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スフィン

氷のナイフ 2

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「それじゃあ、バチバチしちゃうよー?」

 ミネスはそう言っておもむろに地面に降り立つ。

「食らっちゃいな!」

 突き刺さる氷のナイフの表面が溶け出し、そこへ雷の魔法を打ち込む。

 ナイフ同士に電気が流れ、一瞬にして襲いかかってきた。

「甘いわね」

 土混じりの防御壁を巡らせ、ラミッタは防ぐ。

 しかし、隙が出来てしまった。

「そこで一生そうしてなよ! お二人共お幸せにー!!!」

 ミネスは電気を流し、そのままマッサとスフィンの元へと飛んでいく。

「まずい、二人を守らねば!!」

「って言っても、防御壁崩したら電気地獄で丸焦げよ!?」

 ラミッタの言う通りだ。助けようにもこちらが倒れてしまっては元も子もない。

「待ってなさい、この程度の魔法、私が相殺してあげるわ」



 ミネスはマッサとスフィンの元へと高速で飛び、追い付く。

「さぁ、もう逃げられないよ!!」

「逃げるのも飽きたな、戦ってやる!!」

 スフィンが言って馬を止めて剣を抜いた。

「待て、スフィンさん!! 戦うのは試練の塔を突破した後だ!!!」

「死んじゃえ」

 ミネスは氷のナイフを無数に発射する。

 スフィンも手練れなのでそれを剣で弾き、身を守った。

「おー、やるね」

 余りにも多いナイフに、打ち漏らしが出てきて、顔や足などをかすめて血が滲む。

「どこまで耐えられるかなぁ?」

 ミネスはナイフを出しながら段々と近づいてくる。

「スフィンさん、俺が食い止める!!」

 マッサがそう言って割り込もうとするが、彼も氷のナイフ達に悪戦苦闘していた。

「それじゃそろそろ逝ってみよー」

 ミネス自身がナイフを構えてスフィンへ突進してきた。

 そのナイフは腹を突き刺す。

 だが、スフィンのではない。

「かっ、かふっ」

 ナイフは割って入ったマッサの腹を刺していた。

「マッサさん!!」

 それと同時に罠を抜けたマルクエンとラミッタが到着する。

「許さん!!」

 マルクエンはミネスに向かって斬りかかるが、ひらりと避けられてしまう。

「まさかあの氷と電気の牢獄を抜けてくるなんてね」

「おい、マッサ!! しっかりしろ!!」

 スフィンはぐったりと地面に倒れ込むマッサに声を掛けていた。

「宿敵!! マッサさんを背負って試練の塔まで逃げて!! ここは私がやる!!」

「わかった!!」

 マルクエンが担ごうとすると、マッサが言う

「良いんです。俺は捨てて行ってください……」

「喋るなマッサ!!!」

 スフィンは声を荒げ、ミネスを睨みつけた。

 その時だった。試練の塔の鐘が遠くから鳴り響く。

「がっ、つあぁ!!」

 ミネスは頭が割れるような頭痛にもだえ苦しみ始めた。

 その好機を逃すまいとラミッタは宙へ浮かび斬り掛かるが、逃げられてしまう。

「試練の塔が……、呼んでいる……」

 マッサはそう小さく口にした。

「何か分からないけど、とにかく彼奴等が来られない塔の中でマッサさんの治療を!!」

 ラミッタに言われ、マルクエンはマッサを担いで走り出す。

 スフィンも無言のまま馬に乗り、塔を目指した。
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