秋臣が更に強く育也を抱き締める。ググッと密着度が増して、ますます育也の声は乱れた。男娼をしていた時には、1度だって感じなかった。なのに、秋臣の指や唇にわずかに愛撫されただけで、すぐに身体が反応してしまう。
「あっ、何度も、無理・・・っ、あっ・・・」
「愛しています。育也様」
囁きに育也は目を閉じた。ビクビクと内壁が震え、心地いい余韻が爪先まで満たしてくれる。
ずっと、こうして愛し合えたらいいと思いながら育也は秋臣の背中を抱き締めた。
秋臣に縁談の話が持ち上がったのは、そろそろ冬になろうという季節だった。秋臣がかねてより懇意にしている実業家の伊集院光男が、大事な話があるとやってきたのだ。美しい顔立ちの少女を連れて・・・。
「伊集院様。どうかしましたか?」
「久しぶりに碁を打とうと思ってな。それに、孫娘の清華をお前に会わせたかった。これ、挨拶をせんか」
「清華と申します」
鈴を転がすような声というのは、こういう声を言うのだと育也は初めて思った。かわいらしく、耳障りがとてもいい。伊集院というこの老人は、かつて政治家として名を馳せた人物だ。秋臣が実業家として成功できたのは、彼の力添えもあったという。
「弟さんかね?」
「あ、いえ。彼は私の・・・」
「こ、ここの使用人です」
秋臣の言葉を遮って、育也は厨房へと小走りで向った。
(さすがに、男娼を囲っているのはまずいよな)
使用人だった秋臣がどのように実業家になったのかは知らないが、きっとかなりの苦労をしたのだろう。そして、伊集院のような権力者の力も必要だったに違いない。男娼である自分がチョロチョロしていたら、きっと秋臣の迷惑になる。育也は、もう子供の頃のようなワガママは言えないと思っていた。
(あの清華って人、綺麗だったな)
白粉なんかつけなくたって肌は餅のように白かったし、睫毛なんてパサパサと音がしそうだ。椿の絵が美しい着物を身にまとい、礼儀作法もきちんとしていた。育也だって気がついてる。きっと、伊集院という老人はよほど秋臣と清華の縁談を進めたいのだろう。既に三十路間近の男が伴侶がいないというのは、好奇の目に晒されると秋臣に話していた。育也は、秋臣が苦しい立場になる事を望んでいない。
「育也様。なぜ、使用人だなどと言ったのですか?」
「まだ後片付けが残ってるんだ。後にしてくれ」
この日から、育也は秋臣と距離を置く事にした。
伊集院に逆らえば、秋臣が不利になってしまう。清華と結婚すれば、秋臣の将来は安心だ。
「しばらく、寝室は別々にしよう」
「なぜ、ですか?」
「僕達は2人っきりじゃないんだ。それに、いい加減呼び方を変えてくれ。もう僕はお坊っちゃんじゃない」
秋臣を突き放す事が彼のためだ。育也は、何度もそう言い聞かせた。
屋敷には数人だが使用人がいる。いつも離れで寝ているとはいえ、変な噂が立っては縁談に影響があるだろう。
(秋臣が結婚・・・)
上背がある秋臣と小柄な清華が並ぶと、まさに絵に描いたような美男美女だ。
(そうなったら、僕は・・・)
清華は慎ましやかで、まさに大和撫子を絵に描いたような人だ。きっと、秋臣を支えてくれるだろう。縁談が正式にまとまったら屋敷を出ようと育也は心に決めた。育也は、秋臣の幸せだけを願っていた。
「育也様。私は、あなたに何かしましたか?」
身体を重ねなくなり1ヶ月がたとうとしていた夜、秋臣が育也の部屋を訪ねた。
「様付けはやめてくれって言ったろ」
わざと冷たく言えば、秋臣が押し黙る。
「・・・縁談。進んでいるのか?」
「え?」
嘘をつくのが苦手な秋臣。あからさまな狼狽に、育也は用意していた言葉を述べた。
「よかったじゃないか。綺麗な人で」
「育也、様?」
