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聖女様

何も持ってねぇ!

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 昼過ぎまで眠ってしまったマルクエン達だが、もそもそと起き始めた。

 最初に目覚めたのはラミッタだ。

 あくびをしながら周りを見渡し、眠っているスフィンとマッサを確認すると、起こさないようにそろりそろりと部屋を出る。

 そして、ソファで眠るマルクエンは容赦なく起こす。頭をペチンと一発叩いた。

「起きなさい宿敵!!」

「ぬ……」

 寝ぼけていたマルクエンだったが、横に立つラミッタを見て段々と意識が覚醒していく。

「あぁ、すっかり寝てしまったな。おはようラミッタ」

「おはようも何も、もうお昼過ぎよ」

「それもそうだな」

 はははと笑うマルクエン。

「そんな事より、スフィン将軍が起きた時用に食事を作っておくわ」

「買い物にでも行くか?」

「そうは言っても、お金も荷物と一緒に失ったわよ。どうしようかしら……、また森で狩りでもしようかしらね」

 無一文の勇者という情けない現状だ。

「外に出て事情を話してみるか?」

ほどこしをして貰うなんて情けないけど、仕方ないわね」

 マルクエンとラミッタは外に出て村を見て回る。

「勇者様!!」

「あなたは……」

 言いかけながらラミッタは思い出す。駆け寄ってきた女性、確か片足を失った男と一緒に居た人物だ。

「勇者様! 改めてお礼を申し上げます!」

「いえ、私達は何もしていないので……」

 マルクエンが言うと、女性は首を横に振る。

「そんな!! 勇者様方がいらっしゃったからこそです!! 何か恩返しできる事はありませんか?」

「だったら、申し訳ないけど私達、魔人に襲われて荷物もお金も無くしちゃったのよ。何か食べ物を分けてくれるとありがたいんだけど……」

 ラミッタに言われ、女性はハッとした顔をし、あわあわと慌てだす。

「そ、そうでした!! すぐにご準備いたします!!!」

 そうして走り去っていく女性。その背中を二人は見送った。

「どうしようか?」

「まぁ、食材が来るまであの家に戻りましょうか」

 しばらく家で待つと、ノックと共にドアが開く。

「お、お待たせいたしました!!」

 先ほどの女性と共に、二人の村人が食材を抱えてやってきたのだ。

「これはこれは、ありがとうございます。ですが、こんなに頂くわけには……」

「いえ、これでも足りないぐらいです!! 勇者様達の恩義に報いる為には!!」

「まー、とにかく何か作ろうかしら」

 そう言って立ち上がろうとするラミッタを女性は制止した。

「いえ、私達でご用意させていただきますので」

「あら、それじゃお言葉に甘えようかしら」

「はい!」

 笑顔で食事の準備をする村人達。腹を空かせるいい匂いが漂い始めてきた。
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