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ジョンさん

ジョンさん 1

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(鳥の消え方がおかしいな、魔物の消え方じゃない)

 鳥を観察していたアシノが疑問を持った。魔物は完全に煙となって消えるか、そうでなくてもツノや爪、鱗など体の一部を残していくのが普通だ。

 この襲い来る鳥は、キラキラと輝いて消えていく。もしやと思いアシノはユモトに近付いた。

「ユモト、探知盤を見せてみろ」

「え? あっはい!」

 取り出した探知盤を見ると、かなり近くに裏の道具の反応があった。その方向には。

「もしかして、アイツ……」

 謎のヘンテコ男、ジョンが居る。鳥は完全に男に集中し、皆の視線もそちらに向かっていた。

「おい、お前ら集合!!」

 アシノの掛け声で、ムツヤ達は集合し、探知盤を覗く。

「どうも、あのジョンって男が怪しいみたいなんだ」

「え、でもあの人は鳥と戦っでまずよ?」

 ムツヤの言うことはその通りだったのだが、ルーが言う。

「もしかして、自作自演ってやつ?」

「あぁ、目的はわからんが多分な」

「ですが、杖らしき物は持っていませんよ?」

 モモの言葉にアシノは頷いて返す。

「杖と決まっているわけではない。他の裏の道具を使っているかもしれん。ムツヤ、心当たりは?」

「えーっど、すいまぜん。わからないでず……」

「そうか……」

 そんな時、民衆や冒険者たちから歓声が上がった。

「うおおおお!!! ジョンさんが鳥を殲滅しちまったぞ!!!」

「何も知らないフリをして、アイツに近付こう。監視して裏の道具を取り上げる」

 アシノの言葉に皆が了承の返事をする。早速アシノはジョンのもとまで歩み寄った。

「ジョンさん……、でよろしいでしょうか? 見事な戦いぶり感服いたしました」

「これはこれは、勇者アシノ様。私などまだまだ未熟です」

 ジョンは礼儀正しく会釈をして言葉を返す。

「ご謙遜を……。ジョンさんのお耳にも入っているやもしれませんが、私達は『魔人の残した武具』を回収しておりまして」

「えぇ、冒険者ギルドから発表がありましたね」

「今回の鳥の騒動。もしかしたら、その件が関わっているかと思いまして。何か存じ上げませんか?」

 その話題をいきなりぶつけられ、ジョンの目が泳いだことをアシノは見逃さなかった。

「いえ、ここ数日の内にこの鳥達は現れたもので、私も何も……」

「そうですか」

 アシノはわざとらしく、残念そうな顔をする。

「私でも、何か分かったことがありましたら、ご報告させて頂きます」

「よろしくお願いします。では」

 そう言ってアシノはジョンに背を向けて仲間達と歩き出す。

「あの男、怪しすぎるな」

「そうよねー」

 アシノとルーはそんな会話をしていた。そこにモモが疑問をぶつける。

「あの男を拘束してしまえば良いのでは無いでしょうか?」

「いや、あの男の持ち物どれが裏の道具か分からない今は、下手に取り押さえるのは危険だ。思わぬ反撃を食らうかもしれない」

 アシノは言葉を続けた。

「あの男の情報を集めよう。今日中にはケリを付けたい」



「あのー、さっき街の外で戦っていた方ですよねー?」

 街の食堂で、ルーがジョンに話しかけていた。

「私達ー、さっきの戦い凄いなーって思って!! お話を聞きたいので隣、良いですか!?」

「えぇ、大した話は出来ませんが。どうぞ」

 ルーとユモトがジョンの両隣に座る。これはアシノの作戦の1つだった。




「私は立場上できんが、ルー、ユモト、お前達にはジョンって野郎に接近して欲しい」

「オッケー!! ハニートラップね!!」

「は、ハニートラップって!! 僕は男ですよ!?」

 ユモトが抗議の声を上げるが、ルーは「大丈夫大丈夫」と言う。

「私が話をするから、ユモトちゃんは話を合わせてニコニコしてれば良いだけだから!!」

 そんなこんなで言いくるめられてしまい、この状況に至る。

「確かジョンさんって呼ばれてましたよねー?」

 ルーが胸元を強調させながらジョンへ少し近付く。

「えぇ、ジョンと申します」

「ジョンさんさっき凄かったですよねー。もしかして、上級の冒険者なんですか?」

 ルーはジョンの視線が一瞬、胸元へ向かったことを見逃さなかった。

「一応、上級の冒険者ではあります。そして、落ちましたが勇者試験にも望んたことがありましてね」

「えー、勇者試験ですかー? すごーい!!」

 ぶりっ子のようにルーが振る舞うと、ジョンも気を良くしたのか、自慢話が始まり、食事をしながら二人はそれを聞き届けた。



「で、どうだった?」

 アシノに聞かれると、ルーは腕を組んで答える。

「もー、自慢ばっかりよあの男!! 紳士を装って、プライドは高いわね!! 付き合ったら変貌するタイプよ!!」

「そんな事はどうでもいい!!」

「はいはい、上級の冒険者で、勇者試験も受けたことがあるらしいわ」

 勇者試験と聞いてアシノは疑問符が思い浮かぶ。

「私達もギルドで聞き込みをして、上級の冒険者ってことは分かったが。勇者試験を受けるほどの人物だったら、私が知っていても良いはずなんだが……、知らんな」

「勇者試験なんてそうそう受かるもんでも無いでしょ」

「まぁ、何にせよ上級の冒険者ってことは気を抜けないって事だな。面倒くさいな」

 アシノはそう言って頭をかく。


 その後の尾行はムツヤに任せていた。隠密スキルと探知スキルを使い、ジョンを監視し、連絡石でアシノに報告を入れる。

 だが、夜まで特に怪しい行動はなく。中々ボロを出さないジョンに仲間達はイライラとしていた。

 そんな時だった。深夜、ジョンが街を抜け出すのを見てムツヤが連絡を入れる。

「ジョンさんが街の外へ出でいぎまず!!」

「やっとしっぽを見せたか、行くぞ!!」
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