「きっと、お前のいい奥さんになってくれるよ」
「本気で、言ってるんですか?」
「当たり前だろ。こんなめでたい事が・・・、えっ」
振り向くと、秋臣が育也を見下ろしていた。照明を背中にしているため、秋臣の表情まではわからない。大きな手が、育也の細い手首を掴んだ。
「や、やだっ。何するんだっ、やめっ」
いつもと違う強さに、育也は本気で怖くなった。
「暴れないでください。怪我をさせる」
自身の浴衣の帯を解いた秋臣が、育也の両手首を後ろ手に縛り上げる。
「あっ、何を・・・っ」
着物を捲り上げられ、サッと育也の顔が青ざめる。
「やめ・・・っ、やだっ」
「暴れないでください。もう一度、あなたの身体に教えてあげます。あなたが誰のものなのか」
秋臣は眼鏡を外すと、グッと育也の尻を左右に広げた。
「あなたを、離す気はない」
育也は、これから何をされるのかわからずカタカタと震えた。足が限界まで広げられ、秘部が照明の下に晒される。
「覚悟してください。優しくできそうもない」
育也は、秋臣が本気で怒っている事を感じた。ブルブル震えていれば、秋臣がことさら優しく言った。
「私なしではいられない身体にしてあげますよ」
秋臣の顔が、ゆっくりと伏せられた。
「ふ・・・っ、あっ、あっ」
育也は、全身に汗をびっしょりかきながら、まるで子供のように泣きじゃくった。性器の先からダラダラと蜜が垂れているというのに、秋臣は決定的な快楽をくれない。
てっきり、乱暴に抱かれるのだと思っていた。手首の拘束も、それほどきつくなかった。
「秋・・・臣っ、早く、イかせて・・・っ」
膝立ちにされ、前を舌でなぶられる。強く吸われた瞬間。育也はその全てを秋臣の口の中に放った。秋臣の喉が大きく上下する。なのに、舌はまだ育也の性器に絡みついている。
「あっ、ああっ、あっ、ああっ」
育也は、漆黒の髪を振り乱し、意味もなさない声を上げ再び達した。仰向けにされ、両足が大きく広げられる。そして、入り口には秋臣自身が押し当てられた。
「私を、欲しがってください」
秋臣の手が、涙で濡れた育也の頬を包み込む。
「私が実業家になったのは、あなたを守るためだった。そのためならなんだってしてきた。それなのに、あなたは私から離れようとする」
育也には、秋臣が泣いているように見えた。
「ほし・・・い・・・」
育也の唇が動いた。
「秋臣が、欲しい」
次の瞬間。ズブズブと音がするぐらい、激しく秋臣が育也の中に入り込んだ。
「あっ、んっ、もう、無理だってば・・・ぁっ、あっ」
キュッキュッと前を擦られながら、育也は身体を揺さぶられる。
「こうして、いつまでも私を貪欲に求めてください」
「僕が、いたら、お前の邪魔になるのに・・・っ、あっ、はあっ」
「なぜわからないんです?あなたのいない人生なんて、なんの意味もない」
秋臣は、縁談は既に断ったと言った。伊集院はかなり残念がっていたが、その事で秋臣が不利になる事はないそうだ。
「私のためを思うなら、この腕の中にいてください」
「んんっ、んっ、あっ、あっ、んんっ」
両手を縛られているため自由がきかず、育也は不自然な格好で秋臣を受け入れた。気のせいか、いつもより熱く感じる。
「私は、永遠にあなたのものだ」
秋臣が両手の拘束を解くと同時に、育也は泣きながらしがみついた。本当は、秋臣が自分以外を愛するなど嫌で嫌でたまらなかった。でも、秋臣が陰口を叩かれたり、後ろ指をさされるのはもっと嫌なのだ。
「好き・・・っ、秋臣が、好きだよ・・・っ」
「あなたは、昔から素直じゃない。いつも、私を困らせる」
秋臣に導かれるま唇を重ね、育也は身体を揺らした。身体の奥で、秋臣が弾ける。トロトロと溢れる精液は、育也をこれ以上ないぐらい満足させた。
