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聖女様

焼肉焼肉

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 ラミッタは目を閉じて生物の探知魔法を使う。

「そこね!!」

 追いかけた先には鹿が一匹。

 鹿は木々を軽々と避けて森を駆けるが、宙を飛ぶラミッタからは逃げられない。

 ぐんぐん近づいたラミッタは、氷柱で首を射抜いて鹿を絶命させる。

「簡単に朝ごはんゲットね」

 得意げな笑みを浮かべて遅れて追いかけてきたマルクエンに言う。

「はは、かなわんな……」

「それじゃ、ちょちょいと解体しちまいますか。火の準備をしておいて下さい」

 元々猟師でもあるマッサは手際よく鹿を解体し、枝肉にしていく。

 やる事がないマルクエンは木の枝を拾い集めていた。

 火と肉が揃えば、木の枝を串代わりにして即席のバーベキュー大会だ。

 腹が減った面々は肉の焼ける香ばしい匂いと、あふれる肉汁に釘付けになっていた。

「そろそろ焼けましたかね、食いますか」

 マッサが言うと、待っていましたとばかりにスフィンも頷く。

「そうだな」

 各々目の前にある地面に突き立てた串を引き抜いた。

「それじゃイタダキマス!」

 マルクエンは一口かじると、肉のうま味と熱さを口の中に感じる。

「むっ、美味しいですね」

「いやー、美味いっすね。せめて塩でもあればもっと美味いんでしょうけど」

 マッサがそう返すとスフィンはふんっと鼻を鳴らして目を閉じたまま言う。

「贅沢を言うな。肉が食えるだけありがたいと思え」

「まー、そうなんスけどもね」

 生肉の串を地面に刺し、代わりに焼けた肉を取る。そんな行為を四人は腹が満足するまで続けた。

「いやー、食った食った」

 マッサはそんな事を言いながら空を見上げる。

「残った肉はどうします?」

 流石に鹿一頭を食べきれなかったので、マルクエンが聞く。

「命を無駄にしては罰が当たる。もちろん持っていく」

 スフィンはそう言うも、荷物袋もすべて失った今、どうしたものかと考える。

 そんな時、人の気配が近付き、全員でそちらを振り返った。

「誰だ?」

「誰だって、あんた等こそ誰だべや?」

 訛りのある中年の男がこちらをいぶかし気に見ていた。

「変な音は鳴るわ、森で煙は上がるわで様子見に来だんだ」

「お騒がせしてすみません。私はイーヌ……。じゃなかった。この国の勇者、マルクエンです」

 それを聞いて更に中年の男は疑いの目を向ける。

「勇者様がこんな森で焼肉っでが?」

「はい、魔人と戦い荷物を失いましてね……」

「うーむ……」

 男が疑うのも無理はない。勇者の証明書も何も失くしてしまったのだから。

「あ、そうだ。これで信じて貰えるかしら?」

 そう言っってラミッタは宙を高く飛んで見せた。男は目を丸くして腰を抜かす。

「な、なんだべやそりゃ!?」
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