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聖女様と王都へ
旅路
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王都への道を往く4人のパーティが居た。
一人は黄金の鎧に身を包み、それと似た、少しだけ長めの髪色をしている男だ。大剣と大きな荷物を背中に背負っている。
その隣にはサラサラとした長い茶髪で黒い服。左に赤い肩当ての女。細長い剣を装備している。
後ろには艶やかな、これまた長い金髪の女。青い軽装備の鎧。
そして、短髪黒髪の狩猟者のような格好の男。
一見すると、どんな組み合わせか分からないが、彼らは勇者パーティである。
黄金の鎧の男は名を『マルクエン・クライス』と言い、別世界のイーヌ王国出身の騎士だ。
今はこちらの世界で勇者をしている。
茶髪の女は『ラミッタ・ピラ』。マルクエンの国とは敵対関係のルーサという国の兵士だ。
彼女は宿敵マルクエンに胸を貫かれ絶命したが、こちらの世界へ転生してしまった。
マルクエンもその戦いの傷で後に死亡している。
今はマルクエンと休戦協定を結び、一緒に異世界の勇者となり旅をしている。
ラミッタはこちらの世界で空を飛ぶ能力を得て、それを利用した戦いをしていた。
長い金髪の女は『スフィン・スク』ルーサの将軍であり、ラミッタの上官だ。
彼女も恐らく戦死し、こちらの世界へやってきた。
スフィンもマルクエンと元の世界へ戻るまで休戦という形で一緒に行動している。
こちらの世界で傷を癒す能力を手に入れたスフィンは聖女と呼ばれていた。本人は気に入っていない様だが。
最後に黒髪の男マッサは、聖域と呼ばれる街『チター』の冒険者ギルドでギルドマスターをしていた。
勇者の護衛という形で一緒に旅をしている。
王都へは歩いて明日には着く予定だ。
夕暮れが近くなり、近くの宿場町に着いた一行。
「今日はこの町で一泊しますかー」
マッサはうーんと伸びをして言う。
「そうですね」
マルクエンは体力があるので疲れてはいなかったが、仲間の事も思い、休息を取ることにした。
「宿屋は手配しておくんで、街でも見て下さいや」
「あぁ、頼んだ」
スフィンも宿屋の確保はマッサに任せ、散策でもするかと周りを見渡す。
「何か名産物でも食べたいですね」
「イーヌの騎士は食い物の事しか考えられないようだな」
スフィンは相変わらずマルクエンに厳しい。
「ははは、それでは別行動でもしますか?」
「そうだな」
言ってスフィンはスタスタと歩いていく。
「ラミッタ、貴様はイーヌの騎士と共に行くのか?」
振り返り、後ろを付いてこないラミッタを見て不機嫌そうに言うスフィン。
「あ、いえ、今行きます! こんなド変態卑猥野郎と一緒に行くはずないじゃ無いですか」
小走りでスフィンの後を付いていくラミッタ。一人取り残されたマルクエンは寂しげに街を散策した。
「いらっしゃいませー、名物のくるみのせんべい焼きはいかがでしょうかー?」
香ばしい匂いに誘われてマルクエンは店の前まで立ち寄る。
「いらっしゃいませー! 冒険者のお兄さん! くるみのせんべい焼きですよー?」
「どうも、美味しそうですね」
「ぜひぜひ、買って行って下さい!」
マルクエンは大きなくるみのせんべいを仲間の分も購入した。
途中、食べ歩きをする。細かく砕いてあるくるみの食感と、醬油の塩加減。確かに美味だ。
一人は黄金の鎧に身を包み、それと似た、少しだけ長めの髪色をしている男だ。大剣と大きな荷物を背中に背負っている。
その隣にはサラサラとした長い茶髪で黒い服。左に赤い肩当ての女。細長い剣を装備している。
後ろには艶やかな、これまた長い金髪の女。青い軽装備の鎧。
そして、短髪黒髪の狩猟者のような格好の男。
一見すると、どんな組み合わせか分からないが、彼らは勇者パーティである。
黄金の鎧の男は名を『マルクエン・クライス』と言い、別世界のイーヌ王国出身の騎士だ。
今はこちらの世界で勇者をしている。
茶髪の女は『ラミッタ・ピラ』。マルクエンの国とは敵対関係のルーサという国の兵士だ。
彼女は宿敵マルクエンに胸を貫かれ絶命したが、こちらの世界へ転生してしまった。
マルクエンもその戦いの傷で後に死亡している。
今はマルクエンと休戦協定を結び、一緒に異世界の勇者となり旅をしている。
ラミッタはこちらの世界で空を飛ぶ能力を得て、それを利用した戦いをしていた。
長い金髪の女は『スフィン・スク』ルーサの将軍であり、ラミッタの上官だ。
彼女も恐らく戦死し、こちらの世界へやってきた。
スフィンもマルクエンと元の世界へ戻るまで休戦という形で一緒に行動している。
こちらの世界で傷を癒す能力を手に入れたスフィンは聖女と呼ばれていた。本人は気に入っていない様だが。
最後に黒髪の男マッサは、聖域と呼ばれる街『チター』の冒険者ギルドでギルドマスターをしていた。
勇者の護衛という形で一緒に旅をしている。
王都へは歩いて明日には着く予定だ。
夕暮れが近くなり、近くの宿場町に着いた一行。
「今日はこの町で一泊しますかー」
マッサはうーんと伸びをして言う。
「そうですね」
マルクエンは体力があるので疲れてはいなかったが、仲間の事も思い、休息を取ることにした。
「宿屋は手配しておくんで、街でも見て下さいや」
「あぁ、頼んだ」
スフィンも宿屋の確保はマッサに任せ、散策でもするかと周りを見渡す。
「何か名産物でも食べたいですね」
「イーヌの騎士は食い物の事しか考えられないようだな」
スフィンは相変わらずマルクエンに厳しい。
「ははは、それでは別行動でもしますか?」
「そうだな」
言ってスフィンはスタスタと歩いていく。
「ラミッタ、貴様はイーヌの騎士と共に行くのか?」
振り返り、後ろを付いてこないラミッタを見て不機嫌そうに言うスフィン。
「あ、いえ、今行きます! こんなド変態卑猥野郎と一緒に行くはずないじゃ無いですか」
小走りでスフィンの後を付いていくラミッタ。一人取り残されたマルクエンは寂しげに街を散策した。
「いらっしゃいませー、名物のくるみのせんべい焼きはいかがでしょうかー?」
香ばしい匂いに誘われてマルクエンは店の前まで立ち寄る。
「いらっしゃいませー! 冒険者のお兄さん! くるみのせんべい焼きですよー?」
「どうも、美味しそうですね」
「ぜひぜひ、買って行って下さい!」
マルクエンは大きなくるみのせんべいを仲間の分も購入した。
途中、食べ歩きをする。細かく砕いてあるくるみの食感と、醬油の塩加減。確かに美味だ。
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