「跡にはなっていませんね」
行為の後、秋臣が育也の手首や身体の奥をチェックする。秋臣は、育也の身体に僅かな傷もつけたくなかった。
「申し訳ありません。あんな事をしてしまい」
「お前がこんなにスケベとは思わなかったよ」
「・・・ガッカリされましたか?」
秋臣の問いに、育也は黙って首を横に振った。
「お前じゃなかったら、嫌だけど」
育也は、秋臣に甘えるように身体を密着させた。
「秋臣になら、何をされても平気。嫌いになんか、ならないよ」
触れられて身体が反応したのが、何よりの証拠だ。秋臣が、育也を抱き上げて唇を合わせる。
「永遠に、あなただけを愛しています」
「僕も、愛してるよ」
育也は、秋臣の頬に手を当てるとゆっくり口づけた。所詮、離れて生きていくなど無理なのだ。
「たまには、刺激的な行為もいいですね」
「バカ」
クスクス笑いながら秋臣が口付けてくる。育也は、顔を真っ赤にしながらも唇を自由にさせた。
「あ・・・っ」
太い指と熱い舌が全身を余すとこなく愛撫し、身体の奥深くにはドクンッ、ドクンッと脈打つ鼓動を感じる。愛する男に抱かれているのだと思うと、それだけで何もかもが満たされた。涙で潤んだ瞳に、自分を甘く支配する男の顔が見える。
二階堂秋臣。育也が、幼い頃から恋い焦がれた相手。背中に指を這わせれば、古い傷が触れた。その傷は、かつて秋臣が育也を庇ってできたものだ。その傷は、育也と秋臣を今も繋いでいる。育也だけの、愛の証しなのだ。
「毎日、毎日男に抱かれていると、だんだんどうでもいいと思えてきたんだ。この身体で母さん達を守れるならって・・・」
繋がったまま育也が呟けば、秋臣が気遣わしげに頬や額に唇を押し当てる。できたら、忘れたい記憶。だが、決して消えてはくれない記憶。
育也は、手探りで枕元の巾着袋を握った。育也がまだ幼い頃に、秋臣から貰った貝殻。楽しかった思い出は、全てそこに詰まっていた。
「これさえあれば、平気だった。いつも、心は秋臣に抱かれていたから」
汗で濡れた前髪が額に落ち、秋臣を普段よりも男らしく、艶めいて見せた。間近で見つめた漆黒の瞳には、快楽に染まった自分の顔が見える。
「秋臣にこうして抱かれる日がくるなんて、思ってもいなかった」
秋臣が買ってくれなかったら、自分は今でも孤独だった。育也は、感謝の気持ちをどうにか伝えたかった。
繋がったまま秋臣に口付ければ、中の彼がグッと硬くなる。
「・・・っ、あっ、さっきイッたばかりだろ・・・っ」
「すみません。あまりに嬉しくて」
厚い胸板を軽く押し返すものの、秋臣が更に強く育也を抱き締める。ググッと密着度が増して、ますます育也の声は乱れた。男娼をしていた時には、1度だって感じなかった。なのに、秋臣の指や唇にわずかに愛撫されただけで、すぐに身体が反応してしまう。
「あっ、何度も、無理・・・っ、あっ・・・」
「愛しています。育也様」
囁きに育也は目を閉じた。ビクビクと内壁が震え、心地いい余韻が爪先まで満たしてくれる。
ずっと、こうして愛し合えたらいいと思いながら育也は秋臣の背中を抱き締めた。
秋臣に縁談の話が持ち上がったのは、そろそろ冬になろうという季節だった。秋臣がかねてより懇意にしている実業家の伊集院光男が、大事な話があるとやってきたのだ。美しい顔立ちの少女を連れて・・・。
「伊集院様。どうかしましたか?」
「久しぶりに碁を打とうと思ってな。それに、孫娘の清華をお前に会わせたかった。これ、挨拶をせんか」
「清華と申します」
鈴を転がすような声というのは、こういう声を言うのだと育也は初めて思った。かわいらしく、耳障りがとてもいい。伊集院というこの老人は、かつて政治家として名を馳せた人物だ。秋臣が実業家として成功できたのは、彼の力添えもあったという。
