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スフィン

氷のナイフ

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 ラミッタは馬車から飛び出し、馬車と同じ速度で空を翔ける。

「さっさと終わらせるよ!」

 ミネスが馬車に向かって雷を打ち出し、ラミッタが特大の防御壁で防ぐ。

 馬車はガタガタと揺れ、マッサが荷台のスフィンに言う。

「スフィンさん! 馬は乗れるか!?」

「あぁ、もちろんだ!」

 それを聞いて、次は隣で馬車を引くマルクエンにマッサは叫んだ。

「マルクエンさん、荷台は捨てよう! 俺とスフィンさんで馬に乗って走る!」

「えぇ、わかりました!」

 スフィンがマルクエンの馬車に飛び乗り、運転を交代し、マッサとマルクエンは馬車を切り離した。

 重りが無くなり、颯爽と軽やかに走り出す馬。マルクエンは荷台から飛び降り、地面に着地する。

「小賢しいねー」

 マルクエンを無視し、馬を追おうとするミネスに、光の刃を数十発飛ばした。

「ははっ、無駄無駄!」

 ラミッタと共にスフィン達を守るため、マルクエンは走り出す。

 鎧を着たままだと言うのに、馬に追いつくマルクエンを見てスフィンもマッサも驚いていた。

「もううっざいなぁ!!!」

 ミネスが水色の玉を投げつけると、そこから大量の水が溢れ、馬を襲う。

 炎や雷と違って、後ろから迫りくる水は反射しきる事が出来ない。

 ラミッタが急降下し、地面をダンっと蹴りつける。

 蹴られた場所を中心に、地面が揺れ、地割れが起きた。

 水は地面へと吸い込まれ、馬は逃げ続ける。

「うー!!! 本当に邪魔だね君たちは!!!」

 ミネスは怒りをあらわにし、追いかけてきた。

 試練の塔には確実に近づいている。馬が潰れる前に間に合えば良いのだが。

「それじゃもう本気の本気!!!」

「最初から本気で来なさいよ」

 ラミッタに言われ、更に激昂するミネス。

「うっさいうっさい!!!」

 水色の玉と白い玉を上空に投げ、雨が振り始めた。

 その雨は段々と雪へ変わり、ひょうになり。

 氷のナイフへ姿を変えて無数に地上へと降り注ぐ。

 マルクエン以外は魔法の防御壁を傘のように張る。

 まずいと思ったラミッタはマルクエンの元まで向かい、防御壁の中にマルクエンを入れた。

「すまん、助かった」

「これぐらい自分でどうにかしなさいよね!!」

 お互いの体が触れ合うぐらい近づく二人。

「呑気に相合い傘とは良いご身分だね!!」

「なっ!! ち、違う!!!」

 ラミッタは赤面するが、ミネスが何かしようとしている事を見逃さなかった。
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