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スフィン
気まずい食事会
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スフィンははっきりとマルクエンを敵だと言い切った。
ちょうどそこへ大量の料理が次々に運び込まれる。
気まずい食事会に誰も料理を取ろうとしない。
「まぁまぁ、スフィンさんの事情は分かった! ともかく今は食べましょうや」
マッサはそんな事を言い、料理を取り分けスフィンの前へ置く。
「騎士として……」
マルクエンが話し始めたので、皆がそちらを向いた。
「騎士として、国のために戦うことが正しい事だと私は思っていました」
そこまで言うと、自信の無い表情を作り、続けて言う。
「ですが、ルーサにとって、あの戦争は侵略だと思われても仕方が無いと、今は思います」
皆は黙ってマルクエンの話を聴いていた。
「戦場で好敵手だと思っていたラミッタとも、こうして一緒に旅をする仲になることができ、私は正しさが何か。正直言って分からなくなってしまいました」
「貴様、何が言いたいんだ?」
スフィンに尋ねられ、答える。
「私は、元の世界へ帰り、戦争を終わらせたい。皆が分かり合える世界を作りたい」
「そんな絵空事を」
ふんっとスフィンは吐き捨てるように言った。
「それに、私はこの世界も好きになりました。だから、魔王からこの世界も救いたい」
「私には関係無い話だ」
「いやいや、スフィンさんも、別世界の勇者ってことなら、関係あるかもしれないよ?」
マッサが宥めると、ラミッタも話し始めた。
「その方の言う通りです。もしも、我々がこの世界の伝承通りの存在だとしたら、元の世界へ帰る唯一の方法かもしれません」
ラミッタにも言われ、スフィンはため息を付く。
「とりあえず、今は飯にしましょうや! 料理が冷めちまう」
「……。そうだな」
スフィンは納得したのかしていないのか、定かではないが、料理を口に運び始めた。
食堂にはカチャカチャと食器を動かす音だけが響いている。
しばらくの沈黙を破ったのは、以外にもスフィンだった。
「分からないことだらけだが、ラミッタ。いくつか聞きたい事がある」
「はい、なんでしょうか?」
「何故この世界の住人と言葉が通じ合うんだ?」
質問をされたラミッタは困った顔をしてしまう。
「それは……。私にも分かりません。文字は違うようですが、意味が理解できるのです」
「言葉とは文化によって生まれるものだろう? そこが謎なのだ」
スフィンの言うことは尤もな意見だった。
「それと、私はお前より先に死んだのだろう? 何故お前の方が先にこの世界へ来たのだ?」
「申し訳ありませんが、分かりません。この世界で出会った元の世界の住人はこの宿敵だけでしたので」
「そうか……」
スフィンはムスッとした表情で続けて言う。
「そして、この質問には答えられると思うが。ラミッタ。お前、そこのイーヌの騎士と随分仲が良さそうだな」
どんな質問が来るだろうかと、身構えていたラミッタは、一瞬硬直し、だんだん顔を赤らめさせる。
「なっ、違います!! この宿敵とは元の世界へ帰るために一時休戦をしているだけで……」
「ならば、元のルーサのある世界へ帰ったら、ソイツを斬れるのか?」
「も、もちろんです!! ズタズタのボロ雑巾にしてやりますよ!!」
ラミッタがそう言うもので、マルクエンは結構ショックを受けていた。
「まぁまぁ、スフィンさん。馬に蹴られちまうぜ?」
マッサが肉を頬張りながら言う。
「ふん。街で不良の男共を半殺しにしていた喧嘩師ラミッタも丸くなったものだな」
「なっ、ち、違います!!」
ちょうどそこへ大量の料理が次々に運び込まれる。
気まずい食事会に誰も料理を取ろうとしない。
「まぁまぁ、スフィンさんの事情は分かった! ともかく今は食べましょうや」
マッサはそんな事を言い、料理を取り分けスフィンの前へ置く。
「騎士として……」
マルクエンが話し始めたので、皆がそちらを向いた。
「騎士として、国のために戦うことが正しい事だと私は思っていました」
そこまで言うと、自信の無い表情を作り、続けて言う。
「ですが、ルーサにとって、あの戦争は侵略だと思われても仕方が無いと、今は思います」
皆は黙ってマルクエンの話を聴いていた。
「戦場で好敵手だと思っていたラミッタとも、こうして一緒に旅をする仲になることができ、私は正しさが何か。正直言って分からなくなってしまいました」
「貴様、何が言いたいんだ?」
スフィンに尋ねられ、答える。
「私は、元の世界へ帰り、戦争を終わらせたい。皆が分かり合える世界を作りたい」
「そんな絵空事を」
ふんっとスフィンは吐き捨てるように言った。
「それに、私はこの世界も好きになりました。だから、魔王からこの世界も救いたい」
「私には関係無い話だ」
「いやいや、スフィンさんも、別世界の勇者ってことなら、関係あるかもしれないよ?」
マッサが宥めると、ラミッタも話し始めた。
「その方の言う通りです。もしも、我々がこの世界の伝承通りの存在だとしたら、元の世界へ帰る唯一の方法かもしれません」
ラミッタにも言われ、スフィンはため息を付く。
「とりあえず、今は飯にしましょうや! 料理が冷めちまう」
「……。そうだな」
スフィンは納得したのかしていないのか、定かではないが、料理を口に運び始めた。
食堂にはカチャカチャと食器を動かす音だけが響いている。
しばらくの沈黙を破ったのは、以外にもスフィンだった。
「分からないことだらけだが、ラミッタ。いくつか聞きたい事がある」
「はい、なんでしょうか?」
「何故この世界の住人と言葉が通じ合うんだ?」
質問をされたラミッタは困った顔をしてしまう。
「それは……。私にも分かりません。文字は違うようですが、意味が理解できるのです」
「言葉とは文化によって生まれるものだろう? そこが謎なのだ」
スフィンの言うことは尤もな意見だった。
「それと、私はお前より先に死んだのだろう? 何故お前の方が先にこの世界へ来たのだ?」
「申し訳ありませんが、分かりません。この世界で出会った元の世界の住人はこの宿敵だけでしたので」
「そうか……」
スフィンはムスッとした表情で続けて言う。
「そして、この質問には答えられると思うが。ラミッタ。お前、そこのイーヌの騎士と随分仲が良さそうだな」
どんな質問が来るだろうかと、身構えていたラミッタは、一瞬硬直し、だんだん顔を赤らめさせる。
「なっ、違います!! この宿敵とは元の世界へ帰るために一時休戦をしているだけで……」
「ならば、元のルーサのある世界へ帰ったら、ソイツを斬れるのか?」
「も、もちろんです!! ズタズタのボロ雑巾にしてやりますよ!!」
ラミッタがそう言うもので、マルクエンは結構ショックを受けていた。
「まぁまぁ、スフィンさん。馬に蹴られちまうぜ?」
マッサが肉を頬張りながら言う。
「ふん。街で不良の男共を半殺しにしていた喧嘩師ラミッタも丸くなったものだな」
「なっ、ち、違います!!」
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