「弟さんかね?」
「あ、いえ。彼は私の・・・」
「こ、ここの使用人です」
秋臣の言葉を遮って、育也は厨房へと小走りで向った。
(さすがに、男娼を囲っているのはまずいよな)
使用人だった秋臣がどのように実業家になったのかは知らないが、きっとかなりの苦労をしたのだろう。そして、伊集院のような権力者の力も必要だったに違いない。男娼である自分がチョロチョロしていたら、きっと秋臣の迷惑になる。育也は、もう子供の頃のようなワガママは言えないと思っていた。
(あの清華って人、綺麗だったな)
白粉なんかつけなくたって肌は餅のように白かったし、睫毛なんてパサパサと音がしそうだ。椿の絵が美しい着物を身にまとい、礼儀作法もきちんとしていた。育也だって気がついてる。きっと、伊集院という老人はよほど秋臣と清華の縁談を進めたいのだろう。既に三十路間近の男が伴侶がいないというのは、好奇の目に晒されると秋臣に話していた。育也は、秋臣が苦しい立場になる事を望んでいない。
「育也様。なぜ、使用人だなどと言ったのですか?」
「まだ後片付けが残ってるんだ。後にしてくれ」
この日から、育也は秋臣と距離を置く事にした。
伊集院に逆らえば、秋臣が不利になってしまう。清華と結婚すれば、秋臣の将来は安心だ。
「しばらく、寝室は別々にしよう」
「なぜ、ですか?」
「僕達は2人っきりじゃないんだ。それに、いい加減呼び方を変えてくれ。もう僕はお坊っちゃんじゃない」
秋臣を突き放す事が彼のためだ。育也は、何度もそう言い聞かせた。
屋敷には数人だが使用人がいる。いつも離れで寝ているとはいえ、変な噂が立っては縁談に影響があるだろう。
(秋臣が結婚・・・)
上背がある秋臣と小柄な清華が並ぶと、まさに絵に描いたような美男美女だ。
(そうなったら、僕は・・・)
清華は慎ましやかで、まさに大和撫子を絵に描いたような人だ。きっと、秋臣を支えてくれるだろう。縁談が正式にまとまったら屋敷を出ようと育也は心に決めた。育也は、秋臣の幸せだけを願っていた。
「育也様。私は、あなたに何かしましたか?」
身体を重ねなくなり1ヶ月がたとうとしていた夜、秋臣が育也の部屋を訪ねた。
「様付けはやめてくれって言ったろ」
わざと冷たく言えば、秋臣が押し黙る。
「・・・縁談。進んでいるのか?」
「え?」
嘘をつくのが苦手な秋臣。あからさまな狼狽に、育也は用意していた言葉を述べた。
「よかったじゃないか。綺麗な人で」
「育也、様?」
「きっと、お前のいい奥さんになってくれるよ」
「本気で、言ってるんですか?」
「当たり前だろ。こんなめでたい事が・・・、えっ」
振り向くと、秋臣が育也を見下ろしていた。照明を背中にしているため、秋臣の表情まではわからない。大きな手が、育也の細い手首を掴んだ。
「や、やだっ。何するんだっ、やめっ」
いつもと違う強さに、育也は本気で怖くなった。
「暴れないでください。怪我をさせる」
自身の浴衣の帯を解いた秋臣が、育也の両手首を後ろ手に縛り上げる。
「あっ、何を・・・っ」
着物を捲り上げられ、サッと育也の顔が青ざめる。
「やめ・・・っ、やだっ」
「暴れないでください。もう一度、あなたの身体に教えてあげます。あなたが誰のものなのか」
秋臣は眼鏡を外すと、グッと育也の尻を左右に広げた。
「あなたを、離す気はない」
育也は、これから何をされるのかわからずカタカタと震えた。足が限界まで広げられ、秘部が照明の下に晒される。
「覚悟してください。優しくできそうもない」
育也は、秋臣が本気で怒っている事を感じた。ブルブル震えていれば、秋臣がことさら優しく言った。
