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裏庭が裏ダンジョンでした外伝『地獄の旅は道づれに』

地獄の旅は道づれに 6

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 トレイは村の外で見張りをしていた。遠くに火の明かりがいくつも見える。

 少し驚いた、本当に今夜に襲撃があった。村で待っているサーラを呼ぶ。

「おい、本当に来たぞ!!」

「だから来るって言っただろ? 私はここに来るまで勇者の行動をずっと監視してたんだ」

 村の入口で明かりが近付いてくるのを待つ。心臓の鼓動が高く脈打つのを感じた。

「エルフの反乱があったと聞いた!! こちらには勇者オガネ様が居る!! 皆殺しにされたくなければ降伏しろ!!」

 先頭の男がそう叫ぶとトレイも声を張る。

「俺は冒険者のトレイだ。オガネ!! 話がある」

 勇者オガネが一歩前に出る。少し老けたが、忘れもしないあの顔を見てトレイはグッと歯をくいしばる。

「我が友トレイは魔人ドソクとの戦いで、確かに名誉の戦死を遂げた。お前はトレイの姿をした魔のものだろう?」

「なっ!!」

「お前から溢れる魔人の魔力と、村の中にいる魔人が動かぬ証拠だ!!」

 魔人と聞いて兵士達はどよめく。そんな中、サーラがトレイの後ろから歩いて登場した。

「やっぱ、あの勇者は生かしちゃおけないだろ?」

 僅かに残っていた望みも消えて、トレイは剣を構えた。

「あぁ、俺は」

「勇者に復讐をする」



「皆、かかれ!!!」

 兵士達がトレイとサーラの2人目掛けてなだれ込む。勇者パーティだった頃の仲間達が居ないことが唯一の救いだろうか。

 サーラは聖剣に魔力を込めて光の刃を何枚も飛ばした。次々と兵士が倒れる。

 魔剣を構えてトレイは突っ込んだ。振って突いて薙ぎ払い、兵士達を焦がした。

 最初は不利に見えたが、トレイとサーラは圧倒的な力の差で兵たちを屠っていく。

「私が行きましょう」

 勇者オガネが片手剣を引き抜いて切っ先をトレイに向けた。一気に走り寄ると剣を振りかざす。

 重い一撃だった。魔剣で受け止めたが、トレイの腕にビリビリとした感覚が襲う。

 二撃三撃と剣をふるい続けるオガネ。防戦一方だったトレイのもとにサーラが割って入った。

「死んじまいな!!」

 光の刃を飛ばすが、オガネは片手で魔法の防御壁を貼り、それを軽々と防いだ。

 トレイも剣をふるい続け、空いた左手から業火を浴びせるが、オガネに傷一つ負わせることは出来ない。

「こんなものですか」

「オガネ!! 何故俺を殺した!!」

「何の事ですか?」

 涼しい顔をしてはぐらかすオガネにトレイは激昂する。

「俺をこの剣に封じた事を言ってるんだよ!!」

 叫びと同時に剣を振り下ろし、ぶつかる。ガキィィンと鈍い金属音が響いた。

 オガネは兵士達に聞こえないようにトレイに呟く。

「俺が魔人を倒した勇者になるための踏み台だよ」

 それと同時に、オガネの剣がトレイを袈裟斬りにした。

「ぐうう!!」

 トレイは声を漏らして倒れる。

「この野郎!!!」

 サーラはオガネに近付いて飛び上がり剣を振り下ろした。

 その一撃もサッと避けられて、サーラは反撃を食らってしまう。

「ぐがっ!!!」

 血を流しながらサーラは片膝を付いた。


「おい」

 薄れゆく意識の中でトレイは声を聞く。

「おい、起きろ」

 もう斬られた所どころじゃない、全身が痛い。そして酷く眠い。

「起きろ!!!」

 嫌だ、もう充分じゃないか、勇者になんて勝てないんだ。

「起きろ!!!! トレイ!!!!」


 名前を呼ばれてトレイはハッと意識を取り戻した。

 目の前では勇者オガネがサーラに向かって剣を振り下ろそうとしている。

「サーラ!!!!」

 魔剣ムゲンジゴクを強く握る。身も心も熱い。剣身からは凄まじい熱気と炎が出る。

 弾けたように飛び出たトレイはサーラの前に立ち、オガネの剣を受け止めた。

「なっ」

 先程までとは明らかに違う力と気迫にオガネは一瞬怯んだ。
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