221 / 234
聖女様
見たい
しおりを挟む
「心地良いな」
スフィンは満足気な顔をし、目を閉じて湯を感じていた。
「えぇ、とても……」
ラミッタもそう返してふぅーっと息を吐く。
そんな、束の間の緩やかな時間を邪魔しようとする者が居た。
「よし、そろそろ良い頃合いかな?」
湯に浸かって体も温まり、マッサはそろそろ出るのかと思ったマルクエン。
「もう出ますか?」
「えぇ、そうしましょうか」
そう言ってザバッと湯から上がり、マッサは野風呂を隔てている竹壁へ歩き始めた。
「ま、マッサさん? 出口はあっち……」
「シー、静かにっす」
マッサは竹壁をくまなく見て回り、ガックリと肩を落とし小声で言う。
「女性陣がお風呂を上がるのを待つのは竹壁の前で待つのがベストですぜ!」
「な、何を……」
「その間……。竹壁の隙間に目を近づけるのはいけないことっすかねぇ!?」
「な、何を言っているんですか!?」
「だって、隣には美女!! これが覗かずにいられるかってんですぜ!!」
マルクエンは思わず呆れていた。
「ダメですよ、マッサさん」
「でもマルクエンさんは除いた事があるんでしょ?」
「い、いや、あれは事故で……」
「随分と騒がしいな」
隣から突然聞こえるスフィンの声に、マッサとマルクエンはドキリとし、固まる。
「あ、あー。スフィンさん?」
「貴様らのやろうとしている事など大体見当がつく。この竹を超えてみろ、命は無い」
「そ、そんなことねぇ、するわけないでしょうねぇ!? ねぇマルクエンさん!?」
「あっ、あぁ、えぇ!! まさかそんな事……」
男湯から聞こえる声に、ラミッタは赤い顔を湯船に沈めて『ド変態卑猥野郎』と呟いた。
先に湯から上がったマルクエンとマッサは女湯の二人を待つ。
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
スフィンは満足気な顔をし、目を閉じて湯を感じていた。
「えぇ、とても……」
ラミッタもそう返してふぅーっと息を吐く。
そんな、束の間の緩やかな時間を邪魔しようとする者が居た。
「よし、そろそろ良い頃合いかな?」
湯に浸かって体も温まり、マッサはそろそろ出るのかと思ったマルクエン。
「もう出ますか?」
「えぇ、そうしましょうか」
そう言ってザバッと湯から上がり、マッサは野風呂を隔てている竹壁へ歩き始めた。
「ま、マッサさん? 出口はあっち……」
「シー、静かにっす」
マッサは竹壁をくまなく見て回り、ガックリと肩を落とし小声で言う。
「女性陣がお風呂を上がるのを待つのは竹壁の前で待つのがベストですぜ!」
「な、何を……」
「その間……。竹壁の隙間に目を近づけるのはいけないことっすかねぇ!?」
「な、何を言っているんですか!?」
「だって、隣には美女!! これが覗かずにいられるかってんですぜ!!」
マルクエンは思わず呆れていた。
「ダメですよ、マッサさん」
「でもマルクエンさんは除いた事があるんでしょ?」
「い、いや、あれは事故で……」
「随分と騒がしいな」
隣から突然聞こえるスフィンの声に、マッサとマルクエンはドキリとし、固まる。
「あ、あー。スフィンさん?」
「貴様らのやろうとしている事など大体見当がつく。この竹を超えてみろ、命は無い」
「そ、そんなことねぇ、するわけないでしょうねぇ!? ねぇマルクエンさん!?」
「あっ、あぁ、えぇ!! まさかそんな事……」
男湯から聞こえる声に、ラミッタは赤い顔を湯船に沈めて『ド変態卑猥野郎』と呟いた。
先に湯から上がったマルクエンとマッサは女湯の二人を待つ。
村人から渡された地酒をマッサは飲み、マルクエンは牛乳を飲んでいた。
「待たせたな」
スフィンとラミッタが風呂から上がり、男どもの元へと歩く。
「命拾いしたな」
「し……、失礼ですね覗きの証拠は? 覗き? 命拾い? 何の事です?」
「私は何もそこまで言っていないのだが。まったく」
呆れるスフィン。そんな四人に村人から声が掛かる。
「皆様、宴の準備ができましたんで、ご案内しますべ」
「おぉ、かたじけない」
腹が減っていたマルクエンは笑顔でそう言いながら、村人の後を付いていく。
「ほ、ほら、宴ですって! 行きましょう!」
マッサも焦りながらマルクエンの後を追いかける。
「やれやれだな」
「男って奴はこれだから困りますね」
村の中心では大きな焚火。所々に小さなかがり火が設置されている。
「祭りの時にやる事なんですが、今日は勇者様が来たお祭りですべや」
「そんな、ここまでして頂かなくても……」
気が引けたマルクエンは照れくさそうに頭を掻いていた。
「何をおっしゃる! 勇者様が来ただけでもめでてぇのに、勇者様は村の恩人ですべ!!」
「随分と手厚い歓迎だな」
スフィンは腕を組みながらフンっと笑う。
0
お気に入りに追加
44
あなたにおすすめの小説
公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~
朱色の谷
ファンタジー
公爵家の末娘として生まれた6歳のティアナ
お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。
お父様やお兄様は私に関心がないみたい。愛されたいと願い、愛想よく振る舞っていたが一向に興味を示してくれない…
そんな中、夢の中の本を読むと、、、
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?
甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。
友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。
マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に……
そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり……
武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語
記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
放置された公爵令嬢が幸せになるまで
こうじ
ファンタジー
アイネス・カンラダは物心ついた時から家族に放置されていた。両親の顔も知らないし兄や妹がいる事は知っているが顔も話した事もない。ずっと離れで暮らし自分の事は自分でやっている。そんな日々を過ごしていた彼女が幸せになる話。
もう、終わった話ですし
志位斗 茂家波
ファンタジー
一国が滅びた。
その知らせを聞いても、私には関係の無い事。
だってね、もう分っていたことなのよね‥‥‥
‥‥‥たまにやりたくなる、ありきたりな婚約破棄ざまぁ(?)もの
少々物足りないような気がするので、気が向いたらオマケ書こうかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる