461 / 574
裏庭が裏ダンジョンでした外伝『地獄の旅は道づれに』
地獄の旅は道づれに 6
しおりを挟む
トレイは村の外で見張りをしていた。遠くに火の明かりがいくつも見える。
少し驚いた、本当に今夜に襲撃があった。村で待っているサーラを呼ぶ。
「おい、本当に来たぞ!!」
「だから来るって言っただろ? 私はここに来るまで勇者の行動をずっと監視してたんだ」
村の入口で明かりが近付いてくるのを待つ。心臓の鼓動が高く脈打つのを感じた。
「エルフの反乱があったと聞いた!! こちらには勇者オガネ様が居る!! 皆殺しにされたくなければ降伏しろ!!」
先頭の男がそう叫ぶとトレイも声を張る。
「俺は冒険者のトレイだ。オガネ!! 話がある」
勇者オガネが一歩前に出る。少し老けたが、忘れもしないあの顔を見てトレイはグッと歯をくいしばる。
「我が友トレイは魔人ドソクとの戦いで、確かに名誉の戦死を遂げた。お前はトレイの姿をした魔のものだろう?」
「なっ!!」
「お前から溢れる魔人の魔力と、村の中にいる魔人が動かぬ証拠だ!!」
魔人と聞いて兵士達はどよめく。そんな中、サーラがトレイの後ろから歩いて登場した。
「やっぱ、あの勇者は生かしちゃおけないだろ?」
僅かに残っていた望みも消えて、トレイは剣を構えた。
「あぁ、俺は」
「勇者に復讐をする」
「皆、かかれ!!!」
兵士達がトレイとサーラの2人目掛けてなだれ込む。勇者パーティだった頃の仲間達が居ないことが唯一の救いだろうか。
サーラは聖剣に魔力を込めて光の刃を何枚も飛ばした。次々と兵士が倒れる。
魔剣を構えてトレイは突っ込んだ。振って突いて薙ぎ払い、兵士達を焦がした。
最初は不利に見えたが、トレイとサーラは圧倒的な力の差で兵たちを屠っていく。
「私が行きましょう」
勇者オガネが片手剣を引き抜いて切っ先をトレイに向けた。一気に走り寄ると剣を振りかざす。
重い一撃だった。魔剣で受け止めたが、トレイの腕にビリビリとした感覚が襲う。
二撃三撃と剣をふるい続けるオガネ。防戦一方だったトレイのもとにサーラが割って入った。
「死んじまいな!!」
光の刃を飛ばすが、オガネは片手で魔法の防御壁を貼り、それを軽々と防いだ。
トレイも剣をふるい続け、空いた左手から業火を浴びせるが、オガネに傷一つ負わせることは出来ない。
「こんなものですか」
「オガネ!! 何故俺を殺した!!」
「何の事ですか?」
涼しい顔をしてはぐらかすオガネにトレイは激昂する。
「俺をこの剣に封じた事を言ってるんだよ!!」
叫びと同時に剣を振り下ろし、ぶつかる。ガキィィンと鈍い金属音が響いた。
オガネは兵士達に聞こえないようにトレイに呟く。
「俺が魔人を倒した勇者になるための踏み台だよ」
それと同時に、オガネの剣がトレイを袈裟斬りにした。
「ぐうう!!」
トレイは声を漏らして倒れる。
「この野郎!!!」
サーラはオガネに近付いて飛び上がり剣を振り下ろした。
その一撃もサッと避けられて、サーラは反撃を食らってしまう。
「ぐがっ!!!」
血を流しながらサーラは片膝を付いた。
「おい」
薄れゆく意識の中でトレイは声を聞く。
「おい、起きろ」
もう斬られた所どころじゃない、全身が痛い。そして酷く眠い。
「起きろ!!!」
嫌だ、もう充分じゃないか、勇者になんて勝てないんだ。
「起きろ!!!! トレイ!!!!」
名前を呼ばれてトレイはハッと意識を取り戻した。
目の前では勇者オガネがサーラに向かって剣を振り下ろそうとしている。
「サーラ!!!!」
魔剣ムゲンジゴクを強く握る。身も心も熱い。剣身からは凄まじい熱気と炎が出る。
弾けたように飛び出たトレイはサーラの前に立ち、オガネの剣を受け止めた。
「なっ」
先程までとは明らかに違う力と気迫にオガネは一瞬怯んだ。
少し驚いた、本当に今夜に襲撃があった。村で待っているサーラを呼ぶ。
「おい、本当に来たぞ!!」
「だから来るって言っただろ? 私はここに来るまで勇者の行動をずっと監視してたんだ」
村の入口で明かりが近付いてくるのを待つ。心臓の鼓動が高く脈打つのを感じた。
「エルフの反乱があったと聞いた!! こちらには勇者オガネ様が居る!! 皆殺しにされたくなければ降伏しろ!!」
先頭の男がそう叫ぶとトレイも声を張る。
「俺は冒険者のトレイだ。オガネ!! 話がある」
勇者オガネが一歩前に出る。少し老けたが、忘れもしないあの顔を見てトレイはグッと歯をくいしばる。
「我が友トレイは魔人ドソクとの戦いで、確かに名誉の戦死を遂げた。お前はトレイの姿をした魔のものだろう?」
「なっ!!」
「お前から溢れる魔人の魔力と、村の中にいる魔人が動かぬ証拠だ!!」
魔人と聞いて兵士達はどよめく。そんな中、サーラがトレイの後ろから歩いて登場した。
「やっぱ、あの勇者は生かしちゃおけないだろ?」
僅かに残っていた望みも消えて、トレイは剣を構えた。
「あぁ、俺は」
「勇者に復讐をする」
「皆、かかれ!!!」
兵士達がトレイとサーラの2人目掛けてなだれ込む。勇者パーティだった頃の仲間達が居ないことが唯一の救いだろうか。
サーラは聖剣に魔力を込めて光の刃を何枚も飛ばした。次々と兵士が倒れる。
魔剣を構えてトレイは突っ込んだ。振って突いて薙ぎ払い、兵士達を焦がした。
最初は不利に見えたが、トレイとサーラは圧倒的な力の差で兵たちを屠っていく。
「私が行きましょう」
勇者オガネが片手剣を引き抜いて切っ先をトレイに向けた。一気に走り寄ると剣を振りかざす。
重い一撃だった。魔剣で受け止めたが、トレイの腕にビリビリとした感覚が襲う。
二撃三撃と剣をふるい続けるオガネ。防戦一方だったトレイのもとにサーラが割って入った。