「私なしではいられない身体にしてあげますよ」
秋臣の顔が、ゆっくりと伏せられた。
「ふ・・・っ、あっ、あっ」
育也は、全身に汗をびっしょりかきながら、まるで子供のように泣きじゃくった。性器の先からダラダラと蜜が垂れているというのに、秋臣は決定的な快楽をくれない。
てっきり、乱暴に抱かれるのだと思っていた。手首の拘束も、それほどきつくなかった。
「秋・・・臣っ、早く、イかせて・・・っ」
膝立ちにされ、前を舌でなぶられる。強く吸われた瞬間。育也はその全てを秋臣の口の中に放った。秋臣の喉が大きく上下する。なのに、舌はまだ育也の性器に絡みついている。
「あっ、ああっ、あっ、ああっ」
育也は、漆黒の髪を振り乱し、意味もなさない声を上げ再び達した。仰向けにされ、両足が大きく広げられる。そして、入り口には秋臣自身が押し当てられた。
「私を、欲しがってください」
秋臣の手が、涙で濡れた育也の頬を包み込む。
「私が実業家になったのは、あなたを守るためだった。そのためならなんだってしてきた。それなのに、あなたは私から離れようとする」
育也には、秋臣が泣いているように見えた。
「ほし・・・い・・・」
育也の唇が動いた。
「秋臣が、欲しい」
次の瞬間。ズブズブと音がするぐらい、激しく秋臣が育也の中に入り込んだ。
「あっ、んっ、もう、無理だってば・・・ぁっ、あっ」
キュッキュッと前を擦られながら、育也は身体を揺さぶられる。
「こうして、いつまでも私を貪欲に求めてください」
「僕が、いたら、お前の邪魔になるのに・・・っ、あっ、はあっ」
「なぜわからないんです?あなたのいない人生なんて、なんの意味もない」
秋臣は、縁談は既に断ったと言った。伊集院はかなり残念がっていたが、その事で秋臣が不利になる事はないそうだ。
「私のためを思うなら、この腕の中にいてください」
「んんっ、んっ、あっ、あっ、んんっ」
両手を縛られているため自由がきかず、育也は不自然な格好で秋臣を受け入れた。気のせいか、いつもより熱く感じる。
「私は、永遠にあなたのものだ」
秋臣が両手の拘束を解くと同時に、育也は泣きながらしがみついた。本当は、秋臣が自分以外を愛するなど嫌で嫌でたまらなかった。でも、秋臣が陰口を叩かれたり、後ろ指をさされるのはもっと嫌なのだ。
「好き・・・っ、秋臣が、好きだよ・・・っ」
「あなたは、昔から素直じゃない。いつも、私を困らせる」
秋臣に導かれるま唇を重ね、育也は身体を揺らした。身体の奥で、秋臣が弾ける。トロトロと溢れる精液は、育也をこれ以上ないぐらい満足させた。
「跡にはなっていませんね」
行為の後、秋臣が育也の手首や身体の奥をチェックする。秋臣は、育也の身体に僅かな傷もつけたくなかった。
「申し訳ありません。あんな事をしてしまい」
「お前がこんなにスケベとは思わなかったよ」
「・・・ガッカリされましたか?」
秋臣の問いに、育也は黙って首を横に振った。
「お前じゃなかったら、嫌だけど」
育也は、秋臣に甘えるように身体を密着させた。
「秋臣になら、何をされても平気。嫌いになんか、ならないよ」
触れられて身体が反応したのが、何よりの証拠だ。秋臣が、育也を抱き上げて唇を合わせる。
「永遠に、あなただけを愛しています」
「僕も、愛してるよ」
育也は、秋臣の頬に手を当てるとゆっくり口づけた。所詮、離れて生きていくなど無理なのだ。
「たまには、刺激的な行為もいいですね」
「バカ」
クスクス笑いながら秋臣が口付けてくる。育也は、顔を真っ赤にしながらも唇を自由にさせた。
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