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スフィン
宴の準備
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帰り道、スフィンはふと手をまじまじと見てみた。
何の変哲も無い普段通りの自分の手だ。
「それじゃ、冒険者ギルドでささやかながら宴の準備をしてきますんで、ホテルで待っていてくださいな」
そう言い残し、マッサはギルドへと向かって行った。
残される三人、気まずい空気が流れる。
「ラミッタ、状況をよく聞きたい。少し付き合え」
「はい! かしこまりました!」
そう言われ、ラミッタはスフィンの部屋へと消える。
残されたマルクエンはどうしようかと、ホテルのロビーに座っていた。
「マルクエン様、お茶はいかがですか?」
マッサの姉であり、ホテルの支配人でもあるネーアがマルクエンに声を掛ける。
「そうですね……。お言葉に甘えるとします」
スフィンの部屋ではラミッタが改めて現状とこの世界のこと、分かる範囲で全て話した。
「本当、信じられんが不思議なこともあるものだな」
割と今は冷静に状況を受け入れているスフィン。
「えぇ、そうですね」
「だが、悪い事だけではないな。お前の新たな能力は戦力になる。ルーサに戻ればイーヌを圧倒できるだろう」
「え、えぇ……」
歯切れの悪い返事に、スフィンはじっとラミッタを見る。
「まさか、とは思うが。あのイーヌの騎士に情でも湧いたわけではあるまいな?」
言われてラミッタは赤面し、思わず立ち上がって言った。
「なっ、そ、そんなわけありません!! あんな奴すぐに斬り捨てますよ!!!」
「なら良いが」
ちょうどその瞬間、部屋のドアがノックされ声が響く。
「スフィンさーん。ラミッタ様ー。マッサですー! ギルドでお話したいんですがー」
「あぁ、今行く」
スフィンは椅子から立ち上がり、スタスタと歩いてドアを開けた。
「それじゃあ行きますか」
そう言ってマッサはニッと笑う。
冒険者ギルドを目指して、マッサとマルクエン達は歩く。
道中は気まずい空気が流れていたが、マッサだけは気にしていないようだった。
「さーて、着きましたね」
冒険者ギルドのドアを開けると、冒険者自体は数人だったが、スタッフが慌ただしく動いている。
「お待ちしておりました! どうぞお掛け下さい!」
マルクエン達は席に通され、すぐに料理が運ばれてきた。
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「俺はコーヒー酒のミルク割り!」
マッサが手を上げて勢い良く言う。
「ほんとギルドマスターはそれ好きですね。勇者様達はいかがですか?」
「私はビールで良いわ。スフィン将軍はワインでもいかがでしょう?」
「あぁ、貰おうか」
「それじゃ私はミルクで」
酒を頼まないマルクエンを見て、スフィンはムッとした顔をする。
「いや、私も酒はやめておこう。酔った所を何かされても嫌だしな」
スフィンはマルクエンが警戒して酒を頼まないのではないかと勘ぐっていた。
「あー、スフィン将軍……。そこのおこちゃまは酒飲めないだけですので……」
「酒が……飲めない?」
信じられないといった顔でスフィンはマルクエンを見る。
「えぇ、一滴も飲めません」
「おぉ、意外だなマルクエン様! それじゃワイン持ってきちゃって!」
何の変哲も無い普段通りの自分の手だ。
「それじゃ、冒険者ギルドでささやかながら宴の準備をしてきますんで、ホテルで待っていてくださいな」
そう言い残し、マッサはギルドへと向かって行った。
残される三人、気まずい空気が流れる。
「ラミッタ、状況をよく聞きたい。少し付き合え」
「はい! かしこまりました!」
そう言われ、ラミッタはスフィンの部屋へと消える。
残されたマルクエンはどうしようかと、ホテルのロビーに座っていた。
「マルクエン様、お茶はいかがですか?」
マッサの姉であり、ホテルの支配人でもあるネーアがマルクエンに声を掛ける。
「そうですね……。お言葉に甘えるとします」
スフィンの部屋ではラミッタが改めて現状とこの世界のこと、分かる範囲で全て話した。
「本当、信じられんが不思議なこともあるものだな」
割と今は冷静に状況を受け入れているスフィン。
「えぇ、そうですね」
「だが、悪い事だけではないな。お前の新たな能力は戦力になる。ルーサに戻ればイーヌを圧倒できるだろう」
「え、えぇ……」
歯切れの悪い返事に、スフィンはじっとラミッタを見る。
「まさか、とは思うが。あのイーヌの騎士に情でも湧いたわけではあるまいな?」
言われてラミッタは赤面し、思わず立ち上がって言った。
「なっ、そ、そんなわけありません!! あんな奴すぐに斬り捨てますよ!!!」
「なら良いが」
ちょうどその瞬間、部屋のドアがノックされ声が響く。
「スフィンさーん。ラミッタ様ー。マッサですー! ギルドでお話したいんですがー」
「あぁ、今行く」
スフィンは椅子から立ち上がり、スタスタと歩いてドアを開けた。
「それじゃあ行きますか」
そう言ってマッサはニッと笑う。
冒険者ギルドを目指して、マッサとマルクエン達は歩く。
道中は気まずい空気が流れていたが、マッサだけは気にしていないようだった。
「さーて、着きましたね」
冒険者ギルドのドアを開けると、冒険者自体は数人だったが、スタッフが慌ただしく動いている。
「お待ちしておりました! どうぞお掛け下さい!」
マルクエン達は席に通され、すぐに料理が運ばれてきた。
「お飲み物はいかがなさいますか?」
「俺はコーヒー酒のミルク割り!」
マッサが手を上げて勢い良く言う。
「ほんとギルドマスターはそれ好きですね。勇者様達はいかがですか?」
「私はビールで良いわ。スフィン将軍はワインでもいかがでしょう?」
「あぁ、貰おうか」
「それじゃ私はミルクで」
酒を頼まないマルクエンを見て、スフィンはムッとした顔をする。
「いや、私も酒はやめておこう。酔った所を何かされても嫌だしな」
スフィンはマルクエンが警戒して酒を頼まないのではないかと勘ぐっていた。
「あー、スフィン将軍……。そこのおこちゃまは酒飲めないだけですので……」
「酒が……飲めない?」
信じられないといった顔でスフィンはマルクエンを見る。
「えぇ、一滴も飲めません」
「おぉ、意外だなマルクエン様! それじゃワイン持ってきちゃって!」
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