「死んじまいな!!」
光の刃を飛ばすが、オガネは片手で魔法の防御壁を貼り、それを軽々と防いだ。
トレイも剣をふるい続け、空いた左手から業火を浴びせるが、オガネに傷一つ負わせることは出来ない。
「こんなものですか」
「オガネ!! 何故俺を殺した!!」
「何の事ですか?」
涼しい顔をしてはぐらかすオガネにトレイは激昂する。
「俺をこの剣に封じた事を言ってるんだよ!!」
叫びと同時に剣を振り下ろし、ぶつかる。ガキィィンと鈍い金属音が響いた。
オガネは兵士達に聞こえないようにトレイに呟く。
「俺が魔人を倒した勇者になるための踏み台だよ」
それと同時に、オガネの剣がトレイを袈裟斬りにした。
「ぐうう!!」
トレイは声を漏らして倒れる。
「この野郎!!!」
サーラはオガネに近付いて飛び上がり剣を振り下ろした。
その一撃もサッと避けられて、サーラは反撃を食らってしまう。
「ぐがっ!!!」
血を流しながらサーラは片膝を付いた。
「おい」
薄れゆく意識の中でトレイは声を聞く。
「おい、起きろ」
もう斬られた所どころじゃない、全身が痛い。そして酷く眠い。
「起きろ!!!」
嫌だ、もう充分じゃないか、勇者になんて勝てないんだ。
「起きろ!!!! トレイ!!!!」
名前を呼ばれてトレイはハッと意識を取り戻した。
目の前では勇者オガネがサーラに向かって剣を振り下ろそうとしている。
「サーラ!!!!」
魔剣ムゲンジゴクを強く握る。身も心も熱い。剣身からは凄まじい熱気と炎が出る。
弾けたように飛び出たトレイはサーラの前に立ち、オガネの剣を受け止めた。
「なっ」
先程までとは明らかに違う力と気迫にオガネは一瞬怯んだ。
0
お気に入りに追加
76
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
転生してチートを手に入れました!!生まれた時から精霊王に囲まれてます…やだ
如月花恋
ファンタジー
…目の前がめっちゃ明るくなったと思ったら今度は…真っ白?
「え~…大丈夫?」
…大丈夫じゃないです
というかあなた誰?
「神。ごめんね~?合コンしてたら死んじゃってた~」
…合…コン
私の死因…神様の合コン…
…かない
「てことで…好きな所に転生していいよ!!」
好きな所…転生
じゃ異世界で
「異世界ってそんな子供みたいな…」
子供だし
小2
「まっいっか。分かった。知り合いのところ送るね」
よろです
魔法使えるところがいいな
「更に注文!?」
…神様のせいで死んだのに…
「あぁ!!分かりました!!」
やたね
「君…結構策士だな」
そう?
作戦とかは楽しいけど…
「う~ん…だったらあそこでも大丈夫かな。ちょうど人が足りないって言ってたし」
…あそこ?
「…うん。君ならやれるよ。頑張って」
…んな他人事みたいな…
「あ。爵位は結構高めだからね」
しゃくい…?
「じゃ!!」
え?
ちょ…しゃくいの説明ぃぃぃぃ!!
俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
俺だけレベルアップできる件~ゴミスキル【上昇】のせいで実家を追放されたが、レベルアップできる俺は世界最強に。今更土下座したところでもう遅い〜
平山和人
ファンタジー
賢者の一族に産まれたカイトは幼いころから神童と呼ばれ、周囲の期待を一心に集めていたが、15歳の成人の儀で【上昇】というスキルを授けられた。
『物質を少しだけ浮かせる』だけのゴミスキルだと、家族からも見放され、カイトは家を追放されることになった。
途方にくれるカイトは偶然、【上昇】の真の力に気づく。それは産まれた時から決まり、不変であるレベルを上げることができるスキルであったのだ。
この世界で唯一、レベルアップできるようになったカイトは、モンスターを倒し、ステータスを上げていく。
その結果、カイトは世界中に名を轟かす世界最強の冒険者となった。
一方、カイトの家族は彼の活躍を耳にしてカイトを追放したことを後悔するのであった。
14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク
普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。
だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。
洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。
------
この子のおかげで作家デビューできました
ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが
異世界転生!ハイハイからの倍人生
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は死んでしまった。
まさか野球観戦で死ぬとは思わなかった。
ホームランボールによって頭を打ち死んでしまった僕は異世界に転生する事になった。
転生する時に女神様がいくら何でも可哀そうという事で特殊な能力を与えてくれた。
それはレベルを減らすことでステータスを無制限に倍にしていける能力だった...
巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する
高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。
手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる